インフィニット・ストラトス   迷い龍は空を目指す   作:ガクジン

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シリアスにもギャグにもなりきれない小話です。作者の趣味ある意味全開。


小話1 護身拳銃

 

 

 時は一夏とオルコットの決闘の前にさかのぼる。織斑先生に一夏が所持する拳銃を決めて置けと言われた晩のことだ。

 

「とりあえずこれでも持っとけ」

 

 俺の部屋に来た一夏は、普通の部屋にはない俺の体調を管理する医療器具の数々に慄いたようだったが、その奥に普通の生活空間もあるのを確認して安心したようだった。

 俺はその一角、一つの金属製の大きなトランクから一丁の拳銃を取り出して、一夏に渡す。

 

「……こいつは?」

「コルト・ドラグーン」

「……薬莢式じゃないよな」

「パーカッション式シリンダー先込め銃」

「装弾数6発はいいとしてさ、撃ち切ったら装填すんのにどんくらいかかるんだ?」

「あきらめろ」

 

 俺が言うと、一夏は肩を落とす。

 

「なあ、これを使えと?」

「威力はでかいぞ。火薬の量次第だが」

「実用性は」

「ロマン」

 

 俺が言い切ると、一夏は肩を落としてからドラグーンを俺に返して言う。

 

「せめて薬莢式のは?あ、そうだお前が持ってるモーゼル、あれとおんなじのとか」

「モーゼルはレッド9一丁だけだ。これは気に入ってるからやらん」

「おいおい……一応護身用なんだろ、使いやすいの頼むよ。撃ちたくないけどさ」

「ったく……じゃあ、これはどうだ」

 

 俺が取り出したのはある意味知らぬものはないと言えるほど有名な拳銃。

 

「コルトSAA(シングルアクション・アーミー)か」

「通称ピースメーカー。西部劇の代名詞ともいわれる銃だな。こいつは銃身が7.5インチの騎兵用。キャバルリーと呼ばれるタイプだ」

「使いやすいか?」

「シングルアクション、おまけに信頼性も高い。使いやすいかはわからんが、いい銃だよ」

「そうだな……ほかには?」

「パイファーツェリスカならあるが」

「……いらん」

 

 パイファーツェリスカ 世界最強の拳銃。象狩り用の弾薬を使用する重さ6キロの拳銃とは思えない代物。射撃するには匍匐姿勢で土嚢などに銃を載せて撃たなければならない。通常の射撃姿勢での射撃は不可能。

 

「そんなもん携帯できるかよ」

「一時期俺は携帯してたけどな」

「……なんでだ」

「亡国企業とかいうのにしつこく付け狙われた時期があってな。護身用に。装甲車ぐらいなら喧嘩売れる火力は便利だった」

「……撃てるのか?」

「ほら、俺強化人間だから」

「……なにそれ怖い」

 

 ちなみに西部劇とかB級映画みたく両手撃ち余裕。強化人間なめるなよ。

 

「とにかくさ、ベレッタとかないの?」

「そんな面白くない銃はない」

「………」

 

 そもそも銃が好きと言うよりは機構が美しいものとか合理的な設計のモノが好きなのだ。ベレッタよりはM1911だな。ジョン・ブローニング設計の無駄のない機構は素晴らしい。

 同じ理由でC96も大好きだ。

 

「わかったよ、じゃあ種子島でも持ってろ」

「もはや拳銃じゃねえ?!」

「つーかそこまで言うなら投げナイフでいいだろ」

「銃ですらなくなった?!」

 

 俺の暴言に一夏は逐一ツッコんでくれる。

 

「……まあ、冗談はさておき、コルトのSAAかM1911でいいだろ。どっちも強力だし、今でもコルトが生産続けてるから部品も入手しやすい。信頼性も高いしな」

 

 無駄に高性能な銃でも、信頼性が悪ければ話にならない。とどのつまり、拳銃と言うのは最後の武器なのだから、確実に作動してくれないと困るのだ。

 

「……まあ、お前がこれ使うような事態にならないことを祈るけどな」

「……ああ」

 

 トランクから取り出した大型の自動拳銃。その横に並んだ回転式拳銃。黒光りするそれは、人を殺すためだけに作られた武器だ。ライフルなどのように狩りに使われるわけでもない。ただの殺人兵器。

 

「ISなんていう兵器を使うことになった時から覚悟だけはしてるつもりなんだけどな」

 

 一夏はつぶやくように言う。15の少年が言ってはならない、その言葉。改めて今の世の中は狂っていると思う。

 

「……とりあえず、SAAと弾60発くれるか。代金は後日払うからさ」

「ああ。教えたとおりに保管しとけよ」

「わかってる。思いっきりしごかれたからな」

 

 一夏に予備の弾が入った箱と、手入れ用のクリーニングセット、そしてもう一つ。

 

「改造型のホルスターだ。腰の後ろにつけるタイプ。これで違和感なく携帯できるだろ」

「ああ、サンキュ」

 

 一夏は俺が渡したものを持つと、それから言った。

 

「……なあ、龍。もし、これを使わなきゃならない時が来たら」

「………その時は迷わず撃てよ。もし迷いがあるようなら撃つな。いずれにしろ、その引き金を引いた時点でお前は戻れなくなる」

「ああ……じゃあな」

「ああ、おやすみ」

 

 一夏が出てから、俺は大きく息を吐いた。

 

「これが正解なのかは知らないけどさ……守りたいときに力がない、それも嫌なもんだろ」

 

 独白。俺がかつて、まだ幼いころにわずかな間いた戦場。そこで力がないばかりに失ったもの。その記憶は今でも焼き付いている。

 初めて人を殺した記憶、初めて親しい人が無残に死んだ記憶。どちらも俺の力がなさ過ぎたから起きたこと。

 それがすべてとは言えないが、俺は確かに力を求めた。そして今、一夏も自分を守るために力を欲した。

 それを俺は与えた。それが正解かどうかは知らないが、とにかく行動したのだ。なら、これが正しかったかどうかはいずれわかるだろう。

 

「さてね……ま、そうなる前に俺が一夏を守ればいいだけの話だ」

 

 それが仕事だ。だが、もし俺の盾をすり抜けて、一夏の前に敵が立った時、その時あいつはどういう選択をするのか。

 あまり見たいものではないな、そう思って俺は思考を終えた。

 




 モーゼルC96、何がいいってあの素晴らしく合理的な設計でしょう。その合理性が外観にまであらわれ、圧倒的な機能美を体現しています。最高。

 仕事が夜からだったのでついでに小話を投稿してみました。ギャグ風に書こうとして失敗しましたが。
 ギャグへの道はかくも険しいもの也。
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