元女神たちとのキャンパスライフ 作:シラユキ
書いてみるとかよちんが動かすのが以外と難しい……次回はもう少し出番を増やしてあげたいです
2話
満開の桜、雲一つない晴れ渡る蒼い空。それを眺めつつ暖かい日の光を浴びながら大学に向かって歩く。こんな気持ちいい気分で大学生活を暮らせたらどれだけ平和なことだろう
「さて、もう来て…………るな。というかあの人だかりは確定だろ」
昨日は連絡先を交換して今日は朝に校門の辺りに集合ということを決めて解散した。どこかで合流して一緒に行こうと言われたが、それを誰かに見られて噂にでもなればどんな目に合うかわからないので丁重に断らせてもらった。
まあ、すでに校門前に人だかりができてしまっている時点で意味がない気がしてきたが、ここは時間を置いて人が少なくなってから合流を──
「あ、雅哉くんだにゃー!!」
凛の言葉で集まっていた人の視線が一気にこっちに集まる。耳を澄ませば周りから誰だあいつ?やどういう関係だ?といった声が聞こえてくる。
前言撤回、すでにどうしようもなかった。
「おはよう、星空さん」
「凛は名前で呼んでほしいって言ったのに、なんでそっちなのかにゃ?」
なんでこの娘はどんどん爆弾を落としていくかな!? せめてこの場はただの知り合い程度で済まそうとしたのに、あんなことを言われてしまってはどうしようもない。
「こうなったら──」
「雅哉くん、どうかしたかにゃ?」
「逃げる!!」
凛の手を取り、そのままの流れで近くにいた真姫と花陽の手を掴んで走る。振り返ってみれば明らかに自分から傷口に塩を塗るようなことをしてるな、これ。
「ちょっと!!どういうつもり!?」
「ま、真姫ちゃん。落ち着いてぇ」
「気が動転してやらかしました。お詫びに何かご馳走するのでゆるしてください」
なんとか集団の目の届かないところまで来ると、真姫に怒鳴られた。大学生活初日に朝から前日に出会った男に手を引かれて走る、こんなことをされれば怒って当然か。
「その言葉、忘れないでよ?」
「じゃあ凛はラーメンがいいにゃー」
「誰のせいだと思ってんだ!?…………半分ぐらいは自爆だけど」
「……? 凛、何か悪いことした?」
「……そうだよな。そんな自覚あるわけないよな」
「で、なんであんなことしたのかしら?」
「よく考えてみろ。三人は有名人、普通に話してるだけでも仲がいいと思われかねないのに、名前で呼んでほしいなんて言ったら?」
「……かなり親しいって思われちゃう?」
「正解。その上君たちは女子高出身。普通は出会って一日だなんて思わないだろ?それならどう見える可能性がある?」
ここまで言えばさすがに三人とも俺の言いたいことを理解してくれたようだ。
「そういうわけで、あの場はただの知り合いぐらいの立場でどうにかやりすごそうとしたのに失敗しちまったってわけだ.」
「凛のことを名前で呼ばなかったこともそれが理由なの?」
「そういうこと。やらかしちまったしもう気にしないけどな。さて、そろそろ行かない遅れちまうな。行くぞ、
「うん!」
今更だが、名前で呼んでいるのはこれから一緒に大学生活を送るんだから名前で呼んだ方がいいと希さんに提案されて半ば押し切られてしまったからだ。凛だけだと思っていたら全員名前呼びになってしまったのは予想外だったが。あの人は絶対に面白そうって理由があった気がする。
「ねえ、花陽」
「何?真姫ちゃん」
「雅哉と出会って良かったと思う?」
「……うん。凛ちゃんも楽しそうだもん」
「そうね」
━━━━━
「んー、やっと終わった」
「終わったにゃー」
今日は授業があるわけではなく、履修する科目の選択方法の説明や授業に必要なもの説明など今後の大学生活に必要なことの説明がほとんどだった。途中で施設案内があったがしばらくは地図とにらめっこしながら移動するかもしれない。教室多すぎなんだよ。
「凛、今日これから何か用事ってあるか?」
「特にないけど、何かあるのかにゃ?」
「朝言ってた何か奢るってやつ。あれのついでにこの辺案内してもらいたいなあと。大学まではこれるけど何があるかまではわかってないし」
「それなら凛たちにまかせるにゃー!まずはかよちんと真姫ちゃんに連絡しないと」
凛はスマホを取り出してメッセージを打ち始める。返事はすぐにきたようで、少し手が止まったかと思えばすぐに動き出す。
「かよちんたちここに来るって―」
「別にいいけど、校門とかのほうが楽じゃないのか?」
「外の人混みを一人で歩きたくないんだって」
「あー、なるほど」
外では一人でも多くの新入生を獲得しようと各部活やサークルによるアピール合戦、もとい軽い戦争が勃発している。
「そういや、凛はサークルとか入らないのか?」
「今は考えてないにゃ~。そういう雅哉くんは?」
「講義次第って感じだな。運動はしたいし、何か運動できるサークルは入るかもってぐらい」
「凛も体動かすのは好きだし、何かやろうかなぁ」
「一緒になにかやるか?」
「それもいいにゃー」
どうすんだよこれ。軽い冗談のつもりで言ったのにその返しは予想外だよ?ここから話を繋げていくトークスキルなんて持ってないぞ。
真姫でも花陽でもどっちでもいいから早く来てくれ!
——ーーーーー
「それで、雅哉は何をご馳走してくれるのかしら?」
「俺に振ってくる感じなのかよ…………それなら、ファミレスはどうですか真姫様」
「ちょっと!なんで様なんてつけるのよ!」
「なんかつけた方がいいかなーと。後は個人的な感謝?」
凛との内心でテンパり気味だった会話の途中でやってきてくれた真姫には感謝しているのでそれと、からかったら面白そうだという直感に従っただけだ。決してこの直感が理由の9割を占めていたりはしない。
「はぁ、この話はいいわ。それで、そのチョイスに何か理由はあるのかしら?」
「いくつかあるけど、まずは俺は三人の好みとか知らないし、おいしい店とかわからないから無難に行こうかなーってのと……話をするならそういうところのほうがいいかなってだけだ」
「……うん。私もそれでいいと思うよ」
「そうね」
「凛はラーメンが食べられればそれでいいにゃー」
「じゃあ、案内はよろしく」
「さて、話をするとは言ったものの何を話すんだ?」
「……考えてなかったのね」
「雅哉くんのことじゃだめ、かな?私たち、全然雅哉くんのこと知らないし」
特に断る理由もないし、そんな聞き方をされては断るなという方が無理があるので了承する。
「で、何を話せばいい?」
「雅哉くんはどこから来たのか聞きたいにゃー!」
「滋賀のその中でもわりと田舎の方だ。入学式の日に迷ってたのも、複雑な構造の駅に慣れてなかったからだと言い訳させてらおう」
「ただの方向音痴じゃなかったのね」
真姫はわりと本気で驚いた表情で俺を見てくる。さすがに地図を見ても迷ってしまうとかそんなレベルの方向音痴じゃないと断言させてもらおう。
「それじゃあ、私は、高校のときのことを聞きたいな」
「高校ねぇ。普通に部活やって遊んでただけだしな……」
改めて振り返ってみても遊んでいたという記憶の方が強い。勉強も基本はテスト前だけにやるだけだったし。
「部活は何をやってたの?」
「バレーボールを。これでも一応中高6年やってた」
「そうなんだ……大学でも続けるつもりなの?」
「たまにできればいいな程度だな。何か運動するつもりではあるけど。さて、今度は俺からの質問として……やっぱりμ'sのことだな」
この三人のことを知る上では欠かすことができないことで、三人の高校時代をもっとも象徴するものだろう。
「μ'sのことね……雅哉、あなた全然知らないのよね?」
「全く。名前だって昨日初めて聞いたぐらいだからな」
「それじゃあ、最初からでいいんじゃない?」
「私たち、最初から9人だったわけじゃないんだ。最初は3人で、お客さんが誰もいないステージからのスタートだったんだ」
「これがそのときの動画よ」
真姫が動画を再生した画面を差し出してくる。そこに映っていたのは穂乃果さん、ことりさん、海未さんの三人だった。
「作曲は真姫ちゃんだにゃー!」
「真姫が作曲か、すごいな」
「誉めても何も出ないわよ!!」
これが俗に言うツンデレってやつか。デレた時を見てみたい気がするけど俺には無理な話だろう。デレさせる方法なんて知らないし、それができれば今まで彼女なしなんて事態にはならなかったはずなんだ。
「それから私たちが加入したりしてだんだんと増えていって9人になって、ラブライブで、スポーツで言うならインターハイみたいなもので優勝して今に至るって感じよ」
「真姫さん?最初からとか言ったわりにはあっさりしすぎじゃないですかね?」
「細かく話してたらきりがないからしかたないじゃない。詳しく聞きたいなら……そうね、私たちの曲を聞いて気になったものについて、とかどうかしから?」
「それなら、帰って聞いてみるとして。今は適当に一曲選ぶからそれについてってのは?」
「うん。いいんじゃないかな?」
「それじゃあ──」
ポケットからスマホを取り出してμ'sの曲の一覧を検索。目をつぶってスクロールを繰り返して適当に指を止めてそこに書かれている曲名を確認すると、Love wing bellと書かれていた。
「その曲はダメにゃ!!」
「ダメって言われてもランダムだし俺には何が何やら」
「恥ずかしいからダメなの!この話は今日はダメ!わかった?」
「……お、おう」
凛の言葉に押しきられて話はなかったことにされてしまう。花陽と真姫に理由を聞こうとしてみるが、二人は凛が許可したらというスタンスらしい。
「たしかに、これは凛ちゃん次第かなぁ」
「後で動画を見れば理由がわかるわよ」
「動画は後で見るから置いといて、別の曲にするか?」
「もう一回凛たちのターンにするにゃ!」
結局、俺の高校時代の話や地元での暮らしに関しての話題が中心となって楽しい時間は過ぎ去っていった。実家で米作ってる話をしたら花陽がすごい勢いで食いついてきたのには驚かされたし、なぜか送られてくる新米をご馳走することを約束してしまった。
というわけで、第二話でした。今回なしになったウェディングドレスの話は絶対に入れるのでご安心ください。
次回以降ものんびりと大学生活を描いていけたらな―と思ってます