無能と言われる提督が一人ぼっちの時雨を笑顔にしてみせる 作:マスターBT
でも、艦娘を追加する予定はないです。
提督の朝は早い。
机に突っ伏す形で寝てしまったが、朝の6:00ジャストに起床する。身に覚えのない毛布に首を傾げつつ、毛布を畳みベットの上に置く。
時雨かな?と思いつつ、工具を取り出し30分の放浪の末、外に出る。
「よしっ、やるぞ」
脚立を立てて、屋根へと登る。ボロボロの屋根を踏み抜かないように注意し、穴が空いている箇所を一つ一つ確認する。
うへぇ、思っていたよりだいぶ多いぞこれ。朱染に多く持って来てもらうよう頼んで正解だった。
ネジとトンカチを持ちながら、穴にちょうど良いサイズの木材を乗せてカンカンと叩く。
とはいえ、木材も穴を見て用意したわけじゃないから、微妙な空間ができる場合がある。
「そんな時はこいつの出番だな。ファストフラッシュ〜♪」
某猫型ロボットトーンで、取り出したシートをちょうど良いサイズにその場でカットし、隙間を埋める。
この防水シートはすごく便利だ。簡単に補修が出来るし寿命もそこそこ。
でも、このご時世そう簡単に用意できないから、泣く泣く諦め木材をトントンですよ。
そんな感じで、約四時間。目立った穴は塞ぐことに成功する。
「ふぅ。残りの細々した穴は、取り敢えず後回しにしよう。端材がない」
脚立を下り、地面に足をつける。
と、同時に腹の虫がなる。そういえば、朝飯を食べてなかった。台所はまだ使えないから……あ。
「やっべぇ……お湯すら沸かせないとカップ麺すら食えないじゃん…」
前に時雨と一緒にカップ麺を食べた時は、予め用意しておいたのとガスコンロのお陰でお湯を生成できた。
でも、ガスコンロのガスはもともと死にかけだったから、もうないし当然、予備もない。
「おこまりー?」
んーって悩んでいると、妖精が俺の目の前をフヨフヨと飛んでいる。
おぉ、そういや妖精に頼れば良いんじゃね?
「コンロ直せたり出来る?」
「まかせろー!」
自信満々に胸を張る妖精。
この妖精は俺を見捨てる事なく側にいてくれる妖精だ。この子が俺を見捨ててたら、提督になれてない。
両手を前に出して、某ウル○○マンの様に飛んでいく妖精。少しすると、台所の方からカンカンッと金属音が聞こえる。
「音が聞こえるから迷わずに済みそうだ」
音を頼りに、台所まで歩いていく。
少し迷ったが、それでも普通に向かうよりは早く着ける。すると、台所の入り口に中を伺っている時雨が立っていた。
普段の服装か……残念だ。
「よぉ、時雨。飯食おうぜ」
「ひゃ!?」
後ろから声をかけると、驚いたように俺の方を向き、その手に艦砲を持ち向けてくる。
「うぉぉぉぉ!?待て待て待て待て!何もしないからぁ!!」
反射的に勢いよく飛び退き、着地と同時に両膝を曲げる。
そして、そのまま手を少し前に八の字を書くように置く。八の字の隙間に額が来るように下ろす。
もちろん、背筋は綺麗に伸ばし頭は背中の水平に。綺麗な平を作る。
時間にして、3秒。鍛え抜いた土下座で時雨に殺さないでくれとアピールする。
え?白い提督服が汚れるだろうって?そんな事より命が大切だ。
「……なに、してるんですか」
時雨の絶対零度ボイスが聞こえる。
うん、完全に呆れられてますねこれ。頭を上げてパンッとされるのは嫌なので、下を向いたまま口を開く。
「いや、驚かせてしまった詫びを表そうかと」
「……貴方は提督で、私は兵器。
上の者が下にそういった態度を見せる必要はないと思いますが?」
なんか怒ってる?声に不機嫌さがある気がするんだが。
うーん、考えても分からん。
取り敢えず、思ったことを口にしておこう。
「立場上は確かに俺が上だ。でも、この鎮守府において、俺より長く滞在してるのは時雨だし、戦場に出て戦うのも時雨だ。
だから、礼儀は大切にしたいし、何より今俺の命はお前が握っている。なら、死ぬのが怖い俺はこうするしかあるまい」
艦娘に威張る提督もいるようだが、俺はそんな考えは微塵もない。
というか、戦場に出て命がけで戦ってくれる彼女達に威張る気になれない。艦娘が底力を出すためには提督が必要。
確かにそうだ。でも、俺たち提督が深海棲艦を倒せる訳じゃない。
倒してくれてありがとうと言う気持ちこそあるが、艦娘の功績を奪う事はしない。
「……顔をあげてください」
時雨の許しが出たので、正座したまま顔を上げる。
「……別に殺しませんよ。驚いただけですから」
「本当か!?いやぁ、感謝するよ。時雨」
良かったぁぁ、こんなところで死んだらアホすぎる。
死因:艦娘を驚かせたから。……うん、末代までの恥だ。俺が結婚できるか知らんけど。
「……私も…武器を向けて……すみませんでした」
ボソボソっと時雨が囁くように言う。
背中を向けているが、恥ずかしいのか耳まで赤くなっている。ふふっ、普段なら弄るけどここでそれをしたら本当に撃たれそうだからやめておこう。
「構わないよ。さて、時雨。飯でも食おうか」
スッと立ち上がり、台所に足を踏み入れる。
そして、その異様さに気づいた。
「あ、きましたねー。がんばりましたー」
キラキラと輝くテーブルの上で、汗を拭っている妖精。
おかしいな。あんなに綺麗なテーブルはこの鎮守府にはないはずだぞ?
いや、それ以前になんだこの、新品同然の木の床に天井。壁も白く塗装され、汚れが一切なく光を反射している。
俺が頼んだコンロも、最新式の電気コンロになっており、調理器具も一式揃っている。
カビや、錆で大変に騒ぎだった台所がなんて事でしょう。
最新のシステムキッチンになってるではありませんか。
「妖精や。一体、なにをしたんだい?」
「ふっふー、あまりにみすぼらしいから、ゼロからきれいにしたぜー」
ドヤ顔ご満悦の妖精。
妖精の技術力ヤベェ。この大リホームを俺が迷子になって、土下座してた20分少々で成し遂げるなんて。
他の妖精もこんな化け物技術力なのか?それとも、この子が半端ないのか。
「助かった。どんな褒美が良い?」
「んー?このちんじゅふをきれいにしてくれれば、それでいいですー」
「うわっ、この子いい子すぎ…なんで、こんな子が俺にずっと付いて来てくれてるんや」
妖精の人の良さ… いや、妖精の良さ?に感激しながら、綺麗になった水道を捻る。
ちゃんと濾過されて飲める水が出てくる。それをヤカンに少し汲み、お湯を沸かす準備を整える。
「ほれ、時雨座って。また、カップ麺で悪いけど飯にしよう」
「……わかりました」
未だに入り口で固まっていた時雨に声をかけて、座らせる。
椅子にチョコンと座る時雨を可愛いと思いつつ、カップ麺を準備する。
今回は、ペヤ○グと、坦々○だ。前に辛いのを食べさせてしまったから、ペ○ングを時雨にあげよう。
お湯をそれぞれに注ぎ、時間まで待機する。
時間が来たら、ペヤン○の悲劇を起こさないように慎重に、湯を捨て時雨の前に置く。
「今度は辛くないぞ」
「……焼きそば」
坦○ 麺を自分の前において食べ始める。
意図せず、向かい側に座ってしまったが、まぁこれはこれで役得だ。
「……」
相変わらず無表情だけど、雰囲気がどこかふわふわしてる時雨に和みながら昼飯の時間が過ぎていった。
あぁ、そろそろ買い出しに行かないと持ってきた分が終わりそうだ。
窓から見える寂れた港町を見ながら、そんなことを思った。
次回は多分、買い出し。
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