GATE 大日本帝国 彼の地にて、斯く戦えり   作:人斬り抜刀斎

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開始

「シェ シェリーさん・・・今夜はだめですよ」

 

「そう邪険にしないでくださいませ シェリーもあと四年もすればスガワラ殿に似つかわしい女になりましょう この機会にお国の副大臣閣下をどうぞ紹介してくださいな」

 

(まいったな・・・子守のつもりで調子に乗って 日本語と所作を教えたのが裏目に出た テュエリ家は講和派の重鎮カーゼル候の縁戚というだけの弱小貴族 あの当主政略結婚っていう娘の話を本気にしてこの場に送り込んでくるとはなかなか・・・いやー侮れないのはこの娘だったりして・・・!?しかしここでこの娘に出世の足を引っぱられるわけには・・・)

 

「スガワラ殿しばらくお会いできず シェリーはとっても寂しゅうございました。私のことなんてもう飽きてしまわれたのですね・・・」

 

「そういうわけでは・・・・公務が忙しくなったのですよ」

 

「まあ嬉しい!私とお付き合いはやっぱり『仕事』じゃなかったのですね!」

「いっいやなにを・・・」

 

「お母様が申しておりました。どんなに好意を抱いても殿方には最後の一線を守りなさいと 殿方はその線をこえると途端そっけなくなるそえです。スガワラ様もそうなんですね?」

 

そう言われて他の官僚たちを見るとなにを思ったのか冷たい視線で菅原を見ていた。皆は、菅原が年端もいかない少女を手篭めにしたのではないかと思っているのだろう。

 

「しーっしーっ こんなところでそんなこと口にしてはいけません!」

 

「あら じゃあ スガワラ様は一線をご存知なのですね?」

 

「だからここではだめだと!あなたのためを『思って』言ってるのですよ!」

 

「私のためを『想って』くださってとっても嬉しいですわ 後ほど二人きりになれるところでお教えくださいね 約束ですよ」

 

ますます皆から誤解されてしまた菅原は頭を抱える。

 

「そういうことで 未来の夫たる方がお仕えしている副宰相閣下にご挨拶したいのです」

 

「だめです。なにがそういうことですか」

 

「もれなくとっていいことがありますよ」

 

「は?」

 

「ご覧くださいませ。せっかくの交流の場なのに彼らは遠巻きに見ているだけ 敵同士とはいえお話もできずに講和がうまくいくでしょうか?私がきっかけを作ればあの方達も安心してお話しに参りますわ」

 

「別にいいんですよ。あとは皇帝陛下にお会いできれば」

 

「チッ チッ 甘いですわね スガワラ様 帝国にとってニホン帝国は優れた文物ととてつもない軍事力以外未知の国 私も特別で特別な特別の関係があるスガワラ様のことしか存じません。ですから まずはシェリーよりお始めください互いの理解が進めばスガワラ様のお仕事に必ずやお役に立ちますわ」

 

年端もいかない小娘に背中を押される形になり菅原は観念したのか承諾する。

 

「・・・わかりました。あなたの提案にも一理ありますし ですが あなたを受け入れたわけではないですからね」

 

「わかっています。わかっていますとも、スガワラ様の本心はちゃ〜と」

 

とシェリーが手を差し出し菅原はそれに応える形で手をとる。そして吉田茂の前まで来ると挨拶をする。

 

「副宰相閣下 お初にお目もじ致します。テュエリ家のシェリーと申します」

 

「ほぉ〜かわいいお嬢さん 真珠のネックレスがとっても似合いで、ご丁寧な日本語がお上手で」

 

「スガワラ様に色々よくしていただいたおかげですわ。この首飾りもスガワラ様がくださいました。今宵も二人きりで色々教えていただくお約束をいたしました」

 

またしても何か地雷を踏んでしまった。そして周りの官僚からは、また冷たい視線がかかり自分の上司である吉田茂からも、

 

「菅原君?」

 

「はっはいっ」

 

「問題になるようなことはしてないだろうね」

 

「もっも もちろんです!」

 

「頼みますよ」

 

だがこの行動は無駄ではなかった。シェリーの挨拶を皮切りに色々人々が集まって来た。

 

「スガワラ様 私にも閣下をご紹介してくださいませんか?」

 

 

一方盛り上がる式典とは裏腹に宮廷の廊下では、ゾルザルと彼の奴隷テューレがいた。ゾルザル・エル・カエサルにとって、皇太子となって最初の公務がこの式典への参列であるというのは皮肉なことかもしれない。

 

「ゾルザル様。何をそう苛立っておいでなのですか?」

 

テューレの問いにゾルザルは、歩く速度を緩めようとせず、激している感情そのままの粗暴な口調で答えた。

 

「いったいなんでこの俺がニホンの使節に会ってやらねばならぬのだ!」

 

「ご公務ですわ。殿下は皇太子におなりになられたのですから」

 

「くそ 忌々しいっ」

 

「もっ 申し訳ございません!」

 

ツルッ

 

「キャッ」

 

歩幅の狭いテューレが、ゾルザルに追い付くにはどうしても小走りにならざるをえない。その上、慣れない踵の高い靴を履いている。さらに二人が進む暗く長い廊下は床面が大理石で出来ているために滑りやすく、テューレは思わず足を滑らさせ小さな悲鳴を上げ、倒れそうになるテューレを立ち止まったゾルザルが丸太のような太い腕で素早く掴んで防いだ。

 

「しっかり歩かぬか馬鹿者め 別にお前を責めているわけではないぞ」

 

「しかし・・・妨害工作の失敗は私のー」

 

「何を言うお前は命令は伝えただけだ、密偵が役立たずだったのだ。命令伝達役に過ぎないお前にどんな責任がある?」

 

ゾルザルは皇太子になると、テューレの扱いを少しばかり変えた。彼女を連れ回すことが多くなったこともあり、鎖と首輪をはずし、それなりの衣装を着せるようになったのである。とはいえ、そのデザインは最近の貴族社会で流行りとなっているものの中でも、少しばかり特殊な部類に入った。布地面積は申し訳程度しかない上に、ボディラインは恥ずかしいまでに露わとなるピッタリしたもの。それを腰丈の上衣で申し訳程度に隠している。

ゾルザルはテューレが付いてこられるぐらいぐらいに歩調を落とすと声を潜めた。

 

「小細工は一時中止させておけ、今は軍部と主戦派の支持を集めるのが先決だ。それと主戦論派との繋がりも忘れるな。敗北主義者共が気を抜いた時に、一気に巻き返しを図るから、手足代わりになって働いてくれる者をそろえておかなくてはならん」

 

「は、はい」

 

「とはいえ忌々しいっ!くそっ 講和交渉を始めることだけは止めたかった!」

 

彼にとって戦争の終結とは、勝利かあるいは完全なる勝利かのいずれかであって、そのどちらでもない戦争終結は、自らが受け継ぐことになる帝国には相応しくないと考えていた。

 

「確かに、戦争は百戦百勝とは行かん。形勢が一時的に不利になることは、帝国の歴史の中でも何度もあったことだ。だがそれを克服してこそ帝国ではないか。しかもニホン軍はアルヌス周辺を占領するにとどまり、帝国内部に深く攻め込んで来てはいない。なぜ皆気づかん!?ニホン軍は我が帝国を攻めあぐねているからこそ講和を求めてきたのだ!」

 

それが分かれば、戦いようはいくらでもあることに気付いているはずなのだ。なのに講和の誘いに軽々に応じてしまうのは、敵を利するだけの行為だと言うのがゾルザルの主張である。

二人はやがて、式典へと続く大きな扉の前まで来ると扉の前で待っている自身の父モルトがいる。ゾルザルは皇帝に話しかけようとしたが

 

「父上!!」

 

「殿下、お声を低く」

 

式典侍従に声を少し低くするように求められる。この向こう側には式典の会場があり、いくら厚手の樫で扉が出来ているといっても、声が大き過ぎれば漏れ聞こえてしまうのだ。

 

「父上!戦は百戦百勝とはゆきません 一時の不利にもなりましょう。故に今講和交渉を早急に進めるべきではありませぬ!帝国はまだ戦える!今を克服してこそ帝国ではありませぬか!」

 

ゾルザルは声を潜めて、講和交渉には反対だと皇帝に戦争を継続させるべきと強く訴えるも皇帝は即答せずしばらく沈黙した後に語る。

 

「ゾルザル・・・戦は始める前にどのように幕を引くか考えておくものだ。予定通りいかぬなら傷を広げぬうちに終わらせねばならぬ 戦えなくなれば交渉すらできなくなるのだぞ」

 

その言葉にゾルザルにははらわたが煮えくりかえるほどだった。

 

「帝国の威厳はどうなるのです!?父上は臆病風に吹かれているのだ!!」

 

だが皇帝は微動だにしなかった。

 

「父上!!」

 

「殿下 中にお声が聞こえます。お気をお鎮めください」

 

「むっ ぐ・・・」

 

「今宵は捕虜のご帰還を祝う式典ですよ」

 

とゾルザルに言い聞かせ ゾルザルも落ち着きを取り戻す。今のゾルザルは皇太子である。たとえ意に沿わなくとも、捕虜の帰還を祝う式典を成功させなければならない立場にあった。自らの役目を放棄してこの式典をぶち壊しにしてしまうわけにはいかないのである。そして時鐘が鳴り響き入場の合図だ。

 

「帰還した皆様に皇太子としてねぎらいのお言葉をかけて差し上げませ」

 

「わかっておる」

 

『モルト皇帝陛下並びに皇太子ゾルザル殿下 皇女ピニャ殿下のご入来ー!』

 

侍従の声とともに、巨大な扉が大きく開き皇帝たちは中へと入っていく。その瞬間、まばゆいばかりの宴席の照明がテューレを包んだ。だが、それも一瞬のこと。重々しい扉の音とともに光が細く狭くなって、最後には完全に閉じられてしまった。静まり返った薄暗い廊下に頭を下げた姿で独り残されたテューレは、

 

「・・・ 単純な奴」

 

とボソリと呟く。そしてテューレは中庭の渡り廊下の方へと向かい、誰にともなく語りかけた、

 

 

「支度はできていて?」

 

するとどこからともなく、くぐもった答えが返ってきた。

 

「細工は流々 後は仕上げをご覧じろ でございまする。テューレ様」

 

「失態はもう許さないわよ。ボウロ ノリコの件は他人任せにするから失敗するのです」

 

「言い訳しようがございませぬ 此度はハリョの精鋭を呼び寄せました故。ウクシ、カクシ、コルメでございまする」

 

薄暗い廊下の暗がりに暗黒色の人影が三つ、浮かび上がった。

 

「では、始めなさい。何もかもおもしろくしてちょうだい」

 

顔を上げたテューレの顔は、邪悪な笑みによって覆われていた。

帝国の国歌を描こうと思うんですがどれを参考にしたらいいですかね?

  • 『廃墟からの復活』
  • 『皇帝陛下万歳』
  • 『神よ、皇帝フランツを守り給え』
  • どれでも良い
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