無能と言われる提督が一人ぼっちの時雨を笑顔にしてみせる 作:マスターBT
早速、艦これに出てこないオリキャラの登場回ですが、よく考えてみたら初手からオリキャラ出てましたね、この小説。
風呂場にいたG達も無事、駆逐し簡単に髪と服を整え、鎮守府の入り口に立つ。
あと数分で昼になる。朱染に頼んでおいたものが届く時間だ。礼儀という訳ではないが、身嗜みぐらいは整えておくのが良いだろう。
「……」
背後から視線を感じる。
ちょっと前から、時雨が半分だけ身体を外に出しこちらの様子を伺っている。
なんだ……監視か?それとも、激辛カップ麺を食わせた恨みか⁉︎
「チラッ」
「…!」
俺が背後をチラッと見ると、スッと引っ込んでしまう。
ただ、うん。身体が完全に隠しきれてないんだよなぁ…
時雨の動きを楽しみつつ、時間を潰していたらエンジン音が聞こえて来た。お、どうやら来たか。
赤い車が走ってくる。うん、見慣れた朱染の車だ。目の前で止まり、俺と同じ提督服を着たイケメンが降りてくる。
「やぁ。相変わらず、不幸に愛されてる顔をしているようだね。霧崎」
「開幕、嫌味か。朱染」
「それが僕ってもんだろう?」
このイケメンこと、朱染征十郎は俺の同期で尚且つ、かなり優秀な艦隊を率いる提督だ。
そんな奴が落ちこぼれ無能の友人をなぜしてくれているのかはわからない。まぁ、コイツの性格は顔に反比例して歪みまくってる愉悦者だけど!
「そういや、お前自身が来ても大丈夫なのか?そっちの鎮守府は激戦区だろうに」
朱染の持ってきてくれた荷物を一旦、車から降ろしながら話を振る。
俺の発言にんー?っと声を出したあと口を開く。
「うちの艦隊はそこまでヤワじゃないさ。秘書艦の天龍にはこれでもかと、戦い方を頭に叩き込んであげたし。
まぁ、僕が想定してるより被害が出てたら……龍田と一緒に弄ってあげるのも良いかもしれないね」
「お前なぁ…まぁ、それでそっちが成り立ってるなら何も突っ込まないけど」
よし、これで最後の荷物だな。
今度は運ばないといけないが……方向音痴の俺が運べるのだろうか。
「ボロボロだけど、うちの鎮守府と構造は変わらなそうだね。こっちだ、霧崎」
スタスタと荷物を持って歩いていく朱染。
その後ろ姿を見失わないように、追いかける。うん、俺も良い加減、道覚えないと。
入り口で、俺をチラチラ見ていた時雨はもう既にその場所に居らず、何処かへ消えていた。
「中もボロボロだねぇ」
朱染が歩きながら、言う。歩けば軋んだ音を立てる床。よく見なくても分かるカビ。
屋根もかなり腐食している為、いつ崩れてもおかしくない。
「ほんと、前任に会えたら是非とも、拳をプレゼントしたい」
「監獄に行くかい?それなら、簡単に会えるよ」
「誰が行くかボケ。時雨の為にも、ここを離れる気は無い」
「へぇ」
俺の言葉を聞いて、趣味の悪い笑みを浮かべる朱染。
こういう時のこいつは、大抵ロクでも無い事を考えてる。どうせ、聞いたところで答えないから質問はしない。
そのまま、歩いているうちに提督室に到着する。
扉を開け、部屋に入り荷物を下ろす。
「助かったよ朱染」
ダンボールを少し開け、頼んでおいた物が入っているか軽く確認しつつ、礼を言う。
よしっ、ちゃんと工具が丸々一式あるな。これなら、自分で修理が出来る。
「こんな事で良ければいつでも承るよ。まぁ、君にこんな趣味があるとは思わなかったけど?」
その言葉で振り返って、朱染を見る。
その手には、女物のフリルの付いた可愛らしい服が広げられていた。
「俺が着るわけじゃねぇよ!?」
「え?だって、時雨が着るって言ってたじゃないか」
ニヤニヤしながら言う朱染。
この野郎、分かってて言ってやがる。
「違うわ!!それは、うちの艦娘である時雨の私服に良いかと思って頼んだんだ!」
声を大にして言う。断じて、俺は女装趣味なんかじゃない!
名前が一緒だから、分かりづらいかもしれないがこいつに限ってそういう勘違いはあり得ない。
「だそうだよ。良かったね、時雨ちゃん?」
「え?」
「わっ」
朱染の言葉と同時に、扉が開き、時雨が倒れ込んでくる。
え?いつのまに居たの?え?というか、いつから気づいてたの朱染。
「……えっと……失礼します」
何事も無かった様に無言でスッと立ち上がる時雨。
そのまま、部屋を出て行こうとする。
「って、いやいや流石に無理があるから時雨!」
慌てて声をかけて、時雨を止める。俺は、そのまま朱染から服の入った段ボールと、さっき見せていた服をひったくり、時雨の前に持っていく。
頑なに俺と視線を合わせようとしない時雨。
そんな時雨の様子で、心にダメージが負うのを自覚しながら話しかける。
「ほら、どうせ戻るならこれ、持って行ってくれ。
俺、普段時雨がいる場所知らないから、こういう時じゃないと渡せない」
ほんとは、もうちょっと色んなところが綺麗になったら渡そうと思ってたけど、この際致し方ない。
「分かり…ました……」
相変わらず、嫌々という感じで段ボールを受け取る時雨。
この子、どれだけ俺の心にダメージを与えれば気がすむんだ……
密かにダメージを負い、苦しむ俺を避ける様にして部屋を出て行く時雨。
「…うーむ、やっぱり嫌われている」
「ブフッ……相変わらずだね……霧崎ぷふっ」
俺の言葉の何が面白いのか笑いを堪える朱染。
「(鎮守府に僕が入ってから、ずっと霧崎の後ろを付いてきていたのと、さっきは凄く恥ずかしそうにしてた事は言わない方が良いね。
だって、絶対そっちの方が面白いもの)」
うーむ、朱染がなんか考えてる気はするけど、何を考えてるのか全く分からん。
この後、しばらく朱染と話をして、朱染は自分の鎮守府へと帰って行った。
日が落ちてしまったので、諸々の修理を諦め、提督室で書類仕事を片付ける事にした。書類仕事は好きではないが、仕方ない。
溜め込んであっても得はないからな。
「…はぁ、時雨喜んでくれると思ったんだけどなぁ…」
服を渡した時の事を思い出し、溜息を吐く。
そのまま、寝落ちする様に俺の意識は旅立った。
おまけ
霧崎が寝落ちし、少し時間が経った提督室。
その扉が、ゆっくりと外側から開かれる。
「……寝てる」
来訪者は時雨だった。まぁ、彼女以外訪れる人も居ないのだが。
相変わらず、死んだ魚の様な目をしているが、普段と違う要素があった。
まずは、髪の毛。しっかりと整えられており、ボサボサではなく頭のてっぺんにアホ毛がちょこんとあるだけで、ポニテ風に縛られている。
そして、最も違う点は服装。
普段はそのまま、戦闘に出れる様にセーラー服なのだが、今はフリルの付いた可愛いらしい服を着ている。
先ほど、霧崎が渡した服だ。
「……」
キョロキョロと視線を彷徨わせ、時雨は毛布を見つける。
それを取り、ゆっくりと霧崎にかけていく。
「……貰ったお礼。それだけだから、変な勘違いはしないでね」
寝ている霧崎しかいないのに、まるで言い訳をするように言う時雨。
結局、霧崎が起きる事はなく、時雨は部屋を出て行った。
サブタイの言葉がなんなのか、きっと皆さんだけの言葉があるはず(そこまで深く考えて書いたわけでは……)
ゆっくりですが、書いていきますのでよろしくお願いします。
感想・批判お待ちしています