GATE 大日本帝国 彼の地にて、斯く戦えり   作:人斬り抜刀斎

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策略

アルヌスの草原の原っぱでは、ジゼルが仰向けに寝っ転がりながら空を眺めていた。近くでは、カトー老師達が野球をしていた。そして、ジゼルの瞳に映る日本軍の飛行機に、

 

「・・・・空が狭く成りやがった」

 

とそう呟く。そうしている時ロゥリィがやって来た。

 

「ジゼルゥ、こんな所でおさぼりぃ?」

 

「休憩スよ休憩。この時間食堂暇だから」

 

「ちゃんと働いているようねぇ。借金減ったぁ?」

 

「うっ」

 

ロゥリィに借金返済の痛いところを突かれ頭を抱える。そして、ジゼルはロゥリィが自分に何の用か本題に入る事にした。

 

「・・・・何スか?」

 

「ちょっと聞くんだけどぉ、空飛ぶってどんな感じぃ?」

 

「どうって・・・・お姉サマも翼竜やあの鉄の箱で飛んでただろ?」

 

「そうじゃなくってぇ、自前の羽で飛ぶってどおなのぉ?」

 

「ん〜野暮な質問だなぁ」

 

ロゥリィの質問に頭を悩ますジゼルに、カトー老師がボールを高く打ち上げた。すると、ジゼルは飛び立ちカトー老師が打ち上げたボールを見事キャッチする。

 

「上から下を見下ろすのは気分いいけどよ、晴れた空をのんびり飛ぶのもいいぜ。肌に風を感じさせてさ。けどよ、あいつらのせいでおちおち飛んでられねぇって翼竜どもが言ってたぜ」

 

「あいつら?」

 

「炎龍の子堕とした奴らだよ、あれ」

 

とそう言ってジゼルが指さした方向には、ゼロ戦が飛んでいた。

 

「ゼロセンのことぉ?」

 

「ゼロセンって野郎か、もう一匹来た」

 

そして、ジゼルはゼロ戦の方に向かって飛んで行く。

 

「神子田二時下方不明騎接近」

 

「ああん?」

 

「青いな・・・・ドラゴンか?」

 

「いや、街の住人らしい」

 

二機のゼロ戦に近付いたジゼルは、ゼロ戦の操縦席を神子田がジゼルにハンドサインを送る。そして、ゼロ戦が飛び去って行くとジゼルはロゥリィの元へと降りて行く。

 

「無茶するわねぇ」

 

「どんな奴が操ってるか面見てやったのさ」

 

「ヨウジに聞いたけどぉ。門の向こうじゃ炎龍より大きなひこーきが何百機も飛んでるそうよぉ」

 

「炎龍より!?・・・・ん?門の向こう?」

 

「明日ニホンでぇ、パラシュートコウカってのをやるのぉ♫布の傘でぇ空飛ぶんだって」

 

と明日の陸軍の基地でやる空挺降下を楽しみに話すロゥリィ。

 

「あーそれで」

 

「じゃあ、おしごと(借金返済)頑張りなさぁい」

 

とそう言ってロゥリィは去って行く。

 

「炎龍よりでかい鉄の鳥が何百もか。向こうの空はあいつらには狭過ぎんだな・・・」

 

「ジゼルさーん晩の仕込み始めるにゃー」

 

「はいよぉ〜」

 

とジゼルはレストランに戻りレレイから借りた借金返済の為に今日も働く。

 

 

そして、一方大日本帝国帝都東京総理大臣公邸の一室では、陸軍参謀総長小磯國昭を始めとした陸軍の参謀将校数人が座っており伊丹と大場はそこに呼ばれていた。

 

((俺達、本当にここに居て良いのか・・・・?))

 

「お待たせした。養鳴教授との話が長引きました」

 

と内閣総理大臣東條英機、書記長官迫水久常、外務大臣東郷茂徳、陸軍大臣杉山元などが入って来て席に着く。

 

「さて、この報告書だが、君達が書いたんだな?」

 

「はい!そうです!!」

 

「は、はいっ!あの・・・・どこかまずかったですか・・・?」

 

と大場と伊丹が言うと東條英機は報告書を見て大きな溜息を吐き、東郷が話し出す。

 

「まずいって言えばまずいのだが・・・・こいつにはいい悪いがてんこ盛りでな、どう反応したらいいのかわからねぇのが正直なところだ。で、お前さん達と直に話した方が良いだろうと来てもらった訳だ」

 

「はぁ」

 

「?」

 

「まずは資源調査。こいつは文句なしだ。超大規模油田にレアメタルがレアじゃなくなる資源宝庫。我が国にとっては嬉しい報せだ、ご苦労だった」

 

「ありがとうございます」

 

「勿体ない限りです」

 

と東郷からの労いの言葉にお礼を言うと、東郷は本題に入る。

 

「問題はあれだ、"黒い霧"…養鳴先生の話を聞いてもさっぱりだったが、記事で暴露されてからマスコミも遅ればせながら騒ぎ出した」

 

「まぁ、あれが広がれば特地の住み心地悪く成りそうですぇ」

 

「だが『門』との関連性は不明だ」

 

「それについてはハーディから・・・」

 

「そうです。神様から教えってもらったのですが・・・」

 

「その『神様』と言う表現やめたまえ、例の参考人招致に亜神とか名乗る娘が現れたから口を利ける存在を神様と称するのに難色を示す党や外交筋がうるさいんだ」

 

と黒い霧と門の関連性についてハーディから教えてもらったと言うと、迫水がハーディを神様と言う表現について東條達が難色を示す。そして、彼等にとって国家神道を信仰する日本にとって神様は天皇陛下であり、他国に於いてもキリスト教、イスラム教、ユダヤ教等を信仰する欧州や中東の各国からしても自分達が信仰する神様と違う異世界の神様と言えども到底受け入れられないのだ。

 

「はぁ、ではどう呼べば?」

 

「・・・・と、特殊能力者か?でなければ、超人的種族」

 

「いやいやいや迫水さんオカルトやアニメじゃないですから」

 

「予言者は?」

 

「胡散臭いですよ」

 

「精霊」

 

「何か違う」

 

「やはり神様しか」

 

「そうですね」

 

と神様の代わりの別称を迫水は色々と出してみるがどれも当てはまらず頓挫してしまった。 

 

(結局、神じゃねぇか)

 

(めんどくせぇー)

 

「公称は官僚に期待して話を進めましよう」

 

「あ、はい。つまりだ異常現象が発覚してから、国内や欧米の企業の投資計画が停まってしまったのだ」

 

「おかげで株価は大暴落、専門の議員も説明を求めて押しかけてくる」

 

と黒い霧が現れて知れ渡ってから企業の投資が頓挫し株価が暴落してしまった事に東條は溜息を吐く。

 

「何でそんな事に?」

 

「一体何の関係が?」

 

「分からないかね?『門』を閉じる事になれば投資が無駄になる」

 

「おまけに陰謀論ときたもんだ。外交筋曰く日本政府は特地利権の独占を図っている!『門』と異常との関連を示す証拠はない!我が国がいつ公式見解を発表したんだろうなぁ?」

 

と門を閉じる事になれば折角の投資が水の泡となってしまい、更に特地の利権が欲しい各国からは日本が特地を独占しようとしていると指摘が来た。

 

「・・・・如何だろう君達は帝国関係者と接触が多いのだろ?帝国正統政府の謀略に引っかかっているとは思わんかね?」

 

と迫水は伊丹と大場に黒い霧に帝国正統政府が絡んでいるんじゃないかと聞いて来た。が、二人は否定する。

 

「そ、それは無いと思います!魔法か何かであの霧を発生させられるのならクナップヌイなんて無人の辺境じゃなくアルヌスに一発で充分では?」

 

「確かに、クナップヌイなんて辺境の地より我が軍や住民達が多く暮らすアルヌスに放てば我々には大打撃の筈です」

 

「アルヌスは彼らの聖地だから手を出さないだけかもしれい」

 

迫水がそう言うと次に、軍の参謀本部の将校達が危惧し始めた。

 

「では、前線で使用される可能性があると!?」

 

「あの霧が報告通りであれば皇軍の装備で防ぐ事は出来ません」

 

(今、霧が前線で発生したら・・・・)

 

小磯國昭は、クナップヌイで発生している黒い霧がもし日本軍の前線で発生した場合のことを想像する。

 

『前方から黒いガス状のものが拡散!状況ガス!状況ガス!』

 

『ガスマスクと防護服を着用しろ!!』

 

『くそっ後退!後退ーっ』

 

『待ってくれっ』

 

日本兵は急いでガスマスクと防護服を着けるが黒い霧に触れ兵士達が次々に命を落として行く。ガスマスクや防護服は、何の効果も成さず黒い霧が日本軍兵士の死体を覆って行く。

 

「そのような状況下では任務遂行など不可能です!!兵士達の生命を守る為にも派遣軍の全面撤退を考慮しなければ!!」

 

「むむ・・・」

 

「しかし、こちらでもアポクリフとやらがどこかで発生しているかもしれない。門と関係がないと言い切るのは大変危険です」

 

「ですが、何らかの手を打つ必要があります」

 

「その何らかの手を早急に示して頂かなければ皇軍は今後の方針を・・・・」

 

と小磯國昭は兵士達の生命も考慮して撤退も視野に入れるべきだと主張する。だが、東條達は黒い霧と門の関係性が不明な為黒い霧の有効な対策が見つからなかった。

 

(書記長官はアポクリフを帝国の威嚇と考えている。それは無意味だ。ハーディしか知らないんじゃ威嚇にならない)

 

「と、まぁ政府内でも意見がまとまらない」

 

「頭が痛くなりますね」

 

「そうだな、だからお前さんもこれを聞けば頭が痛くなるぞ。ある申し出がアルヌス協同生活組合からあった」

 

「え!?(申し出・・・?あいつらいつの間に・・・)」

 

組合から政府に申し出があった事を初めて知り伊丹と大場は、寝耳に水だった。そんな、伊丹を余所に周りはニヤリとした笑みで伊丹を見ていた。

 

「「!?」」

 

「申し出によるとレレイ・ラ・レレーナ嬢が『門』に関して重要な技術を入手したそうだ。いくつか条件を呑めば『門』の再開通に協力してもいいと」

 

とレレイが日本側が条件を呑めば門の再開通に協力すると申し出をしていたのだ。レレイから申し出を出していた事にまたも驚く伊丹と大場。

 

「は、初耳です?それに条件って・・・・?」

 

「それで、どんな条件なんですか?」

 

そして、東條が申し出の条件を読み上げる。

 

「えー、まずはだな・・・・門の閉鎖を受け入れる事、異変を治めるためであるのなら仕方がないな。次にこちら側の技術や学術情報を無制限な流入を防止する事、特地独自の文化や生活の急激な変化を望まないという事だ。そして最後の条件だが・・・・」

 

「これが大問題だぜ?」

 

「だ、大問題・・・ですか?」

 

「ええっと・・・大日本帝国陸軍士官伊丹耀司陸軍中尉並びに大場栄陸軍大尉二人の身柄を此方に引き渡す事だ」

 

「お、俺・・・・自分を・・・ですか?」

 

「じ、自分もですか・・・」

 

「そうお前達だ」

 

とレレイ達が出して来た条件は技術などの流出の制限や特地での急激な変化をしないなどの中に伊丹をこちら側に差し出せと言って来たのだ。

 

 

ソビエト社会主義共和国連邦の首都モスクワの中心赤の広場にあるクレムリンの宮殿の一室ではソ連共産党の幹部達がおり、ソビエト連邦国家保安省第1局対外情報のリヒャルト・ゾルゲ局長がある資料を見て動揺する。

 

「ど、同志スターリン、これは・・・」

 

「銀座赤旗計画…我々はそう呼んでいる。我々は新たな進歩的手段を持って日本国内の友好的団体に働きかけ、特地の利権を手中に収める」

 

「し、しかしこの様なを計画各国が認めるとは・・・」

 

「君が心配する必要はないゾルゲ局長。我々は既に特地にも協力者を確保している。ついてきたまえ」

 

その資料には、帝国の第二皇子ディアボの写真があった。あれからディアボはソ連に接触を図っていた。そして、スターリンは、共産党最高幹部とゾルゲを連れてある会議室に来た。

 

「我々の計画に賛同・協力を申し出た各国の代表者の方々だ」

 

そこには、世界各国の国々主に中国(中華人民共和国)とイギリス、フランス、イタリア、そして、先の大戦の敵ナチスドイツや今やイデオロギー的に対立しているアメリカまでが居た。今やアメリカvsソ連vsナチスドイツと言った三つ巴の勢力がここに手を握る事になった。アメリカもドイツもソ連と手を組むのは正直不本意だがどちらも特地の利権が欲しい為渋々手を結ぶ事にしたのだ。

 

「中国・イギリス・フランス・ドイツ・イタリア・インド・アラブ諸国・アメリカまで!?」

 

「そう、我々はここに利害の一致を見た。ゾルゲ局長、君は彼らとの協力関係を維持し慎重かつ大胆に事を運ぶ必要がある。任せてもよかろうね?」

 

「は、はいっ同志スターリン」

 

「かくして日本は四面楚歌となったわけだ」

 

とソ連とそれにソ連の計画に賛同する各国の特地の利権を日本から奪取するための策略が始まろうとしている。

 

帝国の国歌を描こうと思うんですがどれを参考にしたらいいですかね?

  • 『廃墟からの復活』
  • 『皇帝陛下万歳』
  • 『神よ、皇帝フランツを守り給え』
  • どれでも良い

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