GATE 大日本帝国 彼の地にて、斯く戦えり   作:人斬り抜刀斎

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別れの炎

1946年 1月下旬 帝都東京 外務省

そこでは、外務省の官僚が食事を取りながら手元の書類に目をどうしていた。参加者は、外務大臣『東郷茂徳』とその官僚などが集まっている。

 

「あー なんだっけな オプリチニン?」

 

「オープリーチニアです。大臣 現地語で『皇帝の主権及び権威を擁護回復するための委員会部』の略称です」

 

「ああ そうだったな ゾルザルは こいつを使って講和派を抑えるつもりか?現地の吉田達の安全は確保できているんだろうな?」

 

「はい 今のところは」

 

「問題はこの『帝権擁護委員会部』です。報告によりますとオプリーチニナ特別法では帝権干犯とは何かを委員部自身が主権的に判断できるとあります。『皇帝の主権と権威が脅かされている状況から回復が全てに優先される』これでは具体的証拠がなくとも強制捜査と逮捕が可能になります」

 

「文句どころか 不満を持つこともできないってことか。そんな連中に中立性なんかないな」

 

「はい 。構成員は強硬な主戦論者の青年貴族軍人を中心に四百人現在も増加中です。中心人員の数人は先日送還した銀座事件の捕虜と確認されています。『帝権擁護委員部』のやっていることは ソ連の『内部人民委員部』とほぼ同じです」

 

「大島駐独大使の報告にあったあいつらか」

 

「現地では『掃除夫』と呼ばれています。コバルトの兜と箒はコバルトのように裏切り者に噛みつき 国から掃き出してやるという意味だそうです」

 

「なるほどな・・・ゾルザルって奴はここまでやるか」

 

「クーデター後 日中は人の動きもありましたがオプリーチニナが発足してから帝民は連中を怖れて閉じこもっています」

 

「ひでえな 完全に恐怖政治じゃないか。飯の途中だっな さっさと食っちまおう」

 

「あ はい」

 

「今朝の特地対策会議で陸軍省と海軍省から上がってきたあの要請どう思う」

 

「異常事態に対する専門家調査団の派遣要請ですね」

 

「クナップヌイでしたっけ」

 

「異常も何も特地が銀座と繋がってること自体 すげえ異常だけどな」

 

「民間の専門家の特地への立ち入りは安全面を考慮して禁止していましたからね。クナップヌイ一帯は天候不良で空撮はできなかったそうです。わざわざ危険を冒して現地で調査する必要があるんでしょうか?陸軍省と海軍省はどこから情報を?」

 

「それがなあ 神様だとよ」

 

東郷から行成神様と言われて官僚達は黙り込む。

 

「・・・大臣?意味がよくわからないのですが・・・」

 

「資料にはなにもーー」

 

「会議の後で杉山さんと嶋田さんから聞いたんだ。俺だってあの亜神だとかいう九百歳超えの嬢ちゃん(?)見てなきゃ信じたかどうか しかも『神様』から聞いてきたってのがその嬢ちゃんもいる伊丹と大場の探査班なんだぜ?」

 

「あの伊丹耀司陸軍中尉と大場栄陸軍大尉ですか!?」

 

「それは無視できませんね・・・」

 

「だろ?」

 

コン コン コン ガチャ

 

「東郷大臣!お食事中失礼します。至急官邸にお越しください 特地から緊急報告がっ 帝都で講和派に対する一斉弾圧が始まりました!」

 

と部下から帝都で講和派が弾圧が開始されたと言う報を受けて東郷外務大臣は直様首相官邸に向かった。

 

「吉田代表団の滞在先に動きはまだないんだな」

 

「はい しかし現地では講和派議員や貴族の逮捕が続いています。もはや安全な場所はアルヌスか翡翠宮にしかーー」

 

「あ?何が言いたい?」

 

「こ 講和派の一部から匿ってくれとの再度の打診が・・・」

 

「だめだぞ!今肩入れしてみろ主戦論派を助長させるだけだ やはり講和派は売国奴だとな」

 

「ですが大臣 このまま見過ごせば・・・代表取材団のアルヌス入りも始まりますし」

 

「批判のための批判する連中なんかほっとけ 逮捕だけか?処刑は始まってないんだよな?」

 

「しかし時間の問題かとーー」

 

「ーーいいか 中途半端な手助けは相手の立場をかえって悪くすることもあるんだ。今捕まってる連中を助けるとなったら一気呵成に一人残らず助けなきゃいかん 置き去りになった人間のことを考えろ」

 

東郷の言葉に官僚達は複雑な顔をする。

 

「俺は助けるなって言ってるんじゃない 機を窺えと言っとるんだ」

 

そして東郷大臣は玄関に用意された車に乗って官邸に向かった。

 

「杉山陸軍大臣と嶋田海軍大臣に連絡を取ってくれ 救出作戦の準備を進めているか 確認を取るんだ」

 

「いっそのこと当初の計画通り帝都を占領してしまっては・・・」

 

「そうしたいのは山々だが今の日本にそんな余裕はない まだ特地は帝国に維持させる必要がある。安っぽい正義感で日本そのものを危うくするわけにはいかない」

 

「・・・わかりました」

 

「・・・くそっ なんてこった」

 

一方、帝都

帝都は今やゴーストタウンと化しかつての賑わいは無くなっていた。往来では人一人もおらず皆家に引きこもっていた。そしてここ講和派議員の一人キケロ卿の屋敷では講和派の議員が集まっていた。

 

「キケロ卿 ギンザ戦役から還ってきた甥御さんも『掃除夫』に・・・?」

 

「いや だが皇太子府におるそうだ。あやつもいい大人だ。自分の道は自分に選ばせたよ」

 

「うちは家族をセリアの領地に脱出させたが・・・」

 

「卿の夫人は残ったのか?」

 

「あれは梃子でも動かんよ」

 

「ところで・・・誰かガーゼル候の行方を知らぬか?」

 

「屋敷は掃除夫に踏み込まれたとは聞いたが特別法の布告前に一族と使用人を辺境の領地に逃がしたそうだ」

 

「ガーゼル候自身はまだ残っているらしい」

 

「元老院議員として耳をふさいで田舎に引きこもるわけにもいかんしな 儂も覚悟はできてる」

 

「あなた!あなた!」

 

「なんだい?落ち着きなさい」

 

「そっ そっ 掃除夫が来ましたよ」

 

とキケロ卿の夫人が掃除夫がやって来た事を告げるとキケロ卿達は来るべき時が来たと言った感じで覚悟していた。

 

「意外と遅かったですな」

 

「では諸君 出迎えようか」

 

オプリーチニナによる粛清は苛烈を極め 少しでも抵抗や逃亡の素振りを見せた者には 容赦なく刃が振るわれた。そしてテュエリ家の屋敷では、掃除夫の粛清から逃れて来たガーゼル候が匿っていた。

 

「ガーゼル様 もっとミールを召し上がりませ」

 

「いや シェリー 儂はもういいよ 君こそもっと食べなさい 伸び盛りなんだから」

 

「もちろんちゃんと食べてますわ。けど食べすぎるとお腹がぷよぷよしてきて・・・ただでさえ子供体型なのにスガワラ様に嫌わられてしまいます」

 

「おやおや もう食い気より色気かい?」

 

「まあ ひどい!乙女の恋心を貶めるのですか?」

 

「おっと失礼許してくれ」

 

「ダメです!罰としてきちんと食べていただきます」

 

「(この家の蓄えも少ないはずなのに・・・)こんなに食べられない 助けてくれ!いやあ 随分とよい子に育てたじゃないか」

 

「生意気なことでお恥ずかしい」

 

「いやいや 褒めるべきことだ 若さに似合わぬ見識の広さと謙虚さ この娘は明日の我が一族を支える柱になる」

 

「それがこんなことになろうとは・・・」

 

「明けぬ夜はない暴風もいずれ去ろう 食える時に食って耐える力を蓄えようじゃないか」

 

ガシャーン

 

「お館様大変です!掃除夫が踏み込んで参りましたっ」

 

ドン ドン ドン

 

「開けろ!ガーゼル候がここにいるのはわかっているぞ!!」

 

テュエリ夫妻は直ぐにガーゼル候の避難を開始する。

 

「侯爵閣下こちらへ!お前達は荷物をまとめるんだ」

 

「か かしこまりました」

 

ガーゼル候を避難させている頃、掃除夫は痺れを切らして強行突入に移り出た。それを迎え撃とうとテュエリ家の使用人が打って出る。

 

「汚らしいコバルト頭どもがっ 一歩も通さんぞ!」

 

「わあああっ」

 

「帝権を犯す不埒者めっ」

 

テュエリ夫妻はガーゼル候を逃がすために蔵の中にある地下通路への入り口にやって来た。

 

「蔵の中に地下水路への入口があります。モルア川へ通じていますのでそこから お逃げください」

 

「すまぬ!」

 

「シェリーわかるね 案内して差し上げるんだ」

 

「はい!お父様とお母様もお早く!」

 

「わかってるよ 母さんと荷物を持って後から行くから」

 

そう言って夫妻は愛娘をガーゼル候と共に地下水路に行かせる。

 

「ガーゼル様 こちらです」

 

その頃、掃除夫はテュエリ家の使用人を殺害しガーゼル候を探していた。

 

「ひっ」ガ スッ

 

「家の者も皆同罪だ!」

 

「ガーゼルを探せ!!」

 

残ったテュエリ夫妻は蔵の入口を塞ぎ甕に日本から贈られたアルコール度数の高い酒を入れていた。

 

「シェリーさえ 生きていればテュエリ家は残る」

 

「大丈夫ですよ あの子には心強い婿殿がついてますもの」

 

「男を見る目は確かだからな」

 

「父親の教育がよかったのですよ」

 

「いやいや お前譲りの器量だろ?お前は俺を選んだじゃないか それが男を見る目がある証拠だ」

 

「お館様 お逃げ・・・ぐふっ」ズッ ドサ

 

掃除夫が使用人を殺してテュエリ夫妻の前に現れた。

 

「こんなところにおられましたか テュエリ家の当主と奥方ですな」

 

「いかにも それでお客人諸君らは?」

 

「我らは、オプリーチニナキ あなた方には帝権干犯の疑いがある ご同行いただきたい」

 

「帝権干犯?はて?どういう意味かな?」

 

「疑いが晴れれば意味がわからぬともいいでしょう 即解散いたします。ただ 私的外交の罪ですでに有罪であるガーゼル候の行方は 何としてでも話していただきますよ ところでご令嬢はどちらに?ご令嬢にも私的外交の嫌疑がかかっておりますが 十二歳でしたかな 取り調べに耐えられますかねえ」

 

「・・・なにぶん 放蕩娘でね その手のことには慣れてるんだ 今もどこぞの男と桃色遊戯に耽っとるんだろう」

 

「まあ!あなた!それはちょっと言い過ぎではありません!?」

 

「フン!礼儀正しかろうと盗まれようと・・・娘が他人の男に奪われることは変わらんじゃないか」

 

「あーーもしもし」

 

「ま!やきもち?大人げないこと」

 

「夫婦喧嘩は バスーン監獄でごゆっくり おい!」

 

「ハッ」

 

「おやおや せっかちな客人だ」

 

「あら いけませんわ お客様にお飲み物もお出しせずに」

 

そして夫人は甕に入った酒を掃除夫に掛ける。

 

バ シャァ

 

「!?」

 

「なんだ!?酒を!?」

 

「あつっ」

 

「目が・・・っ」

 

「貴様ぁ!!」

 

「おい 待て!」

 

そして夫人は火の付いたローソクを投げ 酒を被った掃除夫達は火達磨になった。

 

『わ あ あ あ』 ボッ

 

「ひいい」

 

「わあああ」

 

「火を消せぇっ」

 

すると火達磨になった掃除夫達が暴れてそばに置いてあった甕が倒れ中に入っていた油が漏れ出す。

 

「油・・・!?」

 

「ああああ」

 

油が漏れた事によって火の勢いが増した。テュエリ夫妻は燃え盛る炎の中最後の美酒を味わっていた。

 

「スガワラからもらったこの酒 本当に強いなあ もったいないことしたかな シェリーの亭主になる男と酌み交わしたかった」

 

「わたくしは孫を抱きたかったですわ」

 

「あいつの花嫁姿が見られないのも残念だ・・・おいおい次々と未練が出てきてしまうな」

 

「フフッ わたくしと結婚できたことで満足なさいませ」

 

「そうだな・・・」

 

「人生の願いのほとんどはそれでかなった 残りの半分はこうしてーー」

 

とテュエリ夫妻は焼け落ちる屋敷の中共に寄り添うながら静かに最期の時を迎えた。

 

一方、地下水路で逃げたシェリーとガーゼル候は、コロッセオの近くのモルア川に出た。

 

「見張りも掃除夫もいませんわ」

 

「そうか よかった(あの二人 もしや・・・いや 気のせいかもしれん だがここでぐずぐず待っているわけにもーー)」

 

「お父様達 遅いですわね ちょっと見てきますわ」

 

「だめだ!」

 

と戻ろうとするシェリーの手を掴んで止めるガーゼル候。

 

「離してくださいまし!お父様とお母様は途中で難儀なさってるんです」

 

「戻っちゃいかん ここを早く離れるんだ!」

 

「イヤ!離して!!」

 

融通が利かないシェリーにガーゼル候はシェリーを抱き抱えて行く。

 

「降ろしてくださいませっ お父様達のところに戻るんですから!」

 

「これ!静かになさいっ」

 

その時わずかな隙間から自身の屋敷が燃えているのが見えた。

 

『い や あ あ お父様!お母様ぁ!!』

 

「こらっ あばれるでないっ おっと」

 

それでもなおガーゼルから離れて屋敷に向かおうとする。

 

「行っちゃいかん!!ご両親は君を助けるために犠牲になってくれたのだ。お二人の思いを無駄にするつもりか!?」

 

「そんなの嘘ですわ!お父様は後からすぐに行くと言ってましたもの!迎えに行かなくちゃ!」

 

「だめだと言っておろうっ」

 

「いやっ 離して!お父様とお母様のところに行くんです!」

 

『聞き分けなさい!!』 パ ン

 

とガーゼルはシェリーにビンタを食らわす。

 

「さあ 立ちなさい」

 

逃げる際もシェリーは泣き続け目が赤くなるまで泣いた。

 

「ううっうっ うええ・・・えぐっ うああ」

 

「泣くな!うっとうしい(こんな小娘一人救えん元老院議員が 国を救うことなどできるのか・・・)」

 

帝国の国歌を描こうと思うんですがどれを参考にしたらいいですかね?

  • 『廃墟からの復活』
  • 『皇帝陛下万歳』
  • 『神よ、皇帝フランツを守り給え』
  • どれでも良い
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