「肉体再生」。学園都市ではポピュラーな能力に分類される。効果は名前の通り、肉体的損傷を回復させる能力。
前述したとおり能力自体は珍しくもないが、ある一点において他の能力の持つ普遍的な性質から逸脱している。
それは能力使用に一切の複雑な演算を必要としないこと。能力を扱う上で必要な工程が自身の細胞活性のみであるからである。
この性質は「肉体再生」の特性からして非常に噛み合っている。なぜなら「肉体再生」が発動する時というのが能力者自身が傷を負った場合に限定されるからだ。
実は大抵の能力者にとって、肉体に何らかの損傷を負った状態での能力行使は非常に難しい。というか、そもそも戦闘状態において本来のレベル相応の実力を発揮出来るかもあやしい。
それは能力に必要な演算が様々な心理的、或いは物理的な外的要因によってその精密さを左右される故の問題だ。
学校で行われる能力測定時のように万全の体制を期し、リラックスして、誰にも邪魔されない状況で能力を行使するのと、生きるか死ぬかの命のやり取りの合間に能力を使うのとではワケが違う。常にそこには緊張感と焦燥感が付きまとい、とてもではないが演算に集中を割けない。
まして重症など負おうものならば、その激痛で演算どころではなくなる。
そんな中、「肉体再生」は外的要因の影響に関わらずコンスタントにそのチカラを発揮することが出来る。
加えて再生能力故に継戦能力も高い。
なので、地味ゆえに学生間ではあまり好まれない能力だが、任務の安定した達成を重視する暗部のような組織では「発火能力」のような派手な能力よりも実戦的な「肉体再生」は高く評価される。
「だけど、それはせいぜいレベル2か3程度の肉体再生の評価。4になると、その実態はまるで別モノになる」
筋肉に負荷をかけると筋繊維が破壊され、破壊された筋繊維は回復する時に負荷を受ける前よりも強くなって回復する能力が普遍的に人体に存在する。これを超回復という。筋肉をつける原理がまさにこれだ。筋トレとはつまるところ筋肉を破壊する作業であって目的はこの超回復による強化にあるといえる。
しかし超回復には時間がかかり、筋繊維が破壊されてから大抵24時間から48時間程度の時間を要する。なので、この間に更に筋トレとかをしても筋肉に余計な負荷がかかるだけで筋肉の増強は望めない。寧ろ筋肉を減らすハメになる。
この自然の制約によって、普通の人間が体づくりを行うなら長期的な期間を要することになるのだが、レベル4以上の「肉体再生」能力者にはそれがない。その圧倒的な再生速度によって数日かかる超回復はたったの数秒に短縮される。つまり、鍛えれば鍛えるほど筋肉がつく。
例えば、それまで短距離走がクラスでドベだった人間がその日のうちには世界記録を出す。そのレベルの効率のトレーニングが行える。
数ヶ月もあれば、ヒョロガリが筋肉に覆われたバケモノに仕上がる。
「.........で、それと私になんの関係が?生憎と私の専門分野は脳なんだ。勿論、人体生理学に詳しくないわけではないが」
それまで話を聞いていた女が疲れたように掠れた声でそう口を挟んだ。
別に本当に女が疲れている訳では無い。元々そういう声質であるだけだ。だが、深く刻まれた目元の隈や、手入れされていないボサボサの栗色の髪を代表とする草臥れたような女の風貌と相まって、普段からそういう誤解を招いているようだった。
「まぁこれはちょっとした注釈みたいなもんです。本題はここから」
女の前で先程まで講釈をたれていた少女が懐から薄めの封筒を取り出すと、女の方へ放り投げた。
女の膝に着地したそれを拾いながら怪訝な表情を女は少女に向けるが、少女はその無言の抗議をスルーしてジェスチャーで封筒を開くよう指示する。
中から現れたのは半裸の男性を写した何枚かの写真だった。
「これは?見るところ、写真はそれぞれ別人のように見えるが」
「同一人物です。名前は佐藤藤吉。もとはレベル2の肉体再生を持つ能力者でした」
言われてみれば数枚の写真に写る男の風貌にはそれぞれ共通点というか、面影のようなもの感じる。もっとも、それが気の所為だと思うくらいには写真に写った男性の体つきが違いすぎる。骨格からして変わってしまったようだ。
「成程、先程の講義はこれを納得させるための解説というわけか。しかし、肉体再生を用いたトレーニングに適切なレベルは4という話ではなかったかな?君の話を信じる限り彼はレベル2なのだろう?」
「レベルを誤魔化すトリック。それについてはあなたの方がよくご存知なのでは?」
「どういう意味だ?」
「レベルアッパー。あなたの開発した音楽ファイルですよ、木山春生さん」
途端に女___木山春生のどこか気の抜けた気配は一気になりを潜めた。
「.........私達は初対面の筈なんだが、どうして君がツテなしでわざわざ私の所を訪ねてきたのか、疑問だったが今しがた解消できたよ」
ありがとう。と言いながらも木山の顔からは表情が消え、その目は少女を油断なく見据えた。まるで目の前の存在をどうやって排除するか、それのみに頭を巡らせ始めているようだった。
予想通りの反応だったのか殺気立つ木山にも動揺することなく、少女は口を開いた。
「誤解して欲しくないんだが、私は別にあんたと事を構えたいわけじゃないんだ。私はね、あんたと取引に来たんだよ、木山さん」
「取引だと?」
「そう、あんたの計画を助ける代わりに私の計画を手伝って欲しい」
意外な提案だったのか、木山は一瞬目を見開いた後、冷静に尋ねる。
「断る。と言ったら?」
「あんたがレベルアッパーをバラ撒いた首謀者だという情報を風紀委員や警備員に匿名で流す。あんたも知っての通り、レベルアッパーはその性質上いずれ使用者に致命的な副作用を起こす。そのうち問題になって連中が動きだすことは想像に難くない。場合によっては理事会が動くかもな」
「今、私が君をここで殺すとしても?」
「私を殺そうが殺すまいが、いずれ事は露呈するさ。私がこうしてあんたを探し当てたように。結局のところ時間の問題なんだ。なら、私がどうやってあんたのことを特定できたのかを知ることが私の生き死によりも今優先すべきことだと思わないか?」
ふむ。と頷くと顎に手を当てて木山は考える素振りを見せた。取り敢えずのところ敵愾心は抑えることにして、少女の話を聞くことにしたらしい。彼女の脳裏では少女の提案をのむメリットとデメリットが計算されているのだろうと少女は思った。
といっても答えを逸るには提示した交渉材料も、少女自身のことについても情報が少すぎる。答えを出す為の熟慮というよりは頭の整理中といったところか。カッとなった頭では冷静な交渉など望めない。こうして頭の冷却時間を取ることはネゴシエーションを取る上でなにより重要なことだろう。
木山を見やりながら少女がそんなふうに推測していると、木山はおもむろに口を開いた。
「レベルアッパーから私を特定する手段は二つしかない。一つはレベルアッパーの拡散経路から辿る方法だが、これはハッキリ言って不可能に近い。というのもレベルアッパーを拡散するために私が払った労力というのはネットの掲示板に一度だけデータをアップしただけで、後はネットの住人が勝手にコピー品をバラ撒いてくれたからね。今出回っているのだって言ってしまえばコピー品のコピー品。そこから辿ってもオリジナルのデータには行き着かないだろう。行き着いたとしてもアップに使ったPCはネカフェのものだ。アップするにしろ複数の海外サーバーを挟んでいる。ここから私を特定するのはかなり骨が折れるし、現実的ではない。なのでこの方法はありえない」
あっ、そっちの話するんだ。と少女は思った。てっきり着々と進めてた計画に脅迫混じりの横槍入れられたことに苛立ってるかと思っていたので、こう具体的な話を切り出してくるとは考えていなかった。
木山の言ってることは概ね正しい。少女も一度だけその方面での捜索を考えたが、あまりにめんどくさかったので諦めた。ネットの特質を利用したいい手だと感心していたが、こうも周到だったとは。尤も、木山がそれくらいのことも出来ない・警戒心も強くない無能な楽天家であったならばハナからこんな話を少女が持って来ることはなかったが。
これはわざわざネタばらしする必要もないかな.......?
「もう一つはレベルアッパーの特性を利用した方法。その鍵となるのは___」
「脳波」
「その通りだ」
なんとなく悔しくて口を挟んだにも関わらず、木山はあっさりと肯定した。釈然としない。
「今更言って聞かせるまでもないだろが、おさらいがてらに解説しよう」少女の内心を知ってか知らずか、そう前置きすると木山はテキパキ話を続けた。
「レベルアッパーを聞くと共感覚性によって使用者の脳波はある特定の脳波に調律される。調律され一律化された複数人の脳波はAIM拡散力場と相まって一種のネットワークを構築する。私の目的はここにある」
「どっちかというと目的はネットワークの形成そのものじゃなくてその使用じゃないのか?」
「どうしてそう思う」
「あんたが過去に何度も『樹系図の設計者』の使用を申請していて、未だそれが通っていないのは把握済み。要するに『樹系図の設計者』の代わりが務まるくらいの高性能な計算機が欲しかったってことだろう。なんでそれが必要か、というのはあんたの経歴を見たら自ずと推測が立つよ」
「...........」
黙り込んだ木山を見て少女がハッとした。やべ。ミスったか。
「悪かった。ベラベラとあんたの内情に踏み込みすぎた。許してほしい」
「いや、そこまで気にしてはいない。実際その推測は正しいからね、素直に感心するよ。ただ、フェアじゃないと思っただけだ」
木山の言うことはもっともだと少女は思った。突然現れ、自分のことを散々調べ尽くし、その上自身のことについて何も語らない正体も定かではない相手。そんな奴とは如何にメリットがあろうと取り引きはしたくはない。信用できないからだ。
今回少女はそれを払拭するために合理的な理由で理論武装して木山を説き伏せにきた。何か疑念を持たれてもそれをそれを捻じ伏せて強引に信用させる手札をいくつも用意した。
だが、今回木山が吐露したその疑念はあくまで心情的なものだ。論理や情報で解決できる蟠りではなかった。
「なら、私の目的の一部を開示する。あんたが作った脳波を用いたネットワーク。その元であろう原形。それの諸々の解決が私の目的だ」
少女の開示したある意味暗号的なそれを、しかし読み取ったのか、或いは心当たりがあったのか木山は一瞬目を見開き、やがて得心がいったように頷いた。
「成程、確かに。君のその桁外れの情報収集力があれば気付かないことはないか。そして、それを知った君が形振り構わずこうして動くのもわからない話じゃない。真偽はともかく納得はできる。この場は取り敢えず、君のことを信じることにしよう」
「脱線したな、話を戻そうか」そう言う木山に少女はホッとした。
少女は木山に対してかなり高圧的な態度を取っているが、それはあくまで今後の交渉において木山からイニシアチブを握るための布石にするためだ。ネックだったのは彼女の機嫌を損ねて交渉前に破談してしまうこと。情報量のアドバンテージで優位性を確保しつつ、かつ木山の機微にアンテナを立て続けていなくてはならない。この調整が難儀だったし、少女自身、その態度とは裏腹に木山に対してかなり気を使っていた。木山の助力を得られずに困るのは少女本人だからだ。
「君も言ったが、レベルアッパーには致命的な副作用がある。まあ、脳波を間接的にではあるが弄るわけだからな、使用後早くて数週間以内には意識を失う。問題はここだった。なにせネットワークの利用にはレベルアッパーの使用は不可欠だからな、私が使って、もし昏睡状態になれば目的は果たせないし、いずれ起こるであろうレベルアッパーの問題を早期解決できる者がいなくなる。だからリスクを承知でレベルアッパーにある仕込みをさせてもらった。それがきっと私とレベルアッパーを繋げる糸口となったと見るが、どうかな?」
木山の言葉に少女は同意するように肯首した。
「レベルアッパーで調律された脳波の波形はあんたのモノを指していた」
「その通り。そういう風に作ったからな。つまるところ私はレベルアッパーを使用せずとも常にネットワークに接続できる状態にある、というわけだ。世界で唯一レベルアッパーをノーリスクで使用できる存在だといえるだろうな。まあ、そのせいでこうして君のような人間に見つかってしまったわけだが」
「『書庫』にあった学園都市に住んでる連中の脳波形を集めてるデータベースと照合したらあっさり見つかったよ。私じゃなくとも勘がいいヤツならすぐ考えつく手法だ。問題が大きくなれば特定は時間の問題だろう」
「ああ、しかし私は問題が大きくなるまでは動けん。正確に言えば、レベルアッパーの副作用で数百人倒れるくらいにまで使用者が増えなければネットワークは使えない。構造上、使用者が多くなればなるほどネットワークの性能が上がる反面、使用者が少なければものの役にも立たないわけだからな。ある種のジレンマさ」
「私ならそれを解消できる」
少女の言葉に木山の表情に驚きの色が広がった。
「解消といっても、レベルアッパー自体の欠陥を改善出来るといってる訳じゃない。問題が大きくなっても特定までの時間を限りなく稼ぐことが出来るという意味でだ。聞いてる限り時間との勝負らしいからな。私なら、その制限を解いてやれる。具体的には書庫とそのバックアップのデータを改竄・照合のためのアルゴリズムの書き換え、いくらでも隠蔽は利く」
「意外だな.......てっきりこれを口実に私を脅してくるものだとばかり思っていた」
「あんたが私の要求を飲まなきゃこのことをリークするってことは本当だ。だが、協力してくれるのだというのならあんたの身柄の保護は私にとって優先すべき事項になる。働いてもらう前に捕まえられたら困るのは私だからね」
「だが、私は最終的には全ての罪を償う気でいる。目的が果たされれば自ら出頭する腹積もりだ。私がここで君の助力を断って、このことをリークされたとしても現段階では警備員のような組織は先ずリーク情報を信じない。彼らは基本的に事なかれ主義だからな、事が始まった後からしか動けないだろう。つまりその情報が本格的に吟味されるのは問題が大きくなった段階での話だ。その頃にはネットワークも十分な大きさになっている。そうなれば私は強硬手段を取ることだって出来る。そのための準備もしている。君のそれは脅しにはなりえない」
毅然と言い放つ木山の姿勢に少女は目を細めた。
面倒なことになった。と少女は思った。木山は少女の提案を蹴る気でいる。
普通の精神構造を持った人間なら折れるだろうと少女は思っていた。人間はみな保身に走るものだと。罪を犯して、それに罪悪感を覚えていてもいざ自分が助かる道が見えればそちらへ走っていくものだとばかり思っていた。
だが、木山は少女の思うよりも遥かに善人だった。罪は償わなければならない、必ず。木山はそんな形骸化した常識を遵守する奇特な善性を持っていた。
こうなってくると少女の提案を蹴るデメリットも、提案に乗ることのメリットも木山には関係ない。リークされたところで痛くも痒くもないし、自身の身の安全も興味ない。少女の提案を受け入れる必要がないのだ。
だが、木山の反応はまだ予想の範疇だ。
「あんたはよくっても、あんたの教え子達の方はどうかな?」
少女の言葉に木山の目尻が吊り上がった。ことこの案件について、木山はかなり過敏になっているらしい。
「あの子達をどうするつもりだ」
「勘違いしないでくれ、私は別にその子達に手を出そうなんて考えちゃいない。寧ろ何もしない」
どういう意味だ?とばかりに視線を寄越す木山に「その前に」と少女は続けた。
「これは確認なんだが、ネットワークを使ってあんたがやろうとしてることというのは、過去に実施されたあんた管轄の実験で意識不明の重体に陥った十数名の『置き去り』の子供達を快復させるためのシミュレーションを行う為。で、よかったな?」
「だったらなんだ」
「あんたは子供たちを助けた後出頭するらしいが、子供たちはどうなると思う?保護する人間がいなければ彼らは結局のところただの『置き去り』だ。所有権は学園都市にある。あんたにとっては大事な生徒だったとしても、学園都市からすれば壊れた玩具が再利用できるようになったに過ぎないだろ?元の木阿弥に戻るだけだと思わないか」
「それは.......」
「それとも信用できる人間のアテがあるのか?じゃあ聞くがそいつは裏の連中から圧をかけられても見ず知らずの他人に体を張れる人間なのか?そこまで信頼できるのか?」
少女の言葉に木山は答えられなかった。
木山とて子供たちのその後について考えていなかったわけじゃない。根回しは事前に済ませていた。自分がいなくてもやっていけるよう、信頼できる人間に援助を頼んでいた。だが少女の言葉を聞いて、やはりというかある疑念を抱いてしまった。
彼は全てを投げ打ってまで子供たちを守ってくれるだろうか?
もしかすると、その人物は本当にそれを為せるほど善意に満ちた人間なのかもしれない。だが、それが真実であれどうであれ今の木山には関係なかった。それを確認する術が無いからだ。疑いをもった時点で、木山の心は容易く揺らいだ。
そしてそれを見逃さない少女でもなかった。
「誰もいないんだよ。彼らに救いの手を差し伸べてくれる存在なんて、あんた以外には。そんなこと、この数年でよく分かったことじゃないのか?ヒーローなんていない。自分がやるしかないんだよ」
諭すように紡がれる少女の言葉は木山にとって大いに同意できる内容だった。
「私が彼らを助けることは出来ない。する気もない。だけど、彼らを救うあんたを助けることは出来る。そしてそれはあんた次第だ」
協力してくれるなら助けてやる。最初から最後まで少女の提案は変わらないが、少女の言葉で一気にその印象が変わる。
少女のやったことは単にメリットのすり替え。木山自身の心の持ちよう。木山の助力者から間接的にではあるが、子供たちを救う存在へと木山の主観で自身の姿を変えた。
現に木山は黙り込み、何か思案をしているようだった。
揺らいでいる。もう一押しかな。と少女が思ったとき、木山が口を開いた。
「.........想定される外敵は警備員のような公正な組織だけではない。もっと厄介なのは統括理事会、その尖兵の暗部と呼称される組織群だ。はっきり言って、これは警備員や風紀委員などより遥かに危険だ。殺しにおいて彼らはA級のプロフェッショナルといってもいい。そんな彼らを束に相手にして、君はどう対処する?」
来た。条件の提示。勝ったな。思いながら少女も口を開ける。
「簡単な話だ。早い話があんたの対処を後回しにさせればいい。連中の仕事というのは基本的に学園都市の機密情報の外部流出を防いだり、要人連中の護衛、危険思想を持った連中を事前に叩いたりすることだ。あんたのケースだとこの内、テロリストの排除に当たるんだろうが、はっきり言ってこいつは連中にとって優先度はかなり低い。だって正直あんたが問題を起こしたところで、出る損害はたかが百にも満たない程度の数の低能力者が意識を失って寝込む程度だ。ネットワークを使えばもっと大きな問題を起こせるかもしれんが、そんなこと連中は知らない訳だしな。勿論、学園としては対処しなきゃいけない問題だし、ある程度人員は割かれるだろうが.......しかしもし、同時期にもっと優先的に対処しなければならない問題が出てきたら、どうなると思う?」
「スケープゴートを用意しているのか」
「ああ、さもなきゃこんな話持ってこんよ」
なんでもないという風に言う少女に、木山は思い浮かんだ疑問をぶつける。
「しかしどうやるんだ?君がそれをやるとして、事が露見した場合、結局君と繋がってる私も追われるハメになるんじゃないのか?」
「そこは安心していい。というか、私が直接出張るわけじゃないからな」
「じゃあ誰が.........」
訝しむ木山に、少女はただ机の上に散らばる写真に指を向けた。
「まさか」
「その写真の男。佐藤藤吉がやってくれる。奴はある事情で私に従ってくれている。まあ、ある種の協力関係があるわけだ。戦闘能力に関してはさっきも説明した通り問題ない。武装した能力者が束になっても勝てんよ。人間を腕力だけで引きちぎられる攻撃力に、拳銃程度なら通さない筋肉の鎧、加えて致命傷を瞬時に修復する再生能力だ。並大抵のところじゃ倒れん」
「しかし、彼はレベルアッパーを使っているんだろう?これがいつの写真か分からんが、直にがたが来るはず」
「そこも問題ない。脳波と言っても突き詰めれば微弱な電流だ。なら、私にどうにかできないことはない」
「なんなら試しにどこかで見せてあげようか?」と言う少女に木山は「結構」とだけ返した。
ことその方面の技術において、少女の右に出る者がいないほど彼女が卓越した能力を持っていることを、木山は少女の肩書きから知っていた。
「それで、協力してくれる気になったか?」
「はっきり言って、まだ完全に君を信用した訳では無い。だが、私の目的と手段を理解し、なおかつ私に全面的に協力をしてくれる存在が君しかいないというのもまた事実だ」
そう言って、木山は少女に頭を下げた。
「頼むッ!私に協力してくれ!あの子達を助けるためなら、私はなんだってするっ。だから........」
切実な声だった。今まで押し殺されてきた感情が、木山の思いが、栓を切って溢れてきたような重みが、その掠れて上擦った声に乗せられていた。
「頭を上げてくれ、木山さん」
しゃがんで、項垂れるように頭を下げる木山の顔を上げさせた少女は、安心させるように努めて柔和な笑みをうかべた。
「私があんたに頼んで、あんたはそれに応じた。それだけだ。どっちが上か下かじゃない。私はあんたを助ける。あんたは私を助ける。私達は対等なんだ、だから頭を上げて欲しい」
おずおずと顔を上げた木山にその微笑みを向ける。そこには木山の境遇や独白への憐れみも勿論あったが、それはどちらかというと交渉が成立したことの喜色の笑みだった。
「ありがとう。こちらこそ頼むよ木山先生」
「ああ、よろしく頼む
______御坂美琴君」
なんか言いたい事を一から十まで書いたら話があっちゃこっちゃいって長ったらしくなった。ごめんなさいね
お久しぶりです。戦闘シーン書くのに難儀して別の話も並行して書いてたらこっちの方が早く済んで、別に時系列的に挟んでもいいからこっちを先に投稿することになりました。次話はプロットと文章の雛形は出来てるから近日中に投稿したいな........
話複雑で訳わかんねーってなったら感想欄にでも書いていただけると、嬉嬉としてお答えしますんで遠慮なく!