無能と言われる提督が一人ぼっちの時雨を笑顔にしてみせる   作:マスターBT

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最近、生活サイクルが乱れまくってます。


誰かと一緒に食べること

「うわぁ…」

 

風呂を確認して出た俺の第一声はすごい情けない声だった。

風呂のありとあらゆる場所がカビており、探さなくても分かるぐらい黒いGがカサカサと動き回っている。

シャワーや風呂も錆び付いてるし、そもそも水が出ない。時雨は一体、どこで風呂に入ってたんだろう…

 

「仕方ない。昼になる前にカビとGの撤去をしよう」

 

まずは、風呂場の水分を全て拭き取る。湿気などは、カビを増幅させる要素でしかないし、掃除に関しては邪魔でしかない。

濃いカビの部分に、塩素系の洗剤を撒き、上からラップを貼る。その場所を一旦放置し、カビの薄い部分への掃除を開始する。

時間がないから、物量戦に持ち込む。カビに洗剤をつけ、10分放置し流す。これを繰り返す。

もちろん、洗い流して付着した水分はしっかり撤去してから、再び洗剤をつける。

カサカサして鬱陶しいGは、適当に捕まえて閉じ込めたり、流れ出る洗剤等で勝手に死亡していただいたり。

そんなこんなで、二時間。経過したから、濃いカビの撤去を開始する。

それなりに面倒だったが、洗い流すことに成功する。

 

「Gが減らねぇ!」

 

かなりのGが住み着いていたのか、カサカサずっと視界にいやがる。

捕まえたG達も脱走しようとガタガタしてるし。イライラしてきたから、ガタガタうるさいG達には、自由をプレゼントした。

海にポイ捨てしただけだが。風呂場でカサカサしているGは見える限り、取っ捕まえ、Gに効果のあるアロマを焚いて様子見する。

 

「ゼェゼェ…これだからGはめんどくさい……」

 

徹夜して、Gを捕まえる俺って何してんだろう……

深く考えたら鬱になりそうな思考を投げ捨てる。とりあえず、朝食を摂ろう。

 

「……おはようございます提督」

 

風呂場から出ると時雨がいた。

相変わらず、の姿だ。

 

「あぁ。おはよう。俺は今から朝食を食べるが、一緒にどうだ?」

 

時雨が向けている疑念の眼差しは俺が風呂を掃除ているのが不思議なのだろうか。

お前が風呂に入れる様に掃除していたと、言うのはなんだか恥ずかしいので朝食に誘ってみる。

でも、返事はきっと必要ないとか、返ってくるのだろうと思っている。

 

「……必要ありません」

 

知ってた。

まぁ、朝食って言っても資料でここの食堂はまともに機能してないって知ってるから、持ち込んでたカップ麺でも食べようかと思っていただけなんだが。

 

「そう言うと思ってた。でも、何かは食べておけよ」

 

「…兵器である私には必要ありませんから」

 

あれ、確か艦娘は人間と同様のものを食べる事ができた筈だよな。

俺の記憶力が残念なだけじゃないよな?うん、さすがに覚えてるぞ。

 

「兵器って言われてもな……あ、よしじゃあ、提督命令だ。俺にちょっと付き合え」

 

あまり命令って言葉は好きじゃないけど、多分こうでもしないと従ってくれなさそうだし。

何より徹夜した脳みそ君はいつもより動かない。

 

「わかり……ました……」

 

すっごい不満そうだよ……とりあえず外に出よう。

荷物一応、準備しといてよかったよかった。

 

「……そっちに出口はない」

 

「あ」

 

歩き出して開幕反対側に向かい時雨に呆れの視線を向けられる。

方向音痴ってどうやったら治るんだろ…

 

「時雨、出口まで案内頼む」

 

「……はぁ」

 

ため息を吐かれ、バカにするような視線を向けられ、少し傷ついた心を引きずりながら黙々と歩きだした時雨の後を追う。

昨日と一緒で、会話は一切なく外へ案内される。

この鎮守府は、中身もボロボロだが、外見もかなり酷い。草は伸び放題、壁に蔦は絡み、虫や蛇等の温床になる。

比較的綺麗で、座れる場所を見つけ、荷物からレジャーシートを取り出し広げる。

俺の行動を不思議そうに見ている時雨に手招きをする。

 

「ほら、座れって」

 

無言で俺から一番、遠いところに座る。地味に傷つく……

水筒を取り出し、カップ麺を二つ取り出す。

 

「時雨。どっちが良い?」

 

カッフヌードル醬油味と、蒙古タンメン中東を見せる。

困惑したような表情の時雨。俺になんかされると思ったのかな?俺は、ただいっしょに飯を食いたいだけだ。

 

「どうした?まさか、どっちも嫌いか?」

 

「い、いや……なぜ…」

 

「そんなの俺がお前と一緒に飯を食べたいからだ。

それに、食べる物食べなきゃ、いざという時に力が出ないだろう?」

 

ほれほれと、二つのカップ麺を近づけていく。グイグイくるカップ麺に断念したのか、手を伸ばし、蒙古タンメン中東を指差す。

 

「そっちで良いんだな」

 

無言で頷く時雨。

それを見て、思わずにやりと笑ってしまう。このカップ麺は物凄く辛い。

知らずに選んだのだろう。ふふっ、悶絶する姿を見せるが良い時雨。

水筒に入れておいたお湯を二つのカップ麺に注ぐ。

無言のまま、5分経過する。

 

「よし、食べれるぞ」

 

割り箸を時雨に渡す。もちろん、カップ麺の方の準備も終わらせる。

またおずおずと手を伸ばしてくる時雨。蒙古タンメン中東を渡す。

 

「…うっ」

 

辛味の成分により、目が染みたのか涙を浮かべる時雨。

俺は少し、時間をかけすぎて軽く伸びてるカップ麺を食べる。うむ、美味しい。

俺が食べてるのを見て、信用したのか割り箸を割り、一口食べる。

 

「辛っ!?!?」

 

あまりの辛さに悶える時雨。笑いをこらえながら、ジュースを渡す。

勢いよく、受け取りゴクゴクとすごい勢いで飲んでいく。

 

「……プハッ……なにこれ」

 

「ハハッ、それは激辛カップ麺だ。まさか、そっちを選ぶとはね、ハハッ」

 

足をバシバシ叩きながら笑う俺。時雨が絶対零度の視線を向けてくるが、気にせず笑う。

一通り笑った後に、手元のカップ麺を時雨の前に出す。

 

「ほら、そっちは俺が食べるよ。時雨は、こっちを食べて。

少し、伸びてるけど」

 

「……良いです。これを食べますから」

 

そう返答した後、辛さに苦しみながらも、カップ麺を食べていく時雨。

結構、ガッツあるなこいつ。

自分の分を時雨がいつ、限界を訴えても良いようにゆっくり食べつつ、時雨を見守る。

ジュース片手に食べ進める時雨。涙目どころか、泣きながら食べているのを見ると、悪戯心を通り越して罪悪感すら湧くが、食べると宣言した時雨は俺の言葉など聞かないだろう。

 

「た、食べきった…」

 

一時間ぐらいかけ、食べきった時雨。思わず、拍手してしまう。

 

「………何ですか」

 

俺の拍手にジトーっとした視線を向けてくる。

生気のない目を向けるなってビビるから。

 

「まさか食べきると思ってなくてね。いやうん。凄いガッツだった」

 

空になったカップ麺の器をビニール袋に包み、少し大きめのビニール袋に入れる。

 

「………風呂場でなにをしてたんですか?」

 

「ん?ああ、掃除だよ。あらゆるところがボロボロで、生活しづらいから、綺麗にしようかなって」

 

「……それで、一番最初にするところが風呂場ですか」

 

「時雨だって女の子だろ?なら、風呂に入りたいだろうと思って。

っと、もうこんな時間か。俺は続きをしてくる。じゃあな、時雨」

 

朱染に頼んだやつが届く前に、掃除終わらせないと。

荷物をまとめ、風呂場へと走る。道は多分、合ってる!

 

「……女の子」

 

急いでいたから俺は、恥ずかしそうに髪を弄る時雨を見逃していた。

 

 




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