この作品を楽しみにしてくださっている出来るだけ多くの皆様へ
今回は(今回も)あんまり話が進んでいません。
いや、話が進まないのはクレマの中ではよくある事なのですが、今回はいつも以上に進んでいません。
まあこの前面白いって言ってくれた人がいるし、別に良いよね!
今回は明日菜さんがはっちゃける感じで行きます。
まあ、何はともあれ―――考えてたって始まらない。
「っく、わよ―――!」
ただでさえ時間は限られているんだから、行動あるのみ!
「さあ、とっととやられちゃいな、さいっ!」
「申し訳ありませんが、それは出来ません。全力で抵抗させていただきます」
そう気合いを入れて茶々丸に掴み掛かるが、すばやく躱されてしまう。
それもそのはず、これは茶々丸本人(本機?)と、その開発者しか知らないことだが、絡繰茶々丸の記憶領域には世界中に名立たる格闘家、武術家の運動データがインストールされているのだ。
ちなみに、なぜ茶々丸の主であるエヴァンジェリンも知らないのかと言えば、答えは単純。
機械に疎いエヴァンジェリンでは、そもそも理解できないからだ。
人間であるが故の思考の揺らぎからくる超常的な直感こそ無い物の、機械が故の膨大なデータから構築された戦術理論には人知を超えるものがある。
しかし。
かなしいかな、あくまでそれはデータに過ぎぬ。
ああ、確かに茶々丸、彼女には「世界中に名立たる格闘家、武術家の運動データ」がインストールされている。
しかし、この戦いは世界中に名立たらぬ。
人知れず行われる、影なる戦だ。
器に満たされたスープを、フォークでは掬うことが出来ないように。
そこにそびえ立つ鉄塊を、フルーツナイフでは断ち切れないように。
「世界中に名立たる格闘家、武術家」が、“人”を打倒せんがために打ち上げられた戦術理論では、“人”を超える者は打倒し得ない。
そして現在。
ネギからの魔力供給で強化された神楽坂明日菜は、“人”を超える。
「まだまだ!」
急停止、方向転換、再加速。
コンクリートの路面に深々とその足跡を残した結果たるその駆動はまぎれも無く人類の肉体に架せられた限界を無視する、異形の疾走。
狙うはタックル。
理由は二つ、まだこの速度に慣れていないため、殴るなどの(今の明日菜にとっては)高度な技は、目測を誤って外す可能性があるのと。
もう一つは単純に、敵対したとはいえ、クラスメイトに殴る蹴るなどの暴力を振るうのは良心が咎めたから。
あるいは手加減ともとれるその攻撃は、しかしその速度と合わせてそれでも重撃として成立する。
しかし、それでも見落としが存在するのであれば。
「はい、まだまだです」
その異形の疾走、相対するはまた、機械と言う名の異形であったという点に他ならない。
接触した瞬間、明日菜がその進行方向の斜め上に吹き飛んだ。
端から見れば、茶々丸が何をしたのか、全くわからないだろう。
受け止め、放り投げる。
正確には、タックルによって抱きつかれないように明日菜の両腕を抑え、勢いを殺さないように後ろに転がり、そのまま己の後方に蹴り投げる。
柔道でいう、巴投げに近い技だ。
本来はこんなカタパルトのように投げ飛ばす技ではないのだが、そこは両者の身体能力の現れか。
端から見ていてわからないのは、それが明日菜のスピードも相まって、速すぎたからに過ぎない。
「うひゃあああああ~~~~!?」
宙に舞う明日菜。
いかに身体能力を強化されようと、物理法則は超えられない。
ばたばたと手足を振り回してなんとか空中での姿勢を整えようとするも、流石に素人、吹き飛ぶなんて初体験だ。
「これはもうあきらめて着地の瞬間に集中すべきか?」なんて考えだしたとき。
「わわわわ……わわぁ!?」
「や、大丈夫? 目回してたりしてない?」
懸念は杞憂だったようだ。
「あ、アダム先生!?」
「まったく、ちょっと見てたけどダメダメだね。ホント、僕がいないとダメなん―――」
「先生見てたんならカッコつけてないで手伝ってくださいよ! そんなだから新任のネギに人気取られて影薄くなったりするんですよこのダメ教師!」
「あ、はい、ゴメンナサイ」
以上、吹き飛ぶ明日菜と、それを空中でお姫様だっこ風にキャッチしたアダム先生の、落下中の会話である。
いや、それにしても散々な言われようだ。
「じゃあ、今度は仕事してきてくだ―――さいっ!」
「ちょっ、味方への攻撃は容赦なぁぁぁーーーーっ!?」
そう言うと、アダムのお姫様だっこからするりと抜け出た明日菜が、そのままアダムを茶々丸のいる方向へと蹴り飛ばした。
「いっけぇぇぇーーーー!」
「こ、このままじゃ茶々丸君に当たる……! 避けて茶々丸君! ……あ、やっぱり受け止めてくれると嬉し―――」
「避けます」
「いい生徒を持てて教師冥利に尽きぐぇっ!?」
そうこうしているうちに着地した明日菜はすぐさまダッシュ。
明日菜渾身の質量弾(アダム)をヒラリと躱した茶々丸だが―――
「その跳躍は悪手だったわね、スキアリよ!」
そして追いかけるようにジャンプする明日菜。
そう、茶々丸は跳躍をすることでアダム(質量弾)を躱していたのだ。
「翼を持たない者は自らの意思に由る移動を空中で行う事はできない」
それはいにしえ、神話の時代にあらゆる生命が星々と交わした契約。
かつてイカロスを地に堕とした絶対原則が、ついぞ茶々丸に襲いかかり―――
「いいえ、計画通りです」
茶々丸の肩部、脚部から展開したスラスターより生まれるジェットに引きちぎられた。
―――しかし、この言い方だとまるで、重力を無効化したようで語弊を招く恐れがある。
真実はその逆、重力加速度を強化するカタチだ。
全スラスターの角度修正。
その全てを迫る明日菜と反対方向に。
ワイヤードフィストを発射、その反動で更に加速。
―――それはまさに、誰もが知る特撮ヒーローの。
「くうぅっ! ら、ライダーキック!?」
「実はマスターがあの番組をとても好んでおりまして。よく一緒に見ろと言われるので視聴しているのです」
余談だが、この時「おい余計な事を言うなボケロボ!」と、どこからか聞こえてくるのは黙殺された。
さて、話を戻そう。
茶々丸の繰り出すライダーキック。
明日菜との距離がとても近かったのと、当たる寸前に足を掴まれてしまった事もあり、キック自体の威力は大部分が殺されてしまっている。
だが。
(足を掴んでいるというのなら好都合です。このまま明日菜さんを地面に叩き付ければ、いかに明日菜さんと言えど、戦闘不能は免れない!)
実際、その通りだ。
一見華奢に見える茶々丸だが、その正体はガイノイド、つまりはロボットだ。
フレームはもちろんのこと、内部の細々としたパーツにも金属が使われているために、実はかなりの重量があったりする。
そんな重量物が重しとなるのだ、速度と相まって凄まじい破壊力となる。
(これで―――!)
「残念だけど……」
しかし、明日菜は一人ではない。
「いつでも良いよ、バッチコイ!」
「なっ……アダム先生!? いつの間に……!」
おそらく着地点となるであろう場所にはアダムがスタンバイしている。
どれだけ破壊力があろうと、緩衝材を挟んでしまえば損害は少ない!
「く、ぁあああああーーーーッ!」
「おおおおおおおおーーーーッ!」
弾丸と化した明日菜と茶々丸がアダムへと着弾。
勢いもあってズザザザザザザァァァァ! と路面を滑るが、明日菜とアダム、どちらにも致命的なダメージはない。
そして―――
「
「くっ―――!」
ここからは、明日菜のターンだ。
「
そう言うと、茶々丸の片足を捕まえたままジャイアントスイング要領でぶんぶんと振り回す。
一回転、二回転、三回転と回すうちにだんだんとその回転は速度を増していき―――
「吹っ、飛びなさぁぁぁーーーーい!」
その速度が最高域に達したその時、茶々丸を橋の外、湖の方向へと投げ飛ばした。
これ茶々丸心ないとか嘘だろ……書いててナンだけど……
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