GATE 大日本帝国 彼の地にて、斯く戦えり 作:人斬り抜刀斎
研究所では、レレイがハーディから授かった門を作る力を使って門が閉鎖した時に新たに特地に繋がる門を再開通する為の門の作る実験が行われていた。
「被験者の前方に空間の揺らぎを探知しました」
「観測器に歪みが!?重力値は?」
「脳波の振幅が大き過ぎて計測不能発生レベルです」
「意識を保ってるのは、発生部位が大脳の一部に限局されているからか」
レレイの前から空間に歪み生じて、ヘッドギアからのレレイの脳波も尋常じゃない数値で測定不能になっていた。
『コンタクト!』
レレイが呪文を唱えて指パッチンをすると、目の前に直径約3m位の水溜まりの様な結晶が現れた。
「んん?何か出来ました?」
「空中に水溜まりが浮かんでいる・・・・?」
しかし、全員自分達の知っている銀座にある門と違う事に少々戸惑う。
「あれが門?」
「銀座にある物とはだいぶ違う。レレイさん?」
「あれは、門を安定させ固定させる建造物。『門』の実体はこれ、維持し続けるのはこの大きさが精一杯」
研究員は、直ぐに結晶の中にカメラを搭載した遠隔操作式のゴリアテと温湿度計を結晶の中へと入れる。
「カメラ導入」
「気圧差なし、気温36度湿度82%。大気成分・・・酸素濃度が高めなものの呼吸可」
温湿度計の数値は気温と湿度高めで真夏と大体同じくらいの環境だった。ただし、通常よりも酸素濃度が高いため酸素マスクなしで長時間いると酸素中毒になってしまう。
「映像はどうだ?」
「モヤだらけだ、カメラが曇った?前進させて下さい」
「霧じゃないか?赤外線カメラの画像は?」
「んーはっきりしないな」
「ええいもどかしい!」
気温や湿度が高いせいかカメラから送られてくる映像に写っているのは霧が立ち込めており辺りが全く見えなかった。
『おい!誰かカメラを持って入ってみろ!』
そう言う養鳴が指示するもどこに繋がってるのか分からず誰も入りたがらず
「仕方ない儂が行く!」
「養鳴さん!?」
何を見えない事に痺れを切らした養鳴は自らが門の中に入ろうとし、止める研究員の静止を無視する。すると、伊丹がいつの間にか防護服とガスマスクを見に纏ってい命綱を付けている。
「レレイどこに繋いだんだ?」
「わからない近くの適当な世界」
「特地じゃないのか?」
「同じ世界とは、複数の穴を開く事は出来ない」
どうやら門は作れてもどこに繋がるかははランダムの様だ。
「これ魔法?」
「ハーディの力を借りている。ただし特地とニホンを繋ぎ直すには目印が必要」
「単一素材の希少結晶であったな」
「成る程、んでは・・・・・どらどら」
そして、伊丹は懐中電灯を構えて門の中に入って行く。中に入って行く様子を見た研究員達は、驚愕する。側から見ると伊丹の体前部が切断された様に映る。
「ものほんの人間の断面を見たな」
リアルで見る人間の断面図にドン引きだった。
「ヨウジ殿だけで行かせて良かったのだろうか?」
「「あ」」
「まぁ大丈夫だろ、あいつは運だけは最強だからな」
皆が伊丹が門へ入って行くのを真剣な表情で見ている。入って行くとそこは、辺り一面白い霧に覆われた真っ白な世界だった。伊丹は無線を入れ、大場がオペレーターを務める。
「あー聞こえます?」
『あぁ、聞こえてるぞ。伊丹、どうだ何か見えるか?』
「いや、やはり門の中は霧が濃く視界は1mもありません。何か、化け物でも出て来そう」
そんな事を言って伊丹が霧の中を歩いて行くと、伊丹がある物を見つけた。
「お、何だこれ?えーえ!?まじ!?うそ!?まんまあれじゃん!」
『どうした?』
「卵じゃねーか!?」
『何!?』
「何かの生物の卵だ!もの凄い量の卵が山の様にそこら中に置いてある!!うわっ開いてる!?もしかして孵化してる!?やばいやばい!やばいってここ!カメラ後退!早く引っ張り出してくれ!!」
伊丹はSF映画などに出て来そうな宇宙人の卵みたいなのが開くを見て慌てて門の方へ逃げる。
「レレイ!早く門を閉じろ!!」
『実験中止!実験中止!直ちに実験棟を閉鎖!!』
レレイが指パッチンをするとその結晶は消えて、直後に地震が起きた。
『揺れが発生、震源確認中・・・・震源地不明』
「レレイ・・・・特地とここ以外の世界に繋ぐのはやめてくれ、特にあそこは絶対ダメだこっちが滅び・・・うぉ!?な、なんだよ!?」
すると、いきなり伊丹は、防護服を着た軍人達に両腕を掴まれた。
「直ちに伊丹中尉を隔離して身体検査だ!!体内に異物が注入されていないか、寄生されていないか徹底的に!」
「い、いや!?ちょっと待って!大丈夫だって!防護服にも穴空いてないでしょ!ホントだって!俺はっ俺は・・・・無実だ!!」
「・・・・無実?」
「あれがお約束ってやつだ」
と杉山元陸軍大臣が伊丹を隔離して門の向こうから異物を持ち込んでいないか身体検査をする様に命令する。伊丹は、そう叫んで訴えるも聞き入れてもらえず問答無用で連れて行かれた。
一方、特地では新政府軍と旧帝国軍との内戦は激化し日本軍の協力を受けた新政府軍は各地で旧帝国軍の兵達を撃破していった。フォルマルト領イタリカでは、
『我が帝国正統政府軍はゾルザル軍のアルンヘウムの要塞の攻略を続行中!敵支配地で騎兵による攻撃を敢行し一つの街、六つの村と敵兵二百をエムロイの神に捧げたり!』
と帝国正統政府による戦況の公式発表が行われていた。
「まだ落とせねぇのか」
「略奪行を俺達にやらせてくれよ」
「いつになったら戦えるんだ?」
イタリカのフォルマルト伯爵家の屋敷の寝室ではベッドで療養中の皇帝モルトにミュイとシェリーがモルトに本を読み聞かせていた。
「大儀であった、ミュイ伯、シェリー嬢。今日の物語も興味深いものであった」
「陛下、イタリカには初めて読む書物がたくさんあるのですよ」
「この本はお父様が色々な部族から集めた物語集なのです」
「ふむ、思い出したぞ。数年か前分厚い伝承集を献上されたが、挿絵を手づから描いたと自慢しておったわ」
「夜中まで書斎にこもっていたと聞いております」
「明日は私達の詠んだ詩をご披露しますわ」
「それは楽しみだ」
と話しているとドアの向こうからノックがした。
「シェリーさん!」
慌てたミュイとシェリーはモルトのベッドの下に潜って隠れた。
「この前マルクス伯に怒られましたからね」
「あの侍医が告げ口したんですわ」
とベッドの下でひそひそと話す。
「入れ」
「陛下!至急お耳に入れたき報せが!」
寝室に入って来たのは宰相のマルクス伯とファルマルト家のメイド長だった。
「何事だ?マルクス伯」
「ハッ、アルヌスにおります薔薇騎士団騎士パナシュより早馬にて報せが参りました。て、帝国辺境クナップヌイにてアポクリフと称する異変が発生し、ニホンでは門との関連と門を閉じるか閉じないかの論争になっていると」
「気にする事はない。ただ論争になっているだけであろう?」
(そうですわ。ニホンはまだ何も手に入れてないですもの)
と門とアポクリフについて短絡的に捉える二人、するとメイド長が小さな紙を取り出した。
「さらに気になる情報が・・・・ピニャ様の書記官ハミルトン様よりパナシュ様への私信の写しでございます」
「入手方法は聞かぬ方がよいな?」
「恐れ入ります。ここに書かれている道中聞き及んだ話によりますとアルヌスに滞在しているある魔導士が冥王ハーディより『門』を開く力を授かったと」
その報告を聞いたモルトが目を見開き驚く。
「なに?それはまことか!?」
「本当なら由々しき事態かと」
(不味いですわ、とんでもないことを聞いてしまいました。ここで見つかれば・・・・当分の間イタリカに拘束されてしまう?スガワラ様と引き離されてしまう?)
「どうしました?」
「しっ、ミュイ様この部屋から抜け出しますよ」
そう言ってシェリーとミュイが気付かれない様にゆっくりとベッドから出ようとしていた。
「待つがよい、まぁ待て早まるでない。その魔導士は何者か分かっておるのか?」
しかし、二人はメイド長に見つかってしまった。
「!?」
「メイド長?」
驚いてメイド長は固まるがモルトの呼び掛けにメイド長は直ぐに我に帰る。
「あ、は、はいっ残念ながら何者か書かれておりません。ピニャ殿ならご存知かも・・・・」
報告にあった魔導士の正体がレレイであるとまでは書かれていなかった様だった。
「ニホン人であれば災いを未然に避けようとするでしょう」
「うむ・・・・この情報をイタリカで知る者は?」
あたりを見回してこの事を知っているのは、モルトを始めシェリー、ミュイ、マルクス伯、メイド長の5名だけだ。
「シェリーよ」
「は、はいっ」
「事の重大性を理解している様だな、申してみよ」
「・・・・はい」
モルトは、シェリーに意見の申し立てをする。
「帝国正統政府が戦えるのはニホン軍がゾルザル様の軍勢を叩いているから、それが無ければ劣勢な正統政府は対抗できず議員はことごとく逃げるか鞍替えするでしょう。正統政府は、あっという間に崩れてしまいます」
「うむ、分かっておる様だな。ならばしばし「解決策はありますわ!」」
「ニホンの求める賠償を支払う力は今の正統政府にはない。その力を手に入れるにはゾルザル様が邪魔、けれどゾルザル様をやっつけるにはニホンの力が必要。金庫の中の鍵ですわ!!ですからニホンにお願いするのです!ゾルザル様を倒して下さいと!」
その言葉にマルクス伯は、驚愕する。いくら帝国正統政府に弓引く賊軍の総大将とは言え、ゾルザルは腐っても一応は帝国の皇太子である。それをまだ講和交渉が成立しておらず未だ敵である日本軍にゾルザルを倒してくれと頼むのは抵抗感を感じるのだ。
「なんと!敵になったとは言え皇太子を敵に倒してくれと・・・!?」
「敵の敵は味方と言うじゃありませんか?勿論、急いで講和を結んでからの話です。空手形を切ってでも、鉱山や領土の権利もお譲りすればきっと応じてくれるでしょう。門を閉じる事になってもニホン軍を残してくださるかも」
「何故そう思う?」
「・・・・賭けと人情です。再び『門』を開けるかはニホンにとっての賭け、その先には手に入れた土地(スガワラ様と離ればなれになるなんていや、これは私にとっても大きな賭け!)捨てるには惜しいと思うのが多い程ニホンは手を貸してくれるでしょう!!陛下はもうニホンと戦争するおつもりはないのでしょう?今後の為にもニホンの力を利用すれば良いのです!帝国が再び力をつけるまで」
シェリーは、日本に鉱山と領土を割譲する事を切り札にゾルザル打倒に応じてくれるだろうと進言する。モルトをはじめ、周りの三人も12歳の子供とは思えない程のシェリーの発想力に舌を巻いていた。
「も、申し訳ございません!出過ぎた口を」
「いや、その齢で素晴らしき発想、将来が楽しみだ」
マルクス伯は、シェリーの発想力に関心していた。
「うむ、伯の言う通りややニホン贔屓過ぎる所もあるが・・・・・マルクス伯、テュエリ家の相続は決まっていなかったな?」
「は?はぁ、確かにそうであります」
モルトがテュエリ夫妻が死んだ今、テュエリ家の当主の座が空いている事を確認する。
「辛気臭い議員の中に稚い者が混じっておるのも一興、ニホンから譲歩を引き出す呼び水になるかもしれん。シェリー、そなたを講和交渉団代表に任命する事にしよう」
とモルトは、シェリーに日本との講和交渉団の代表に任命した。
「へ、陛下!?」
「あ、あの、わ、わ、わたくしは・・・・ニホンの外交官の妻になる事を約束しておりまして・・・・」
「まだ帝国貴族という事だ。マルクス伯無理は承知だ、適切な名目を考えよ」
「・・・・さすれば・・・・門地の相続を認めテュエリ子爵夫人とし伯の位に陞爵致しましょう」
「よかろう、テュエリ子爵夫人改めて特使代表として使命に務めよ」
「は・・・・ありがとうございます(持参金の代わりに爵位なんか貰ってもスガワラ様が喜ぶとは思えませんが・・・・皇帝特使の任、私の目的に使わせていただきますわ)」
こうしてシェリーは、若干12歳と言う史上最年少で講和交渉団の代表に就任したのだった。
帝国の国歌を描こうと思うんですがどれを参考にしたらいいですかね?
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『廃墟からの復活』
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『皇帝陛下万歳』
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『神よ、皇帝フランツを守り給え』
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どれでも良い