GATE 大日本帝国 彼の地にて、斯く戦えり   作:人斬り抜刀斎

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戦況報告

1946年ゾルザル一派をフォルマート大陸から一掃する決意の今村総司令官は、日本軍を率いて帝都解放作戦『スキピオ作戦』を実行する。彼等の目的は、帝都ウラ・ビアンカを占領する事、帝都が陥落すればその後の戦局を左右するからだ。日本軍はまるで蒸気ローラーの様に進撃、デュマ山脈の戦線は数十kmにも及んだ。15000人以上の兵士・300両の戦車・1000門の大砲・100機以上の戦闘機を投入し攻めた。誰も彼等を止められない、日本兵達は屈辱の歴史を忘れておらず、1945年の7月の銀座の忌まわしい惨劇を、日本軍は次々と旧帝国軍を撃破して行った。ゾルザルは、将軍達に防御に徹する様命じ、安全が確保される場所に塹壕を掘って敵を食い止め、長期戦に持ち込もうとしたのだ。日本軍は行く先々で旧帝国軍を包囲し、荒れた果実が落ちるのをじっと待つ様に陥落を待った。そして、フゥエ、マーレス、ベッサと言った地域を次々と占領して行った。ジャーナリストの従軍記者大谷壮一はこう記した、『帝都への道のりは報復の道のりだ。死の大釜は煮えたぎっている、情け容赦無い報復を与える為、武器を捨てず東へ逃げなかった者を飲み込むのだ』。

 

アルヌスの特地派遣軍総司令部では、今村均大将や参謀達が地図を見ながら戦況を報告していた。

 

「第一連隊より入電『カルタゴへの道は開けた』敵防衛線を突破、第二連隊と合流し、帝都を目指す」

 

「思ったより抵抗はあったが順調だな」

 

「しかし、補給路が伸びすぎた。各所で路面損壊による渋滞も発生している」

 

「馬車までを想定した街道だからなぁ」

 

「更には、焦土作戦と来た」

 

街道などの路面は馬車などが通れる様になっている為、車などが通れる事を想定して舗装されていない。そこで、今村は銀座事変で鹵獲した大量の帝国軍の馬を使い弾薬や装備を運搬させる事にした。自動車での運搬が困難だった未舗装の道も馬なら走破する事ができ、補給問題は一旦は解決した。更に、日本軍の進撃を抑える為、旧帝国軍は焦土作戦を展開、村やインフラを破壊した。日本軍に補給されるのを防ぐ為に、井戸に毒を入れ、食料や物資を略奪したり燃やしたりした。しかし、橋が破壊されようと無数の罠が仕掛けられようとも、日本軍は歩みを止めなかった。あまりにも戦線の拡大や進軍のスピードが早かった為、燃料不足に陥った。スピードが落ちない様、兵士は戦車の燃料にウォッカやエチルアルコールを混ぜる事もあった。ある旧帝国軍兵が妻へと送て書いた手紙に『ニホン軍がこのまま突き進めばあっという間に玄関先にやって来るだろう』旧帝国軍から解放された村々では、火が放たれており、住民達は全てを失っていた。自分達の持ち物や家、時に命まで奪われる事があった。

 

「フル回転で九七式輸送機と回転翼機で空中補給もしているが、部隊の規模を考えると全然数が足りんよ」

 

「米軍みたいにはいかんね」

 

「その米軍に燃料を融通してもらわなきゃ出来なかった作戦だけどな」

 

補給が間に合わず空中輸送で燃料や弾薬などを輸送しているが、それでも限界があり部隊全体に行き渡らせるには数が足りなかった。

 

「大将」

 

「何かな今津君」

 

「銀座駐屯地と特高から気になる動きがあると連絡が・・・・」

 

と今津大佐が真剣な表情で今村に何やら告げる。

 

デュマ山脈内の森の上空で九七式司令部偵察機が偵察飛行をしており、人や荷馬車などが列をなして進んでいた。しかし、それは難民を装ったゾルザル軍の本隊だった。

 

「テルタにもまた怪鳥が飛び回ってる・・・・」

 

「おい御者、此処はどこなんだ!?」

 

(偵察機か・・・・爆撃音も聞こえ出したし、前線は近いな)

 

と古田は内心そう呟く。

 

九七式司令部偵察機が持って帰ってきた航空写真は、すぐに司令部へと届けられる。

 

「夜明け前のレッキ方面偵察結果です。ソレート川荷揚げ場に動きは確認出来ません。レッキを脱出したと思われる難民の車列が山脈内を西進しているだけです」

 

「よし、本部と第四戦闘航空団とイタリカに送ってくれ」

 

そして、偵察機の情報はイタリカへ齎される。広間で、羊皮紙の地図を広げて柳田と新政府軍総大将ピニャが戦況を報告と確認をしていた。

 

「マイモール将軍はマレの支城を攻略中、第一軍団はフゥエ、第二軍団主力はマレに前進中、フゥエで待機中の第四戦闘航空団とエルベ藩軍は、補給が完了次第レッキへ前進を開始します」

 

「ゾルザル兄の軍はまだ見つからぬか?」

 

「正統政府軍と帝國陸海軍と交戦した中には確認されておりません」

 

「レッキ方面の偵察結果にも報告はありません」

 

「ふうむ、マーレスに向かっているはずであろう?そこにもおらぬというか。ドッツエル第三軍団から斥候をだせ、我が軍とニホン軍の進撃路を外れた方面にな」

 

「ハッ、かしこまりました。しかし、殿下。イタリカに残るのは第二軍団、亜人部族部隊のみになってしまいましたな」

 

見渡せば周りにいるのは新政府の呼び掛けに応じて集って来た帝国中にいるダークエルフをはじめ、エルフ、ドワーワ、ワーウルフなどの多種族が居た。

 

「大陸中より集いし五十四種族、帝国正統政府のために帝国諸侯より先に馳せ参じたのですが」

 

「・・・・真に困っている時に助けてくれた者こそ、皇帝陛下の守護を任せられる。貴公にこそ、決戦の場が与えられるその時まで英気を養っておくのだ」

 

とピニャは、そう言う。彼等が後に起こる、ゾルザルの精鋭軍との決戦で大きな活躍をする事をこの時は誰も予想していなかった。

 

 

一方、アルヌス近郊では、ワーウルフ達が日本軍の検問所に捕まり身分証の提示を指示されている。

 

「止まれ!全員馬から降りて身分証を出せ!」

 

「ミブンショー?」

 

「なんだ、なんだ」

 

「組合入る時貰った札だよ」

 

「あー」

 

「これか?」

 

とワーウルフ達が組合から配布された身分証を提示する。

 

「よーお、ウォルフ久しぶり」

 

「よっ、サトー久しぶり」

 

「すまんな、こいつ最近配属されて来た奴なんだ」

 

「ぴりぴりしてんなぁ」

 

「そりゃ、派遣軍総出の作戦が進行中だから、街の方で飯でも食える空気じゃないよ」

 

「帝国と講和したんだろ?ゾルザルやっつけたら球遊びして街で呑もうぜ」

 

「ああ、またな」

 

その後、検問所を後にしたウォルフ達が久しぶりにアルヌスの街へと帰ってきて見れば街は以前の様な活気は無く、住民達は俯いた顔をしていた。

 

「ひと月ぶりに帰ってみれば、なんだよ、しけたツラ並べやがって」

 

「こんなに閑散としてたか?」

 

「戦やってんだから仕方ないと思うが、何か変だ」

 

「取り敢えず俺は、ひと月ぶりのビールカケツケ三杯行くぜ!」

 

「あ、おれも」

 

ウォルフ達は、気を取り直し久しぶりにアルヌス帰って来たのでレストランでビールでも飲もうと提案して飲みに行く。

 

その頃ガストンのレストランでは、男達がいやらしい目つきである一点の方向に集中していた。そこには、顔を赤くしたメイアがカウンター席で突っ伏していた。

 

「コラッ、メイア!昼間から酔い潰れやがって、PXの仕事はどうした?」

 

「ゆーきゅーきゅーかを食べて消化中、お休みにゃぁ」

 

と仕事をしないで昼間から酒を飲んで酔い潰れているメイアを、レストランの料理人ガストンが叱責するとメイアは有給休暇で休みだと言う。

 

「休みならどっか遊びに行くとか、友達とお茶するとか・・・・ないのか?」

 

「アルヌスで遊びに行くってどこにゃ?友達と顔合わせたら面白くない話になっちゃうにゃ」

 

「・・・・ああ『門』の事か。いっそ男遊びってのはどうだ?」

 

と、ガストンに言われてレストランの中と周りの男性客を指差したので、メイアは興味なさげだった。

 

「あの人今戦場にゃ、そこまで私器用じゃないにゃ」

 

「あの人?もしかしてニホン軍か?そいつは、困ったな・・・・・いっそ告ったらどうだ?こっちに残ってほしいとか、ニホンに付いて行くとか・・・・」

 

「そう言う訳には、いかないから寂しいんだにゃ・・・・ここは相変わらず忙しそうでいいにゃあ、仕事してたら変な事考えなくていいし」

 

「といっても今、ニホン軍は滅多に来ないから夜は案外暇だぞ。ま、こっちの客は普通に来るが」

 

「新人も入ったって聞いたにゃ、しかも竜人。こっちの店員なら、アルヌスに居られるにゃ?」

 

とメイアは、ウェイトレスとして働いているジゼルを指差すが、雇っていると言うより、散々レストランで飲み食いして金がなくレレイに代金を肩代わりして貰う形で借金してその返済としてここで働いているようなもの。

 

「あー、あれは違うんだ」

 

「?」

 

「借金のカタ・・・メイアお前、アルヌスからそんなに出たくないなら・・・・俺の話にいっちょ乗る気はないか?」

 

とガストンは、先程の優しそうな表情とは打って変わって険しそうな顔でメイアにある提案を持ち掛け様とする。

 

 

ワーウルフのテーブル席に、ジゼルがビールジョッキ二つを運んで来た。

 

「おまちどうサマ」

 

ワーウルフは、ぽかっんとした顔でジゼルを、見ていた。それは、神がこんなレストランで働いていたら不思議に思うだろう。

 

「出発前にすれ違った神官だよな・・・・?後で気付いたけど、ハーディの神官で竜人って・・・・」

 

「ハハッ、まさかんなわけ・・・・」

 

と神官がこんな所で働くわけが無いと言っていると、ワーウルフの会話に獣人のウェイトレスが

 

「本物だから・・・・本物だから、あれ」

 

「マジ?」

 

「マジ」

 

本当に神様に下働きさせている事に驚く。普通に考えたら不敬罪になってもおかしく無い。

 

「本物ならあれジゼル猊下って事だろ!?神様に下働きなんかさせて良いのかよ!?」

 

「亜神であっても、借金のカタからは逃げられない。あんた達も気をつけなさい」

 

神様であっても借金からは逃れられない、神も形無しと言わんばかりにワーウルフ達に忠告する。

 

「身につまされるな」

 

「お布施置いとこう・・・・」

 

そう言って、ワーウルフ達はビールを飲み終えて代金を置いて出て行った。

 

「ありがとうございました」

 

そして、ジゼルがワーウルフ達が座っていたテーブル席を片付け様と空のジョッキを持ち上げるとジョッキの下にビールの代金とは、別の硬貨が置いてあった。

 

「ありがてぇ・・・・」

 

と、ジゼルは感謝しながら硬貨を懐にしまう。

 

「さぁて、やったるか・・・・掃除、片付け、掃除、片付け」

 

片っ端からテーブル拭きや床掃除をこなして行く。

 

「くそっ、食べ散らかしやがって、こんなの神官見習いの時以来だぜ・・・・あれから三百年くらいか?」

 

と愚痴を言いながら、ジゼルは修道院見習い時代を思い返していた。

 

「修道院でのつらい日々、長命種ゆえの長い長い下っ端神官生活。後から生まれた者に追い抜かれ、何十年も顎で使われて・・・・あ、あれ?目から水が溢れてきやがる。なんでだろ、なんでだろ、うっ、うっ・・・・・お母ちゃん!」

 

ジゼルは、思い出を掘り返せば掘り返す程いつの間にか目から大粒の涙を流して思わず母を思い出して叫んでいた。

 

「(ハーディの天啓が降ったのは母の面影も忘れかけた頃、何故自分が選ばれたのか、運?主神に愛された?長い長い下積みを見ていたから?冗談ではない、亜神となったのがバレたら、苦しくも慣れ親しんだ日々が激変するのは目に見えている・・・・・そうだ!十年以上隠し続けたエムロイの教団の先達を真似れば・・・・案の定周りの態度は激変『ジゼルは儂が育てた!』『今までの事は水に流して頂き・・・その、あのごめんなさい』『つらく当たっていたのは全て猊下の大成のため』だの、媚び諂って手のひら返し)それが今じゃどうだい、ここの連中ときたら亜神も容赦なくタダ働きさせやがる。いい度胸してるぜ、よしっ、出来た」

 

と片付けを終えたジゼルが腕を伸ばしていると、ロゥリィが店にやって来た。

 

「ジゼルの奴ぅ、ちゃんと働いているぅ?」

 

「こりゃ、聖下いらしゃいませ」

 

「今日は乳茶ねぇ」

 

「ご案内しますぜ」

 

ジゼルがロゥリィを席へと案内し、注文していた乳茶を運んで来た。

 

「お待たせしました」

 

「ありがとぉ・・・・・・座ったらぁ?」

 

「お姉サマ、眷属から報せが来ました。アポクリフがまた拡がったと、どうにかなるのかよ?このままじゃやばいぜ」

 

とジゼルがクナップヌイのアポクリフが拡大しているとロゥリィに忠告するが、ロゥリィは優雅に乳茶を飲む。

帝国の国歌を描こうと思うんですがどれを参考にしたらいいですかね?

  • 『廃墟からの復活』
  • 『皇帝陛下万歳』
  • 『神よ、皇帝フランツを守り給え』
  • どれでも良い

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