元女神たちとのキャンパスライフ 作:シラユキ
今回は前回の続きで東京観光編の後半。何人かゲストも登場しています。
「安心してというか、次の目的地じゃん」
浅草寺を離れてやってきたのは秋葉原。アニメやゲーム、パソコンの部品などそっちの趣味を持つ人にとっては一度は来てみたい場所。俺も新作デッキのパーツに、前に買いそびれたグッズなと欲しいものはたくさんある。まあ、その辺は今度ゆっくりと買いにこよう。
「ここに来たかったのは事実だけど、ここで何すんだ?」
「もちろん目的地は決めてあるわよ」
「雅哉くん、たぶん驚くんじゃないかな?」
「こっちにゃー!」
凛の先導のもと、一人で周囲のアニメやゲーム、カードのショップに視線を目移りさせてテンションをあげながら進んでいく。今度は来るときはあそことあそこと……あと、あそこもだな。金が消えそうとか思ったけど気にしてはいけない。
ショップを眺めながら進んでいくと俺の住んでいた近くにはなかった、あるいはあったけど知らなかった店が目につく。
「へぇ、スクールアイドルのショップとかもあるのか」
「私たちのグッズも、まだあるんじゃないかな?」
「さすがは大人気スクールアイドルだな」
「その大人気を誰かさんは知らなかったけどね」
「……そこはノーコメントで」
スクールアイドルのショップを見える範囲でよく見てみると見た目は高校生ぐらい、しかも女子が圧倒的に客層として多い。スクールアイドルとして成功することがアイドルになる登竜門だとか言われてるらしいし、興味を持つ人数も多いのだろう。
「で、その中でも伝説的なグループの三人と一緒にいるって贅沢な話だよなあ」
「着いたよー!」
ボーッと辺りを見ながら歩いて十分ぐらいだろうか、凛の足が止まった。とりあえず目的地はどこだったのかと確認しようとして目に飛び込んできたワードを疑ってしまう。
「は? メイド喫茶?」
俺は行きたいと言った覚えはないし、そんな趣味があるとか言った記憶もない。となると、凛たちに何かの意図があってここに来たことになるんだが、その意図が全然わからない。
「真姫さん?なんで目的地がメイド喫茶なんですかね?」
「行けばわかるわよ。凛、お願い」
「はーい!ほらほら、いくよー!」
凛に背中を押されるままメイド喫茶の中へと入る。
「お帰りなさいませ。ご主人様♪」
あー、耳が幸せすぎて溶けそう。なんか思ってたメイドと違うというか、天使だ。そう、この子は天使だ!
「凛ちゃん、久しぶり~」
「ことりちゃん久しぶりだにゃー!」
「……?」
凛の言葉でメイドさんをもう一度見て、聞いた声を思い返したところで入学式の日の記憶が蘇ってくる。そういやあの日も似たような感想言ってたな。結論としてはことりさんは天使!!
「雅哉、変なこと考えてるの顔に出てるわよ」
「……アッハイ」
「ここね、ことりちゃんのアルバイト先なんだ」
「秋葉原はμ'sに色々と縁のある場所なのよ」
「それじゃあ皆、席に案内するね~」
案内された四人掛けの席に俺と凛、花陽と真姫にわかれて座る。
「雅哉、この曲聞いてみて」
真姫から差し出されたイヤホンを耳に差し、流れている曲を聞く。その曲は聞いた瞬間にμ'sのものだとわかった。歌っている声も判断材料になったが、今朝聞いた気がする。
「この曲はね、ことりが作詞したのよ」
「秋葉原でライブをしようってことになって、秋葉原のことを私たちの中で一番知ってたことりちゃんが書くことになったんだ」
「作曲はもちろん真姫ちゃんだよー」
「……やっぱすげえわ」
実際にやったことがないけど、作詞作曲、衣装作りにダンスと全てを自分達の手でやり遂げることが大変なことなのは想像できる。その上で日本一になるということを成し遂げたμ'sはほんとにすごいと思う。
「そういや、色々と縁があるって言ってたけど他には何があるんだ?」
「さっき聞かせた曲のとき以外にもここでライブをやったりしたわね」
「あのときは人がいっぱいいたにゃー!」
「凛、それじゃ状況がまったくわからん」
「簡単に言うとね、日本中からスクールアイドルに集まってもらって皆でライブをやったんだ」
「その前にはアメリカでライブをやったんだよー。また行きたいにゃー!」
日本中のスクールアイドルにアメリカ、急に話の規模が大きくなった気がする。まあ、それだけのことができたのだから、μ'sが活動していた頃はそれだけ大きな存在だったのだろう。
「うん。でも、行くなら早いほうがいいのかな。 医学部は忙しいって聞くよ?」
「そうね。進級していけば実習も増えていくわ」
「雅哉くんも来るにゃ?」
「ん? いいのか? 花見のときは──」
「その話は今はなしにゃー!」
どうやら花見のときのことを思い出してしまったのだろう。凛の顔が真っ赤になってしまっている。
「雅哉、あの日凛に何を言ったのよ」
「話の流れでポロっとやらかしたんだよ。強いて言うなら夏休みに長野に行きたいってだけだ」
「なんでその話であんな反応をするようになるのよ……」
「そこは気にしないでくれ」
真姫に呆れられながらもこの話を切り上げる。じゃないと横から俺をつねろうと伸びてくる手にひどい目に合わされてしまう。
「それじゃあ、次は何の話にするの?」
「それじゃあ──」
この後、時々ことりさんが話に入ってきたりもしながらメイド喫茶でのんびりと過ごした。色々注文とかもしてみたけど、もちろん毎回凛たちにからかわれた。
「次は……和菓子屋?」
秋葉原を離れてやってきたのは穂むらという和菓子屋。わざわざやって来たのは誰かのおすすめの店だったりするのだろう。
「ここはちょっとした寄り道、かな?」
「目的地は別のところよ」
「とりあえず入るにゃー」
凛たちに続いて店の中へと入る。
「いらっしゃいませー!!」
店の中に入ってすぐに俺たちを出迎えたのは普段の凛と同じかそれ以上に元気な声。こういうとろってもっと静かなというか、落ち着いた感じだと思ってた。
「あ、君!前に会ったよね!」
「え?…………あ、穂乃果さん!」
前に会ったと言われてびっくりしたが、相手の顔をみて思い出した。この人はμ'sのリーダー高坂穂乃果さんだ。今日はよくμ'sの人に会うな……
「今日はどうしたの?」
「凛たちに案内してもらいながら東京観光行って
、今もその途中です」
「凛ちゃん、次はどこ行くの?」
「次は神田明神だにゃー」
神田明神……名前からして神社だろう。
「そっか。あそこに行くって決めたのは……真姫ちゃん?」
「ええ。ちょっと理由もあってね」
真姫は俺に聞かれないためなのか穂乃果さんに耳打ちを始める。おそらくその理由とやらが関係しているのだろう。
「雅哉君、だよね? これ、プレゼント」
手渡されたのはお饅頭などの和菓子。どう考えても売り物だ。
「これ、いいんですか?」
「大丈夫、大丈夫!ほら、花陽ちゃんたちも!」
勢いに押されるままに花陽たちも和菓子を受け取る。
「ここで何か買っていくつもりだったけど、もらえちゃったしそろそろ行こうかしら」
「雅哉君、また遊びに来てね!」
穂乃果さんに見送られながら穂むらを後にした。
「ここがさっき言ってた目的地、神田明神よ」
陽も落ち始め空も夕暮れのオレンジ色に染まり始めた頃、神田明神という神社へと着いた。秋葉原でのメイド喫茶、さっきの寄り道から考えるとここも何かμ'sに縁があるところなのだろう。
「ここの階段はいっぱい登ったにゃー!」
「ここはね。私たちがよく練習してたところなんだよ」
「普通に神社としてお祈りもしたけどね」
「ここはウチらにとってのパワースポットなんよ」
「へぇ…………ん?」
おかしい。なぜか今ここの説明をした声が四人分あった気がする。
「希ちゃん、今日もアルバイト?」
「もう終わって帰るところやったんやけどね、花陽ちゃんたちの声が聞こえた気がしたから来てみたんや」
いつのまにか近くにいたのは東條希さん。入学式の日にμ'sのメンバー全員の名前呼びを提案した人であり凛と真姫に比べてとても大きな──
「雅哉くん、階段から落ちたいのかにゃー?」
「凛、軽く突き落としてから考えてもいいんじゃないかしら?」
「ほんとすいませんでした。階段から突き落とすのはマジでやめてください」
「君、やっぱりおもしろいね。ウチの目は狂ってなかったわ。それはそうと。ずばり、三人の中で誰が一番タイプなん?」
「「「「!?」」」」
唐突な爆弾の投下。この人絶対に楽しんでやってるぞ!今もニヤニヤしながらこっちを見てるし。凛たちはといえば顔を赤くしながら俺のことをチラチラと見ている。
「それは…………」
「言いにくそうやし、まずはウチだけに教えてほしいかな」
助け船を出すような形で三人から少し離れたところへ連れていかれる。これ、助かったといえば助かったけど、原因はこの人だよな?
「それで、実際のところは三人のことどうなん?」
「言わないとダメですか?」
「言わないとあることないこと言ってしまうかもな~」
「……わかりましたよ。…………三人とも可愛いですしそれぞれにいいところがあって魅力がある。一緒にいて楽しいですし。でも、誰がタイプとかは今はないです」
言うしかないとはいえかなり恥ずかしいことを言ってる気がする。このまま三人のところに戻ったら変な反応をしてしまうかもしれない。
「聞きたいことも聞けたし、戻ろか」
三人のところに戻ってくると俺の答えを期待する視線が突き刺さる。あんな恥ずかしいこと直接言えるわけがない。
「三人ともタイプやって~。このままハーレム作りたいって言ってたで」
「は!? 俺そんなこと一言もいってませんよ!!」
たしかに三人ともそれぞれにいいところがあるとは言ったけどさ!? ハーレムとか一言もいってないぞ!
「雅哉、そんなこと考えてたのね」
「最低だにゃー」
「私も、それはちょっと無理かな」
「希さん、フォローしてくださいよ!」
「ハーレムは冗談やけど、三人とも魅力的って言ってたから間違ってもないで~」
フォローはしてもらえたけど、三人とも顔を紅
くしてしまった。俺は俺で声を掛けづらいので全員が黙りこんでしまう。
「それで、今日はここに何の用なん?」
「せっかくの休みなんで東京観光でもしようかなって思って三人に案内してもらってました。コースは任せっきりにしてますけど」
「どこ行ってたん?」
「最初にスカイツリーと浅草。それからは秋葉原に行ってここですね。寄り道はしてきましたけど」
「花陽ちゃん、まだどこか行くん?」
「えっと、最後に──」
俺に聞かれない為なのだろう、耳打ちという形で希さんに最後の目的地が告げられる。
「君、よかったなあ」
「はい?」
「今日回ってきたとこを思い出してみるといいで。あと、これからも凛ちゃんたちと仲良くしたってな」
「……はい」
その後、希さんと別れて今日の最後の目的地へと出発した。
「最後はここにゃー!」
最後にやってきたのは音乃木坂学院。いくら俺でも、ここがどこなのか、彼女たちにとってどういう意味を持つのかは知っている。
「ここがμ'sの原点か」
「ええ。私たちμ'sにとって特別な場所よ」
「学校がなくなっちゃうのをどうにかしようって、穂乃果ちゃんがスクールアイドルを始めて、ちょっとずつメンバーが増えていって」
「でも、9人揃うまでにも色々あったにゃー」
「一番の強敵は絵里だったわね。最初は衝突してばかりだったもの」
9人全員が揃うまでに何があったのか俺は知らない。それでも、色々なことを乗り越えてきたからこそ多くの人を惹き付けたμ'sという存在になれたのだろう。
「なあ、μ'sとして過ごした時間はどうだった?」
「私たちだけの特別な時間、かな。忘れられない、大切な思い出だよ」
「そうね。だからこそ絵里たちが卒業するときにたくさん悩んで、全員でμ'sは私たちだけのものにしたいっていう結論を出したのよ」
「凛たちにとってμ'sは特別な居場所で、最高の思い出だよ」
迷いなく紡がれる言葉から3人にとってμ'sがとれだけ大きな存在なのか、どれだけ大切にしたいものなのかが伝わってくる。
「……そっか」
そんなμ'sに縁のある場所を今日はいくつも回ってきた。希さんも言ってたけど、今日そんな場所を回ったことには何か意味があったはずなんだ。
「そんなに難しい顔して考えなくてもいいわよ。雅哉にμ'sのことを知ってほしかった、それだけよ」
「私たち、これからも雅哉くんと仲良くしたいからやっぱりμ'sのことは知っててほしいなって思って」
「ていう、真姫ちゃんの発案だにゃー!」
「り、凛!余計なことは言わなくていいの!」
さっきまでクールに決まってたのに、一瞬て真姫の顔が真っ赤に変わる。それと同時に納得がいった。東京の案内を頼んだときに真姫が呟いていた特別ゲストの内容も予想がつく。希さんは偶然だとしても、ことりさんと穂乃花さんは予定に入っていたのだろう。
「……やっぱ、μ'sのことはもっと知ってかないとダメだな」
「雅哉くん、ゆっくりで大丈夫だよ。その間に私たちに雅哉くんのこと教えてほしいもん」
「そっか。まあ、あれだ。改めて、これからもよろしくな」
「よろしくにゃー」
「ええ」
「よろしくね」
夕陽に照らされているせいだろうか、俺のほうを向いて微笑む三人の姿はいつもより魅力的に見えた。
というわけで、μ'sに縁のあるところを巡った東京観光、後半でした。今後も気まぐれに他のμ'sメンバーが登場してくるかと思います。
次の話は作品内の時間の流れに合わせて五月後半から六月始めごろの話か、特別編でリアルタイムに七夕編を投稿する(望み薄)予定です。