無能と言われる提督が一人ぼっちの時雨を笑顔にしてみせる   作:マスターBT

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脳内にある構成を文にするのに、ものすごく手間取りました。
本当、おまたせしましたm(_ _)m

今回はシリアス過多です。甘い話が書きたい。


揺るがない覚悟

『周囲の海域に深海棲艦を確認。提督と艦娘は出撃の用意を』

 

警報を聞くと同時に、俺は立ち上がる。

乱れていた軍服を正し、妖精を探す。そして、それと同時に気づく。時雨が震えている。

真っ青な顔で、恐怖と絶望に塗りつぶされた、そんな表情だ。そんな時雨にかける言葉が見つからず、しばらく俺の口はただ空気を吐き出す。

くそっ、こんな時に言葉が全く思い浮かばないなんて。

 

「妖精!確認できた深海棲艦の現在地と種別を教えてくれ!」

 

自分の情けなさから逃げるように俺は妖精へと指示を飛ばした。

全く嫌になる。叩き込まれた動作は、俺の思いとは裏腹に最適解を指示し動かし続けた。

 

「ここから、5マイル。しゅべつはくちくかんいっせき!たぶん、はぐれ」

 

「…はぐれか。それなら、なんとかなるかもしれないな。あり合わせの資材で武器は作れるか?」

 

「かんむすようのそうびを、つくるにはこうざいがたりないよ!」

 

妖精は鋼材が足りないことを俺に教える。

言葉が足りなかったか。俺は別に時雨用の武装の話をした訳ではなかった。そもそも、こんな震えてる時雨を戦わせる気は無い。

なら、このまま見逃す?いや、それは論外だ。俺は軍人。はぐれとはいえ、深海棲艦を逃せば何をするか分からない。

港町に被害を出すわけにはいかない。だったら、答えは一つしかない。

 

「言葉が足りなかった。人間用、俺が使う武器で良い。

可能なら、RPGの様な爆発する武器が好ましい」

 

俺が戦う。

それがこの場の最適解だ。

 

「て、提督!?」

 

時雨が驚いた声をあげる。

ごめんな、時雨。気の利いた一言も俺は言ってやれない。

 

「……たしかにつくれるよ。にんげんようなら、いっぷんもあればそれなりにつくれる。

でも、ていとく。ひとつだけ、こたえて。しぬつもり?」

 

妖精が真剣な声と眼差しで俺に質問してくる。

ここまでずっと付き合ってくれたこいつの事だ。なんとなく、予想はついてるのだろうなと思いつつ口を開く。

 

「そんな覚悟はこの職に就いた時にしている。軍人は一般市民の営みを守る為に、その命を捧げる存在だ。

だけど、この覚悟は死ぬ覚悟であって、死ぬつもりではない。俺は、生きる為に死地へ行く」

 

あぁ、そうだ。

俺にとっての軍人とは、死ぬ覚悟のある生きたがりだ。一般市民を守る為なら、その命を捧げるのに生きたいと願う存在。

理由は人それぞれだけど、今の俺には時雨を笑顔にするという目的がある。

それはまだ、達成できていない。達成できていないなら、ここで死ぬわけにはいかないんだ。

 

「わかった。すぐにつくる」

 

妖精が飛んでいく。俺の覚悟が伝わったということだろう。

この場に震えている時雨と俺だけが残される。先程までの心地よい沈黙はなく、心苦しい沈黙が場に流れている。

ずっと下を向いて、両手を強く握っている時雨。そんな時雨を見ても俺は何も言えない。

さっきは、簡単に動いてくれた口が全く動かない。何か言わなければという思いだけが先行する。

 

「…提督は……怖くないの?死ぬことが」

 

沈黙を破ったのは時雨だった。

掠れた声で絞り出した様な声だったけど、痛いほど沈黙だったこの部屋で聞き逃すことなんて無能の俺でもなかった。

 

「怖くないと言えば嘘になる……いや、訂正しよう。めちゃくちゃ怖い」

 

「なら……どうして、戦いに?」

 

それが義務だから、仕事だからと答えようとしてやめる。

なんとなく時雨はそういう答えを聞きたいんじゃないのだろうと思った。珍しく直感が働いた様だ。

 

「そうだな……理由があるからだろうか。ここで俺が戦いに行く意味と価値がある」

 

しゃがんで下を向いている時雨と視線を合わせる。

ビクッと時雨は震えるが、逸らさない。相変わらずの目だが、俺の言葉の続きを待っている様に感じた。

 

「色々と建前はあるけど、俺個人的な答えを言うなら、君が傷つかなくて済む。

兵器としての誇りもあるとは思うが、今にも吐き出しそうな君に俺は戦って来いと命じる事は出来ない」

 

艦娘は兵器。

これを否定する気はない。ないけれど、性格があり感情がある彼女らを思いやらないという選択は取れない。

 

「……」

 

俺の言葉に返事を返さない時雨。

なんとなくその雰囲気が暗く落ち込んでいる様に感じる。だから、俺は慌てて続きを口にする。

 

「だけど!俺じゃ、深海棲艦を倒せない。追い払う事は出来るかもしれない。

でも、それじゃ意味がない。だから、俺はこれから時間稼ぎに行く。戦える様になったら来てくれ。君はうちの唯一の戦力だからね」

 

「……!」

 

目を見開く時雨。何か言いたそうに口を開くが、そのタイミングで妖精が勢いよく現れる。

 

「つくれたよ!」

 

「ほんと、早いな…ありがとう。行ってくる」

 

時雨の言おうとした事が気になるが、事態は急を要する。

立ち上がり、妖精の先導の元鎮守府を駆け抜ける。部屋には時雨一人が残された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深海棲艦が来たと警報が響いた時、全身から血の気が引いた。

僕は艦娘で兵器の筈なのに、怖くて怖くて仕方がなかった。この提督とゆったりとした時間が過ごせるとは思ってなかったけど、いくらなんでも急だった。

僕が恐怖に支配されて、身動きが取れなくなっている間、提督は妖精に指示を出したり忙しそうにしていた。

そんな中、僕は下を向いて提督が淹れてくれたカフェオレの入ったカップをただただ眺めていた。

 

「言葉が足りなかった。人間用、俺が使う武器で良い。

可能なら、RPGの様な爆発する武器が好ましい」

 

だからこの言葉を聞いた時は驚いて、提督の方を見た。

自分が戦えと命じられると思っていた。そして、艦娘は提督の命令に逆らえない。恐怖で動けないこの身体を命令で無理やり動かしてくれるとそう思っていた。だけど、提督は真剣な顔で自分が戦いに行くとはっきり宣言していた。

妖精と何か話していたけど、僕の頭の中は提督の行動への疑問で一杯だった。

だから、勇気を振り絞って聞いてみた。

 

「怖くないと言えば嘘になる……いや、訂正しよう。めちゃくちゃ怖い」

 

その答えは僕と一緒だった。

死ぬことへの恐怖がありながら、この人は戦うことを選んだ。僕にはそれが義務とか役目だと思った。

だって、提督は軍人で僕は艦娘。戦う事が当たり前なんだから。

 

「色々と建前はあるけど、俺個人的な答えを言うなら、君が傷つかなくて済む。

兵器としての誇りもあるとは思うが、今にも吐き出しそうな君に俺は戦って来いと命じる事は出来ない」

 

目を合わせて、真剣に答えてくれた提督。

その答えはまさかの兵器である僕を気にかけての事だった。分からない、どうしてこの人は僕なんかを気にかけてくれるんだろう。

こんな欠陥だらけの僕をどうして……

自分にもよく分からない感情に支配されてる姿を見て、焦った様に言葉を続ける提督。

焦りで早口だし、手もわたわたと動いてる側から見て、格好良いとは言えない姿だったけど、まっすぐ僕の目を見て言ってくれる。

 

「だけど!俺じゃ、深海棲艦を倒せない。追い払う事は出来るかもしれない。

でも、それじゃ意味がない。だから、俺はこれから時間稼ぎに行く。戦える様になったら来てくれ。君はうちの唯一の戦力だからね」

 

こんなどうしようもない僕を、提督は戦力だと言ってくれるんだね。

妖精に先導されて出て行く提督を見送りながら、真剣に考える。前の提督とはきっと、本当に違う。

僕の事を見てくれて、考えてくれて。

 

「……うん。僕は僕の事が信じられない。だけどーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖精が作ってくれた武器を小型の船に乗せる。

サイズは小さいが、この船は妖精が改造してくれたもので中々に速度が出せる。すでに点検は済ました。

船の動かした方は海軍学校で習った。問題なく動かせる。レバーやらなんやらを操作し、船を動かす。

深海棲艦がいる場所は、妖精式レーダーではっきりと分かる。最速で飛ばしながら、肉眼での索敵も忘れない。

 

「RPGは3本。他は、連中にとっては豆鉄砲以下の銃か。気を引きつけて、港町から遠ざけるぐらいなら可能か?」

 

駆逐艦タイプの深海棲艦は基本的に、知能が低いとされる。

見た目も怪物に近い事から推測するに、こちらで言う猟犬代わりの犬と言った感じだろうか。

んー、自分で表現しておいてあれが犬とは思えない……っと、すぐ思考が逸れる。

人型の深海棲艦と違って、こちらの意図を考えると言った行動はしないらしい。上司の言葉を信じるならだけど。

 

「まぁ、はぐれって事が証拠だよな。もしかしたら、俺並みの方向音痴なのかもしれないけど」

 

それなら友達になれるかも?とか考えて、アホな事を考えてるなと自分で突っ込む。

きっと恐怖を紛らわす為だろうけど、思考が落ち着かない!

 

『てきせっきん!かいてきようい!』

 

妖精レーダーが反応する。

それと同時に肉眼でも深海棲艦を見つける。あれは…イ級とか言われるやつか。

まずは、初撃を与えるのが大事だ。俺が敵になり得ると思わせる。RPGを構え、照準を合わせ放つ。

ボシュ〜!という音とともに、飛んでいきイ級へと直撃する。

 

『gya!?』

 

「いやぁ、無傷か。まぁ、当たり前か……ほら、こっちだイ級!!」

 

わざわざスレスレを通り、存在をアピールする。

すると、面白いように釣れる。すごい勢いで、俺を追ってくる。まじで、怖い。

舵を右に左に切りながら、飛んでくる砲撃を避ける。イ級の興味が失われないように、豆鉄砲程度の銃を適当に撃つ。

逃げながら精密に撃つ腕は俺にはありません。

そんな時、船が勢いよく揺れる。どうやら至近弾があったらしい。海水を勢いよくかぶりながら、運転する手は止めない。

止めたら俺は死ぬ。決死の覚悟で、船を動かしていると砲撃が飛んでこなくなる。

 

「くそっ、飽きたってか?もう少し付き合ってくれ!」

 

追いかけるのをやめて、止まってるイ級に二本目のRPGを撃つ。

今度は右目に着弾した。

 

『gyaaaaaa!!!!』

 

イ級が凄まじい悲鳴をあげる。

煙幕が晴れるとどうやら右目が壊れたらしい。流石、妖精印のRPG。火力が違う。

って、関心してる場合じゃねぇ!走って操縦席に戻り、再び逃げる。さっきより正確な砲撃が飛んでくる。正直、いつ被弾してもおかしくない。

だけど、今のところ目論見は成功している。あとはどう逃げるか、そう考えると同時に爆発音が聞こえ船が大きく揺れる。

 

「く、掠った程度だってのに左側が持ってかれた。浸水は……ギリギリしてないか」

 

浸水はしてないが、速度が下がる。

被弾して破損したせいで水圧を受け流し辛くなってしまった。不味い…このままだと直撃してしまう。

やっぱり無茶だったか?

 

「いいや…諦めない…俺は必ず生きて戻る!」

 

勢いよく舵を切り、破損した部分を水中から出すように傾ける。

浸水するが、一時的に先ほどより加速したお陰で直撃するはずだった砲撃が至近弾へと変わる。とは言え、そろそろ船が限界だ。

ずっとトップスピードを維持しているせいで、いくら妖精謹製の船でもエンジンの排熱が追いついていない。

 

『grrrr? 』

 

先ほどの攻撃が当たらなかったのが不思議なのかイ級が不思議そうな声を出している。

本当に頭の方が残念で良かった…今追い討ちされたらやばい。

だけど、時間稼ぎは成功したようだ。来てくれると信じていたぞ時雨。

 

「提督!」

 

勇気を振り絞って来てくれた。

時雨の砲撃がイ級に大打撃を与える。中破ぐらいには持っていけただろう。

ふぅ、と安心して一息吐いた瞬間に見えてしまった。煙幕の中から、俺より圧倒的な脅威とみた時雨に砲身を向けるイ級の姿が。

時雨はそれに気づいていない。というより、そんな余裕がない。

 

「時雨ぇ!避けるんだ!!」

 

「…え?」

 

俺の言葉で状況に気づいた時雨。

だけど、戦場に来るのですら手一杯な時雨は動けない。俺は急いで、船を時雨の正面まで動かし、最後のRPGを構える。

ボンッ!という音ともにイ級から砲弾が発射される。時雨へと向かうそのコースにギリギリ割り込み、砲弾に向けRPGを放つ。

凄まじい衝撃と共に、俺の身体は宙に浮き、海面へと勢いよく叩きつけられる。

 

「てい…!……提督!!」

 

良かった……時雨は無事のようだ…

安心して俺は意識を手放した。

 




船の事とか詳しくないので、おかしいところがありましたら、ご指摘をお願いします。
次回から改良していきますので。

うちでは人型になればなるほど知能が高い設定でいきます。

感想・批判お待ちしております。
次は早く登校できるといいな…
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