今回は比較的早いよ!
だから次は遅くなります(鬼)
まあ一週間後に投稿できれば良いなあとか思っています。
最後の方で変態にやっていただきました。
さて、クレマはこれ収拾つけられるんでしょうかねぇ……?
エヴァンジェリンの採ったスタイルは先ほどの爆撃機のような空中から魔法を撃ち下ろすものではなく、戦車のような地上戦であった。
「ふんっ!」
右腕を振るう。
手刀の形に整えた手の先から白い光が伸び、3mもの大剣を形成している。
「なんの!」
大振りに切り上げられたそれは標的の明日菜へと路面を抉り取り、相転移させながら襲いかかり―――その手にあるハリセンに受け止められ、打ち砕かれた。
「よしっ! ただのハリセンかと思ってたけど、コレなかなか使えるじゃない!」
「また反則的な……! なんなんだそれは!?」
「その名も“ハマノツルギ”よ!」
「名前負けの良い例だな」
「なまっ……!?」
痛い所を突かれたからか、明日菜の動きが一瞬止まる。
その隙に蹴り飛ばされた明日菜。しかしその後ろから迫るネギ。
「動きが鈍いですね……! これなら僕でも!」
「チィッ!」
愛用の杖に雷属性の“
例えブレーキに不安があろうとも、ただ叩き付けるだけならば短所とはなり得ない。
「せぇあッ!」
「ガアアアアアァァァッ!?」
バヂッ!! と、インパクトの瞬間、スパークが発生した。
派手に吹き飛んだエヴァンジェリンをやはり減速に失敗して転んでしまったネギが睨みつける。
フラフラと立ち上がったエヴァンジェリンは息も絶え絶えで、見るからに弱っている様子だが―――その眼から闘志は消えてはおらず、ギラギラと光を放っている。
まだ終わりではない。
―――しかし。
(おかしい。確かに今のは良いのが入ったと思うけど、杖に込めた“
おまけに先ほど小太郎が砕いた障壁はすでに再生されており、今の攻撃でそれを貫通した手応えは感じられなかった。
おそらく、吹き飛んだのは衝撃を逃すと同時に距離をとるために自分からジャンプした結果で、倒れてしまったのは雷属性の特性である麻痺によってバランスを崩したからだろう。
(でも、それだとこのエヴァンジェリンさんの衰弱の説明がつかな―――)
「考えている暇があるのか!? 隙だらけだぞ“ぼうや”!」
「―――ッ!」
「ネギッ!」
氷属性の“
総数600を超える破壊の壁は、ただ一点の突破力を重視した魔法では明日菜のハリセンで無効化されてしまうがゆえに。
「……く、明日菜さん僕の後ろに! ラス•テル•マ•スキル•マギステル!」
呼びかけ、詠唱する。
“ハマノツルギ”の弱点も、明日菜にその弱点を補う技量がないことにも気付いているネギはすぐにエヴァンジェリンの思惑にも気付いていた。
形作るは盾の魔法。
考えてしまうのは唐突な優勢に違和感が拭えないからだ。
頭に疑念がよぎる暇もないほどに―――戦いに熱中しろ!
「“
出現する盾は不可視の圧縮空気。
本来、鉄壁の防御を誇る代わりに極短い時間しか存在できない魔法だが、あいにく攻撃は壁のように迫る。
接触が一瞬ならば、後はタイミングの問題だ。
雪崩にも似た氷の槍衾を防ぎきる。
「明日菜さん、僕に掴まって!」
凌いだら反撃へ。
明日菜がネギの手を掴むや否や、瞬動を駆使して飛び出した。
見方によってはまるで考えなしのようにも見える突進だが、現状それ以外の策が取れないのだ。
そもそも魔法使いのスタイルにおける後衛、固定砲台型のハイエンドたるエヴァンジェリンに遠距離の撃ち合いを挑むなど自殺行為でしかない。
たとえいかなる罠があろうとも、直進して踏破するしかないのだ。
0から100へ―――とはいかずとも、90程度まで加速してエヴァンジェリンへと突っ込むネギ。
一直線に最短距離を突き進むネギの姿はエヴァンジェリンから見ればいきなり大きくなったように見えるため、遠近感に一瞬の錯覚を生む。
(罠、迎撃、その他もろもろetc! 幸運に祈るんじゃなくて来る事を前提として障壁の強化を用意しておけば被害は最小限で済む!)
最悪でも明日菜さんだけは守り抜く。そう決意を固める。
明日菜さんの“ハマノツルギ”、それで障壁だけでも壊してしまえば、後は障壁の修復までの短い間の中で相打ちに持ち込むことができるはず。
ある意味自棄っぱちになったような、そんな悲壮な覚悟で戦いに臨む。
それをネギの表情から読み取った、いや、読み取ってしまったエヴァンジェリンはいま、苦虫を噛み潰すような心境だった。
―――
エヴァンジェリン•A•K•マクダウェルは永きを生きる吸血鬼である。
(何故だ……)
吸血鬼は人間とは絶対に相容れないものだ。
吸血鬼は人を喰らい。
人は吸血鬼を恐れる。
(何故、お前達は……)
いつしか人は立ち上がる。
立ち上がって、立ち向かって。
“
(私と違って、死んでしまうのに……)
人間は勝てなかった。
幾ばくかの勝利と引き換えにその何倍もの死が溢れる。
しかし人間は諦めない。
(何故、命を諦める事が出来る!?)
その戦いが、生きるためのものならばよかった。
死にたくないから戦う、そんな当たり前の生存競争ならば、まだ理解は出来た。
まるで死を享受するかのように戦う者が現れ始める。
(正義は死なない? この精神は受け継がれる? この命に代えてもだと!? ふざけるな!)
そんな人間を何人も見てきた。
耳に残る、彼らの最期の言葉。
もし初めて聞くのであれば美しく尊い言葉だっただろうそれは、100回を超える頃にはただの死への言い訳にしか聞こえなくなった。
(そして今、そいつらと同じ表情のガキが目の前に居る……!)
生きる者が戦うならば、それは生きるための戦いであるべきだ。
負けたくないから、傷つきたくないから、だから命を、魂を懸けて立ち向かえるのだ。
命を捨てた、死出の疾走であってはならないのだ。
「ふざけるなよ……貴様!」
手を振り、糸(正確にはガラス繊維だが、以後も糸と表記)を展開させる。
これは先ほど“
「その表情で、その眼で私の前に立つな!」
展開した糸の結界は森のようにそびえ立つが、それを認識出来るのはエヴァンジェリンだけだ。
極細の糸はそれだけで見えづらいうえ、光源が月と星以外にないこの状況ではほぼ完全な隠密性を発揮する。
「うわぁっ!?」
「ひゃあっ!?」
多くの攻撃を遮断する魔法障壁ではあるが、ここは攻撃力をもたず、ただ捕縛に特化した糸であることが幸いした。
案の定引っかかったネギと明日菜がまぬけな声を漏らすが、すでにエヴァンジェリンはそれに聞く耳を持たない。
「ヒロイック•サーガにでも憧れているのか? そういえばぼうやは英雄の息子だったな……!」
「エヴァンジェリンさん……? くそ、何だこれ、極細のワイヤーみたいな……?」
「何よこれ! なんか絡まって……!」
ネギ達は身動きが取れず、圧倒的に不利な状態だ。もしこれが模擬戦や組み手のような戦いであったとしたら、ここで敗北が決まってもおかしくはない。
しかしここは実戦の場であり、さらに今優勢なエヴァンジェリンは頭に血が上って激昂状態だが、劣勢なネギは慌ててはいたものの、至って冷静であった。
―――
糸の結界に絡めとられたネギではあるが、その実情は冷静―――というよりかは、冷静になろうとしていた。というのが正しい。
初めての実戦でこれだけのビッグネームを相手にこれだけの劣勢を強いられるという逆境。
普通ならばここまで頑張った自分自身を誉め称え、薄っぺらい満足感と諦観の中で心が折れてしまうだろうが……これは小太郎のおかげだろうか。
いかに不利な状況でも勝つための思考を止めない、という精神性は、戦いの中でネギに一つの成長を促していた。
(もし、本当に僕らを縛っているこれが極細のワイヤーなんだとしたら、電気を通す事が出来るはずだ。金属は電気を通すから)
自分たちが糸に絡まる前、ネギはたしかにエヴァンジェリンが手で何かを操作しているのを見ている。
それがどれだけの技術を示すのかは今のネギには想像もつかないが、少なくともこの糸は手動で操作でき、魔力が感じられない事から魔法に関係しない事は分かった。
(なら……!)
だとすれば、糸を通して電撃をエヴァンジェリンに叩き込めるはずだ。
口の中で密かに詠唱していた魔法を実行に移す。
「明日菜さん、かなりキツいはずですけど、我慢してください! “
瞬間、白雷が迸り、糸の結界が火花を散らして崩れ去る。
幸か不幸か、こんな結果になったのは伝導率の非常に低いガラス繊維だったからだ。
エヴァンジェリンにダメージを与える事は出来ないが、その代わりに束縛からは脱する事が出来た。
一進一退の戦果ではあるが、相手の情報を手に入れられたという点では若干こちらがリードしたといった所か。
「明日菜さん、大丈夫ですか?」
「なんともないわよ。多分“これ”のおかげね」
心配するネギに、手に持った“ハマノツルギ”を軽く振りながら応える明日菜。
何故だかわからないが、明日菜の持つアーティファクトには魔法を無効化する力がある。
流した電撃に対して火花が散るような反応が起こるのだから絶縁体だったのだろう。
しかし、いかに絶縁体を介しての電撃とはいえ、魔法に由来する電撃だ。少しくらいの痺れはあるかもしれないと思っていたのだが―――アーティファクトに持ち主の魔法抵抗力を底上げする力でもあったのだろうか?
まあいい、被害が無いのであればそれに越した事は無い。
「ぐぅ…………ッ!」
気を取り直し、油断無くエヴァンジェリンを睨みつけていると―――何やら様子がおかしい。
呻き、苦しんでいるようだ。
「エ、エヴァンジェリン、さん……?」
「ふぅ、ぐぅ……ハァッ!」
息を荒げ、まるで血を吐くかのように魔力を放出するエヴァンジェリン。
(……見るからに、風邪が治ってなかったってわけじゃなさそうだけど)
どう見ても、体調不良で済ませられる症状ではない。
「ふふふ……どうした? チャンスだぞ、かかってきたらどうだ……?」
「エヴァンジェリンさん……」
ふいに、もうやめた方が良いんじゃ、と喉まで出掛かるのを抑える。
相手はまだ立っているし、自分はまだやられていない。
戦い、なのだ。
片方にひとかけらでも戦意がある限り、終わることはあり得ないのだから。
せめて決着は、双方どちらかの手でつけられるべきだ。
「……ええ、行きます」
そうして、杖を握りしめた。
―――
敬愛する彼女は視界の隅に居る。
しかし今、いや、いつだって僕の意識の大半は彼女に向いていた。
そして今そんな彼女に危機が迫っている。
(なら、助けなきゃ)
走り出した彼が彼女に向かっていくのを見て、僕は更に速度を上げた。
しかし、届かない。
少年、小太郎君の相手をしているうちにいつの間にかかなり遠ざかってしまったようだ。
(ああ、駄目だ、駄目だ。駄目だ駄目だ駄目だ。そんなのは駄目だ!)
かつて僕が彼女に救われたように。
僕も彼女を救わなきゃ駄目なんだ。
だから―――
―――
ネギ達の優勢か、エヴァンジェリンはもう息も絶え絶えであった。
体術での戦いもギリギリながら打ち合えるし、このまま俺がアダムを抑えていればこの戦いも勝利が見えそうだ。
―――と、思っていた時。
「――――――ッ!」
ふいにアダムがエヴァンジェリンの方へと駆け出した。
それはまるで無防備で、俺の事など既に頭の中から消え去ってしまっているかのようだ。
―――今戦っている最中の俺を?
(ふざけやがって……!)
怒りが込み上げ、思いっきり叩き付けてやろうとアダムを追って走り出す、その瞬間。
「逃げるんだ……! 逃げろ、“姉さん”っ!」
「は、え!? 姉ぇっ!?」
特大の爆弾が落とされた。
PSO2が出来なくてストレスたまるよぉ……。
誤字脱字や“文章がキモい”とかありましたら指摘鬼害します。