クレマには文才という物が致命的に欠けているという事だ!
なお、クレマはカプコンを応援しています。
「さて、もうそろそろだけどな……」
戦う、算段は着いた。
もうそろそろとは言ったが今の時刻は7時半ほど、しかし戦闘開始の時間は八時から。
「そろそろ」ではあるが「すぐ」というわけではない。
準備も終わり、装備も整い、——ぶっちゃけヒマだ。
「はあぁぁ〜〜……こういう風に時間が空くと緊張感無くなってくるからヤなんだよなぁ……」
「そうなの? なんか、戦士とかはいざ戦うとなると身体が勝手に戦闘モードになるとか、そんな感じだと思ってた」
「ああ、そういう奴は最終的に戦場と日常の区別が出来なくなって身を滅ぼすタイプだぞ」
だからそういう戦士に知り合いが出来たらあんまり近づかないほうが良い、と返すと、話しかけて来たアスナは怪訝そうな顔をしてくる。
信用してねえなコイツ。
「いやマジだって。以前ちょっとバトルジャンキーっぽい女剣士とやらかした事があんだけど、そいつはもうアレだったからな、肉体が平時に戻る事を拒んでるっつーか……」
「というか?」
「“もう、誰彼構わず斬ってしまいたい。”ってのが顔に書いてあるみたいな感じ」
「……そんなのがいるの?」
完全にアスナは引いていた。
いやまあ、気持ちは分かるぜ? そいつ俺の狗神斬るたんびに恍惚とした表情してたし。
でもまあそんなのは少数も少数で、そうそう遭う事は無い。そう伝えると。
「ファンタジーに憧れるの、間違ってたかな……」
「間違ってるかどうかはともかく……少なくとも、今は時期が悪かったな。まあしょうがねえよ」
遠い目で黄昏れ出したアスナをそれとなく励ましてみる。
というかもう諦めろって、どうしたってもう手遅れなんだし、今はもう黄昏通り越して夜中だし。
……と、まあさっきから目をそらしてきていたが、実は今、ここには大きな問題が発生している。
「っつーか、なぁ……」
「何と言うか、ね……」
その問題というのが、今目の前のコレである。
「だ、大丈夫、大丈夫、大丈夫のハズ。魔法薬、魔法銃、術式阻害具、予備の杖、……ああでもやっぱりもうちょっと時間が欲しい……」
ずばり、試験直前であわてて教科書を開く学生の様な心境のネギだ。
今のは何をしているのかと言うと、一言で言えば魔法具の点検。ちゃんと動くか調べたり、ローブに仕舞う時どこに持っているのが取り出し易いのかを確かめているのだ。
「そういえば、小太郎はネギみたいに何か道具とか持ってないの?」
「持ってねえよ? 忍者っぽい戦い方してるけど手裏剣とか一枚も無いし」
「肉体派なのね」
———
それから十分程。
「…………ん?」
「どうかしたの?」
「……誰か近づいてくるな。まだ時間じゃないはずだが」
気付いたのは、学園側からの足音によってだ。
妖怪、正確には狗族とのハーフである俺の聴覚は、只の人間のそれとはそもそもの構造からして異なる。その聴覚によると、接近してくる何者かは、エヴァンジェリン達ではない。
聞こえてくる音から推測できる歩幅は明らかにエヴァンジェリンのモノとは異なり、モーター等の駆動音がしない事からロボット、茶々丸ではない。
おそらくは成人男性。——だとは思うが、この何者か、異常な程に気配がない。
足音だけを残して、息づかい、衣擦れ、体臭、僅かな骨の軋み、生物として隠しようの無い存在の圧さえ、完全に夜闇に溶けて無くなってしまっている。
(気付かせようとしている……? 試しているって事か?)
というより、そうとしか考えられない。これほどまでの隠形が可能なのだ、足音はヒントといった所か。
だが。
「……私たちしかいないけど、ここ」
誰もいないのだ、近付いてくる者など。
今、俺達がいる場所は決戦場となった橋の上だ。
いかに夜とはいえ……いや、だからこそ、橋の上には立ち並ぶ電燈が輝き、道路から影を消し去っている。
誰か歩いてくる様な者がいれば、すぐに見つけられるハズなのに。
「いや、いる」
——ただ、それを認識できていないだけだ。
そう言うと、足音が止んだ。
(立ち止まった? いや……!)
パチン、と指を鳴らす。
フィンガースナップの音を触媒にしたエコーロケーション。
例えばコウモリの超音波やクジラのクリック音に代表される、視覚障害者でも限定的ながら周囲の様子を知る事が出来る技術だ。
相手が音というカタチで存在を示している以上、効果はあるはずだ。
右にアスナ。左後方、少し離れた所にネギ。
以上の要素を警戒から消し——
結果、背後からの反響音。
「———、だらあッ!」
「わっ!?」
刹那、振り向き様に裏拳。
俺のいきなりの行動に驚くアスナを尻目に、おそらくは顔面があるであろう場所に叩き込む。
「…………あぶな」
しかしそれは、ぱしん。というか弱い音を立てて防がれた。
それなりに力を込めた攻撃だったのだが、手応えが全くない。完全に衝撃を殺されている。
「誰だテメェは!?」
「うん、誰だ……って言われてもねぇ。子供がこんな時間に出歩いてるのはどうかと思って注意しに来た、ただの先生だよ」
「寝惚けたことを……!」
後ろにいたのは自称教員の青年だった。
高い身長に金髪青眼。顔立ちの整った、目が覚める様な色男だ。肌の色からして白人か?
まあこの麻帆良という学園の性質上、魔法使いが教職に就いていてもなんら不自然は無いのだが……さっきからの一連の事はあまりにも度を越している。
本当に何者なんだろうか。
「って、あ……アダム先生!?」
その時、アスナが声を上げる。
アダム先生……と言うと、たしかエヴァンジェリンの家に行く際、ネギがぽろりとこぼしてた、エヴァンジェリンを看病していたはずの先生か。
「おやっ、これはよく見れば明日菜さんじゃないか。えーやだなー。自分の教え子補導するとか勘弁してほしいなー。これは反省文五枚コースかなー?」
「うえぇっ!? こ、これはその、止むに止まれぬ事情がありまして……!」
「……なんてね、冗談だよ。ここに来たのは君達がいるって知ってたからだし、君達が何に巻き込まれているのかも、これから何をしようとしているのかも知ってる。反省文は免除だから安心していいよ」
「よ、良かったぁ……」
と、アスナが安堵している中、今度は俺が声をかける。
「おい色男。それで、アンタはここに何しに来たんだよ?」
このアダムという男、なんだかうさんくさい感じがする。どこが……と言われると困るが、こう、雰囲気的なものが。
それともただ単に、俺がイケメン嫌いなだけだろうか。
「それはもちろんサポートさ」
「サポート、ねぇ……矢面に立って守っちゃくれねえのかよ?」
「そう言いたいのはやまやまなんだけどね。これだけの大物を相手にするとなると、あまり大口は叩けないさ。助けにはなれたとしても、助けるのはちょっと難しいかな」
思ったよりも現実的な意見だった。
魔法使いっていうのは自分が絶対的な正義だと妄信している奴が多い。お題目はたしか、“
俺は正しい。だから必ず勝つ。などと根拠も無く信じきっているのだ。
アダム先生とやらも同じか、似た様なものかと思ったが……そうでもなかったらしい。
と、そういえばアダム先生が西洋魔術師かどうかもまだはっきりしてないんだった。
「ところで、アダムさん……は、どういう戦いをするんだ? 前衛とか後衛とか教えて貰いたいんだけどよ」
「ああ、そうだったね。えっと、それじゃあ……じゃじゃーん! これが僕の武器でーす!」
そう言ってコミカルな様子で取り出したのは掌にすっぽり収まりそうな程に小さな拳銃。
上下二連装、中折れ式のシンプルな構造をしたそれは、武器というより暗器といったほうが正しい。
一般に広く“デリンジャー”と呼ばれる拳銃。それがアダムの使う武器だった。
「ちっちゃ」
「ふふ、僕の自前のはマグナムだからね。ここで帳尻を合わせているのさ」
「唐突に下ネタいれてるとこ悪いんだけどよ、そんなんで戦えんのかよ?」
「もちろんだよ! 僕が愛情を込めてカスタムした逸品だからね。ホラ見てここの構造、衝撃性の強い弾丸と貫通性の高い弾丸をわざとほんの少しだけ時間をずらして発射する事で、障壁魔法を簡単に破れる様になってるんだ!」
「なにその悪魔も泣き出す仕様」
チャージショットとか出来るんだろうか。
まあとにかく、デリンジャーなんていう小型の銃を持ってきた以上、近、中距離の体術を重視したガン=カタか。
あるいは、銃に魔法発動体としての力を持たせているのであれば、遠距離戦にも対応できるかもしれない。
イマイチはっきりしないが、オールラウンダー。という事で良いんだろうか?
「で、自己紹介もこの辺にして……ところで明日菜君、ネギ君はどこかな? さっきからそこですごいしょぼくれてる子がいるけど、あの子だって僕信じたくないんだけど」
「え、ああ。しょぼくれてる子ならネギで間違いないで———って、ちょっ!? 思ってたより三倍しょぼくれてる!?」
アスナが目を向けたそこにはなんと、もう人生に疲れきって今にも首を吊り出しそうな顔のネギが!
なんだろう、背中が煤けて見えるぜ。
「っつーかちょっとしおしおになって見えるぞ。ついに鮮度が落ちて傷んで来たか」
「ホラそこ野菜扱いしないの!」
しかし、このままではまるで使い物にならないぞ。
どうにかしなければ…………よし。
「いくぜ闘魂! 注〜〜〜入ッッ!!」
「……ん? こた———ぐへぇッ!?」
「いきなりなにやってんの小太郎!?」
「なにって闘魂注入」
正確には助走をつけてからのドロップキック。
腑抜けたヤツへの特効薬です。
「細かい事はいいんだよ。それよりネギ、テメェいつまでビビってやがる」
「ぐ……いや、僕もわかってはいるんだよ、このままじゃいけないって……」
「反省できてんならさっさと立ち直れ野菜」
「ネギです。……でもここに来るまでの事を思い出したら何から何まで小太郎君に世話になりっぱなしで……」
「おお、カップラーメンの“かやく”って袋に入ってるくせして自覚はあったんだな」
「ネギだよ。……エヴァンジェリンさんの家に拉致された事とかこんな戦いを勝手に決められた事とか、思い出したら情けなくなってきちゃって……」
「なに、俺の事ディスってんの? ねぎ星人のくせして文句でもあんの?」
「大有りだよこのやろうさっきから変な名前で呼びやがって! 負い目もあったから我慢してたのにネギだって言ってるだろ!」
「キレるのが遅ぇよ何ちょっと耐えてんだ! 二回目くらいで反応しろよ仏の顔も三度までか!」
そして炸裂するキレイなクロスカウンター。
いや、正直俺としてはこの程度は痛くも痒くもないのだが、なぜか少しよろけてしまう。これはアレだ、クロスカウンターの魔力ってヤツだ。
決して本当はちょっと痛かったからではない。
「……で? 少しはすっきりしたか? 溜まってたモン吐き出してよ」
「もしかして小太郎君……このためにワザと……?」
ちょっと照れくさいのでそっぽを向いて「まあな」と言っておく。
正直カウンターを入れたとはいえ、殴られたのはとてもムカつくのでこの後シバくが。
まあ、あのままではとうてい使い物にならなかっただろうから、結果オーライと言ったところか。
「もちろんその通りだよ。決してしおしおになってるのを見てからかってやろうとか思ったわけじゃないよ(棒)」
「台無しだよ」
伏線を張るということはつまり、後戻りできなくする事。退路を断つという事なんだと、改めて実感しました。あと速さが足りない。
今やってる作品がこんなザマだって言うのにDEVIL MAY CRYとカンピオーネ!のクロスオーバーとかやりたくなってきました。
アダム先生が悪い。唐突に出てきてネタを放り込んで来たアダム先生が悪い。