光の国の某宅配員系文明監視員になった件   作:キリエル人

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それぞれの道(前)

目が覚めたら知らない天井がそこにあった。部屋は4畳半程で、隅々まで綺麗に掃除されている。部屋を見回しているとノックの音が聞こえて来た。返事をする前に扉が開かれ、そこから出て来たのはなんと美しい女性。彼女はこう言う。

 

「あ!もう起きた「起きたか、にいちゃん!」

 

もちろんそんな出来事はない。覚醒した瞬間全てを悟った。上記は全て夢の中の話であった。もちろんこんなうまい話、ドラマくらいでしか起こり得ないのである。7000年も生きてると言うのにこんな夢でドキがムネムネしてる自分が恥ずかしい。

しかし、となると私に声をかけた人物は誰だろうか。声色からして男であることは明白。恐る恐る目を開けてみると、そこにはいつぞやのおっちゃんがいた。

 

「こんなとこで話すのもなんだ。ちょっとついてこい」

 

「え、ええ。しかし、どこへ?」

 

「ついてからのお楽しみだ。ほれ、早くしないと置いてくぞ」

 

そう言って彼は早々と歩き出してしまった。

 

「ちょ、ちょっとまってくださいよ!」

 

改めて彼の風貌を見てみる。おそらく50代前半で、髪はところどころ、と言っても7割くらいは白くなっている。顎には無精髭が生え散らかっており、どこか貫禄のある顔をしている。

 

「いやぁ、びっくりびっくり。怪獣が倒されてたんで、街に戻ったら君があそこでぶっ倒れてたんだもの。すぐわかったね。あん時叫んでたにいちゃんだって」

 

彼は無精髭を撫でながらそう言った。どこか安心した表情を浮かべて、また歩き出す。

 

「いやー、お恥ずかしい」

 

「いいってことよ。困った時はお互いさま。ストレスとか溜まって全部投げ出したい時くらい誰だってあるさ」

 

おっちゃぁん。私はあなたの様な地球人に会えてよかったよ。これが温もりと言うやつだ。

 

「おい、何ぼうっとしてんだ?ついたぞ」

 

彼が指差した先には森。秋だと言うのにクソ暑くて、紅葉もなく、風情もへったくれもない。

 

「いや、ちょっと!ここに入るんですか!?」

 

おっちゃんは当たり前だと言わんばかりの表情で頷いた。

 

「どう考えてもおかしいでしょ!なんで男二人でこんなとこ入るんですか!蚊だって出ますし蒸し暑いですよ!」

 

「おめぇさん、何勘違いしてるんだ?早く行くぞ」

 

そう言って彼は森の奥に入っていく。ええい!ままよ!全軍突撃!一歩も引くな!森に入ろうとすると、奥から走って来た痩せ型の男にぶつかってしまう。

彼は一言謝罪をすると、足早に立ち去っていった。手には大事そうに何かをもって。

 

「おい!待て、中野!」

 

それに続き、慌てた様子でおっちゃんもでてくる。

 

「あ、あの、どうかしました?」

 

何を聞いてるんだ私は。どうかしたかも何もどうかしないとこうならない。

彼の顔を恐る恐るのぞいてみると、これまた無精髭を撫で始める。

 

「ここで話すことじゃない、入れ」

 

そう言っておっちゃんは森に入っていく。それに続いて入っていくと、中は意外とひらけていて、いくつかのテントが立っていた。

 

「これ...」

 

「怪獣が現れる前、作ったのさ」

 

彼はポツポツと話し始めた。

 

「そん時は人も沢山いてよ。皆んなで協力して食いつないでたんだ。幸せも喜びも分かち合って、それこそ家族みたいに。そんな時だ、奴ら怪獣が現れたのは。それでも俺らは繋がっていた。協力して乗り越えようって、皆んなで食料を持ち寄ったりしてな。でもある時、死んだ奴が出た」

 

「そんな...」

 

「そっからだ。そっからやっと気がついた。自分達は死と隣り合わせなんだとな。それでみんな怖気付いたんだ。そうしてる間にもまた俺たちの中から犠牲者がでた」

 

「すまねぇ......お前さんに話すことじゃ無いな」

 

「大丈夫ですよ。話せば少しは楽になるだろうし

 

「ああ...ありがとう......」

 

 

 

▽▲▽▲▽

 

 

 

それからはもう早いもんよ。喧嘩なんか日常茶飯事さ。

 

「待ってくれ田村!ここはみんなで作った場所じゃ無いか!なあ!」

 

「いいや!我慢の限界だ!こんなとこに居たらおっちんじまう!下がるとこまで下がったが、ここで死ぬ気はない!」

 

「すまない、おっちゃん...俺も...」

 

あの時の友情はなんだったのかって思うほどにひどいもんだった。若い奴から歳をとった奴。沢山いたがどんどんとみんなここを出て行って、最後に残った中野も行っちまった。

 

 

 

▽▲▽▲▽

 

 

 

 

「まあ、それが普通なんだがよ。俺はなんだか、みんなの思い出が詰まったここを離れたくなくてよ...けどみんな出て行っちまったし...正直死ぬのは怖いんだ...」

 

彼は涙をこらえながら乾いた笑いをこぼす。その表情は一見余裕そうだが、まるで少しでも触ると崩れ落ちてしまいそうな...そんな表情をしていた。

そうだ。こんなに怪獣に襲われているのに安心してる方がおかしいのだ。なぜこんな事に気がつかなかった?なぜこの街の人々は......ウルトラマンやDASHがいると言ってもおかしい。

 

「なあ、よかったrボォン!

 

彼の言葉と私の思考は大きな音に遮られた。急いで外に出てみると、街の人はみな一点を見てる。つられて空を見ると、そこには「キングジョー」という文字が煙で描かれていた。

 

「なんだなんだ!こんな時間から花火か?」

 

「すみません、少し行って来ます」

 

「?行くってどこへ?」

 

最後まで聞く前に走り出す。後ろから制止の声が聞こえるが、怪獣が行動を起こしたらまずい。すみませんと一言叫び街へ繰り出した。




次回
「何やってんだあいつら…」

「娘よ、奴にとどめを」

「少しの間だけだったが、ありがとうな」

それぞれの道(後)
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