元女神たちとのキャンパスライフ 作:シラユキ
色々とあったゴールデンウィークからおよそ一週間、俺の目の前には机に突っ伏してうなだれている凛の姿があった。俺も同じような体勢だ。
「大丈夫か?五月病は……凛だしないな」
「それどういう意味にゃ? 絶対いい意味じゃないよね?」
「気にすんなって。普段から元気だってことだよ」
「……そういうことにしといてあげるにゃ」
こんな軽口を言い合ってはいるが、お互いに相手がうなだれている原因はわかっている──ただ単に現実から目を逸らしたいだけである。
「……テストいやだにゃー」
「あー、やりたくねえ」
そう。学生の宿敵とも言えるテスト、中間テストの日程と範囲がいくつかの科目で発表された。高校のときより科目数が少ないとはいえ、テストはテスト、いやなものはいやなのだ。
「とりあえず……七海さんに過去問もらうか。凛も欲しいか?」
「欲しいにゃ!」
大学のテストの高校までと違う点、それは科目によっては過去問が存在するということだ。教授が変わってたりしたらあてにならないが、そこが変わってなければ使えることが多い。
七海さんは頼めば過去問をくれると思うが、凛にも渡すと言えば可能性がもっとあがるだろう。
「今日の練習終わりに頼むとして、真姫と花陽はいつ来るんだ?」
「さっき連絡あったからもうすぐ来ると思うにゃー」
「じゃあこのまま待ってるか」
「そうだねー」
そのままの姿勢でだらけたまま待つこと数分、真姫と花陽か凛を迎えに来た。……おまけもつれて。
「要、なんでお前がいる?」
「授業が一緒だったからな。凛ちゃん迎えに行くならお前も一緒にいるだろうという予想だ。だからお前を迎えに来た」
「きめーよ。建前はいいからとっとと本音を言え」
「お前を口実に真姫ちゃんたちと話したかった。俺は
「……だと思った。とっとと練習行くぞ」
「雅哉くん、大丈夫なの?」
机に突っ伏したままだったからだろう、花陽が俺のことを心配してくれる。ほんと、テストが嫌だからとかいう理由でこんな体勢だっただけなのに心配してくれる花陽は癒しだ。
「あー、二人で現実逃避してただけだから。全く問題ない」
「そうなの、凛ちゃん?」
「そうだよー」
「二人とも、どうせテストでしょ?」
「……正解」
「……あってるにゃ」
原因は何とも言ってないのに、真姫に俺たち二人がうなだれていた理由をさらっと当てられてしまった。これ、真姫には俺と凛が勉強しないイメージがあるってことだよな?
「よし、この話題はやめよう。要、とっとと行くぞ」
「それもそうにゃ!真姫ちゃん、かよちん、帰るにゃ」
「あー、これは原因当てられるわ」
「……うん。私もそう思うよ」
どうやら、要と花陽から見てもわかるぐらにはわかりやすいらしい。
「七海さん、中間テストの過去問ってあります?」
「どの科目? たぶんあると思うけど」
「えっと、こいつらです」
練習も終わり、俺はデュエルで連勝して気分が良さそうな七海さんをつかまえて過去問をお願いしてしていた。スマホに入力してあるテストの一覧を七海さんに見せると、特に悩む様子もなく答えが返ってきた。
「全部残してるはずだし、たぶんあるわ。明日は土曜ね……あんた、明日どうせ暇でしょ? うちに来なさい」
「はい?」
たしかに、俺には明日の予定は何もないから暇なのはたしかだけど話の流れがよくわからない。
「一回生の頃のはまとめて段ボールに入れてあるのよ。探すのめんどくさい」
「欲しけりゃ自分で探せってことですか?」
「そういうことよ」
「わかりました。俺、七海さんの家知らないんですけどどうしましょう?」
「そうね……また時間と場所連絡するわ。そこに来てくれたら案内するわ」
「了解です…………で、なんでデッキをカットしてるんですか?」
さっきまでやってたから手元にデッキがあってもおかしくはないんだけど、どう考えても対戦する準備をしているようにしか見えない。
「話は終わったでしょ? 相手しなさいよ」
「ですよねー」
環境デッキはやっぱり強かったです。
━━━━━
「どんなところなんだろうねー?」
「普通にマンションだって聞いてるぞ」
翌日。七海さんに指定された場所に凛を連れてやってきた。過去問を探すのをちょっとぐらいは楽しようと昨日凛に連絡をつけたら二つ返事で了承されたので、ここに来る前に合流したのだ。
「ちゃんと時間通りに来てるわね。あれ、凛ちゃんもいるの?」
「雅哉君に呼ばれたにゃー」
「二人で探したほうが楽かなーと思いまして」
「まあいいわ。それじゃあ行くわよ」
七海さんの隣に凛、二人の少し後ろに俺という位置関係で歩く。二人は話すことに夢中になっていて歩くペースが早くないのでのんびりと後ろをついていける。
適当に話を振られたりしながら歩くことおよそ十分。七海さんの暮らしている部屋に着いた。部屋の中には家具や家電、生活に必要なもの、そして圧倒的存在感を誇るゲームとカードの山。なんというか、さすが七海さんって感想しか出てこない。
「すごーい!いっぱいあるにゃー!!」
「あ、今からやる? いっぱいあるから凛ちゃんが好きそうなのもきっとあるよ?」
「七海さん、せめて今日の目的終わってからにしません?」
「それもそうね。たしか…………あの中よ」
七海さんが指さした先にあったのはイメージしていたのと比べて数倍の紙が入っている段ボール箱か三つ。どう考えてもテストだけが入っているようには見えないし、レジュメが入っているとしても明らかに多い。
「もしかしてこれ、一年分入ってます?」
「もちろんよ。今回の分以外も、欲しいのがあったら持っていっていいわよ。というか、毎回連れてくるのめんどいからできる限り持っていって」
「それ、箱ごと持っていった方が早い気がするにゃー」
「お前、自分が探すのがめんどくさいだけだな?」
「……そんなことないにゃー」
「おい、なんだその間は」
「あ、別に箱ごと持っていってくれてもいいわよ」
七海さんの一言で今ここでテストを探すという手間はなくなった。しかし、箱ごともらうならそれはそれで別の問題が発生する。もらった箱をどこで保管するかだ。持って帰るのは俺か凛、となると必然的にどちらかの家で保管することになるが──。
「あんた、凛ちゃんにこんな重いの持って帰らせる気?」
「ですよねー。凛、俺の家に置いとくからせめてそこまで運ぶ手伝いぐらいはしてくれ」
「わかったにゃー」
これで無事に?テストの過去問を入手できたので今日の目的は達成できた。この後にこの段ボールを運ぶことはあまり考えたくないが、テストをパスするための必要経費としてわりきってしまおう。
「それじゃあ、問題も解決したことだし遊びましょうか」
「遊ぶにゃー!」
「凛ちゃん、どんなのがやりたい?」
「うーん、体を動かすやつがいいなあ」
「それならこれやろっか」
七海さんが選んだのは最新ハードのテニスゲーム。コントローラーを振ればそれに連動して画面内の有名キャラクターがラケットを振るので、あたかも自分がテニスをしているかのようにプレイすることができるものだ。
「これは凛も知ってるにゃ!」
ゲームが起動され、七海さんに教えられながらの凛のプレイが始まる。さすがの運動神経と言うべきなのか、すぐに慣れてラリーができるようになっていく。その様子を見た七海さんはコントローラーを手に取り、凛との対人戦をスタートさせる。どうやら基礎はわかったみたいだから後は習うより慣れろという方針でいくのだろう。
「雅哉くん、その程度か、にゃ!」
「うっせえ!こちとらほぼ初見で相手してんだぞ!」
そんなこんなで数十分後、俺は凛とシングルスで勝負をしていた。七海さんとの実践のおかげで普通にプレイできるようになった凛に対していきなりコントローラーを渡されて操作説明をされただけの俺、正直かなり分が悪い。過去に似たようなゲームをやった経験があるから今はまだどうにかなっているもののこのままだと負けるだろう。
「凛ちゃんがんばってねー。勝ったらアイスおごってもらえるわよ!」
「それって誰がおごるんですか、ね!」
「え?もちろんあんたよ?外暑いし一人で買ってきてね」
「ですよねー!そんな気はしてましたけど!」
「アイスの為に、がんばるにゃー!」
負けられない理由が増えてしまった。アイスを奢るぐらいは別にいいんだが、この暑い中で一人だけ外に出て買い物いくのは悔しい。凛がゲームに慣れきって圧倒される前に試合を決めてしまうしか俺に勝ち筋はない。
「これでどうだっ!」
「甘いにゃ!」
「ならこれで!」
「それも返せるよっ!」
勝負を決めようとはするものの、すぐには点が取れずにラリーが続く。なんとか点を取っても次のラリーで取り返されてしまい点差がつけられないまま最終セット、点を取れば勝てるというところでデュースに持ち込まれてしまった。ここまできたら完全に実力勝負しかない。凛の運動神経と俺のこれまで培ってきたゲーム経験、どっちが勝つかの勝負になる。
「この勝負、負けてたまるかよ!」
「勝つのは凛にゃ!」
「凛ちゃん頑張ってねー」
凛のサーブが放たれ、それを打ち返す。それを返され、更に打ち返す。ここまで試合を続けると最初はただ打ち返すだけだった凛もドロップやロブ、左右に走らせるなど勝つための工夫をしてくるようになっているので一瞬たりとも気が抜けない。
「ここだっ!」
前後左右にお互いキャラクターを動かしながらのラリー。その中でできた一瞬の隙、それをついて凛がとれないコースへと打ち込む。それは無事に決まり、一歩リード。あとはもう一点とるだけだ。
「まだまだ、取り返すにゃ!」
やる気を出している凛には悪いが、この勝負はたぶん俺の勝ちだ。このゲームはほとんど普通のテニスゲームだが、普通のテニスには絶対に存在しないものがある────それは必殺技だ。
「これで、終わりだっ!」
「にゃ!? そんなの卑怯にゃー!」
完全に存在を忘れていた必殺技での不意打ち。凛は反応できず、得点を取って俺の勝ちとなった。
「雅也くんあんなのずるにゃ!」
「ゲームシステムに文句を言わないでくれ。あれは凛も使えたからな?七海さん、説明しました?」
「したわよ? あんたと同じで忘れてたんじゃない?」
「あ、やっぱりバレてました?」
「だいぶ前から使えたからね。ここまで温存とか考えてるようには見えなかったし」
「もう一回にゃ!今度こそ勝つにゃ!」
「七海さん、この後用事とかってあります?」
「ないわよ。凛ちゃんの気がすむまで相手してあげなさい」
結局、見ているだけじゃ我慢できなくなった七海さんも混ざって試合を続けたので気がついたら外は暗くなり、昼間の暑さも少しは和らいできていた。
「もうこんな時間か。凛、帰るぞ」
「えー、凛はまだ遊びたいにゃー」
「遊ぶんならまた付き合ってやるから、本格的に暗くなる前に段ボール運ぶぞ」
「……はーい」
「連絡してくれたら、いつ来てくれても歓迎するよ!」
七海さんに見送られ、俺が段ボールの中身を2.5箱分、残りを凛が持って俺の部屋へと向かう。電車で部屋の最寄り駅まで移動し、そこからは二人並んで歩く。
「今日は楽しかったにゃー」
「テストもらいに行くだけのつもりだったのにな。まあ、盛り上がったし気にしになくていいか」
「今度はかよちんと真姫ちゃんも一緒にやりたいにゃー」
「七海さんなら即決でOKだろうし、今度相談してみたらどうだ?」
「そのときは雅哉くんにリベンジするからね!」
今日のゲームの結果はお互いに勝って負けてを繰り返したがトータルの戦績では俺の勝ち越しになったので凛はリベンジに燃えている。
「今度も勝ち越してやるから覚悟しとけ。それはそうと凛、今日って多少は帰るの遅くなっても大丈夫か?」
「大丈夫だけど、どうしたの?」
「帰って飯作るのめんどくさいし、外食で済ませるともりだから一緒にどうかと思ってな」
「んー、雅哉くんが何かご馳走してくれるなら考えるにゃ」
「なら遠慮しとく。そこまでして来てもらう必要はないからな」
「冗談にゃ!凛も一緒に食べるよ」
「はいはい。それじゃあ何がいいんだ?」
最初から一緒に食べるつもりであんなことを言ってたことが分かっていたからこっちも軽い冗談のつもりであんな返しをしたわけだが、凛は俺の冗談を気にとめず軽い調子で返事をしてくる。その様子を見るとあんな返しをした自分がすっかりあほらしくなってくる。
「それは雅哉くんのセンスに期待するにゃ」
「ならその辺歩きながら適当に決めるか。さてと、着いたぞ」
凛との話にばかり意識を割いていたらいつのまにか俺の部屋のあるマンションに着いていた。鍵を出してマンションの中に入り、そのまま部屋へと向かう。まさか誰か来ることになるとは思ってなかったし、それが異性だなんて想定できるわけがないのであまり片づけられてないけど、長居するわけじゃないし相手は凛だからそこまで気にしなくてもいいだろう。
「ここが雅哉くんの部屋なんだねー」
「面白いものは何にもないけどな。荷物はその辺に適当に置いといてくれ」
俺の部屋にあるものはと言えば生活に必要なものと教科書などの勉強に必要なもの、カードやゲーム、パソコン系の趣味に関するものくらいだ。置いてあるものの種類的には七海さんの部屋とそんなに変わらないと思う。
「はーい」
「どうする?すぐ食べに行くか?」
「もうちょっと休憩してからがいいなー」
「そういうのは部屋を漁る手を止めてから言おうな。正直に言ったら考えてやるから」
「考えるだけでどうせいいって言わないにゃ」
「まあな。部屋を調べたいなら次来た時にしてくれ、どうせすぐ来ることになるわけだし」
「そうなの?」
「お前、俺一人であの中から必要なテストの問題を探せと? 見せるからには手伝ってもらうからな」
「それならお楽しみにしとくにゃ」
今後の為に主人公の家を一回ぐらい訪ねといてもらおうと話を進めていたはずなのに、気がついたらゲームして遊んでる話になってました。なんでこんなことになっちゃったんでしょうね?
もう一話か二話投稿したら夏休み編的な感じで旅行に行く話でも書こうかなーと思ってます。いつになるかはわかりませんが、楽しみにしてくださる方がいれば気長にお待ちください