TS賢者ハルの異世界放浪紀《改訂版》   作:AJITAMA5

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お久しぶりです

風邪からの復帰、テスト、キャラの構想が決まらない等の理由で遅れました(焼き土下座)

また、体育祭が控えてるので次も遅れる可能性があります。


それでは本編をご覧ください。


第四話

 何処までも続く真っ白な空間の中で、僕は膝を抱え(うずくま)っていた。

 

『―――。』

 

 何処からか突然、声が聞こえた。

 

『―――?』

 

 僕を、呼んでいる?

 

 誰だろう、そう思って顔を上げると、

 

 そこには、黒い影のような、(もや)のような、

 

 人を(かたど)ったモノが居た。

 

『―――、―――。』

 

 影は何か喋って、僕に向かって、手を差し出した。

 

「手を取れ」…そう言われている気がした。

 

 僕が戸惑っていると、影は勝手に僕の手を取り、引っ張って立ち上げた。

 

 突然の事だったので、僕はつんのめって、影の胸元に倒れ込んでしまった。

 

 すると影は、ケラケラと笑うように肩を震わせ、僕の頭を撫で始めた。

 

 嫌な気分では無かった。…寧ろ、安心した。

 

 ―――ふと、思った。

 

 僕はこの撫で方を知っている気がする。一体誰の物だろうか、と。

 

 しかし、その疑問に答えられる者など、この場に居る筈もなく、僕は微睡み、眠りに就いた。

 

 

  ◇

 

 

 刹那、瞼に光を感じ、僕は目を開けた。

 

 まず目に映ったのはふかふかとした羽毛布団と少しシミの付いた天井だった。

 

「知らない天井だ…」

 

 どうやら僕は誰かに助けられたらしい。

 

 体は大丈夫なのか、そう思って体を起こす。

 

「っ───!」

 

 次の瞬間には腹部に激痛が走り、僕は顔をしかめた。

 

「あはは…、随分手酷くやられたみたいだね…」

 

 そう言って、全身の傷を確認する。

 

 見たところ骨折とかは無い様だった。

 

 コンコン、と部屋のドアがノックされた。

 

 僕は「どうぞ」と声をかけた。ドアがガチャリと音をたてて開いた。

 

「おはよう、起きたみたいだね」

 

 出てきたのは灰色の髪と目をした青年だった。

 

「あ、はい」

 

 青年はこちらに微笑みかけながら、お粥の乗ったお盆を近くにあった机の上に乗せた。

 

「怪我の具合はどうだい?」

 

 そう言われて僕ははっとした。そして、もう一度自分の体を確認する。

 至るところ火傷が拡がっていた。特に頭、背中、腹部は怪我の具合は悪い。あの化け物と対峙していた時には分からなかったが、腹を殴られて吹き飛ばされたらしい。

 

 だが、それにしても不思議だ。あれだけの威力の一撃、正直言って内臓が破裂しても可笑しくはなかった。

 ただ運が良かっただけなのか、それとも手加減されていたのか。はたまた僕の体が特殊なのか。

 

 まず僕はどうやってあの場から生還したのか。

 あの青年が化け物を倒した?…いや、《気配感知》からしてそのような力があるようには思えない。

 僕が気絶している間に居なくなった?…逃がすメリットは無いし、それなら連れ去るか殺すかするだろう。

 

 そうならば『あの空白の時間に何者かが化け物を討伐した』と考えるのが筋だろう。

 

 まあ今はそんなことを考えていても仕方がないので、目の前の青年に応答する事にしよう。

 

「大丈夫、と言うには程遠いです。立ち上がれる気がしません」

 

「そうなんだ…、じゃあまずは、取り合えず何かお腹に入れないとね。お粥を作ってきたから、食べてさっさと元気になろう」

 

 そう言って青年は微笑みガッツポーズをする。…なんと言うか、力が抜けた。

 

「クスッ…ありがとうございます。頂きます」

 

「うん、お代わりならすぐに出来るしどんどん食べてね。今回のは自信作なんだ」

 

 そう言いながら青年は立ち上がり、それじゃあまたね。と言って部屋から去っていった。

 僕はそれを尻目に見ながらお粥を口に運んだ。

 

「………美味しい」

 

 お粥のスッキリとした塩味が舌から脳に伝わる。噛み砕くことでお米の甘味が染み出てくる。

 それはとても単純で、当たり前の事だけど。それが、今の僕には何よりも生きていることを実感させてくれた。

 

 

  ◇

 

 

 約30分後

 

「ふぅ……やっと、眠ったみたいだね」

 

 僕、──岸田拓也──こと、アル・コーストは転生者だ。

 しかしそれだけでは語弊がある。正確に言うならば、

 僕、──岸田拓也──こと、アル・コーストは時空と調和の女神、『コスモス』様によって拝命された転生者であり、転生者殺し(プレイヤーキラー)だ。

 転生者殺し(プレイヤーキラー)とは、転生者を殺す者。しかし、転生者だから殺すわけではない。

 転生者は普通の人間とは違い、ステータスを理解するだけでなく、元々のスキル習得速度が非常に速くなっている。その力を利用して、不正や悪事を働く転生者、もといプレイヤーを抹殺するために、転生者殺し(プレイヤーキラー)は存在しているのだ。

 

「それにしても彼女…やはり転生者なんだろうか」

 

 あの謎の火柱。普通の人間が出して良い火力では無かった。魔物の仕業という線もあるが、生憎この街の周囲にあれだけの炎を扱う魔物は居ない。

 そうなるとある程度普通よりも技能(スキル)の習得の速い転生者の可能性は大きいと言える。

 試しに《鑑定》を使用したが中身は隠蔽されていて知れたことなどほぼ零に等しかった。

 

「やはり、女神様に聞くしか無さそうだね」

 

 僕はメッセージボックスを開き、女神様に連絡をとる事にした。

 

 

──────────────────────────────────────────────────────────

 

 

             group.コスモス、アル・コースト

 

               聖龍暦5000年11の月24日

 

                        『突然ですが、今少し良いですか?』

 

『構わないよ』

 

『急にどうしたんだい?』

 

                              『先日の事なんですが』

 

                              『女の子を拾いました』

 

『本当に突然だね…』

 

                   『鑑定してみたら殆ど隠蔽されていて見れず…』

 

                   『分かったのはその女の子の名前はハル・カミシ

                    ロというだけでした』

 

『それは本当かい?』

 

『それならその子は転生者だね』

 

                                     『なら』

 

『殺しちゃ駄目だよ』

 

                                『ですが危険です』

 

                   『遠くだったので見ては居ませんが先日とてつも

                    なく大きな火柱が立ちました』

 

                          『その中心に彼女は居たのです』

 

『だからと言って彼女がこの世界の住人に危害

 を加えると断定することは出来ない』

 

『今は少し我慢してくれないかな』

 

                                『…畏まりました』

 

『あ、そうそう』

 

『彼女の記憶、最奥まで覗いてみたんだけど』

 

『記憶の終着点に小さな歪みがあった』

 

                                 『本当ですか?』

 

『本当だよ。』

 

                      『生の記憶は授肉した瞬間から生まれる』

 

                    『貴女様はその生の記憶を最奥まで覗くことが

                     出来る』

 

『そうだね。そして最奥まで覗いたらそこに歪

 みを見つけた』

 

『まるでそこから先があるかのように』

 

                   『つまり彼女は貴女様の知り得ぬ《多重転生

                    者》である可能性が高いと』

 

『そうだね』

 

『だからこそ今は殺しちゃ駄目だよ』

 

『彼女は何かを持っている』

 

『そんな気がするんだ』

 

                                 『分かりました』

 

                      『何か分かり次第、連絡させて頂きます』

 

『此方でも調べておくよ』

 

                            『それでは、失礼しました』

 

『その前に一つ』

 

『彼女は元男のts転生者だよ』

 

                                     『えっ』

 

『じゃあね』

 

 

──────────────────────────────────────────────────────────

 

 

「ふぅ………」

 

 青く薄い硝子のようなウインドウを閉じ、一息吐く。

 ………やはり彼女は、いや彼は転生者だった様だ。それも厄介な事に多重の可能性が高いと来た。

 多重転生者と言うのは二重、三重と記憶を保有して転生した者のこと。それも肉体まで生前のスペックを維持している者もいるという。

 

 正直言って彼がそうならば絶対に敵に回したくはない。僕ですら勝てるかどうか怪しいし、何よりも強力な転生者同士の争いは周囲を焦土と化す程だ。

 だが逆に味方につければ最高だ。そしてそのまま転生者殺しになってくれれば大抵のプレイヤーは屠れるだろう。

 

「………よし」

 

 兎に角今は何をすべきか、方針は決まった。

 

 女神様に恩を返すためにも精進せねば。

 

 

 




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