ここから先の話は残酷な描写タグの面目躍如な展開がドシドシ出てきます。苦手な方はブラウザバックをお勧めします
研究所の廊下。その狭い通路を埋めるように男達が数人いた。その全員が薄い紺色のセキュリティドレスに身を包み、制帽を被っている。
雇われの警備員に見えるが、実はそうではない。男達は警備員に扮した暗部の人間だった。暗部の中でも下部組織の人間だが、最低限の訓練を受けた一端の兵士。とある要請を受けて研究所の警備を請け負っていた。
そんな彼らは今、揃って一方向を向きながら手に握った拳銃をたどたどしい手つきでそちらに向けていた。
その表情は恐怖に歪んでいる。
視線の先にいたのは一人の男。逞しい筋肉に覆われた大男だ。大男はその口角を粘着質に歪めながらゆったりとした足取りで彼らに歩み寄った。
その狂気的な笑みに晒された、男達の先頭に立った男がその表情から逃げるように視線を下に向けた。そして、ナニカと目があった。
大男の足元に転がったナニカ。ボーリング球程の大きさがあるそれは、人間の頭部だった。さっきまで男の仲間だったモノの残骸。
首から噴き出した夥しい量の血液でリノリウムシートに覆われた床を汚しながら、ぞんざいに転がるソレは苦悶の表情を浮かべていた。生きたまま"回された"ようだ。男は、その現場をさっきまで見ていた。
「うっ、うわあああああああ」
恐怖に駆られて滅茶苦茶に撃ちまくった。それに呼応するように後ろからも数十発の銃声が鳴り響く。
銃弾が当たる度に大男の身体が跳ねた。それが何十回も続くのでまるで痙攣してるかのように男の身体が跳ねまくる。
そして、弾が尽きた。何度もカチカチと空のトリガーを引いてようやく残弾が尽きたことを認識した。残弾数など最初から数えていなかった。それだけ男の圧に平常心を掻き乱されていたのだ。
一瞬の静寂。
先程まで荒々しい暴力で猟奇的な死体を量産していた男は、銃弾の嵐に晒され全身を自身のもので血塗れになりながら、その場で沈黙していた。
殺ったか?そう思った矢先だった。
突如として踏み込んできた大男に、先頭の男は対応出来なかった。
ぬるり。突き出された大男の巨大な手が男の頭を鷲掴みにし、そのまま男の身体を宙吊りにした。
アイアンクロー。プロレスでしか見かけないような技を受けて、男が真っ先に感じたのは、頭蓋にくい込んでくる指圧よりも強い、全体重の負荷が一気に掛かって生じた頚椎の激痛だった。
生命の危機を感じて、丸太のように太いその巨腕に両手を引っ掛けて必死にぶら下がる。そこでようやく、頭を締め付けるそれを体感した。
「ぃ゙、いだい゙い゙だい゙い゙だだだだ」
逃げるように身をよじってもその苦痛は一向に収まらない。
それどころか、少しずつその力が強くなっていった。最早、指がくい込むどころではない。少しずつ、男の頭蓋骨が押しつぶされていく。
狭まっていく男の頭蓋から、出口を求めるように脳味噌がカタチを変形させて脳天に集まっていく。
パンっ。風船を割ったかのような破裂音と共に、男の苦痛は終わりを迎えた。
逃げ場を無くした脳味噌が高圧力で男の頭頂部を吹き飛ばして、締めあげられて破裂する西瓜のように男の頭も弾けたのだ。
べチャリと、ゲル状の脳漿が天井に張り付いて、粘性のある雫がポタポタと落ちてくる。
「糞がっ」
それを見ていた男達のひとりが再び銃を構える。既に弾倉を取り替えたそれを発砲する。
しかし大男は意に介さず突き進んだ。
そして男の両手を掴むと、なんの躊躇もなく引きちぎった。
「う、あっ、あっ、あっ!?」
腕をもがれた男はその痛みより、その信じられない光景に混乱した。取り返しのつかないほど荒々しく千切れた両腕の断面からダボダボと血が撒き散らされる。
それから出血多量で軽くトリップした男の頭を大男がガシリと掴むと、まるでコルクを回すように頭を捻った。
可動域を越えた首の皮膚がぷちりぷちりと音をたたて千切れていく。一回転する頃には男は絶命していたが、構わず引っこ抜いた。糸を切られた人形のように首から下の肉体が崩れ落ちる。
そんな残酷な解体ショーを見物させられた最後のひとりは力無く地面にへたりこんだ。戦意は最早無かった。
人間を玩具のように壊すバケモノ。勝てるわけが無い。銃も効かない。やれることなんてない。
ふと男が目の前に立った大男の顔を見上げるように見た。
醜かった。まるで人を殺すことが楽しくて楽しくてしょうがない。そんな顔で、男のことを見やっていた。
はんっ。と鼻で笑うと男は自分の頭に銃口を押し付け
「くたばれ"プラッカー"」
呪詛を吐き捨てて躊躇いなく引き金を引いた。
*
プルプルプル。
高級ホテルのような豪奢な雰囲気の部屋で、携帯の電子音が鳴り響く。
それに反応して、近くにいたソファで寝転がっていた男が身体を捻って鬱陶しい音をたてる端末から逃げるように背を向けた。
.........電子音は一向にやまない。根負けしたのか男が起き上がった。
金髪の、シャレた格好をした男だった。その整った顔立ちと相まってホスト然とした雰囲気があるが、その顔に刻まれた表情は人付き合いを旨とした水商売の人間にあってはならない不機嫌さを醸し出している。ガラの悪いチンピラがいいところだろう。
電話は不通知だったが構わず手に取った。この携帯にかけてくる人間は、一人しか知らない。
「よお。わりぃが今俺はクソほど疲れてんだ。しょうもねえ話なら即たたっ切るぜ」
出るや否や見た目相応の口調で一方的にそう告げる。気遣いゼロ。電話の向こうの人間は男のそんな態度に苦笑したが、慣れているのか気にすることなくすぐに用件を男に伝えた。
結局、男はその携帯を壁に物凄い勢いで投げ捨てた。有言実行は男のモットーだったのだ。
割れた端末が小気味良い音を立ててフローリングに転がる。
さて邪魔者がいなくなったところで睡眠の続きを、といったところで部屋の扉が開いた。
女だ。シンプルな赤いドレスを着ている。
女は男の姿を確認すると、発育の良い腰に手を当ててわざとらしく溜め息を吐いた。
「どうせこんなところだろうと来てみればやっぱりね」
「どいつもこいつも朝っぱらからなんなんだよ。常識を弁えろ常識を」
「第二位のあなたが言うとなんだか面白いフレーズに聞こえるわ」
「喧しいわ。で、なにしにきたんだよ」
やむを得ずといった感じで起き上がった男___学園都市第二位のレベル5、垣根帝督はそう言って鬱陶しげな目で女を見やった。
「なにって仕事でしょ。さっき連絡来たんじゃないの?」
垣根は黙って床で無惨に転がる嘗て通信機器だった残骸を指さした。
女は呆れて天を仰いだ。レベル5が人格破綻者の集まりだという噂は昔から聞き及んでいたが、あながち間違いでもないのかもしれない。
「なに勝手に呆れてんだ?俺はさっきまでゴミ処理を延々と繰り返していたんだぞ?そろそろ休んでもいいと思うんだが」
「だぁめ。今回は結構マジな案件らしいわ」
「あん?何の仕事だよ」
多少の興味を持ったのか、ソファから身を乗り出して垣根は女の話に耳を傾けた。
「ネームドの処理。"プラッカー"よ」
「ああ、"あれ"ね。はいはい」
"プラッカー"。最近になって研究施設やら暗部の拠点やらを襲撃し始めた学園都市の反逆者。人の首を捻じきったり潰したりする傾向からそんなアダ名が付けられた。
暗部組織が蔓延るこの街で、反逆者がネームドと呼ばれるまで調子付くことは珍しい。すぐに他の暗部の人間に消されるからだ。俗に言う"ゴミ処理"。
「ま、その辺の下っ端じゃ束になっても敵わねえだろうな。奴は能力者の中でも、こと戦闘に関しては群を抜いてる」
「だからあなたにお鉢が回ってきたのよ」
そんな女の言葉に垣根は眉を顰めた。
「あんま関わりたくねえなあ。こいつ例の第六位案件だろ?面倒事は嫌だね」
第六位。御坂美琴。暗部に数ある地雷の中でも彼女のそれは特に恐れられている。単純にレベル5だからという理由ではなく、そのやり口が凄まじ過ぎるのだ。学園都市屈指のアンタッチャブル。
垣根は彼女とやり合っても負ける気こそしないが、後々のことを考えれば彼女と敵対して消耗するのは望ましくないと考えていた。無駄な闘争は避けるに越したことは無い。故の苦言だった。
「如何にプラッカー___佐藤藤吉が彼女の身内の親類だろうと、彼から受けている被害を考えればやむを得ないことよ。彼女もそれくらい分かっているはず」
「それと個人的な恨みを持たれないかはまた別な話だけどな。てか本名初めて知ったわ」
結構普通な名前だな。と言いながらやる気を出そうとしない垣根に女は匙を投げた。もう好きにしてくれといった感じで来客用の椅子に腰掛ける。
「安心しろよ、俺が動かなくても他の連中がやってくれるだろうさ。そう、例えば___”アイテム"とかな」
再び毛布に包まりながら、暗部の一大組織"スクール"のリーダーは何となしにそう言った。
*
はちきれんばかりの筋肉に覆われた大男____佐藤藤吉はこれからの行動を起こすに当たって先ず邪魔になるであろう警備隊を始末した後、本来の目的を果たすべく行動を開始しようとしていた。
先程の戦闘の後だというのに、藤吉の身体にはどういうわけか傷が一つもなかった。全くの無傷。彼の着ている服には、浴びせられた銃弾でチーズのように穴が空きまくっているというのにだ。
しかし、そんなことは当然だというように藤吉は思索を巡らせていく。
(今回の警備隊の規模、練度。今までよりは数段上がっていた。暗部もそこそこ俺を警戒しているといったところか)
襲撃する施設になんら規則性のない藤吉らの行動を予測するのは不可能に近い。
実際、藤吉自身この施設を襲撃したのには特に理由はなかった。正直な話、どこでもよかった。攻撃を仕掛けているというポーズが必要なだけで、"どこ"を攻撃するかは二の次だった。
そのスタンスが自然と暗部の動きを遅らせることに成功していた。
どこに襲撃するか分からない以上、一部の拠点に戦力を置いて出待ちする方策を行うことが出来ないからだ。藤吉が攻撃を開始してようやく動くことが出来る。完全な後手番を強いられている。
今回の警備増強は単純な話、藤吉の足止めを行うための捨て駒だった。下部組織の人間ならいくらでもいるので戦力を分散することでほぼ全ての施設を網羅できるし、いくらでも死んで構わない。
そうやって連中が時間を稼いでいる間に、藤吉を討伐するための本命を向かわせる。組織ならではの人海戦術。
装備もそこそこ整っていたし、人数もいたのでさしもの藤吉でも手間が掛かった。時間を掛けすぎた。今からでも暗部の主力が到着してもおかしくない。
迎え撃つためにも準備を整える必要がある。そう思って動こうとした。
瞬間、脳が最大級の警鐘を鳴らした。直感だった。
何故、何が、そんな思考を切り捨てて防御態勢を取る。両腕で自身の頭部を覆って亀みたいに丸まった。
衝撃。
金属バットを思いっきり振りかぶって撃ったような重厚な衝撃が片腕から伝って藤吉をぶっ叩いた。想定を越えたその感触に、思わず口から肺の息が漏れる。
「がぁ、ア゙ァッ」
姿も確認せず、振り向きざまに拳を振った。腰の入っていない半端な裏拳だったが、藤吉のモノであれば話は違う。まともに当たれば内臓が破裂する。そんな威力の拳を乱雑に振るう。
しかし、拳は空を切った。藤吉を襲った襲撃者はその暴力を悠々と避けて、一瞬で藤吉の間合いから離脱してみせた。
藤吉がそのまま振り向くと、そこにいたのは少女だった。パーカーを着た小柄な栗毛の少女。身長は140cmもない、藤吉と比較すれば親子以上の身長差がある。
体格もそれ相応に小柄で、藤吉にはどうやってもこの少女が先程の重い攻撃を放つイメージがつかなかった。
だが、藤吉は少女に対する警戒を解かなかった。否、解けなかった。
(気付かなかった、攻撃される直前まで。この女、どうやって俺に近付いたんだ......!?)
訓練された人間なら確かに気配を消して近付くことも可能ではあるだろう。
だが今、この廊下の床は藤吉が殺した夥しい数の死体と血で埋め尽くされてる。そんな中、どうやって歩けば物音立てず警戒している藤吉に近付くことが出来るのか。今離れた時だって、なんの音もしなかった。
こいつは危険だ。
藤吉の中で少女に対する警戒レベルが格段に上昇した。体躯が小さくとも、自分と同じかそれ以上のチカラを目の前の少女は持っていると、藤吉は判断した。
そんな藤吉に対して少女は訝しげに首を傾けた。
「うーん、今の不意打ち結構自信あったんですけどねえ。あっさり防がれた上、ダメージもなさそうなんで超ショックです」
ほざけ。残念がる少女に藤吉はそう思った。
ダメージがないなんてとんでもない。未だに先程の衝撃が片腕の骨に響いている。
よけられたのだって、偶然だ。藤吉が"頭部"に対するダメージを特に警戒していなければ、今頃藤吉は床に転がっていた。
「さっきは超大チャンスだったんで思わず殴りかかってしまいましたが、一応確認しておきます。あなたが”プラッカー"、佐藤藤吉で超間違いないですね?」
「......そうだとしたら?」
「まあ、そうでもそうじゃなくてもやる事は超変わんないんですがね」
握りこぶしで手を叩いて毅然と少女は続ける。
「超コテンパンにぶっ殺して、生まれてきたことを後悔させてやります」
「......やってみろ」
獰猛な笑みを浮かべて藤吉が答える。
二人の間で殺気が膨れあがり衝突する。視線が交わり、殺意が空気を焦がしていく。視界が赤く染まる。思考が鋭敏に研ぎ澄まされる。
そして
殺意が爆発した。
前回に引き続いてオリキャラ連投。というか暫く続投したり掘り下げがある。あと3話くらい彼メインでやるがタイトル詐欺ではない
割と、美琴の内面に深く関わる展開に欠かせない存在なんです
この展開を原作キャラ絡めて書ければ天才なんだけどなあ
てか戦闘シーンが次回に流れてしまった。すぐ書きあげよう