またも更新が遅れましたが、不定期更新だもの! この程度、誤差の範囲ですよね!
楽しみにしてくれているかもしれない方には申し訳ないと思っています。
やめる気は無いので頑張っていきます!
「もう、良いんじゃないですか」
つい、声が出た。
もう勝負は決したのだ。
「アダムさんは小太郎君とお姉ちゃんに倒されました。茶々丸さんは動けないし、エヴァンジェリンさんはボロボロだ。だから……」
「だから? なんだ」
しかし、エヴァンジェリンはまだ返してくる。
「なんだ……って、もうエヴァンジェリンさんに勝ち目は無いじゃないですか! あなたはもう立ってるのもやっとでしょう!」
「だが、私はまだ諦めてはいないし、負けを認めてもいないぞ?」
「それは詭弁です! たとえこの戦いが終わっていないのだとしても、続けられないのなら意味が無い!」
そんな僕の反論に、エヴァンジェリンさんは自嘲するかのように嗤う。
「小太郎君が、エヴァンジェリンさんのことを深海魚に例えていた理由がやっと分かりました。
……ああ、確かにあなたにとって、この学園都市は深海のようなものだ。張り巡らされた結界によって圧し潰されて、年相応の女の子程度の力しか残らなかったあなたが、その結界から急に解き放たれてしまったら、圧縮された魔力が陸に上がった深海魚みたいにふくれあがって暴走してしまう」
―――とはいえ、エヴァンジェリンさんは真祖の吸血鬼だ。きっとそこまでは自力で押さえ込むことが出来たのだろう。
「エヴァンジェリンさんがこれまでの戦いで、魔力を大量に使う大規模な魔法しかつかってこなかったのはそのせいです。ふくれあがる魔力を抑えるのに精一杯で、あなたは魔力を小出しにする事が出来なかったんだ」
もちろん、10の魔力を必要とする魔法に15や20の魔力を注ぎ込めば、その分威力が増す。
しかし、それには限度がある。10の魔力を必要とする魔法に1000や2000の魔力を注ぎ込めば暴発してしまうのだ。
「そしてもう一つ、エヴァンジェリンさんが魔法に魔法を受けた時の、あの大げさにも見える苦しみ方もそれに関係しているはずです。破裂寸前の風船に似た状態だったあなたが受ける魔法は、正しく針のようなものだったんだ。だからたった二発程度の“
……と、ここまでが僕の気付けた事の全てだ。
まだ他にも隠されている事があるのかもしれないし、あるいは全く的外れなことを言っているのかも知れない。
――しかし
「そうか」
それでもまだ――エヴァンジェリンさんは負けを認めようとはしない。
「そうか、……って――!」
「なあ、“ネギ”。お前も、いつまでも理屈にこだわるなよ」
「……どういう意味ですか」
そして、エヴァンジェリンさんはため息を一つ吐いて。
「“認めさせてみろ”って言ってるんだよ! 敗北をッ!」
「っ……く、子供ですか! あなたは!」
なんという事だ。
目の前がチカチカした。
「さっきからごちゃごちゃと! スジも通らない屁理屈ばかり並べて! ああわかったよ、覚悟しろ! ラス•テル•マ•スキル•マギステル!」
「ああそうだ、それでいい! かかってこい! リク•ラク•ラ•ライラック!」
ああ、ムカツキでめまいがしてくる!
「“
「“
奇しくも、この最後の呪文。僕らが選んだ魔法は同じだった。――いや、偶然ではない、合わせられたのだろう。
ここにきて、同じ魔法の撃ち合い。わざわざ合わせたということは、それだけの自信があるという事。
見るに耐えない、ボロボロの状態で、それでも勝てると思っているという事。
――どこまでも、傲慢な!
唱えながら、懐に手を伸ばす。
掴むのは予備の杖。
「“
「“
詠唱に終了した呪文を一時的に中断して、取り出した予備の杖を振りかざす。
「“
「なっ……!?」
光り輝く、エヴァンジェリンの足下。
光軌が幾何学的な陣を描き、沸き上がった風が翠の帯となってエヴァンジェリンを縛り付ける。
「“
「言ったはずですよ、もう、あなたに勝ち目は無いって!」
急いで詠唱するエヴァンジェリンだったが、あと一節といったところで風の帯が追いつき、口を閉ざす。
「“
閃光。
轟音。
そして――決着。
―――
「ああ、クソ、何でこれこんなに硬いんだよ」
「本当にこれ氷なんだよね……?」
「ふぁ、ファイトー?」
そして決着の後。
吹き飛ばされて気を失ったエヴァンジェリンを橋の下から回収した後。
「つーかフランの奴マジで帰りやがった……何でだ! 手伝えよ! バーカバーカ!」
「ほら小太郎君騒いでないでさっさと茶々丸さん救出するよー。明日も授業あるんだから時間掛けてらんないし」
「てめえは何でちょっと楽しそうなんだよ!」
現在、巨大な氷塊に包まれた茶々丸を、その氷の中から取り出そうとしているのだ。
「んー……何でだろうね? こういうの性に合ってるのかな。お箸の練習でお皿からお皿に大豆を移し替えるのやってると凄い落ち着くし」
「座禅でも組んでろ日本かぶれ」
妙に頑丈な氷を、俺は気で強化した拳で削り取り、ネギは杖に纏わせた“白き雷”の電熱で溶かしてゆく。
どうやらこの氷、魔力を宿しているらしく、火で炙った程度じゃ水滴すら生じないのだ。
自然界の雷撃に等しい“
しかし、魔力を宿しているのならとアスナの“ハマノツルギ”を試してみたのだが、これには一切効果が出なかった。
どうやら、エヴァンジェリンの使う“永遠の氷河”の本質は効果範囲内への水分の集約と、それを全て寸分の狂いもなく凍結させる極大の冷気にあったようで、その副産物たる魔力を宿した氷塊は、魔法でも何でもなかったようなのである。
「……なんとなくやってるけど、もしかして結構使えるかな、これ」
「なんとなくかよ」
なお、ネギは何でもないかのように言っているが、本来発動した魔法を発射するでもなく任意の所に留めておくのは結構な高等技術だったりする。
留める対象が初級の魔法だったり、そのための詠唱や刻印があったりするのであれば話は別だが――――やはり才能か。結局は才能の問題なのか。
とまあ、なんだかんだやっているうちに茶々丸の所へと到達した。
到達したと言っても、ただ手で直接触れられるようになったというだけだが。
「よし、こんなもんか」
「こんなもんか……って、まだ背中に触れるようになっただけじゃないか」
「それでいいんだよ。我に策ありってな」
そう言って腰のベルトポーチに手を伸ばし、一枚の紙を取り出す。
「……紙? 何も書いてないけど――」
「ちょっと特殊な紙でな、菩提樹から作られてんだ。まあ、仏教徒にはありがたいやら不謹慎やらで複雑な気持ちだろうよ」
準備を続ける。親指の腹を咬み、出てきた血で紙に梵字を描く。
それを茶々丸の背に押しつけて――。
「“オン•ガルダヤ•ソワカ”」
瞬間。
「うわあっ!?」
「きゃああ!?」
絶対的な炎の顕現。
超絶の熱波が辺りを暴れ回り、ひりつく灼熱の世界へとその姿を変貌させる。
電灯はカタチを失い、レンガは罅割れ、アスファルトが蒸発する炎獄。
すでに氷は全て昇滅し、それでも尚猛る炎はきっと、たとえそれが神域の化外であったとしても焼き滅ぼすに違いない。
――しかし。
「……あれ。熱く、ない?」
「え? あ、ホントだ」
それでもアスナとネギに、そして未だ気を失っているエヴァンジェリンにダメージが入らないのは、ひとえにこの炎が三人を敵だと見なしていないからに他ならない。
太陽の中にいるのかという錯覚を引き起こすほどの光量を目の当たりにし、この術を起こしたのが味方であるという事も忘れて、思わず身構えてしまう二人だが――。
「おーい、氷は消えたか?」
こわばった肉体が、すぐに脱力する事になった。
―――
「ああ……うん、消えたよ」
「そうか、ここからじゃ眩しくてよく見えないんだよな」
小太郎君は眩しくて見えない、と言うけど。
こんな目を灼くような光の中じゃ、もしかしなくても失明を覚悟しなきゃいけないハズ。
ただ「見えない」程度で済むのはこの光の性質に因るものか、それとも小太郎君の能力に因ってか。
「あ……っ」
フッ……と、音もなく光が消え失せる。
漂白の極光から飲み込む闇夜へ、急激な明暗の落差に目をしばたたかせる。
数秒してからやっと視界が戻る。
見れば、先ほど茶々丸さんの背中に押し付けた札を橋の下へと投げ捨てている所だった。
「これで、終わりだな」
ヒラヒラと宙に舞う紙札は自然発火するかのように突然勢いよく燃え上がり、マグネシウムの燃焼する時のような眩い光を放ちながらそのまま一瞬で燃え尽きてしまった。
「ぐっ……うぅん……?」
その時、バチッ、と電撃の走るような音と、少女のうめき声。
「まったく、鮮やかなものだな……」
そして聞こえてきたのは憎憎しげな声。
見れば、目を覚ましたらしいエヴァンジェリンが体を起こしていた。
「――エヴァンジェリンさん? よかった、気がつきましたか」
「おう、起きたか。ところで茶々丸(こいつ)、大丈夫なのか? 機械なのに思いっきり凍らせちまって」
「それなら心配はいらん。手足のパーツは交換せねばならんだろうが、「ちゅうすう」の「でんのう」には特殊な処理がされてあるとかで、なんかよくわからんが大丈夫なんだそうだ」
「何でわかんねえんだよ。従者なんだろ?」
「ハイテクは苦手なんだ」
まあ、無事ならよかった。
立場上は敵対していたとはいえ、特に恨みもない相手だ。例えそうでなかったとしても、これでも英国紳士を目指すものとして女の子が傷つくのは気分が悪い。
……うん、これは黙っていよう。どの口がいうんだって怒られそうだ。
ともあれ、確認はできたし、次は戦後処理だ。
「じゃあエヴァンジェリンさん。僕が勝ったんですから、これからはちゃんと授業にも出てもらいますし、生徒を襲うのもやめてくださいね?」
「……チッ。元はと言えばナギの奴が――」
「――僕の血液くらいあげますから」
「ハァァッ!?」
何故か驚かれた。
「え、ちょ、おま……っ、何でだ!? 勝っただろうお前!」
「いえ、勝敗関係無しに呪いは解くつもりでしたよ。 そもそも父さんも三年で解呪するって言ってたんでしょう? のどかさんの時に教えてくれたじゃないですか」
「いやまあそれはそうだが……そんなこと言ったら今日戦った意味は何だったんだって話に……」
「だって逃げたら降参したみたいで悔しいじゃないですか」
「悔しさで命を張るな!」
「何で敵に怒られてるんだろう……」
まあ、それはそれとしてだ。
「とにかく! これからは生徒を襲わない事、ちゃんと授業に出席する事。いいですね?」
「中学の授業なんかもう五回も……」
「いいですね!」
「ああ分かった分かった! もう人は襲わんし授業にも出る!」
一応、きっちりと念を押しておく。
これで言葉を曲解されたりするのはともかく、承諾していないからノーカン、とかそんな屁理屈はなくなるハズ。
……ここまで来てそんな事はしないとは思うけど。
「……あれ、そういえば小太郎君は?」
今回、こんな結果を出せたのは小太郎君の力が大きい。
改めてお礼を言っておこうと、辺りを見回すが……おや、どこに行ったのだろう?
「小太郎ならもう帰っちゃったわよ」
「ええ!? どうして!」
「聞いてないからわかんないけど……まあ、想像はつくわね」
想像――とはどういう事か、と一瞬疑問に思ったが、すぐに氷解した。
辺りの電灯のことごとくが壊れているので気付かなかったが、停電が終わっている。
つまり生徒達の外出禁止令が終わったということ。
先ほどからここでは散々轟音を撒き散らしているし、挙げ句の果てには先の炎獄による閃光だ。
好奇心旺盛な麻帆良生徒なら、まず間違いなく気になって見に来るだろうし、そうしたら見つけるのはこの場の惨状だ。
そして、そんなところに立っている僕ら。
……うん、魔法の隠匿とか無理だ。
「マズいよ皆早く逃げないと! エヴァンジェリンさん立てる!?」
「無理だな。また封印が掛かってしまったし、身体が動かん。身を起こすだけで精一杯だ」
封印……さっきの電気みたいな音はそれか!
しかしまあ、動けないんじゃあ仕方ない。
「じゃあ、僕が茶々丸さんを運びますから、明日菜さんはエヴァンジェリンさんをお願いします」
「ん、分かったわ」
ということで撤収する事に。
「そういうわけで、茶々丸さん失礼しますね」
一応断りを入れてから茶々丸さんをお姫様抱っこのような形で抱える。
途中、ザザザ、とテレビの砂嵐のような音が茶々丸さんから聞こえた。
「……?」
「どうやらノドもイカれたらしいな。音程からして、“すみません”だろう」
もしかして茶々丸さんはもう結構ヤバいんじゃないかと思っていると、エヴァンジェリンさんがアドバイスをくれた。そうなんですか? と聞くと、ゆっくりとした動きで頷いたのであっていたようだ。
「明日菜さん大丈夫ですか? まだ魔力は残ってますから、軽い身体強化ならできますよ」
「大丈夫よ。正直バイトで運ぶ新聞の方が重いくらいだし」
「それは……」
それはエヴァンジェリンさんが軽すぎるのか、それとも明日菜さんが運ぶ新聞紙が重すぎるのか。
「これがうわさのブラックきぎょ……いやさっさと行きましょうか」
エヴァンジェリンさんは別に欠食児童とかいうわけじゃないし、結論は見えているわけだが……いや、良いんだ。女性というものは皆、羽毛の如き軽さなんだ。
ずっしりと来る茶々丸さんのメカメカしいボディを抱きかかえ、その場を後にした。
―――
「ねー、せんせー知ってるー?」
「何ですか?」
そして翌日の事。
軽い筋肉痛に顔をしかめつつも教室に顔を出す。
(……茶々丸さんはいないのか)
小柄な女生徒の話を聞きながら、見ればエヴァンジェリンは出席しているが、茶々丸がいない。
まあ昨夜の戦いが終わったのは夜も遅かったし、修理に時間がかかっているのだろう。
故郷でも自動車が故障した時、修理には一週間くらいはかかっていたし。
むしろエヴァンジェリンさんの回復力がおかしいのだ。
(あれ、じゃあその間は欠席しないといけないから……どういう扱いだろう? ケガみたいなものだし、病欠で良いのかな……)
「――で、あれ、せんせー? 聞いてるー?」
(いや、そもそも誰が治してるんだろう? エヴァンジェリンさん……は、無いか。ハイテクは苦手だって言ってたし。その人の所にも挨拶に行ったほうがいいかな……)
無論、聞いていない。
生徒の言葉は完全にシャットアウトされている。
ここがネギ•スプリングフィールドの欠点というか、玉に瑕というか紙一重というか、集中してしまうと自分の世界に入ってしまうことがある。
並列思考、マルチタスクが使えれば良いのだが、有繫にそんな技術はもっていない。
ゆえに、そんな彼を現実に呼び戻すには――
「こら」
「あたっ」
直接的な刺激である。
「さっきから話してるわよ、かわいそうじゃない」
「え? あ……すみません、聞いてませんでした。何でしたっけ」
偶然近くにいた明日菜の軽いチョップで目を覚ましたネギ。
改めて聞くと、小柄な女生徒は少し頬を膨らませながらも、もう一度話してくれた。
何でも――
「都市伝説?」
「そうなんだよ! 新しい都市伝説! 先輩達が見たって話なんだけど!」
「はあ……図書館島の魔物とか吸血鬼とかは聞いてますけどねえ。で、いつ、何を見たっていうんですか?」
「それが最近も最近! 昨日の夜だって!」
「き、昨日の……」
いくらなんでも情報早すぎやしないか、とかそれもう心当たりあるな、とか。
ともかく、さあっ、と血の気が引いていく。
まさか、バレたのか? と不安になる。
あの橋の破壊痕だけならまだしも、もし、そこから去る僕達の様子が見られたとしたら――
(い、いや、元はと言えば父さんの責任だし、そもそもエヴァンジェリンさんを御しきれなかった学園側にも問題が……うん、オコジョで決まりかな)
自然と遠い目になってしまうネギ。
「……分かりました。もう覚悟は出来ています。話してください」
「ね、ネギ……、いや、そうじゃなくて」
「良いんです、明日菜さん。最悪でも、明日菜さんには被害が及ばないように――」
どうやら明日菜さんはもう噂の内容を知っているらしい。
マギステル•マギを目指すものとして、英国紳士として。
せめて明日菜さんだけは守り抜こうと誓い――
「なんと吸血鬼に続いて今度は狼男が出たんだって!」
――誓う必要は無さそうだ。
「え、今なんて?」
「狼男だよ狼男! いやー、これはもしや決戦の予兆? まさか吸血鬼対狼男の仁義なきバトル? よもや麻帆良学園でヴァン•ヘルシング!? もはやスーパーマホラ大戦待った無し!? きゃーっ!」
「おおかみ、おと、こ……?」
狼男。
あるいは人狼。
それって、それって……
(小太郎君かぁぁぁーーーーっ!)
人に戻るのを忘れていたらしい(おそらくは)友人に対し、心の中ではあるが、盛大なツッコミを入れる事になった。
ネギま! は2003年の物語。
ヴァン•ヘルシングは2004年の映画。
————!?
つっこまないでください(懇願
誤字脱字や“文章がキモい”とかありましたら指摘お願いします。