GATE 大日本帝国 彼の地にて、斯く戦えり   作:人斬り抜刀斎

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逃走

帝都の街をひっそりと逃げるカーゼルとシェリー。シェリーの目は大粒の涙も出ず赤く腫れていた。

 

「ーーん?ここはさっきも通ったな・・・やれやれいい加減疲れたわい 帝都を脱出せねばならんのはわかっておるが・・・こあなると帝都は城壁に囲まれた檻だ。シェリー まだ歩けるかね?儂は腹が減ってさすがにきついぞ 君の言った通りちゃんと食べておくのだった」ハッハッハッ

 

と冗談かしこに言うがシェリーはまったくもって無反応でその目にはすでに光さえなかった。

 

「(・・・仕方あるまいあんな形で両親を亡くしてしまったのだ。歩いてくれるだけでもよしとせねば・・・)さて 日も暮れてきたし そろそろ隠れ家を見つけんとな・・・どうしたものかな」

 

「・・・まずは 食べ物を手に入れましょう」

 

とこの時初めてシェリーが口を聞いたのだった。カーゼルは驚き振り返った。

 

「わたくしも お腹が減りましたから」

 

「あ ああ あーだがなあ 店は開いておらんし 儂は財布を置いてきてしまっておる」

 

今の二人を文無しでどうするか考えているとシェリーにいい案が浮かんだ。

 

パン「では 市井の皆さんに頼んでみましょう」

 

一方、燃えたテュエリ家の屋敷を鎮火した掃除夫達は即座にカーゼルとシェリーやその他の死体を捜索していた。

 

「蔵から続いていた地下水道はモルア川へ通じていました。ガーゼルらはそこから逃げおおせたに違いありません」

 

「ただちに追跡をーー」

 

「火が出て半日の時が経っているのですよ?カーゼルらが待っているとでも?委員部長?君の拙劣な現場指導であたら優秀な委員達を失いました。しかも講和派の首魁まで取り逃がすとは・・・」

 

「ま まさか テュエリ家の者が火を放つとまではーー」

 

「連中が全員腰抜けだと?腐っても帝国議員なのですよ?誇り高い自死を選ぶ者もいるでしょう その意味ではテュエリ家の当主と細君は尊敬に値します。実に見事な最期でした。それに比べて君はどうですか?」

 

「し しかし法務官殿 私もすでに六十五家の捜索を指導し二百六十三人を拘引ーー」

 

「数の問題ではないのよ 重要人物の行方こそが大事なの ディアボ殿下は今いずこ?カーゼル侯爵は?見つからないのは誰かがゾルザル殿下に隠れて わざと怠けているからかしら?見ての通り 私の耳は物事がよぉく聞こえます。誰が怠けているか知っている人はちょっと囁いてくださるだけで充分ですからね」

 

テューレの言葉に総員冷や汗を流しながら互いを見つめている。

 

「な 怠けている者はいません 皆 責任感を持って鋭意捜索中です」

 

「そう?ならばその責任感とやらを示してくださる?目に見えるかたで、あなた達のことを殿下に報告しなくてはならないのは とても残念なことね」

 

「お お待ちください テューレ殿 委員部長!がっかりさせないでください!」

 

「は!?いや しかし 法務官殿ーー」

 

「よく考えて物を言ってください 自分にとって何が大切かをーー 君の決断 何如ですよ?」

 

「・・・・ーー!さ 妻子だけはーー」

 

「殿下は戦いの中で倒れた者を無下に扱う方ではありません」

 

カチャ

 

とルフルス法務官は委員部長に短剣を渡す。委員部長は、怯えながら短剣を自身の喉を刺して自決をする。

 

「ルフルス法務官 あなた達に課せられた責任はカーゼル侯爵を追うことです。違いますか?」

 

「い いえ違いませんっ た ただちにっ あなた達っ どうやって侯爵と娘を捜すのですか!?誰か提案しなさいっ 早く!」

 

と恐怖心にかられたルフルスは掃除夫に提案を出させる。

 

「賞金をかけて密告を奨励します」

 

「もう やっていますっ」

 

「では賞金をもっと高くーー」

 

「家族の者を見せしめにしましょう」

 

「すでに辺境の領地にいます。唯一の残っていた親族がテュエリ家だったのですよ!」

 

「他の一族も法の施行前に逃走しています。ならばその者らも追うべきです!」

 

「君の責任でやるのですね。いいでしょう 守備隊から一隊を割いて行きなさい」

 

「ハッ」

 

「さあ他にないのですか!?」

 

「帝都を虱潰しにーー」

 

「だから!具体的にっ」

 

「閣下地図をーー」

 

とルフルスの持っていた地図を広げる。

 

「地下水路はモルア川に繋がっていました モルア川の城壁水門は厳重に守られているので帝都外へは出られません。おそらく このプラム川沿いに逃走したと思われます。川岸から二リーグ以内の道を全部封鎖しその中の全ての家屋を捜索するのです」

 

「全て?どれだけ家があるかわかって言ってるのですか?」

 

「包囲網の一ヶ所を手薄にしておきます。捜索のフリをして騒ぎを起こすだけで隠れる場のないカーゼルらは必ず姿を現すでしょう」

 

「・・・獲物を燻り出すのですね」

 

「これなら守備隊の一部を動かすだけで済みます。夜明け近くになれば竜騎士も数小隊動員して追い込みます」

 

「なるほどわかりました。君の名は?」

 

「ハッ ギムレット・ジン・ライムです」

 

「よろしい 大変よろしい ギムレット君 今から君を委員部長に任命します。君の権限と責任においてその計画を実行しなさい」

 

「ありがとうございます!」

 

「し 失礼ですが法務官閣下 プロム川から二リーグですと・・・ニホン使節のいる翡翠宮も封鎖範囲にーー」

 

「気にする必要はありません。あそこはピニャ殿下の騎士団が警備しています。たとえ侯爵らが助けを求めたとしても引き渡しを要求すればいいだけでしょう?」

 

「騎士団が・・・女どもが素直に引き渡しますか?」

 

「渡さざるを得ないはずです。帝国の法律であるオプリーチニナ特別法に従わなければ それはーー帝国に対する反乱です」

 

ゴク・・「では騎士団を監視するため一隊を向かわせましょう」

 

「いいでしょう。では皆さん 仕事にかかってください!ゾルザル殿下が吉報をお待ちしていますよ!」

 

『ハッ』

 

そしてルフルスや掃除夫達が撤収する中、テューレは一人焼け焦げた屋敷の中に佇んだいた。

 

「ボウロ 近くにいて?」

 

「・・・はい なんでありましょうか?」

 

とテューレの呼び掛けに物陰からボウロが現れた。

 

「事態をおもしろくしたいわ」

 

「かしこまりました。逃げる獲物に追うコバルト 宴会に飛び込みテーブルをひっくり返す大騒動ともなれば さぞ愉快なことでしょう」フヒヒヒ

 

それを聞いてテューレは笑いながら立ち去って行った。

 

一方、カーゼルとシェリーは街で食べ物を恵んでくれる様にあっちこっち頼み込んでいた。

 

「食い物?こんな時に余裕あると思うか?」

 

「あるわけないでしょ 厄介事はごめんだよ!」

 

と食糧が配給制になってから前の様に食べ物に余裕がなくなって誰もがシェリー達に食べ物を恵んでくれなかった。

 

「やれやれ 十軒目もだめか このまで食料不足とは・・・」

 

「あの家はどうでしょう」

 

(急に元気になったのが逆に心配であるが・・・)

 

コン コン コン ギイ

 

「なんだい?」

 

「あ あの 食べ物を分けてもらえないでしょうか?少しでいいのです」

 

と頼み込むと男はシェリーの付けている真珠のネックレスを見て、

 

「いくら出す?」

 

と言いシェリーは首からネックレスを外して2個の真珠を差し出す。

 

「これでいかがでしょう?耳飾りにすれば奥様にきっと喜ばれますわ」

 

「だめだ それ全部なら分けてやるよ」

 

(一粒でも金貨一枚以上の価値があるが・・・)

 

「四つでも?」

 

「だめだめ」

 

「・・・全部差し上げてもかまいませんが 家庭内不和の原因になってしまいますよ?」

 

「はあ?」

 

「この首飾りは子供用です。大人の人が使うにはあと十個は真珠が必要ですわ けれどお宅の場合買い足すには相当のご無理をなさらないと・・・」

 

「う う〜ん そうだ 二つだけ残して売ればいい 生活費何年分にもなるぜ」

 

「甘いですわ あなたは女の欲目がわかっていません。奥方はきっとこう考えます。『あと十個あれば首飾りができて周りに自慢できる』あと十個 あと十個・・・目の色を変え人柄も変わってしまうかも・・・・そのためにお尻を叩かれるのはどなたですか?」

 

「う〜〜ん なら隠しておけばいいだろ?」

 

「まあ!もっと大変ですわ!ある日 隠しておいた真珠が机の上に『どこの誰に贈るつもりだったの?私には二つしかくれなかったのに!』」

 

「〜〜〜 声がでかいっ わかったわかった あんたの言う通りだ」

 

「ではこれで我慢なさいませ」

 

とシェリーは男に真珠を渡すが四個ではなく、五個男に渡した。

 

「え?五個?」

 

「一個はあなたのお小遣い 四個は奥様に 『今はこれだけしかないけれど いつか首にかけられるだけの真珠を贈ってやる』と おっしゃいませ」

 

「俺の稼ぎじゃ 難しいなあ・・・」

 

「現実味がないからこそいいんですわ。途方もない夢だからそんなに期待されずそれでいて奥様も心から喜ばれるのです」

 

「・・・お嬢ちゃん あんたいくつだ?商才あるぞ」

 

「十二歳になりました」

 

「・・・末恐ろしいな そんなだともらい手が見つからないぞ?」

 

「ご安心ください もうお相手は決まっています」

 

「その旦那がかわいそうになってくるぜ わかった ちょっと待ってな」

 

その後 男は家の中から食料の入った袋を持って来た。

 

「ほらよ」

 

「ありがとうございます!ーーあら ニホン語」

 

とシェリーが袋の中から取り出したのは日本語で『牛缶』と書かれた日本軍の戦闘糧食だった。

 

「ん ああ あんたそれ読めるのか?実は俺 翡翠宮で下男やっててな 賓客に頼んでそれ分けてもらってんだ。それがなけりゃ食い物の余裕なかったよ」

 

「ニ ニホンの皆様はご無事なのですか!?」

 

「無事もなにもあそこはピニャ殿下の騎士団が警備してるんだ。中にいる限り平和なもんだぜ 街中よりよっぽどな」

 

「そうでしたか・・・(スガワラ様ーー)」

 

「・・・嬢ちゃん 騎士団のお姫様達は どうも堅苦しいところがあってな 朝夕に当直交代式なんて儀式を仰々しくやってて その間 素人目に見ても警備がおろそかになっているんだ」

 

「ありがとうございます!あなたに神々のご加護がありますように」

 

とシェリーはお礼を言う。

 

「シェリー行こうか」

 

「はい!」

 

 

 

帝国の国歌を描こうと思うんですがどれを参考にしたらいいですかね?

  • 『廃墟からの復活』
  • 『皇帝陛下万歳』
  • 『神よ、皇帝フランツを守り給え』
  • どれでも良い
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