腕が完成した後に製作した2輪バイク、シュタイフを走らせることしばし、イミルエアスタは数キロメートル先に2つの生体反応を観測した。
1つは大型の生物、もう1つは人間と同じほどの大きさの生物と判断した。恐らくは襲われているのだろう。
このまま移動を続ければほぼ一本道と言っても差し支えないこの谷の底であるライセン峡谷では鉢合わせるのは確実である。
面倒を避けるため、イミルエアスタは兵装を典開し、大型生物を瞬殺するのことで小さき生物の行先にはとてつもない化け物がいると理解させ、追い払おうとした。
「【
光の奔流が大型生物の生体反応を消失させた。
これを観測したイミルエアスタは
面倒の種を撒きに来る生物は来ないだろうとたかをくくったからである。
このイミルエアスタの予測はこの後、盛大に外れたことを証明されることとなった。
◆◇◆
「すみませえええええん!助けてくださあああああああい!!」
イミルエアスタは驚愕した。
「私の家族を!助けてくださあああああああい!」
わざわざ離れるようにと可視の『 偽典・天撃』を撃ち込み、大型生物を消し飛ばしたのに。
「ふう〜。やっとつきました!あ、私、兎人族のシア・ハウリアと申しますです!そこの御一行様方、私の家族を助けていただけませんか!」
なぜこの
戸惑いに戸惑ったイミルエアスタは理解不能な恐怖の塊とも言える目の前の獣人種に自信の持っている兵装の中で最速にして不可視の兵装、『
機凱種の持つ、未来予知にすら迫る演算能力を駆使して兎の獣人種に向かって兵装を起動する。
不可視の真空の刃はウサミミ獣人を両断するかと思われた。しかし─────
「─────ッ?!ヒィ!い、いきなり何するんですかぁ!!」
─────避けられた。まるで未来予知でもされたかのように。
イミルエアスタは本格的に恐怖を覚え、イヴリールの陰に隠れた。
今まで格下相手の行動予測を外したことがないため、初めて経験した「違和感」による戸惑いがさらに「恐怖」を呼んだのだ。
目に怯えを宿すイミルエアスタを見た兎は、大丈夫ですぅ!怖くないですぅ!と笑いかけるが、イミルエアスタ・アイには自分を嘲笑うかのような笑顔を向ける凶悪な獣人種にしか見えなかった。
さらに怯えた。
なぜかしらん?と首を傾げる兎獣人。
しかし、イミルエアスタは、張り付かれるのが鬱陶しいと感じたイヴリールに前へ蹴り出された。
その目には自身が初めて浮かべるであろう涙があった。
イミルエアスタのコアを内蔵するイヴリールは、そこから伝わる感情を読み取ることが出来る。
しかし、その思考、なぜその感情に至ったかという経緯までは分からない。
しかし、恐怖の中に少なからず動揺があったために何となく察しがついた。
数刻前の
あれはバグではなく、こちらに来たケモノを追い払うためであったのであり、そうするためにわざわざ精霊を大きく消費する天撃を模した兵装を使ったにもかかわらず、こちらに寄ってきた
そう100点満点の答えを導き出したイヴリール。
件のケモノに目を向けると、ハジメとユエに適当にあしらわれていた。
ついにはユエをペタンコと称し、風を操る魔法、『嵐帝』によって空高く打ち上げられた。
ハジメは兎獣人種ことシア・ハウリアを樹海の案内役として使うことを考えた。
ちなみに
そして、イミルエアスタが一方的に頼りにしている相棒の
その様子を見て、ハジメさんの胃はキリキリした!
ユエさんの追撃!
「……ハジメ。大きいほうが、好き?」
「……ユエ。大事なのは大きさじゃあない。相手が誰か、それが一番重要だ。」
「……………………ん。」
いつもより長い間をあけて何とか納得して返事をくれたユエに冷や汗を流しつつ、ハジメとユエが全く了承してくれないため、外堀から埋めようとでも考えたのか青いままのイミルエアスタに話し掛けた結果、銃口を突きつけられて青くなりながら手を上げるシアを見た。
結局、ハジメはシアを案内役として雇い、報酬としてハウリア一族を助けることにした。
「……はあ。まあ、いいから後ろに乗れよ」
「は、はいっ!」
イヴリールからの威圧感が増した!
ユエさんの威圧も加わった!
シアの胃もキリキリした!
自慢のうさ耳は
「…………」
ハジメは背中に当たるイヴリールとはまた違った柔らかさの大きい2つの存在を意識して無視しつつ無言でシュタイフを発進させた。