龍剣物語 ~少年の歩む英雄譚~   作:クロス・アラベル

9 / 21
こんにちは!クロス・アラベルです!
今回はエイナさんとの約束を破る回です。
それではどうぞ!


約束破り

とある壊れかけの教会。

そこにルキアは入って、地下室へと進む。

「あら、お帰りなさい。ルキア。どうだった?」

出迎えるのは朱色の長髪と白藍の瞳の少女……ではなく、女神。

「…別に」

「……ルキア、貴方って無口なだけなの?」

「知るか」

エオスの言葉にルキアは素っ気なく返す。

ルキアは、部屋の片隅でエイナに渡された本を読み始めた。『目指せ共通語(コイネー)マスター!』とタイトルが表紙に書いてある。

「ルキアって、文字書けないの?」

「……ああ。文字もほとんど見たことも無い」

エオスには過去のことは話していないので小首をかしげる。

「……そうだ、ルキア。私が教えてあげましょうか?」

「いらん、自分でやる」

「……じゃあ、わからないことがあったら、いつでも聞いてね?」

「……」

ルキアはそのまま座り込んで本を読み続けた。

 

 

「………『コボルト』、人狼型モンスター。出現域は上層の1階層から9階層まで……攻撃方法は鋭利な爪と噛み砕くことに長けた口。比較的弱いが、数が多いと新参は苦戦することが多い……『ゴブリン』、亜人型モンスター。出現域はコボルトと同じ……攻撃方法は、『天然武器(ネイチャーウエポン)』の棍棒や斧による打撃や、斬撃。最弱のモンスターとして歌われているが、こちらも数が増えないようにしっかりと対処すること……」

 

一時間後、ルキアは共通語(コイネー)についての本を読破し共通語を覚え、ダンジョンの基礎知識についての本も読破、並びに本に書いてあったことを殆ど覚えていた。

「……る、ルキア?」

ブツブツと呟き続けるルキアに少し恐怖を覚えたエオスはどうしたのかと聞いた。

「ま、まさか……その二冊、全部読破したの?」

「ああ、そうだが何か?」

とルキアはエオスの問いに即答した。

エオスからすれば、一時間で厚さ5センチもある二冊の本を読破し、その内容を暗記するなんてことがあるのかと、驚愕し、感嘆するばかりである。しかも、ルキアには共通語が書けない、読めないという高いハードルがあったはずだ。それを気にする仕草すら見せなかったのだ。余計に驚いてしまうわけだ。

「……よし……ダンジョンの本も覚えた。行くか、ダンジョンに」

「え、ちょ……まだ早すぎるんじゃない?というより貴方、アドバイザーさんにオッケーもらったの?」

ルキアの突発な言葉に驚きを隠せないエオス。そして、冷静にエオスはルキアに妥当な質問をした。

「………ああ」

「……そう…」

ルキアの言葉にエオスは頷いた。彼の言葉を信じてみようと思ったからだ。

エオス達、神は下界の子供達の嘘を見抜くことができる。だが、ルキアはいくら目を細めて見ても、嘘かどうかが分からない。ルキアは何故か、少し靄のかかったように見える。

「……分かったわ。無理だけはしないでね」

ルキアの主神であるエオスは心配そうに言った。

「……」

ルキアが防具をつけ、剣を腰に帯剣して、黙って出て行こうとしたその時。

「ルキア!ホームから出掛ける時は何か言うことがあるじゃないかしら?」

とルキアに聞いて来た。

「………」

だが、ルキアはその言葉の意味が理解できず、そのまま無言でホームを出た。

 

 

 

 

天まで届きそうな、巨大な塔。人々はそれを『バベル』と呼んだ。

神々が下界に降りて来た時、バベルを破壊して降臨したらしいとの話がある。

ルキアはバベルの中の中央、ダンジョンの入り口の螺旋階段を降りてダンジョン一階層にたどり着いた。

「……ダンジョン、一階層」

ルキアはひとつ呟いて、歩みを進める。

ものの1分もしないうちに、モンスターと遭遇(エンカウント)した。ゴブリンだ。

「……ゴブリン、か」

ついさっき覚えた知識を頭の中で反芻する。

天然武器は持っていないものの、三体。これを同時に相手する、というのは神々の恩恵を授かったばかりの初心者(ビギナー)には不可能だ。だがルキアは違う。

「……ッ!」

ルキアは逃げるなど全く考えておらず、ゴブリン達に突貫していった。

鞘から片手剣を滑るように抜剣し、真ん中のゴブリンに向けて左下から右上に一閃。

『ギガアアアッ⁉︎』

『『⁉︎』』

斬り付けられたゴブリンは吹き飛び、後の二匹は行動が止まる。

「……らあッ!」

そして、斬った勢いそのままで回転し、また左から右へ水平に一閃。残ったゴブリン二匹をまとめて蹴散らす。

「……前のよりは、強いな」

ルキアが前に戦った野生のゴブリンは魔石が極端に小さく弱かったが、ダンジョンから生まれるモンスターは違う。耐久も力も速さも。

「…とどめ、刺しとくか」

倒れたゴブリン達の胸に一突きし、灰に変える。

残ったのは、小さな魔石とドロップアイテムである『ゴブリンの爪』だった。

「……初めてにしては上出来だな……このまま進むか」

そして、ルキアはダンジョンのより奥を目指して歩き始めた。

 

 

ダンジョン3階層。

ダンジョン探索を終え、帰路につくファミリアがいた。魔法の使える後方支援(バックワード)が1人、サポーターが2人、中衛(メディバル)が2人、巨体の前衛(フォワード)が1人の計6人によるパーティだ。

「今日も、いい感じだったね、命」

「そうですね、千草殿。やはり、桜花殿の力は大きいですね……もっと自分も精進しなければ…」

綺麗な黒い前髪で目が隠れている少女が同じ黒髪を後ろで結んだポニーテールに紫の瞳の少女に話しかける。

命と呼ばれた少女は極東風のバトルクロスを身にまとっている。一方、千草と呼ばれた少女は大きなバックパックを背負っている。

そう、このフアミリアは極東出身の者が集まっている……正確には全員が主神共に極東から引っ越して来たのだ。理由は極東の孤児院にお金を送るため。主神はタケミカヅチだ。

「命、千草。油断はするな。気を引きしめておけ」

その2人を注意する大柄の男。

「分かっていますとも!油断大敵、ですね!」

「ありがと……桜花」

桜花と呼ばれた大男は先頭を歩いている。持っている武器は大きな戦斧(バトルアクス)。この男がこのファミリアの団長だ。他にも3人団員がいる。

「……誰かが戦っているな」

「……冒険者、1人ですね」

と、その道の先で誰かがモンスターと戦闘しているのが見えた。

「……あれって…コボルトとゴブリンが、9体も……⁉︎」

「………不味いですよ!桜花殿、助太刀を……」

「待て、ダンジョン内では基本不干渉だぞ」

「で、でも、見たことない人だし……もしかしたら、駆け出しかも、知れないよっ?」

「……」

「……助けに行った方がいいんじゃない?僕たちも見捨てるなんてしたくないから…」

悩む桜花に1人の団員が声をかける。

彼の名は飛鳥。後方(バックワード)で、魔道士だ。

「……わかった。行くぞ」

「自分が先行します!」

桜花が許可を出した途端、命はその冒険者に向かって疾駆した。

が、その心配が飛んだ気苦労だったということに気がついた。

「……あれ?」

「どうした、命」

「は、早く行かないと……」

「いえ、それが……」

言い淀む命。それもそうだろう、何故なら___

『……ッッ!!!』

その冒険者は物凄い勢いでモンスターをほふり始めた。

一体、また一体と片手剣に切り伏せられていく。

遠距離にいるモンスターには剣を投擲。その後は殴る蹴る、そして、一体を横に倒れたまま胴まで持ち上げ、モンスターの群れに突っ込む。一体のゴブリンの腕を両手で掴んで頭の上まで持ち上げてその勢い殺さず、後ろに叩き落とす。

コボルトに突き刺さっていた剣を抜いて、また切り伏せる。

そして、数十秒後にはモンスターを殲滅して見せた。

「……す、すごい…」

「よく勝てたな…」

「本当に駆け出し……?」

技と技術をステイタスで補っているように見えた。

『……』

倒してから彼女____本当は『彼』なのだが____は魔石を集めた。

「……あ、あの大丈夫ですか…?」

声をかけられた彼女は無言でこちらを振りかえる。

整った顔立ち。話しかけた命自身に似た蒼紫(タンザナイト)の瞳。長くのびた澄みきった空色の髪。背丈もそれなりに高い。

モテ要素がぎっしりと詰まった少女を見て、命達は息を飲む。

だが、少女は無表情な顔でまた魔石を拾う。

「あ、あのっ……」

『………何だ』

「……け、怪我は無いですか…?」

『…怪我はしていない』

「……左肩から血が出てますけど……」

『……』

「これ、使って下さい。治りますから」

『……』

命の差し出した回復薬(ポーション)を無言で受けとる少女。

「ダンジョンに潜るのは何度目ですか?」

『…初めてだ』

ダンジョンに潜るのが初めて……すなわち完全な初心者(ビギナー)だと言われ、驚くも言葉を続ける。

「傷にかけてください。そうすれば治りますよ」

命の説明を聞いて、その通りにすると傷が癒えていく。

少女は一瞬目を見開いた。

回復薬を使うのは初めてらしい。

「これは回復薬です。薬屋に行けば買えますよ」

『……分かった…………あり、がとう…』

少女は小さく頷いてダンジョンの上層に向けて歩き始めた。

 

「………あいつ、何だったんだ…?」

「……分かんない…ダンジョン初めてで三階層……」

「………何者だったんでしょう…」

各々驚きつつ疑問を呟く《タケミカヅチ・ファミリア》。疑問は募る一方だった。

 

 

 

 

エオス・ファミリアのホームである壊れかけの教会。その地下室ではエオスがルキアのステイタスが書かれた紙を見ている。

「……一体、このスキルは何なの……?」

その紙に書かれていたステイタス。アビリティは普通だ。驚くことに、魔法欄が三つもある。大抵ヒューマンは一つ、良くても二つほどだった筈。だが、それ以上にあり得ない、とあるスキルが発現していた。

 

Lv.1

力:I 0  耐久:I 0  器用:I 0  敏捷:I 0  魔力:I0

 

《魔法》

【】

【】

【】

 

《スキル》

竜の血(ドラゴンズ・ブラッド)

・全アビリティの超高補正。

・五感の超高補正。

・スキルや魔法が発現しやすくなる。

・稀に暴走する。

 

 

「……《竜の血(ドラゴンズ・ブラッド)》……」

下界に降りてきてあまり日が経っていないが、直感でこのスキルが他では滅多にない……いわゆる()()()()()というものだ、と悟った。

全アビリティの超高補正。さらに五感も……天界で言う、()()()だ。こんなものあってはならない。

スキルの特性……暴走。このスキルの唯一デメリットだ。暴走というのはどれくらいのものなのか、全く予想がつかない。

そして_________このスキル名。

「…竜……」

『竜』と言えば、最強モンスターの一角だ。これはただの比喩なのか、とエオスは結論付けた。

「……周りに知れるのは避けなきゃダメね。ルキアにもあまり言いふらさないように言っておきましょう」

と、この竜の血(スキル)のことはルキアに教え、他人に言わないように言いつけた。

 




次回「家族の温もり」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。