人影は私の銃弾に撃ち抜かれて。
ポフンッとコミカルな音を立ててはじけ、煙となって消え失せた。
「式神……? 時間稼ぎか何かか」
特に気にする事もないだろう。
「はぁ、これじゃ先生に顔向けできないな」
あんなのに手こずるなんて……と、気分が沈む。
指定されたエリアへと急ぐ事にした。
——
「…どうだ?」
「問題ねえよ、人っ子一人居やしねえ。…成功だ」
ビー玉が転がる。
誰も居ない通り道。真夜中の暗がりには二人の声も響かない。
前触れは無かった。
転がったビー玉が一瞬鈍く光り、次の瞬間には二人の子供が立っていた。
「やっぱりだ。この学園に張られた結界は、通り抜けた瞬間にしか効果が現れない」
「つまり、その一瞬だけをやり過ごせばここの奴らは俺達に気付けない…原理はわかるけど、よくやるぜ、小太郎」
「まあ、俺もこんなにうまく行くとは思ってなかったけどな……でもこっからが本番だ。何度も言うが下手打つなよ、ってかはしゃぐなよ。フラン」
ひそひそと話す二人は近くに立っていた電柱を見て現在地を確認し、それからなにか、ガサガサと音を立てて懐から大きな紙を取り出す。
学園の見取り図だ。
「え〜、今居るとこが桜通りで…?」
「図書館島はここから……よし、そんなに遠くはない」
それからいくつか話すと、地図をしまって走り出す。
目的地は図書館島。
作戦はすこぶる順調であった。
「やべっ、ビー玉回収すんの忘れてた」
少しばかりの不安を伴いつつではあるが。
——
そして、だいたい三、四時間程後の事だった。
今夜の戦闘の内容を褐色の肌の教師——ガンドルフィーニ先生が学園長に報告している。
「——と、いう事で、鬼共の召還主は捕らえる事が出来なかったものの、侵攻自体は止める事に成功しました」
「…………」
しかし、学園長はと言うと心此処に在らずというか、まるで聞いていない様子で、報告に対し返事はおろか頷きさえしない。
「…学園長?」
「む、いや何でも無い。ではこれで解散としよう、皆よく休む事じゃ」
その言葉を引き金に、集まった魔法関係者——魔法先生と魔法生徒が各々の寮、もしくは家へと引き返していく。
真夜中の仕事がやっと終わり、やっと眠れる。とその表情は一様に晴れやかである……と、思いきや。
その中の何人か、険しい顔をしているものが居る。
——あやしい。
かの関東魔法協会の理事長が。
この学園最強の魔法使いが。
戦闘の報告を聞いている最中に相づちすら打てぬほどの思案とは何事か?
普段は好々爺然としたとぼけたジジイだが、その実策略家で、ひとたび相手にすれば一瞬たりとも気が抜けない様な人物だ。
噂では“すでに数百年以上生きている”などと言う話がある程である。
もっとも、“だからもうボケてんじゃねえか?”という声もあるが。
つまり、何か隠してるんじゃないか、という疑いが——
「——ああ、ちょっと待ってくれ、高畑君。ちょっと話があるんじゃが」
ああ、やっぱり何かあるんだ。
怪しんでいた彼らの険しい表情は諦めを含んだものへと変化し、
これから何かとんでもない事件が起こる事を、彼らは一様に悟るのだった。
「で、何でしょうか、学園長」
それは、ここに学園長と自分——タカミチ•T•高畑以外が居なくなり、場に静寂が戻ってからだった。
「……そうじゃな…………ふむ、ひじょ〜〜〜〜……に言いづらいのじゃが…」
「さっさと言って下さい」
「侵入者がおる」
「ぶっ」
つい吹き出してしまった。
僕の記憶が正しければ、たしかこの学園はこれまでただの一度として侵入を許した事が無かったハズ。
「それは本当ですか!?」
「ええ、今は図書館島で本をあさってますよ」
脈絡も前触れも無く。
そう言って、虚空より唐突に人が現れる。
「イマさん!」
「おお、イマ殿」
「こんばんは」
現れたのは魔法使い風のローブを纏う青年。
名をアルビレオ•イマといい、図書館島の司書を務めている。
「どうやら魔導書目当てで侵入してきたようでして、話によるとこれまでにも様々な所に忍び込んできてるそうです」
「話によるとって……もしかしてもう捕まえたんですか?」
「いえ? もちろんまだ泳がしてますよ。彼らの会話を盗み聞きしたんです。……それより」
アルビレオが一旦区切り、手を空にかざすと空間にほころびが生じ、その中にここではない別の場所が映し出される。
図書館島内部。
侵入者の居る場所をピンポイントで映しているのだ。
「これを見て頂きたいのです——特に、タカミチ君には」
「これは——子供?」
なぜ、特別自分に見せたがるのか不思議に思いながら、そのほころびの中を覗き込むタカミチ。
侵入者は二人。
以外にも、二人はまだ幼い——見た所、今日この学園にやってきたネギ君位だろうか。
一人は落ち着いた印象を受ける黒髪の少年。
もう一人は快活な印象を受ける金髪の少女。
「あれ——?」
「む、どうかしたかの。タカミチ君?」
「…気付きましたか」
奇妙な既視感。
「彼らは互いをフラン、コタロウ、と呼び合っています。まあ、偽名という事も考えられますが」
普通に考えて、金髪の少女がフラン。黒髪の少年がコタロウだろう。
「この、少女の方なのですが」
……しかしこの、フランと言う少女の名前、容姿。
「どこかで、見た事がありませんか?」
いつかどこかで、聞いた事がある。見た事がある。
「あなたならおそらく、イギリス。ウェールズで」
それは、六年前の雪の日に消えた。
「……まさか」
話が進まねえよ、バカ!(泣)
いや、自分でも意味不明ですが、後になってわかる様なものに書けたらいいなぁ……