GATE 大日本帝国 彼の地にて、斯く戦えり   作:人斬り抜刀斎

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敵がその中にいる

日本軍と新政府軍の連合軍は旧帝国軍のマレ城塞攻略に掛かっていた。上空では、健軍大佐の第四戦闘航空団が城内へと攻め込む新政府軍の援護にまわる。

 

「主塔に敵が攻め込んだぞ!」

 

「続け!」

 

城内を駆け回る旧帝国兵を城外からヘリの機関砲で肉塊にされた。

 

「動いたら死んじまう!」

 

「くそっ、ニホンの鉄トンボめ」

 

主塔の城内では新政府軍と旧帝国軍の兵士達が乱戦状態だった。

 

「剣を収めよ!皇帝陛下に刃を向けたままエムロイに召されるのか!」

 

新政府軍側は、旧帝国軍側に降伏を呼び掛けるが、

 

「帝国の敵たるニホンに尻を振る裏切り者め!一歩も退くな!臆病者は兵士ではない!あやつの首を取れ!報奨は思うままぞ!」

 

だが、オプリーチニナは帝国を裏切って日本と講和をした新政府の言葉に聞く耳持たない。

 

 

『城門制圧、一部の隊は市街に前進、天守門塔制圧、城塞司令官降伏しました。マイモール隊が主塔で交戦中!』

 

「抵抗が激しい様だな?政治将校がいるか?狙撃手確認出来るか?」

 

健軍大佐に言われて狙撃兵はヘリから九七式狙撃銃を構えスコープからオプリーチニナを探る。そして、主塔の窓の向こうにオプリーチニナが居るのを確認する。

 

「政治将校確認!」

 

『やれるか?』

 

「やってみます」

 

そして、狙撃兵はオプリーチニナの頭目掛けて引き金を引き、弾丸は見事ヘッドショットだった。オプリーチニナは、頭から鮮血の飛沫を出して絶命した。

 

「兵士諸君!諸君らを縛る犬の鎖はなくなったぞ!まだ戦いを望むか?」

 

「売国奴が・・・」

 

オプリーチニナが死んで説得しても旧帝国兵は、戦う姿勢を崩さなかったが城塞指揮官が肩に手を置き首を横に振ったことで兵士達は武器を下ろす。

 

『ケングン殿マイモールだ。旗を掲げるぞ』

 

「おめでとうございますマイモール閣下、我々の勝利です。アルヌスに伝えます」

 

そして、マレ城塞に新政府軍の旗が掲げられこれによりマレ城塞は陥落した。マレ城塞が陥落して日本軍・新政府軍の両軍は歓喜の声を上げた。

 

 

マレ城塞が陥落した事は、イタリカにも報告された。マレ陥落を聞いていた新政府の議員や軍人達は困惑した。

 

「一日とかからずマレ城塞が陥落!?」

 

「城攻めなんて幾月もかかって当然の事だぞ」

 

彼らの常識からしたら城攻めなんて長期戦になるのが当たり前でたった数時間で陥落なんてあり得ない事だった。だが、その中でピニャだけは冷静だった。

 

「言ったであろう、戦は変わったのだ。妾がこの地で女神の嘲笑を聞いた時・・・・・いや、帝国が『門』を超え、ニホンに攻め入った時から・・・」

 

イタリカ・アルヌスで日本軍の軍事力を目にしたピニャは、非対称戦争を嫌と言うほど経験・理解していた。最初から帝国が大日本帝国に勝てるわけがなかったのだ。

 

 

「マレ城塞陥落!我が軍の勝利!マレ城塞陥落!」

 

と第四戦闘航空団のヘリが物資を載せているイタリカ近郊の草原地帯にも知らされた。

 

「もう陥ちた!?今朝、攻めに行ったところだろ!?」

 

新政府軍側に着いた彼等傭兵団達も貴族や将軍達同様短期間で城塞が陥落した事に驚いていた。

 

「えーと、こいつら中で暴れたりしない?」

 

「ダイジョーブ、ダイジョーブ怪異使いもついてる。飯さえ貰えればコバルトは言うことを聞く」

 

そして、物資を満載したヘリは、離陸して行きマレ城塞の方へと飛んで行った。

 

 

一方、マレ城塞近郊では、健軍大佐がマレ城塞を眺めていると副官の用賀中佐がやって来た。

 

「大佐」

 

「用賀中佐、状況は?」

 

健軍大佐は、用賀中佐に現在の戦況を尋ねる。

 

「市街もその周辺の掃討を進めています。事前の情報より守備兵が少なかった様ですね」

 

「マーレス方面に移動したか?西の防衛に回ったか?第1軍団は今どの辺だ?」

 

「敵部隊を退けて10キロ西をマレに向けて前進中です」

 

「よし、到着まで兵士に昼飯とヘリヘ弾薬燃料の補給だ。補給の完了した機は周辺の警戒、他の連隊はどこまで前進した?」

 

「第一連隊はロクノール峽谷に入りました。抵抗はほぼ無く、間も無くマーレスへの攻撃を開始します。第二連隊は、ハイリンゲ前面に偵察小隊が到着、前進路が一部第一連隊と被るのでやや前進が遅れ気味です。第三連隊は、敵デュマ方面軍の残敵を掃討中、先頭が峠を越えて東側の麓まで前進したそうです」

 

「第三が山脈越え一番乗りか?」

 

「側面援護とは言え、敵兵力が一番手薄な方面でしたし」

 

「後方は大丈夫なんだろうな?多数の敗残兵が出ただろう?」

 

「えー、第六連隊もイタリカからの増援が投降兵の受け入れをしていますが、逃げた敗残兵多数が『行方不明』との報告が上がっています」

 

「なに?どう言う事だ?」

 

と健軍は、行方不明となった旧帝国軍兵の敗残兵の事について聞いた。そして、用賀中佐から話された。

 

「捜索隊が捜したところ森で殺され木に吊るされた状態で発見されました。死体はどれも苦痛の表情を浮かべていた事から生きたままの状態ではらわたを抉られた殺されたのでしょう。ゾルザル軍の焦土作戦が行われた地域ですので・・・おそらくそこに住んでいた住民達から苛烈な報復を受けたのでしょう」

 

旧帝国軍の敗残兵らは、日本軍と新政府軍の連合軍の追っ手から逃れることが出来ても旧帝国軍兵士達には地獄が待っていた。旧帝国軍が行った焦土作戦の犠牲となった住民達からの残党狩りにあい、旧帝国軍兵士達は、串刺しにされたり、首を切り落とされたり、四肢を切り落とされたり、生き埋めにされたりなど残忍な方法で殺されており住民達の旧帝国軍に対する強い恨みが見て取れる。

 

「・・・・成る程、まぁ、あいつらはやり過ぎたんだ。戦争で一番被害を被るのはいつだって国民だ、自業自得とは言え同情する・・・・楽には死ねないだろうな」

 

「第六連隊の兵士達のPTSDの精神ケアが大変になりますね」

 

どんなに訓練を受けた兵士言えども人間だ。残酷な光景を見ればストレスなどから精神に異常をきたす事もある。他にも、戦争神経症と言う疾患、長期間戦場に居続けた為に独特のストレスを受けてしまう事が原因で精神に異常をきたす精神疾患なのだ。またの名を戦闘疲労や戦場ノイローゼとも言う。戦場と言う過酷な環境では、長くても2〜30日程しか正常な精神状態が保てないのだ。発症を防ぐ為に長期間に渡って前線に配置し続けない事とそして、定期的に前線を離れ安全な場所で休暇を与え、精神科医によるカウンセリングを受ける事なのだ。

 

 

その後、健軍大佐のもとにマイモール将軍がやって来て健軍は通訳を交えながら言葉を交わした。

 

「ケングン殿」

 

「マイモール閣下、マレ占領おめでとうございます」

 

「いや、これもケングン殿とニホン軍の助けあってこそ。第1軍団の到着を待ち支城攻めだ」

 

「我々も休養と補給が終了次第、フゥエ城塞攻略準備にかかります。数時間以内に第1軍団も到着するでしょう」

 

その後、イタリカを飛び立った物資を積んだ輸送ヘリがやって来て物資を下ろしていく。その間、日本軍と新政府軍は、戦闘配食などを食べながら休息していた。

 

一方、その頃

 

「ホレホレッ、道を開けよ!マレは陥ちたぞ!急げ急げ!!」

 

と街道上をジープで軍団を追い越すデュラン国王がそう言う。

 

「おい、先の第I軍団の先頭だよな?追い抜いちまったぞ!」

 

「王様が急げと言うんだから仕方ないだろ」

 

「警戒しろ!マレまで友軍はいないぞ」

 

と運転席と助手席の日本兵がそう言うが、王の命令だからと割り切る。そのジープの後ろをアメリカから供与されたスチュードベーカーUS6トラックに乗ったエルベ藩軍の兵士も続く。

 

『Fa223より指揮官機へエルベ藩軍のUS6確認、間も無く到着します』

 

上空を飛ぶヘリからデュラン達がもうすぐ到着すると報告が健軍大佐の耳に入る。

 

「第I軍団を追い抜いて来たのか!?」

 

「海軍と再調整が必要ですね」

 

そう言って軍用レーションを食べている健軍大佐と用賀中佐のもとにデュランがやって来た。

 

「待たせたなケングン殿!いざ参ろうか!!」

 

「降りて整列ーっ」

 

の号令と共にUS6からエルベ藩軍の兵士達が続々と降りて来て隊列を組む。

 

「儂が乗る『天馬』はどれじゃ?」

 

「では、マイモール閣下。此処はお任せします」

 

「うむ、承知した」

 

そう言って健軍は、この場をマイモールに任せてデュラン達と共にヘリに乗り込み次の攻略地点フゥエ城塞へと向かって飛んで行った。

 

デュマ山脈アッピア街道上フゥエ城塞を数機の零戦とFa223からR4Mが放たれ城塞から爆発と黒煙が立ち上る。

 

「ガハハハ、爽快だのぉっ」

 

デュランは、その光景を見て高笑いをする。旧帝国軍側もバリスタで反撃して来る。

 

『バリスタに注意、上昇しろ!銃眼からも撃ってくるぞ!』

 

しかし、零戦とヘリに当たる訳もなく交わされていく。

 

「おっほ」

 

「・・・・へ、陛下。こ、怖くはないのですか?」

 

「なぁにこれしき、翼竜よりましだわい。小舟で河下りしてる様なもんだ!ホレ、若いの降りるぞ!用意せい!」

 

「突入」

 

そして、ヘリが城塞のバリスタを排除するとデュラン達エルベ藩軍を乗せたヘリはゆっくりと降下してデュラン達を下ろしていく。そして、新政府軍は、城内へとなだれ込んで行く。

 

「HRPは第二陣搭載に急ぎマレに戻れ!」

 

「大佐!デュラン王が降りてます!」

 

「何!?」

 

健軍大佐は、下の方を見るとそこには兵士達に指示を出しながら城塞内に突入しようとしているデュランの姿が目に入った。健軍は、小さく溜息を吐きながら呆れた。

 

「困ったお方だ。各機狙撃兵に注意、支援分隊降下」

 

その後も、健軍の第四は城塞の外にいる敵兵たちに対して機銃掃射を浴びせて殲滅して行く。一方、城内に入って行った新政府軍は、

 

「ぐっ」

 

「あぐっ」

 

「がっ」

 

通路を通っていると暗闇から矢が飛んで来た。追い込まれた旧帝国軍兵士達は、城塞の武器庫の中に立て篭って籠城していた。

 

「この先の部屋に敵が立て篭って通路に連弩を向けてやがる」

 

「降伏しろ!逃げ場はないぞ!」

 

と立て篭もる兵士達を説得するが

 

「うるせぇ!誰がエルベの田舎者なんかに!」

 

「帝国軍人の意地を見せてやる!来るなら来やがれ!」

 

旧帝国兵らは、降伏を受け入れようとはしない。

 

「あああっ俺の腕っ」

 

「バリスタまで撃って来やがった」

 

その間にも身動きが取れないエルベ藩軍側には、死傷者が増え続ける。

 

場外で、現在の戦況を聞いているデュランである。

 

「東兵舎制圧!敵兵の一部が城外に逃亡しています」

 

「第二陣到着、城下町の掃討に入ります」

 

「報告!武器庫に敵兵多数が立て篭もり抵抗しています」

 

と最後の武器庫に立て篭もって抵抗を続けている敵兵の存在を聞いて

 

「厄介だな、頼めるか?」

 

「了解しました」

 

とデュランから日本軍に直接武器庫へ向かって苦戦しているエルベ藩軍に応援に向かう様命じられる。

 

 

 

「こっちだ」

 

そして、武器庫前へと応援にやって来た日本兵は、

 

『最後の通告だ!お前達は、完全に包囲されている!!もう逃げ場はない、大人しく降伏しろ!そうすれば命の安全は保証するぞ!!』

 

と突入する前に最後の降伏勧告をしてみるも、

 

「黙れ!くそったれ!」

 

「我々は、最後の一兵まで戦うぞ!!」

 

「お前らこそ降伏しろ!ゾルザル殿下の軍がすぐやってくるぞ!」

 

しかし、武器庫に篭る旧帝国軍兵士達は降伏には応じようとはしなかった。日本軍は、強行に出ることにした。まず、三八式歩兵銃とMP40短機関銃でバリスタの銃眼に向けて発砲し、その隙に一〇〇式火焔発射器で扉と銃眼に炎を浴びせると同時に銃眼に九九式手榴弾を投げ込んでバリスタを無力化した。

 

「火炎魔法だ!」

 

その後、破城槌を持った新政府軍兵士が扉を突き破ろうとする。

 

「破城槌前へ!!」

 

そして、扉が破られ日本軍と新政府軍の連合軍兵士達が中へと雪崩れ込んで来る。

 

「剣を捨てよ!」

 

追い詰められた旧帝国軍兵士達は、武器を捨てて投降した。こうして、マレ城塞に続いてフゥエ城塞も陥落した。

 

その夜、陥落したフゥエ城塞で夜空を眺めるデュラン…

 

「一日に城を二つとはな・・・・・もっと若い時分にこう言う戦をしたかったわい」

 

とデュランがそう言った。

帝国の国歌を描こうと思うんですがどれを参考にしたらいいですかね?

  • 『廃墟からの復活』
  • 『皇帝陛下万歳』
  • 『神よ、皇帝フランツを守り給え』
  • どれでも良い

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