「だああああああっ! 見っつかんねぇっ! なあ小太郎、なんかこう、広域でサーチ出来る様な魔法作ったりできねえのかよ?」
「あー……イチイチ翻訳魔法つっこむのめんどくせえなあ……何かソレ用にメガネみたいなの作ってみるかなぁ……」
「おい聞いてんのか!?」
それから、図書館島内部への潜入を果たした俺達は、目的の魔導書を探して文字通り“本棚をひっくり返して”いた。
「かったりいなあ……いい加減ラテン語勉強すっかなぁ……」
「聞けコラァあああああッ!!」
「ブふぅッ!?」
ボヤきながらページをめくっていると、高速で突進して来たフランに蹴り飛ばされた。
「ガ、ちょ、おまっ、俺は手伝ってやってる人だろうが!? それにこの仕打ちは何だテメエ!」
「うるせえ! いいから何か出してくれよコタえもん!」
「やかましい! こんなん手に負えるかこのフラ太君が!」
そうして始まる、わりかしマジの殴り合い。
このとき俺達はすでに、不法侵入なんだから見つからない様にとか、落ち着いて静かに行動しようとか、そう言った“忍ぶ”と言う事が一切頭から吹っ飛んでいた。
「「てめえ——ぶっ飛ばす!」」
——
とまあ、そんな事してたら当然、見つかってしまうに決まってるわけで。
「で、どうやって学園内に侵入したんだい?」
学園長室、なる所で取り調べを受ける事になってしまった。
ちなみに、部屋に入った時やたらと頭の長いジジイを見つけて。
——うお、福禄寿!? 七福神がなんでここに!?
——バカ、福禄寿ってのは頭が真上に伸びてんだよ。ありゃ後ろに曲がって伸びてるからぬらりひょんって奴だ
——いや、ワシちゃんと人間じゃからな?
というやり取りがあった事は割愛しておく。
「なんだよ〜見逃してくれよ〜タカミチ〜」
「アレ、何お前、知り合いなのフラン?」
「ああ、小さい頃だったからあんまり覚えてないけど、なんか親戚みたいな付き合いだった気がする」
俺等は今も小さいうちだろ、というツッコミはさておくとして。
この取り調べを受け持つ事になったスーツにメガネにヒゲのオッサン……タカミチとやらはフランの知り合い、もしくは身内? らしい。
ならば今、俺のやる事は一つしか無い。
すなわち、この場をギャグ空間に塗り替える事だ!
「なにぃ!? オッサンあんたこんな幼女と付き合ってたってのか!? このペド野郎!!」
「いや付き合ってないからね!?」
「シュミじゃねーよこんなオッサン!」
まあまあまあまあ、ご両人。と、いい感じに雰囲気がバカになってきた所で。
「えー、ゴホン。とにかく、侵入方法を——」
「とっとと吐いて頂ければ、こちらもあなた方に協力するのもやぶさかではありませんよ?」
唐突に、タカミチの言が遮られ。
空間に浮かび上がる様に青年が現れる。
先ほどまでのアホ空間もどこかに吹き飛んでしまった。
「…どういう意味だ?」
「あなたはたしか——コタロウ、でしたね? おそらく、方法を考えたのはあなたでしょう」
「……ああ、そーだけど? てかアンタは誰なんだよ?」
「申し遅れました。私はアルビレオ•イマ、気軽にアル、と御呼び下さい」
不審がる。いくら何でもそれだけで協力してくれるってのは条件としてこちらに有利すぎる。
そういう取り引きを申し出てくる時は十中八九何かを隠してるって時だ。
だからここは慎重になるべきだ。少なくとも、自分の中で信用できる理由が出てくるまでは特に。
「この学園都市はこれまで誰一人として侵入を成功させた事はありません。まあ、今となっては“あなた方を除いて”が行頭に付く事となりますが」
「ああ、話には聞いてたよ、“麻帆良学園都市は難攻不落”だってな。まあ、そんな事も無かったみたいだけど。……ああ、そう言う事か」
「ええ、その通り。“麻帆良学園都市は難攻不落”でなくてはならないのですよ。事実はともかく、そうでなくては侵略者が気軽に、大量に来る様になってしまう。そうなってしまってはもはや学園都市を守りきれない。だからあなた方には、我々の味方になってもらわなくてはならないのです」
「“侵入者を防げなかった”のではなく、“味方だから防がなかった”にしたいわけか。なるほど、合点がいったぜ」
とりあえず、理屈はわかった。そもそも俺達だって、何か悪い事をする為にここに来たのではないのだから、俺としては取り引きに応じても構わないと思うが……
ふと、隣に居る相方はどうかと見てみると。
???
(ああ、こいつ分かってねえのか)
頭の上に浮かんだ大量のクエスチョンマークに色々と諦めを感じた。
まあ、こいつらも対外的には良いもんでやっていきたいわけだし、そう悪い扱いにはならないだろう。
「ま、しょうがないか……受けるよ、取り引き。俺は犬上小太郎。これから暫く厄介になる、宜しく頼むぜ」
「ん? ああ、宜しく頼むぜ!」
明らかに分かっていないフラン共々、頭を下げる。
「では、さっそく——」
——
「つまり——」
「なるほど、では——」
目の前ではアルビレオ、とか言う奴と小太郎が、この学園を包む結界の組成について議論を交わしている。
正直、何を言ってるのかさっぱり分からない。
「なータカミチ? アイツら何語話してんの?」
「いや、僕にもサッパリだ」
何となく暇になってしまって、タカミチに話をフッてみるも、向こうにも分からないらしい。
話を聞く所、なんでも、この結界は空港とかにある金属探知器とかのゲートと同じで、侵入者かそうでないかを判断するのは結界の面に触れる時だけなので、その瞬間さえ隠れてしまえば察知される事は無いんだとか。
また、小太郎曰くこの結界は“手荷物検査がしっかりしてない”んだそうで、隠れるのにはビー玉……正確にはダイオラマ魔法球の中に入っていたのだ。
まあ、やってる事は分かるんだけど、どういう原理なんだ……?
と、その時、タカミチがやけに張りつめた表情をして、こちらを見ている事に気がつく。
「…なんだよ。そんな眼で見たって、オレは結構身持ちが堅いんだからな」
「いい加減そこから離れてくれないかな。……なあ、フラン君、どうしてキミがこんな事をしているんだ」
…………
「決まってんだろ、村のみんなを元に戻すんだよ」
「だからといってこんな、犯罪まがいの事をして……今回はこういう流れで話が進んだから良いものの、ヘタをすればどうなっていたか分からないんだよ?」
「別に、理由を免罪符にするつもりはねえよ。ただ、時間がないんだよ」
「時間がないって——」
「ヒビが入って来てるんだ!」
「な——?」
「石にされた村のみんなが、割れちまったらもう絶対に助けられない! ただのヒビが入るだけでもなにか影響が出るかもしれない! モタモタしてらんねえんだよ!」
「フラン君……」
「どうどう、はい、お前らその話一時停止な〜」
途中で小太郎が割り込んできて、話が中断される。
「こたろう……」
「おう、終わったぜ。まったく、いくらヒマになったからってよ、白熱すんのはこっちだけで充分だっての」
きっと、あのまま続いていたら更に熱くなって、自分でもワケのわからない事を口にしていたかもしれない。
だから、話が中断されたのは良かった事なんだろう。
「じゃーな、タカミチにアルさん。やっぱ俺もまだまだ未熟だわ」
「…………」
「いえいえ、その歳であなた程の技量となると、世界でも滅多に居ませんよ。……是非とも蒐集させていただきたい」
「あれ、何この寒気……?」
帰ろうとする小太郎に、朗らかな顔を見せるアルビレオとは対照的に、タカミチの表情は険しい。
「フラン君……」
「……またな」
ギィ、と開けたドアを閉める。
そうして、一応この学園に認められた俺達は、また図書館島に戻っていくのだった。
「……もしかしてワシ、空気?」
ひとつ終わらせるのに三話だよ!(泣)
人物紹介出すのはもうちょっとひっぱってからにしようとおもいます。
10月14日 一部イイ感じに追記。