GATE 大日本帝国 彼の地にて、斯く戦えり   作:人斬り抜刀斎

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文明開化

1947年10月23日、門が再開通し大日本帝国との正式な国交を樹立した帝国。その為の交渉中に発生したゾルザル一派による内戦は、圧倒的な技術力にモノを言わせた一方的な結果となった。帝国はその力に恐怖するも、上手く取り込めればかつて無い発展を謳歌出来ると共に、莫大な利益を享受出来る。そうした判断から、多くの貴族、商人、果ては王族までもが胎動する事となった。

 

まことに未開の国が開化期を迎えようとしている。産業と言えば農業しかなく、人財と言えば長年の間の特権階級であった、貴族しかなかった。この文明開化によってファマルト人は初めて近代的な『国家』と言うものを持った。誰もが『国民』になった。不慣れながら『国民』になったファマルト人達は、帝国史上の最初の体験者としてその新鮮さに昂揚した。今から思えば実に滑稽な事に、麦と絹の他に主要産業のないこの国家の連中が日本と言った先進国と同じ陸軍を持とうとした。海軍も同様である。財政の成り立つはずがない。が、ともかくも近代国家を作り上げようというのは、もともと文明開化の大目的であったし、開化後の新国民の少年の様な希望であった。

 

そしてファマルト大陸の文明開化が始まった。

 

インフラが行き届いていない場所にも浸透していき風力発電所や火力発電所が建設され都市インフラも、日本によって電気で明るく光る街灯、ガス管が整備され、上下水道の強化整備や浄水施設、運河、ダムの建設され、ファマルト大陸はとても快適な生活を満喫していた。鉄道の拡張に加え各産業の強化などが進められ、インフラ整備が開始され今まで迂回しなければならなかった大河に橋がかかり物資を運ぶのに何日もかかっていたものが数時間で運べるようになり国が大きく発展した。日本からの食糧の買い付け量はとてつもない規模であったが広大な穀倉地帯を有するイタリカは受注に応じてなんとか応えることができた。エルベ藩王国は豊かな土壌ではないが大日本帝国の調査によれば地下資源の宝庫らしく鉱物や原油といった大量の資源を日本に輸出することを決定し日本の技術供与を受けて技術供与を受けて採掘を開始したという。

大都市間を結ぶ道は石畳が進化したようなつなぎ目のない道路が敷かれ鉄道と呼ばれる大規模運輸機能、さらには大規模な港湾施設が築かれていた。港湾都市であるが故に船舶の往来が始まったのだが、現代水準の流通を担うにはあまりにもインフラが貧弱過ぎるのである。

クレート箱を利用した迅速な物資のやり取りに対し、人力の積み降ろししか方法の無い公国は、それだけでも既存の帆船でさえ数日を要する。それ以前に、数十万トンに達する巨大船を受け入れられる設備など存在しない。その結果、沖に待機した状態で積み荷を開封し、小型船へ載せ替えての揚陸を行う羽目となっている。街からも手漕ぎの小舟を往復させているものの、これだけで数日どころか二週間を要している。そして国内外の流通が活発になり今までとは比較にならない発展を遂げつつあった。

 

そんなアルヌスの街中で若い男が酒場へと入って来て、そして、酒場の店主がいるカウンター席へとやって来た。

 

「店主、ビールを一つと適当につまみをくれ」

 

「はいよ!」

 

男がカウンター店主に酒を注文し、店主は男の前にビールジャッキとつまみを置く。

 

「へい、お待ち!」

 

「サンキューな。しかし、最近この街も沸いているな」

 

「あぁ。どこもかしこもニホンとの商売で繁盛してるよ」

 

「商人魂的にはその恩恵をうちにも分けてほしいものです」

 

「そういえば旦那。ニホンについてどれくらい知っているかい?」

 

「いや、何も……」

 

「聞きたいんだけど、旦那の国にあんなのが走っているかい?」

 

店主が指したのは、日本が帝国に贈呈した自動車の一つだった。帝国における主たる交通手段は馬車である。それが、日本との通商条約によって多くのトラックがファマルト大陸内で走るようになった。また、日本から有償無償で提供される自動車も少しずつだが目にする機会が増えている。

 

「……いや、俺の国では見た事ねえな?」

 

「あの形ダットサンは大体貴族のお偉いさんか、ニホンとの商売で利益を得た商人だ。ニホン人が言うには、ジドウシャっていうらしいぜ」

 

「そのダットサンがどうしたんだ?」

 

「あんな形だが、まず馬並みに足が速い。それでいて馬より頑丈ときている。ちなみに、帝国でよく走っているのは馬車より何倍も大きいのに軍馬騎馬用並みに早くて荷馬車の何倍もモノを運べるんだ」

 

「それは、すごい事を聞いたな!?」

 

「まぁ。帝国はジドウシャを物凄い荷馬車程度にしか考えてないだろうけど、軍隊がそのすごさに気付くのも時間の問題だろうよ」

 

「確かにそうだな、しかし今更ジドウシャを導入しても戦力の引き上げようとはな」

 

道ゆく車はトヨタAA、AB、AC車などが主流となり鉄道は貨物だけではなく日本で活躍していたC10形、C11型、C12形、C56形、D51形蒸気機関車などがファマルト国営鉄道に譲渡され運用されている。

 

そんなアルヌスの発展の視察に訪れていたピニャとハミルトンはアルヌスの県庁舎の建物のバルコニーから復興したアルヌスの街を眺める。ダーの襲撃により街は荒廃したにもかかわらず再び復興をなし、前よりも発展した街へと生まれ変わっている。

 

「すごいものだな日本は。やはり帝国を超えている。1 年前とは、比べられないほどの発展具合、もしかしたら我が国の生活水準も日本に追いつけるかも知れぬぞ。しかし、最近建設した鉄道は素晴らしいな!資料映像を見た時も驚いた物だったが、やはり実物を見ると圧倒されるな!」

 

ピニャは興奮が冷めやらぬ語気で副官であるハミルトンに話しかける。

 

「そうですね、殿下。農作物の輸出も順調です。これまでの生活を超える生活水準を手に入れるなど私たちの常識からすれば考えられないことですが…報告書を何度も読み返しても信じられませんよ。もしこれが本当なら国の豊かさは本当にこれまでの帝国を凌駕すると私も思います」

 

「ハハハ、妾も年甲斐もなくワクワクしてしまった。少女の頃の心を取り戻したかのような気分だ。妾が摂政の時に帝国が劇的に発展するなんてこれ以上にやりがいのある仕事が他にあるだろうか」

 

彼女らが窓の外を見ると日本人が見ればいすゞTX10型トラックが道路を走り、線路を国鉄C56形蒸気機関車が荷物を積んだ牽引式貨物を引いて走っていく。

 

「しかし日本が友好的でよかったです。…日本がもし覇を唱えられたらと思うとゾッとします」

 

「そうだな…しかし武器を輸出してくれないのは些か残念だな。彼らの武器があれば少しは軍閥の脅威も恐怖ではなくなるのだがな…」

 

 

その後、視察を終え県庁舎をピニャとハミルトンは帝都に帰るべくアルヌスの駅へと向かう。一応、お忍びできているので身分がバレないように二人とも変装をしている。帽子を被って眼鏡を掛けるなどして可能な限り顔を見せないようにする。

 

「この時期はまだ少し蒸し暑いな」

 

などと呟きながらピニャとハミルトンは駅の切符売り場で帝都行きの二等車(普通席)の切符を購入する。一等車(グリーン車)の切符を買っても良かったが一等車の切符は普通の庶民では中々手が届かないだ、あまり目立ちたくないので庶民でもギリギリ手の届く二等車の切符を購入した。

ここでは、日本の通貨と帝国の通貨両方が使える。一等車なら金貨3枚、二等車なら銀貨5枚、三等車なら銅貨6枚で購入出来る。そしてホームに入り、列車を待つ。ホームには日本の人間も居れば、帝国の住人達の他商人と思われる人たちもちらほらと居る。

しばらくして除煙板を外している『C56形蒸気機関車』に牽引された客車4輌と貨物2輌の混合列車がホームに入ってきて、ゆっくりと停車する。

貨物車輌は殆ど商人たちが自身の荷物を運ばせるために、決して安くはないがレンタル料金を払って利用している。ピニャは二等車の客車に乗り込んで適当な席に座り、窓から外を眺めるように視線をやる。

 

「帝都まで4時間か、馬を走らせても片道数日は掛かったがこのキシャと言うのは大違いだ。それにしても結構乗客が乗ってるな」

 

「それはそうですよ、それまで馬車で何日も掛かっていたイタリカや帝都へ数時間で行けるんですから。それに二等車はまだマシな方です。三等車はすし詰め状態ですよ」

 

などと、話していると

 

「ちょっとすんません向かい側の席、よろしいでしょうか?」

 

と、声を掛けられてその方に視線をやると、無精髭を生やしている肥えた男性が立っていた。

 

「あぁ、構わん」

 

「えぇ。よろしいですよ」

 

「では、お言葉に甘えて」

 

ピニャとハミルトン二人の許可を得て男性は一礼してから向かいの席に座る。少しして駅の出発ベルが鳴り、駅員の発車の合図の笛を鳴らしC56形の汽笛が鳴り響いて混合列車はゆっくりと駅から出発する。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「いやぁ……この辺りはだいぶ発展しましたな」

 

しばらくして向かい側の席に座った男性がピニャとハミルトンに話し掛けて、それから世間話に移っていた。この男はどうやら商人らしく、今日も商売品を運んでいるとのこと。

 

「ところで、お嬢さんたち貴族の方でしょうか?」

 

「えぇ。軍の関係者で、今日は休暇を取ってアルヌスに遊びに来て列車で帝都に帰る所なんです」

 

「なるほど。人間時には休むことが大事ですからね」

 

男性は人懐っこい表情を浮かべる。

 

「しかし、ニホンには感謝ですよ。この列車でしたか?これのお陰で大助かりです」

 

「そうなのか?」

 

「えぇ。荷物を収納する貨車ですが、それを借りるお金がとにかく安いんですよ」

 

「ほう。いつもは違うのか?」

 

「えぇ、馬車ですとかなりの額を取られる上に遅いのですよ。それに比べればこの列車は行動範囲は限られますが、速いし、利用額もそれほど高くはない」

 

「我々商人にとっては、大助かりです」

 

「なるほど」

 

確かに馬車と比べるなら列車は何十倍も速いだろうな。貨車のレンタル料金も最大で4輌まで借りられ、金額も車輌数に変わらず金貨3枚で借りる事ができる。決して安い出費ではないが、商人にとって安く早く利用できる列車はかなり大助かりになるのだろう。

その後は数時間掛けて列車は、ウラ・ビアンカまで到着するとピニャとハミルトンは列車を降りて行く。

 

 

 

大日本帝国 東京

 

名実共に世界最大のこの都市に、黒塗りの高級車が複数並んで走っている。それ等に乗っているのは、ファマルト大陸有数の巨大商会を統率する立場にある者ばかりである。彼等は、ある物を確かめる為に大日本帝国政府に招待された。

事の起こりは記念すべき最初の貿易を開始しようとした時、金銭に対する認識の差が生み出したトラブルが原因である。帝国側は金銀銅貨を、日本側は札束を出した。

 

「これは一体?」

 

「見事な絵画だ!」

 

「形状は奇妙だが、是非とも屋敷で飾りたい!」

 

ファマルト側の商人は口々に称賛し、日本側は唖然とした。慌ててこれが金である事を説明すると、今度はファマルト側が唖然とした。

 

「紙製のカネだと・・・?」

 

「いくら何でもこれはあまりに・・・」

 

「紙を金にするなど正気では無い!」

 

「これは新手の詐欺か?」

 

「芸術的価値は認めるが、金とは認められない!」

 

これこそが、古来より貨幣に希少金属が使われ続けた理由である。何故、金と商品の遣り取りが成立するか?それは、’人’が金にその商品と同等の価値を認めているからである。

その価値を担保する要素の一つが、材料に使われている各種希少金属である。その後、紙幣が普及してからもこの本質は長らく生き続けた。国家の保有する金の数量に応じて紙幣を発行する金本位制である。

それは、’人’が紙幣そのものに価値を見出だせず、その価値の担保として金を見ていたからである。地球世界では、紙幣の普及が本格化した当時、金本位制を採用していた。国家の金の保有量に応じて発行する紙幣は、言わば金との交換券である。

こうして、金を担保にただの紙切れに金としての価値と機能を持たせ、世界に定着させる事に成功した。

現在でも、金は紙幣の価値の源の一部となっている。しかし、現在は管理通貨制度が主となっている。金の保有量に制限されていた紙幣の発行量を自由に調整可能となった制度である。

それは、金の代わりに担保可能な価値が見出だされたからである。一概には言えないが、一つ確かな存在を挙げるとすれば、それは国家の信用が紙幣の価値を担保すると’人’は認識した。そう、金を含む全ての価値を決めているのは’人’なのである。

そして、’人’の価値観は時代と共に変化する。ファマルトの’人’の価値観では、紙幣に金としての価値を見出だせない。大日本帝国と言う後ろ楯は、価値の担保足り得ない。そこで、彼等の価値観で担保足り得る物を見せる必要が生じた。

東京の町並みに終始圧倒されていた彼等は、目的地へと到着した。そこは、政府系銀行の一つである、日本銀行通称"日銀"だ。エントランスの時点で既知の建造物を圧倒せしめる迫力があり、無意識の内に口が開く。

 

「此方です」

 

案内人の声で我に返り、先へ進む。そして、関係者の中でも限られた者しか立ち入れないエレベーターへ乗せられた。動き出すと若干の浮遊感を腹に感じ、誰もが慌てる。

 

「こ、これは一体!?」

 

「これはエレベーターと言いまして、簡単に説明しますと部屋を丸ごと上下へ動かして移動する乗り物です。」

 

最早、言葉も出ない。暫くエレベーターを観察していると、唐突に停止して扉が開いた。

 

「此方へどうぞ」

 

そこは、これまでと異なり狭く殺風景で、尚且つ必要以上に頑丈であった。異質な雰囲気を肌で感じていると、極めて重厚で巨大な鋼鉄製に見える扉が目の前に立ち塞がった。

 

「開けてくれ」

 

案内人は、待機していた職員に指示を出す。

 

 

 ガコォーーン

 

 

暫く待つと、扉は重厚な音を立てて重々しく開いた。

 

「どうぞ」

 

案内人に従って入ると、材質不明な表面がやたらとデコボコした箱が二つ置かれているのが判った。

 

「お待ちを」

 

薄明るく狭苦しい空間で、案内人は鍵を開ける。蓋を開くと一回り小さな箱が見え、また開け始める。尋常では無い厳重さに恐怖すら覚えていると、また鍵が開いた。蓋を開けると、梱包されている何かが目に入った。案内人が一つ取り出し、見せ付ける。

 

「持ってみますか?」

 

最早、何の音も耳に入らない。それは、美しい光沢を放つ金の延べ棒であった。思わず箱へ目を向ける。

 

「・・・・・・これは、全て金なので?」

 

「その通りです。」

 

「どれ程の量なので?」

 

「此処にあるのは、全部で2トンになります。」

 

この数字だけでも放心しそうだが、重要な言葉を聞き逃す事は無かった。

此処にあるのは、つまり、他にもある。口先だけならばいくらでも言えるが、大日本帝国の実態はこれまでに散々見せ付けられて来た。

 

「満足戴けましたか?」

 

ファマルトの’人’は、大日本帝国に価値を見出だした。

帝国の国歌を描こうと思うんですがどれを参考にしたらいいですかね?

  • 『廃墟からの復活』
  • 『皇帝陛下万歳』
  • 『神よ、皇帝フランツを守り給え』
  • どれでも良い
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