fate/cage   作:雨宮

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DAY1  AM2:00

 

 白城市は冬木市から電車で30分ぐらいの場所にある。さほど遠くなさそうであるが、徒歩で行ったら結構離れているように感じる。というのもこの町は海のない山に囲まれた盆地にあり交通手段もほとんど町だからである。

 しかしこの海も無く交通も不便なここ白城市は不思議なことに冬木市と同規模の(もしくはそれ以上の)町である。なぜこの町がそれほどに栄えているのか。背景にはここ白城市は冬木市を越すほどの霊地があるからだといわれている。

 ではこの町は魔術協会に目がつけられているのか。答えは否である。近くに冬木市があったためこの町の存在は冬木以上にマイナーであった。さらに山の中にあるということで、この町の情報が周囲に伝わりづらかったからだと言われている。そのため外部からの干渉はあまり無くこの町は発展した。

 そんな白城市にはとある名家がある。それが九条家である。九条家はどこかしらの公家の末裔だといわれこの町では尊ばれてきた。ざっと300年以上の歴史を持ちいつの時代であっても有力者であった。彼らはこの町に居をかまえ血を伝え続けて何代にも渡っていた。

 とはいえ時代の移り変わりとは恐ろしいもので、栄華を誇った九条の一族も風前の灯であった。というのもこの数十年で九条家の多くの分家がすべて絶えてしまった。残ったのは九条邸に住む本家のみであった。

 そして本家の九条氏が住む九条邸は白城市では豪邸として知られる。その邸は白城市北部の山の中に有り広大な屋敷をかくしている。白城市で市議会議員議員を務め名士と呼ばれる父と、秀才と名高い高校生の娘の二人暮らしである。

しかしこの父子が魔術師であることはあまり知られていなかった。

 

「けほっ、けほっ。」

そこは中心に魔方陣が描かれたほこりっぽい部屋だった。

おそらく儀式を行うためだけに使われる部屋なのだろう。

「えーと、触媒はどこにおいたっけ。円卓の欠片はどこにー。あった。」

その日その時九条家の一人娘である九条はあせっていた。父親はとっくに英霊召喚を済ませていた。何人かの他のマスターが英霊召喚に成功していた事も知っていた。急がねばならないという焦りが大いにあった。

「ごめんなさい。魔方陣はこうやってっと。」

生贄には自宅の鶏を使った。父親には難色を示したが代わりがないといって押し切られた。こういったときにごめんなさいと言う所は魔術師として甘すぎるのかもしれない。ちなみに魔方陣は五回ほど書き直している。

「あー眠い。」 

 というよりはそもそも明日は学校である。優等生の柊の本心としては少し寝たいところであった。

 

「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ閉じよみたせ。閉じよみたせ。閉じよみたせ。閉じよみたせ。閉じよみたせ。繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する――――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

 

魔方陣の中央には金髪の腰に短剣をさした優男が立っていた。男はまるで西洋画の中から出てきたような風貌であった。油断ない目つきが彼の鋭さや性格を示しているようだ。

そして柊に出会い頭こう言った。

「円卓の騎士の一人、ケイ、聖杯の導きに応じキャスターとして参上した。問おう、あなたが私のマスターか、、、」

キャスターは柊を見て一瞬驚いた顔をした。この世にあるわけのない物を見たかのように。

しかしそれを即座に意地悪げな顔で隠し、マスタをーを値踏みするようにじろじろと見み始めた。そして柊に嫌味ったらしく言ったのである。

「ってかおまえ女か、男かと思ったよ。胸小さいなぁ。」

柊は慎み深いほうだと自分では思っている。なので怒りは押さえつけ優しい声で言った。

「え、えーとはい。ケ、ケイ様ですか。えーとアーサー王の義理の兄の方ですね。たしか巨人を殺したりと高名な逸話がいくつもございましたね。あはははぁ」

「ふん、大して美人じゃないな。10点中5点だ。素材はいいんだが、近寄りづらさが出てる。将来苦労するぜあんた。俺個人としてはもうちょいふくよかなほうがいい。あとやっぱ胸が小さいのはなぁ。大きく減点だ。」

「えーと、キャスターさん。この聖杯戦争についての説明とこれからの方針についてー」

「あとさー。なんか顔の造型とか雰囲気が妹っぽいんだよな。おれたぶんあんたのこと苦手だわー。あとあれだ胸小さいな。」

「おい、キャスター、一回黙ってくれませんか。そして私の話を聞いてー」

「絶対おまえ堅物タイプだろ。そんな感じだよ。融通が利かないって言われたことあんだろう。あとやっぱ胸がなー」

柊はここ半年で一番キれた。

「令樹をもって命ず。キャスター、二度と私の前で胸が小さいっていうな。」

これが白城の聖杯戦争において名コンビと名高いキャスターコンビのファーストコンタクトであった。

 

 

「で、おまえいいのかよ?令樹をこんなことに使って」

二人はさっきまでいた場所から移動していた。さっきまでの場所はほこりっぽく話し合いには不向きなのだ。

「使わせたのはあんたでしょ!」

柊は思わずつっこんだ。

柊はベットの上に座りキャスターはドアの前で立っている。

ここは柊の部屋である。女子が住んでいるとは思えないほど殺風景な部屋であった。唯一ある女子らしい物は、ベットの上の熊とキリンを混ぜたような奇妙なぬいぐるみのみであった。

明かりは壊れかけているのか時々ちかちかと点滅している。

柊は深呼吸をして息を整える。

「じゃあキャスター、聖杯戦争について説明は要らないわよね。」

キャスターは肯定の意を示す。立ちながらドアにもたれかかる。

しかしそんな事はどうでもよいとばかりにキャスターは重箱の隅を突く。

「おい、手が震えてるぞ。緊張してんのか。」

キャスターは意地悪げな表情でそういった。

柊に自覚は無かった。おもわず手を握り締めた。

「まぁいい、ところであんたの願いは何だ。家の栄誉か何かか。」

しかしキャスターはそれを気にした様子も無く別の話題を話し出す。

「まぁそんなところ。私達の一族には初代から数えて15代目に呪いがかけられているの。それが私の父。昔この町に住む守り神か何かをあやめたときに、15代目から先は子どもが魔力を継承できないようにと呪いをかけたの。

それが予想以上に強力な呪いでね、現代の人ではその呪術を解けないんだって。だから私の願いは一族にかけられた呪いを取り除くこと。」

柊は手のひらを握り締める。

「実は私に魔力がほとんどないの。補助魔術をつかってもあなたを呼び出すので精一杯だった。だから今のままでは魔術師としての九条家はおそらく私で終わりのはずだった。だけど今回万能の願望機である聖杯によってこの呪いをやぶれる可能性が出てきた。

だからこの聖杯戦争を戦い抜いて九条家の呪いを打ち破る。そして九条家に栄光をもたらすの。」

柊は堂々と語る。その瞳に後ろめたいものは何も無かった。

「はは、あんたまぶしいね。いいぜ、実にすばらしい願いだよ。」

「ありがとう」

柊はキャスターの手放しの賞賛に驚きつつ感謝する。

「生真面目だな。そんであんた、どうしようもない世間知らずの馬鹿だ。」

おもわずかっとする。柊はキャスターにつかみかかろうとした。

しかしキャスターはそれを手で止め、そしてなんでもないように言った。

「ところでこの部屋ずいぶんきれいだな。掃除したのか」

「そうよ。最近きれいにしたの。」

柊は怒りを一旦とどめて言った。

キャスターは口を曲げしゃべりだす。

「部屋をきれいにしたのは死を覚悟しているからか、いや違うな。死への覚悟をつけるためだろ。なぜかって、カレンダーは未だにおいているからだ。おまえは未来の予定をまだ気にしてる。おまえはまだ死に向き合いきれてない。死ぬのが怖いからだ。」

キャスターの言葉は柊の胸を貫いた。一瞬息が出来なくなった。

「そんなわけじゃない」

柊は掌を握り締める。どうにかその言葉をひねり出す。呼吸は乱れていた。

「じゃあ、そのぬいぐるみは何だ。毎晩抱いてるのか。ずいぶんぼろぼろだぞ。目の下の染みはなんだ。化粧じゃ隠しきれてないぞ。」

キャスターは容赦しない。さらに柊の心をえぐる。

「うるさい」

小さい声で柊は言った。息が乱れていた。

「理想をかかえて焼き殺されんのか。馬鹿な女だ。

ふんおまえはせいぜい田舎でいい旦那を見つけて、羊飼いでもしてるほうが向いてるぜ。なぁ、今なら引き返せる。違うか。聖杯戦争なんてやめちまえよ。」

キャスターは柊に向けてそう言葉を放った。しかし彼の視線は柊ではなく後ろに向かっているようであった。

「うるさいうるさい。あんたはマスターの指示に従う存在でしょ。黙ってよ。」

柊は大きい声でそう言った。その部屋に静寂が訪れる。電球が切れて一瞬部屋が暗くなった。その静けさを破ったのはキャスターだった。

「そうだな。俺は主君には忠誠を誓う。アーサー王伝説で知ってるだろ。」

キャスターは笑った。つられて柊も笑った。

既に部屋は明るさを取り戻していた。

「ふん、冗談にしても言い過ぎたかな。昔妹に文句を言われたのを思い出したよ。兄さんは口が悪いってな。」

二人とも既に遺恨はない。二人はそういう意味での切り替えが早かった。

「あたしだって思うことはある。でも魔術師の端くれなの。九条家の娘なの。」

柊はそう言って大きく手をたたいた。柊が話を切り替えるときの癖だ。

「じゃあまじめな話。キャスター、変なチャチャ入れないでよ。」

「おっ、さまになってるぜ、学級委員長。」

「あんた馬鹿にしてるの。」

そうして聖杯戦争についての解説が始まる。

まるで星を見るようだ。キャスターは柊を見てふとそう思った。

 

 

 

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