GATE 大日本帝国 彼の地にて、斯く戦えり   作:人斬り抜刀斎

21 / 150
第2章炎龍編
外交


帝国 覇権国家たる帝国に国名はない。列国中の王として君臨する唯一無二の存在 その帝国が「門」の向こうの大日本帝国と開戦して五ヶ月になろうとしていたーアルヌスで壊滅的な損害を受けた帝国軍は未だ再編の途上にあった。 帝都でも緊急の募兵が行われていたが征服戦争が常態化していた帝都では日常のこととして受け止められていた。

 

一方 講和への決意を固めた皇女ピニャ・コ・ラーダは大日本帝国から帰還した翌朝早々にアルヌスを出発。彼女には外務省から派遣された菅原浩治と護衛の日本兵が同行。菅原はピニャとともに帝都において元老院議員との水面下の交渉を開始した。

 

此処は帝都皇宮サデラの丘にピニャ・コ・ラーダの館では

 

(ああ・・糸杉の香りが心地よい・・・)

 

「ピニャ殿下。寝室でお休みにならなかったのですか?帝都に戻られてからこうもご多忙にされてはお体にさわりますよ」

 

「講和交渉に向けての根まわしや後見役になったフォルマル家の財務報告・・・体がいくつあっても足りんわ」

 

「朝食の前に沐浴をなさっては?」

 

「すまん そうする」

 

ピニャは沐浴に浸かりながら本日の予定を確認する。

 

「本日の予定はキケロ卿との午餐、デュシー伯爵家で晩餐パーティー、その間にシャンディーとの面会を入れています。白薔薇騎士団隊長の後見人事について意見があるそうです」

 

「んん?シャンディーはパナシュと姉妹の契りを交わした仲だろ?後任隊長は彼女で決まったんじゃないのか?」

 

「パナシュと一緒にアルヌスに行きたいと申しております・・」

 

「それは後にしよう、今はスガワラ殿を午餐に連れて行かなければならん」

 

「捕虜の返還希望名簿の草案にはお目を通されましたか?」

 

とハミルトンに言われ

 

「これか・・あっと 第一陣は十四名?十五名じゃなかったか?」

 

「残りの一名はキケロ卿用です。卿の甥御が捕虜名簿に記載されていました。スガワラ殿との引き合わせがうまく行ければ名簿に名を載せます、本当に大丈夫ですか?」

 

「大丈夫じゃないって言ったら代わってくれやるか?」

 

「無理ですね」

 

と即答するもピニャとハミルトンは顔を合わせあ笑った。

 

その頃菅原は、

 

「遅いな十時になるぞ・・」

 

と腕時計を見ながら呟く。

 

「おはようスガワラ殿。相変わらず早いな」

 

「おはようございます。ピニャ殿下。今日もお美しい。(あんたが遅いんだよ)」

 

と菅原は、その言葉を呑み込み。職業的な笑みを浮かべながらピニャの美しさを賞賛する言葉を添える。

 

「キケロ卿邸で午餐、その次はデュシー家で晩餐・・・胃袋が全く足りない・・」

 

「それでしたら、我が国にいい胃薬があるので取り寄せましょうか?」

 

「本当か?なら是非頼む」

 

会話が弾みながらも二人は朝食を食べ終えキケロ卿邸で午餐に出席する。キケロ卿邸は明治時代に建てられた鹿鳴館のようであった。ベランダには大きなテーブルが置かれ、その両サイドには帝国の貴族達が食事をしながら楽しそうに会話をする。テーブルに置かれた数え切れない程の豪華な料理の数々まるで中国の満漢全席のようだった。山羊を丸ごと焼いたものとか、魚と野菜を鍋に溢れるほど詰め込んで煮込んだスープとか、鳥、魚、獣肉、野菜がふんだんに使われていた。果物は、氷雪山脈から取ってきた雪で冷やされて美味しそうだ。しかし、種類と量が凄い。朝食を摂ったばかりの菅原にはかなりキツイメニューだった。

 

「なるほどこれは胃にくるな」

 

「スガワラ殿、彼がキケロ卿だ。キケロ・ラー・マルトゥス、帝国開闢以降の名門の流れをくむマルトゥス家の一族だ。元老院に広く顔が利く重鎮でもある。妾が彼を選んだ理由としては、彼が主戦派の中でも話せる御仁だからだ」

 

主戦派は日本軍に徹底抗戦する典型的な交戦派である。対する講和派日本に和平交渉をする反戦派である。今回の戦争について彼が与するのは、主戦論・皇帝派である。つまり『現在非常事態である。従って皇帝陛下の大権下に、帝国の総力を集結して可及的速やかに軍事力を再建すべし。そして、アルヌスを占領する蛮族を武力をもって追い出すべし』と言う意見の持ち主である。これに相対するのが講和論・元老院派である。こちらは『今回の無謀な戦争は皇帝の指導下で始まったのだから、皇帝の権力を弱めて元老院の集団指導の下、軍事力を再建する。また、アルヌスを占領する敵に対しては、『門』の向こうにお引き取り願うにしても、軍事力とは別の選択肢、例えば講和などの方法も探るべきだ」とする意見だ。そのキケロを交渉の相手として選んだのは、彼が主戦論者の中では比較的話が通じるタイプだと見られたからである。

 

「キケロ卿、こちらニホン帝国の外交特使のスガワラ殿だ」

 

「初めまして(特使ではないのだけど・・・)」

 

「ニホン帝国・・・はて、失礼ながら初めて聞く名だ。どの様な国なのかね?」

 

「はい、我が帝国は四季があって森や水がきれいで四方を海に囲まれた海洋国家です。」

 

その言葉にキケロ卿の夫人があからさまに馬鹿にする様な目線を送

る。文明の遅れた蛮地からの使者がどんな国かと問われ、森や水の美しい国と答えるようでは、他には何もありませんと言ってるようなものだった。

 

「ほう」

 

(やれやれキケロ卿 注意めされよ、既に彼の術中にはまっておりますぞ)

 

「我が帝国の産物を持参しました。ご笑納ください」

 

次に菅原は日本から持って来た特産品をテーブルの上に並びる。

 

(所詮自然だけが取り柄の田舎者・・・)

 

と内心バカにしているキケロ卿は日本の産物に目に入れると目を見開いた。

和紙、反物、漆器類、扇子、煙管、木綿の生地、真珠のネックレス、日本刀など日本伝統の特産品を掲示した。その中でもキケロ卿が興味を示したのが日本刀だった。

 

「これは・・・」

 

日本刀の美しさと鋭い切れ味に度肝を抜かれ、周りの貴族達は煙管を加えて煙をもくもく吸って吐いたり、扇子を手に取ってみたり、生地を触り心地をみたりしている。

 

(帝国にはない謙遜から入ると言う彼の手法は鮮やかなものだ・・・異世界のこれらの品々も貴族だからこそ素晴らしさを理解できる)

 

「いや失礼したスガワラ殿 あの剣といいこれ程の逸品を作るニホン帝国とはどこにあるのかな?」

 

「我が帝国は『門』の向こうにございます、残念ながら現在は帝国と戦争状態にありますが」

 

その言葉にキケロ卿の顔が一気に青ざめた。すくに別室に連れ込み詳しい話を聞くことになった。

 

「ピニャ殿下!これはいったいどういう事ですか!?これは売国に等しい行為ですぞ!スガワラ殿 貴殿もこのままで済むと思わんことだ!!数ヶ月もすれば再編成された新生帝国軍十万が再び『門』を超えて貴国を滅ぼしてくれようぞ!!その時は殿下もご責任をー」

 

「キケロ卿 どうかこれをー」

 

と言って一枚の紙を手渡す。

 

「出征した甥の名ではないか!なぜ貴殿がー まさか生きておるのか!?」

 

「まぁっ」

 

「奥様!誰か!」

 

「ピニャ殿下に仲介の労を担って頂く代わりに殿下からご要望のあった数名の返還を無条件で行います。」

 

「身代金も無しに無条件で!?」

 

「はい 強いて言えば、殿下のお骨折りがその代わりとなりましょう」

 

(殿下の交渉次第で捕虜の返還条約が左右される 交渉の邪魔をすれば甥の命も・・・)

 

「妾は今宵、デュシー家令嬢の誕生パーティーに良き知らせを持って出席する。卿も如何かな?」

 

「デュシー候の御令嬢とは面識は御座いませんが・・(まさかデュシー家にも捕虜となっている者が居るのか!?此処で断って仕舞えば甥は帰還は更に絶望的なものに)是非ともその良き知らせが届く場に、私も御相席させて頂きます。殿下」

 

この後も日本は主戦派の議員に工作活動を仕掛けていく。

 

-----とある荒野-----

そこに一人の女性が立っていた。

 

「アルヌス・・・彼処に茶色の人が・・・」

 

 

帝国の国歌を描こうと思うんですがどれを参考にしたらいいですかね?

  • 『廃墟からの復活』
  • 『皇帝陛下万歳』
  • 『神よ、皇帝フランツを守り給え』
  • どれでも良い

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。