主人公が先生やってる中、俺達はアウトローだった   作:クレマ

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話は進まず、時間だけは進む……

バトルって難しいんですね。


切って落とす

「ふん、逃げずによく来たな」

「それ待ち構えてる方のセリフじゃね?」

 

時は開始時間の五分前。

俺はエヴァンジェリンの第一声にツッコミを入れていた。

 

「お前、これまで何十年も日本にいたはずなのにまだ日本語慣れてねえのかよ」

「マスターは語学というより人付き合いが苦手な方ですから……クラスでも友人が出来ずにさみしい学校生活を送っています」

「おい余計なことを言うなボケロボ!」

 

否定はしないんだな。

……ちょっとかわいそうになってきた。

 

「なんだ、何か文句でもあるのか」

「…………えっ、と」

 

恥ずかしさからか、顔を赤くしたエヴァンジェリンに睨まれて言葉に詰まる。

文句と言うか、何と言うか……正直、コメントのしづらい状況だな……。

 

「まあ、その……俺でよければ友達になってやっても———」

「いらんわっ!」

 

などと、こういったやり取りを交わしていく間にも、刻一刻と時間は過ぎ去っていく。

 

「……お前も来ていたか、アダム」

 

そう言ってアダム先生に視線を向けるエヴァンジェリン。

 

「お邪魔だったかな?」

「構わん、邪魔をするのがお前の仕事なんだろう」

 

寛大な言葉とは裏腹に口調は苦しげだ。

しかしその雰囲気からは嫌悪というよりは面倒臭さが感じ取れる。“食えない男だ”といったところか。

 

「でもこの状況を端から見たら、まるで弱いものいじめみたいでアレだよね!」

「じゃあ帰れ」

 

……少なくとも、面倒な男である事は確かだ。

 

戦いを始める前に何か言っておく事は無いか、とネギやアスナにふると。

 

「私はとくには無いわよ。あ、でも今更なんだけど、やっぱり私ここじゃ場違いな感じじゃない?」

「心配しなくてもサマになってるよ。で、ネギの方はどうだ?」

 

 

 

———

 

 

 

「…………エヴァンジェリンさん」

「なんだ」

 

改めて話しかける。

夜中だというのにこんな橋の上で言葉を交わす。

こうして見ると、“ああ、僕はこれから戦う事になるんだな”と実感できる。

 

「———何ていうか、こう言った事は初めてなモノで、うまく言えないんですが」

 

緊張でどうにかなってしまったのだろうか。

さっきまではどうしようもない程に一人で落ち込み、絶望していたけど……今ではそれが嘘みたいに心が静かに澄んでいる。

そう、実感できる。

 

「勝っても、負けても……悔いの残らない様にしましょう」

 

僕がそう言うと、エヴァンジェリンさんは何か変な物を見た様な顔をして。

 

「ふん、ガキのくせに一丁前の口をきく」

 

闇の眷属には似つかわしくない、カラリとした笑みを浮かべる。

 

なるほど。僕は今まで、幻影に怯えていたんだ。

——きっと、僕は今夜初めて、エヴァンジェリンさんに出会う事になるんだろう。

 

あと五秒、四秒、三秒。

戦いが始まる。

残り二秒、一秒。

 

……はじめまして。エヴァンジェリン•A•K•マクダウェル。

 

 

 

———

 

 

 

そうして、戦いの幕が切って落とされた。

戦闘開始。時刻にして八時半に起こったのは辺り一帯の、否、この学園都市全体の電燈が消える事だった。

まあ、それが何だって話だが。

 

「行くぜ……!」

 

まずは突進。

まさに獲物へと駆け寄る四足獣の様な低姿勢でエヴァンジェリンのそばまで駆け寄り。

 

「どっせぇーーいっ!」

「“氷盾(レフレクシオー)”」

 

なんともなしに繰り出したドロップキックは氷の壁に防がれた。

まあ通るとは思ってなかったが。

 

「こっから……!」

 

そのまま垂直にそびえる氷壁に“着地”し、足に氣を込めて脚力を強化する。

重力が仕事をして俺の身体を地面に落とす前に、氷壁ごとエヴァンジェリンの身体を蹴り飛ばしてやる。

 

——その前に。

 

「“壊れろ(パーディション)”」

「おおっ!?」

 

エヴァンジェリンの術によって氷壁が数百の破片に砕け散る。

そして。

 

「“風よ(ウェンデ)”」

 

強烈な突風。

ただし、魔法としては初歩も初歩の、人ひとりを吹き飛ばす事も、カマイタチを生んで肌を切り裂く事も出来ない、何の攻撃性も持たないものだが。

 

だが。

 

数百の“鋭利な”氷の破片が宙に浮いている場合ではどうか。

 

「“起き上がれ”っ!」

 

その命令に従って地面に映る俺の影が盛り上がり、弾ける様に大量の黒い大型犬——狗神が飛び出してくる。

それらの内の一匹を足場に氷破片の殺傷圏から逃れ、同時にネギやアスナ達の下へと殺到するであろう氷破片も残りの狗神の盾で防ぎきる。

魔力で構成されているとはいえ、元々は障壁に使われていた氷だ。大した質量も無いうえ、魔術的な意味で貫通力を強化しているワケでもない。破壊力では、ただのプラスチックに引っ掻き傷をつけられる程度でしかない。

 

(さすがに一人じゃムリか)

 

防御からのカウンターを攻撃呪文を一切使わずに行ってみせる戦術理論。

たった一言で効果を発する最下級に相当する呪文の連携。

 

実力の差を悟り、一度態勢を立て直す事にする。

 

 

 

———

 

 

 

「悪ぃ。やっぱ強えわアイツ」

 

そう言って小太郎君が戻ってくる。

 

「いいよ、最初から分かってた事だし」

「やってみなきゃ分かんねぇだろうが!」

「やってみて実際に無理だったんでしょうが」

 

変な所で気炎を揚げる小太郎君を明日菜さんがなだめる。

 

「じゃあ、作戦通りに行こう。アダム先生は明日菜さんの事をおねがいします」

「御任せあれさ!」

 

作戦と言っても大したものではない。

まずエヴァンジェリンさんと茶々丸さんを分断させる。

そして僕と小太郎君がエヴァンジェリンさんを抑えているうちに、明日菜さんが茶々丸さんを橋からたたき落とすというもの。

 

正直作戦じゃないし、結局は実力頼みだし、正確には指針だけど、さんざん考えたうえでこれしか考えつかなかったのだからしょうがない。

 

 

 

———

 

 

 

「“押し流せ”ッ!」

 

俺の影から現れた狗神が漆黒の波濤となってエヴァンジェリンに殺到する。

俺、犬上小太郎の強みは狗神であり、それを除けば喧嘩の強いだけのただのガキである。

 

そして、狗神の強みとは数である。

召還に際し、一切の消耗が存在しないそれは、後先を考慮しない最大戦力の投入を可能とする。

その総体を厳密に数えた事は無いが———少なくとも、一万や二万では利かない。

 

小細工抜きの純粋な物量勝負。

 

相手は近接戦闘を苦手とする後衛型の魔法使いの上に学園の結界に縛られているはずだが、それでもある程度の身体強化や瞬動術によって、そこそこの機動力を行使できるだろう。

 

しかし。

 

たかが“そこそこ”程度のスピードで対処できる程、俺の狗神は甘くはない。

 

これでいきなり決着とはいかないだろうが、それでも多少の痛手を負わせることはまず間違いないであろうそれは———

 

「———闇の吹雪(ニウィス・テンペスタース・オブスクランス)

 

“エヴァンジェリンは学園の結界によって縛られている”という大前提からして駆逐された。




もっと長くしたいんだけどなぁ……
キリの良い所で切れないのってストレスですね。


誤字脱字や“文章がキモイ”とかありましたら指摘お願いします。
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