GATE 大日本帝国 彼の地にて、斯く戦えり 作:人斬り抜刀斎
その日の夜イタリカでは、ピニャの薔薇騎士団の兵舎のテントの一角でシェリーの説得で皇太女即位を承諾し、日本から帰って来たピニャにボーゼスは涙を流しながら頭を下げていた。
「ボーゼス・・・顔を上げてくれぬか。・・・・アルヌスで会いに行かずすまん・・・・ヴィフィータから聞いた、翡翠宮での戦い見事な指揮であったと、そなたは義務を果たしたのだ」
「しかし殿下、私は・・・・殿下をお救い出来ず・・・」
「ボーゼス」
すると、ピニャはボーゼスに手を差し出して、手を取るボーゼスを抱き寄せ包容を交わす。
「そなた達が帝都から去って行くのを見た時、妾は正直言って置いていかれたと思ってしまった。だが、皇城への一騎駆け、そなたの思い改めて受け止めたぞボーゼス」
「お姉さま」
「もう泣くな。妾の為にもう無理はしてはならん。そなたは妾だけのものでなくなったのだから、アルヌスでは、トミタにも会ってはないと聞いたぞ・・・・伝えておらぬのか?」
「・・・・はい」
「ボーゼス、トミタに伝えるまで死ぬ事は許さぬ、この命を破れば共にエムロイに召されたとしても姉妹縁の契り絶交だ」
「そんなお姉さま!」
「承知したな?調印日は留守を頼む。リサ様のお土産でも読んでおるが良い。腹を冷やすなよ」
とピニャは、調印日の留守をボーゼスに任せ梨沙の書いたポルノものが入った袋を預けて、テントを出て他の騎士団員が集まっている一室に入る。
「パナシュ、ヴィフィータ調印の日には、つつがなく出発できるな?」
「はい、ニホン側とは予行の打ち合わせも済んでおります。出迎えは、士官ケングンが代表とのこと」
「ケングン・・・・ああ、あの男か」
と自分達を出迎えるのが健軍大佐と聞いて、
「まじか・・・」
と驚くヴィフィータ、
「先触れ役は、誰が良かろうか?」
「そりゃなぁ・・・・んなもん決まってんだろ?」
「ニコラシカがいいかと、ニホン語も習得しておりますし」
『異議ありぃっ!!』
と先触れ役に選ばれなかった事に不満のヴィフィータは大声を上げて挙手した。
「一騎駆けは、名誉ある大役だぜ?やっぱ隊長格がやるべきじゃないか?そうだろ?姫様!!ニコラシカが不適というわけじゃないんだ。格式と言うか釣り合いというか因縁というか・・・・」
と必死に弁解をするヴィフィータに周りはニヤついてからかいだした。
「ヴィフィータが気になるのは別の事でしょ?」
「はっきりおっしゃればいいのに」
「ヴィフィータにも春が来た様ですね。私は役目をお譲りしても構いません」
「そういう事か。わかったわかった、先触れ役はそなたに任せる」
「しゃっ」
「よし、皆解散して良いぞ」
と先触れ役に選ばれて浮かれヴィフィータ、ピニャは解散を言い出て行くとパナシュに呼び止められた。
「殿下、ちょっとお耳を」
「何だ?パナシュ」
「実は・・・・ディアボ殿下が・・・」
「やめよ。帝国を捨てた者の名など聞きとうない」
とパナシュがディアボの名を口に出すとピニャは、眉をひそめて立ち去って行く。ゾルザルのクーデターで帝都から逃亡しようとするディアボにピニャは引き止めようとするが『帝都に残るなら命懸けになる。それなら対価を払え』とピニャに貞操を要求した。ピニャは兄妹間でと躊躇したが、最終的に決心して身ぎれいにして来ると待たせている間にディアボは帝都から逃亡してしまった。元よりディアボ自身妹のピニャと男女関係になる気は最初からなく、諦めさせるために言った出まかせだった。しかし、この仕打ちにピニャは『自分は男一人引き止める魅力もないのか』と落ち込ませる結果となった。
そして翌日、早朝モルトの寝室に帝国の正装で身を包んだピニャが入って来た。
「陛下」
「ピニャか」
「これより調印式のためニホンへ出発いたします」
「うむ、大任である。任せたぞ」
そう言うとピニャは、モルトの寝室から出ていた。
「譲位か・・・」
とモルトは、ベッドの上で朝日が差し込む窓の外を眺めながらそう呟いた。
そして、ピニャは屋敷の前に止まっている馬車に乗り、薔薇騎士団の護衛の基イタリカを出発しアルヌスへと向かう。
そして、馬を歩かせる事しばらくしてアルヌスの丘が見えて来た。
「殿下、アルヌスが見えて参りました」
「先触れの使者は誰が良いか?」
「ヴィフィータが適任かと」
「うむ、よかろう」
「ヴィフィータ!先触れに駆けよ!」
ピニャの許可が降りたのでパナシュがそう言うと、
「おう!ハッ」
ヴィフィータは片手に持っている帝国の旗を靡かせもう片方の手で手綱をひいて馬を走らせ先に行く。道中でアルヌスの戦いで戦死・行方不明となった連合諸王国軍の戦没者の集団墓地と慰霊碑が建てられてあった。更にヴィフィータが進むと日本軍の検問所に差し掛かった。
「止まれ!誰何!」
ヴィフィータは、馬を止め
「私は皇帝陛下のご名代の到来を告げる者!よろしくお仕度あれっ!」
そう名乗ると
「受け賜った。通ってよし!」
と検問の日本兵は、通行許可を出す。
(ニホン語合ってたよな?意味知らねーけど)
と意味も分からず放った言葉にギクシャクしつつもヴィフィータは、馬を走らせアルヌス街へと入って行く。
「来たぞ!」
ヴィフィータが街に入って来て、アルヌスの住民達が見物に来ていた。
そして、ガストンのレストランから様子を見ていたディアボとその侍従メトメスがいた。
「負けを認めるのに大仰なものだ」
「お客さんは、見に行かないんで?」
「くだらん。お前は行かないのか?」
と見物に行かないのかと聞かれたガストンは浮かない表情で語り出す。
「嬉しくないんでさ、見物している連中も内心では不安なんですよ。戦争が終わっても『門』の事が残ってますから」
「まだ開けると聞いたが?」
「そうは言われましたけどね、テュカさんもヤオも誰がどうやって開くのか言わなかった。気に入らんのですわ。散々大丈夫と言っといて後でひどい目にあう。昔それで店も女房もなくした身からするとね。残ったのは借金だけ、折角街が栄えてるんだ、閉門なんで今じゃなくてもいいだろうと」
「なるほど・・・」
コダ村やイタリカから来た人々と違いアルヌスの労働条件で来た人や日本の物品を買い付ける商人達には門を閉じられるのは死活問題だった。
「『門』を閉めても開けられるヒトが居なかったら、この街は終わりみんな路頭に迷っちまう。組合の上のヒトはいいですよ、コダ村に帰ればなんとかなる。イタリカから来た連中もだ、商人も傭兵団も他でやっていける。けど残りの俺らや亜人はどうなります?ここみたいな街なんて大陸中探してもありゃしない」
「なるほどな・・・・『門』を扱える者を知っている様な物言いだが、秘密ではないのか?」
「・・・・薄々わかってるんですよ。ベルナーゴに行ったのは六人。イタミとオオバの旦那はニホン人、聖下とハーディは犬猿の仲、ヤオは三行半突き付けに行くと言ってた、残りは二人・・・一人は魔法使い。ニホンに行ってまだ帰ってないとくれば・・・・」
「自明だな。この者でどうでしょうディアボ殿下」
「うむ」
とメトメス(メトメスの服を着たディアボ)がディアボ(ディアボの服を着たメトメス)がそう言うと、ガストンは目の前の人物が帝国の皇子だと聞いて驚いた。
「え・・・・?ディアボ殿下って皇子様の・・・!?」
「その通りだ俺は侍従のメトメス。実は我々はゾルザルの手から逃れてきたのだ。料理長、我々の計画を手伝わぬか?」
「計画・・・・?」
とメトメス(ディアボ)がガストンに計画に協力しないかと誘いをかけて来た。
「そうだ、実はな帝都で聞いた情報だが、アポクリフや地揺れを『門』と結びつけたのは・・・・『門』をこちら側で閉めさせ様とするゾルザルの陰謀だ」
と門とアポクリフなどは全てゾルザルによる陰謀だと言うのだ。
「な、なんですって!?」
「ニホン政府と正統政府も騙されてあるのだ」
(出まかせをスラスラと出せるもので・・・)
とメトメス(ディアボ)の出まかせの嘘にディアボ(メトメス)は呆れる。
「ハーディ自ら降臨して伝えたと聞きやしたが」
「真実を伝えたと思うか?」
「ええ!?」
「『門』を好き勝手利用するヒトを懲らしめる為に嘘をついたのかも知れんぞ?」
メトメス(ディアボ)の推測を聞いて青ざめるガストンを他所に、外ではアルヌスの街の通りにピニャの乗った馬車が入って来て住民達の歓喜の声が聞こえて来る。
「・・・・で、計画というのは?」
「その鍵となる魔法使いを安全な場所に隠すのだ。ゾルザルの魔の手からな」
「なるほど・・・・なるほど・・・レレイさんが殺し屋に狙われたって噂はそういう事で」
「ん?うむ、そうだ」
「この目論見を阻止すればゾルザルの痛手となる。『門』を閉じる必要はなくなるのだ。どうだ?」
とディアボ(メトメス)がそう言うとガストンは、お辞儀をしてディアボ達の誘いに乗る事にした。
「わかりました。このガストン・ソル・ボロお手伝いさせていただきます。ディアボ殿下」
「組合には秘密だぞ」
「ところでレレイさんを匿う安全な場所って?」
とガストンが安全な場所を聞くとメトメス(ディアボ)からある大国の名前が出た。
「我々の計画を手伝ってくれる国だ。サビイート『門』の向こうにある国だ」
「サヴィェートであるぞメトメス。ニホン語でソビエト。ニホンの隣国で言葉は違うがヒトの住まう国だ」
「話は終わりだ。俺からの連絡を待て」
ディアボの計画は『門』を作れるレレイ保護という名目で拉致しソビエト連邦への手土産にする事だった。
そして、ヴィフィータは五芒星の形をした日本軍特地派遣軍総司令部へと入って行く。そして、門の前には健軍大佐が立っていた。
(昔の出来事を再現する儀式だそうだが、何で俺が・・・・正直気乗りしねぇな。伊丹にでもやらせりゃいいんだ)
と健軍大佐が心の中で愚痴っている間にヴィフィータがやって来た。
「ご名代達着をお知らせする!!」
すると、ヴィフィータが急に落馬して地面に仰向けに倒れる。
「大丈夫か使者殿」
『おい・・・早く俺を抱きやがれ・・・・いやっ、手順通り早く抱き上げろ!』
(言葉がわからん?)
未だに特地語が理解出来ない健軍大佐はヴィフィータが何を言ってるのか珍紛漢紛だったが、いつまでもそうしている訳にはいかず健軍大佐はヴィフィータを抱き上げようとする。
『あ、やっぱダメだ!待てケングン触るなっ』
「暴れるなっ、儀式が進まんっ」
暴れるなヴィフィータ無視して健軍大佐はヴィフィータを抱き上げて、
「先触れ確かに受け賜った!!各々抜かり無くご名代をお迎えなされ!」
と大声でそう言うと兵士達は、雄叫びを上げる。
「(この後が決まってないなんていい加減だな)ここでいいか」
と健軍大佐は、ヴィフィータを抱えて門の前に車列に並べてある六号重戦車ティーガーの後ろに行きそこで下ろす。
『返事聞かせろ』
「すまん、何を言ってるか全然分からん?」
『予行の時パナシュが通訳しただろぉっ、あんたの漢気に惚れたんだ。俺と付き合え!』
とヴィフィータは、健軍大佐に告るが当の健軍大佐は特地語で告白された為全く分からなかった。
「・・・・・」
「くそっ、もどかしいぜ」
そう言ってヴィフィータは、背伸びをして健軍大佐と自身の唇を重ねる。
「捧げぇーーー銃!!」
ピニャ達が門の前まで来ると捧げ銃の号令が掛かり儀仗兵は、三十年式銃剣の付いた三八式歩兵銃を体の中央前に垂直に持ち上げ捧げ銃の構えをし、士官は自身の軍刀で捧げ刀の構えをする。砲兵科による礼砲がなり、そして、軍楽隊による『君が代行進曲』が演奏される。
「どうやらうまくいったみたいだ」
とピニャは、健軍大佐の唇にキスマークが付いてるのを見てヴィフィータが健軍大佐に思いを伝えられたのだと悟った。
その日大日本帝国と帝国の間で講和条約が調印された。
帝国の国歌を描こうと思うんですがどれを参考にしたらいいですかね?
-
『廃墟からの復活』
-
『皇帝陛下万歳』
-
『神よ、皇帝フランツを守り給え』
-
どれでも良い