主人公が先生やってる中、俺達はアウトローだった   作:クレマ

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あけまして、おめでとうございます。


戦いの前に、作戦の前に2

「放しやがれ! 今ならまだ——」

 

“雷の暴風”から逃れるため、背後から俺を羽交い締めにしているアスナに本気の肘打ちを叩き込む。

本番の前に味方を傷つけるのは俺も望む所ではないが、こんな状況では話は別だ。

俺を拘束しているアスナは身長的に俺よりも優れているので、必然的に俺は今地面に足が着いていないため、踏ん張りの効いていない一撃は最高のものとは言いがたいが——それでも、氣を込めた俺の肘はたかが女子中学生の肋骨程度、アーティファクトによって強化されていようと容易くへし折ってのける。

——ハズだったが。

 

「くうぅっ……放さな、いぃっ!!」

 

折れない。

極限状態において最大まで引き延ばされた感覚時間の中、幽かに見えたのはアスナの身体を覆う魔力の膜。

 

「——魔力供給による身体強化か……!」

 

 

 

 

 

…………と、攻防はここまでだった。

いかに時間を引き延ばそうと、完全に止めない限りは終わりがやってくるというものだ。

それが現実のものではない、走馬灯に似た感覚に由来するものであればなおさら。

 

(あ、終わった)

 

声にはならなかった。する時間もなかった。

もともと、ここまでならギリギリ躱せる、というようなラインは存在しなかった。

あったのは“躱せないまでも直撃は避けられる”というラインのみ、それを越えてしまえば後は直撃するしか無い。

 

(しかし、ネギ。一体何だってこんな味方を巻き込む様なマネを?)

 

そんな疑問を目で訴えた時、唐突に身体に自由が戻る。

背後にいたアスナが消えたのだ。

 

「な……!?」

 

そして見えたのはネギの不敵な笑み、その隣に現れた魔方陣から出てくるアスナ。

導き出される答えはパクティオーカードの基本的な機能、“召還(エウォコー•ウォース)”。

 

「野郎…………!」

 

呟いた瞬間、雷の暴風に飲み込まれる。

 

正しく、敗北だった。

 

 

 

———

 

 

 

「勝っ…………た?」

 

自分の持てる最大級の魔法を完全な形で叩き込み、正しく勝利を確信する。

いや。

 

「ねえ、ネギ……思いっきりやっといて何だけど、小太郎、大丈夫かな……?」

「だ、大丈夫ですよ! ……たぶん」

 

正直、自信が無い。

さっきから一切の音沙汰が無く、とても静かだ。

 

(も、もしかして……殺っちゃった?)

 

雷の暴風を撃った衝撃で煙が舞い、今は視界が遮られてはいるが——

 

「あ、煙が……」

 

時間が経つに連れて煙も落ち着いてくる。

完全に晴れた時には、そこにはただ凄まじい破壊痕だけが残り、誰も居なかった。

 

「やばっ……この歳で殺人犯に!? こ、小太郎君ーー!?」

「は、橋の下に落ちたとか……! いるなら返事をして小太郎!」

 

激しく焦る。

今夜には本当に死ぬかも知れない戦いに臨むとはいえ、まだ九歳で十字架を背負いたくない。

橋の下、水面を覗き込みながら半ば絶望する。

 

「どうしようどこにもいない……!」

「これは……警察に行くしか……」

「……嫌な事件だったな。……死体、まだ見つかってないんだろ?」

「「えっ」」

 

 

 

———

 

 

 

「うーっす。お前ら模擬戦だってのにここまでやるか普通?」

 

完全に俺を殺っちゃった気でいる二人に種明かしをするため、姿を現す。

 

「並の魔法使いなら今ので終わってたんだろうが……まあ、あの程度で俺をどうにかしようなんざ100万年はや——」

「「お……お化け!?」」

「死んでねえって言ってんだろバカども!」

 

まったく薄情な奴らだ。

いや、それだけ俺の偽装が完璧だったと考えればしょうがないのかも知れないな!

 

「まあ、この際だからネタバレするけどさ……要はこういう事なんだよ」

 

そう言って俺は、自分の影の中に手を突っ込み——そこから()()()()()()()()

 

「「増えた!?」」

「増えてねえよ。ほれ」

 

すると、驚愕している二人の前で、俺が引っ張り出した俺が一瞬にしてカタチを失い、黒い大型犬——狗神へと姿を変える。

 

「で、俺もこんな風に」

 

そして俺も同じく狗神へと変身する。

 

「……とまあ、こんなわけだ。どうよ、見分け付かねえだろ」

「うん、ホントそっくり……ねえ、ちょっと撫でて良い?」

「金額に依る」

「お金取るの!?」

 

当然だ。世の中いろいろあるが、結局の所は金だからな。

安定収入が望めない俺等は稼げる時に稼がないとすぐに懐が寒くなってしまう。

 

「ちなみに三千円以上出せば最強にカワイイ悩殺子犬モードが解禁される。ウル目でク〜ン、とか啼いちゃうぞ☆」

「う、く……絶妙に生々しい金額を……!」

 

さあ悩め、悩むが良い。

そんな風に頭を抱えて己の煩悩と格闘しているアスナを尻目にオコジョ妖精が難癖をつけて来た。

 

「て、てやんでえべらぼうめ! いくら小太郎の旦那と言えどそれだけはやっちゃいけねえぞ!」

「あれ、エロ方面でしか目立てないカモ先輩じゃないですか。マスコットの座が危うくなってるからってキャラ崩壊して江戸前口調になるとか慌て過ぎなんじゃないですか?」

「ヒイ!? 先輩呼ばわり!? こいつもう俺っちの後釜に座るつもりでいやがる!」

 

とまあ、戦慄しているカモ君は置いといて。

狗神を影の中に還し、自分も人の姿に戻るとネギの方に向き直る。

 

「さて、こっちはネタばらししたぜ。今度はそっちの番だ。戦闘中にどうやってあんな作戦立てたんだ?」

「え? ああ、それはほら、パクティオーカードの“念話”で」

「ああ、そういえばそんなのもあったな……」

 

念話ってアーティファクト出してても使えるんだな。

それにしてもコイツ、これでもかってくらいカードを使いこなしてやがる。

聞いた限り、仮契約を結んだのはつい数日前だって話だが……アスナもアスナで本当に素人か? 今の作戦、少しタイミングがズレたら死んでてもおかしくないぞ。

 

「……まあ、いいさ。お互いどれくらい動けるか確認できたところで、今夜の戦いについて話そうか」

「うん、できるだけ安全第一で行こう」

「お前がそれを言うか」

「あはは……」

 




この二人はなんだかんだ言ってノリと勢いでやらかしちゃうタイプだと思いますので、ちょっとその片鱗を出してみました。
アレですね、ワガママ放題に進んだほうが最終的にいい結果になる感じの。



でもこのまま行ったら「命はもっと粗末に扱うべきなのだ」とか言いだしそうだな……
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