俺はこの世界に1人だった。
ある日、突然変わった俺の周りの世界。
そして、この世界には俺の知り合いは、俺の本当の両親と義理の両親のみ。
それ以外の人間は皆、俺の事を全く知らなかった。
覚えていない、というのではない。
最初から、俺という人間はこの世界では存在してはいたが、この世界の旋律達との関係はなかったのだ。
皆はいわば、鏡に映ったもう1人の自分。
そして、俺はこの世界に紛れ込んできたイレギュラーであり、この世界では旋律達とのつながりを持たない人間だった。
俺はそんな世界でこれから、俺の知っている旋律達にそっくりな、中身の違うもう1つの旋律達を助けなければならなくなった。
何故こんな事になってしまったのか、それは、今日というスタートを迎える前の日の晩に見た夢が、原因だった。
前日の晩・・・・・・
(・・・なんだ?あれは・・・やまと?なんだ?何を言ってる・・・。)
俺はこの日、俺の夢の中でやまとと出会った。
だが、夢に出てきたやまとはいつも俺が見ていた、俺が知っていたやまととは様子が違っていた。
(・・・森村、慶一さん、ですね?あなたにお話したい事があります。)
やまとは俺に、なんだか他人行儀な態度で話し掛けてきた。
俺は、そんなやまとに違和感を感じたので
(なんだよ?ずいぶん他人行儀だな?それに口調もなんか少し違ってないか?)
そう尋ねると、やまとはコクリと頷いて
(・・・ええ、そうです。何故なら、この姿はあなたの記憶の中にいる人物の1人を借りたもの・・・そして、あなたとこうして話す為には、この方が良いと判断したためです。)
訳のわからない事を言うやまとに俺は、少し混乱しつつ
(どういう事だ?お前はやまとじゃない、って言うのか?)
そう尋ねると、やまとは俺の言った事を肯定するように首を縦に振ると
(はい。姿形はあなたが言う永森やまとさんのものですが、私自身は違います。私の正体についてはいずれわかる時もくるでしょう。それよりも、今はあなたとどうしてもお話をしなくてはいけないのです。)
姿形?正体?よくわからない単語に更に困惑しつつもとりあえず頷くと
(なんだかよくわからないが、まあ、夢だしな・・・いいぜ?聞いてやるよ。)
そう言いつつ、これは夢なんだし、と自分を納得させて、俺は先を促した。
やまとの姿をした誰か?はそんな俺の言葉に頷くと
(ありがとうございます。実は、この世界によく似たパラレルワールドが存在するのですが、そこでは今、大変な事が起きているのです。)
その言葉に俺は(大変な事?)と聞き返すと、やまとの姿をした誰か?はコクリと頷いて
(ええ。とにかく、事情を説明して行きます。その世界は、今のあなたがいる世界とはほぼそっくりなのです。そして、あなたが知る人達もまた、その世界には存在しているのですが、”あなた”はその世界で存在はしていますが、あなたの知る人達とのつながりを持ちません。それゆえに、その世界ではあなたを知る人間は、その世界に存在するあなたの御両親と貴方の実家にあたる龍神家以外にはいません。)
そこまで話して一端呼吸を整え、更に先を進めるやまとの姿をした誰か。
(そこの世界の人達も、あなた方同様に同じ学校へと通い、生活をしています。そして、私の言う事件は、時間的にはあなたの通う学校の学園祭の開催日に発生します。)
その言葉に俺は首を傾げつつ(学園祭、つまり、桜藤祭か?)と聞き返すと、やまとの姿をした誰かはコクリと頷いた。
それを見て、俺はどんな事件が起きるのかを聞こうと思い、話の先を促す。
(・・・とりあえず続きを話してくれ。)
そう言うと、やまとの姿をした誰かはコクリと頷き、話の続きを始める。
(私には仲間がいます。そして、その仲間は私が言うその世界に偶然訪れました。そして、そこで予期せぬ事故に巻き込まれる事となったのです。そして、その事故の影響は、あの学校とその周辺の広範囲を壊滅的な状況に追い込むものでした。ですが、私の仲間はそうなる前にある対処を施し、一応の壊滅の危機を脱しました。ですが、その為に、あの範囲一帯は桜藤祭開催の当日よりも先の時間へと進めず、当日が来たら、再び一定の時間まで時間が巻き戻される事となりました。この状況を脱する為には事故の起きた原因を取り除くしか対処の方法は望めない、それが今のその世界の現状です。)
そこまでの説明を聞いて、俺は顎に手を当ててその話を聞いていたが、やまとの姿をした誰かに
(なるほどね・・・。でも、その話が本当だとして、その世界に於いてその原因を取り除く事の出来る者の存在ってのはなかったのか?そんな世界でも必ず、そう言う人間てのは出て来そうなもんだけどな?そこに本人の自覚のあるなしはあってもさ?)
そう言って、ふと心に浮かんだ疑問をぶつけてみたが、その問いにやまとの姿をした誰かはため息を1つついて
(・・・そうですね、あなたの言う通り、そう言う人は存在していました。しかし、その人物に予期せぬトラブルがあり、その人物はこの問題の解決に係われなくなってしまいました。)
そこで一端言葉を切り、更に続きを話す。
(私達も色々とこの状況を打開する手立てを考えましたが、仲間同士で問題を解決するにはどうすればいいか話し合った結果、その世界か、それ以外の平行世界に住む誰かの手を借りて、この状況を打開するしかない、という結論に至ったのです。私達はその後、その世界と数ある平行世界へのアクセスとその平行世界に住む協力してくれそうな人物にコンタクトを試みました。しかし、そのほとんどは失敗に終わり、解決の為の手立てを諦めかけていた所だったのですが、その時にあなたとのコンタクトが取れたので、こうしてあなたに話をしにきたのです。)
俺はその言葉に少しの間考え込んでいたが、やまとの姿をした誰かの方へ顔を向けると
(話はわかった。でも、どうして俺なんだ?)
そう疑問をぶつけると、やまとの姿をした誰かはふっと目を伏せ、そして、俺に顔を向けてそっと瞳を開き
(・・・あなたがこの世界であの子達とかなり強い絆で結ばれている人であるから、そんなあなたならば、こちらの世界でもあの子達の力になってくれるだろうと思えたから、ですね。あなたならきっと、あの子達を見捨てる事はしないのではないか、そう思ったのです。)
そう言われて、俺は照れつつ
(え?あ、まあ、それはそうかもしれないけど・・・そう改めて言われると、照れるかな・・・。けどさ、俺に何が出来る?話を聞く所では結構途方もない。そんな大事の解決が俺に出来るのか?)
俺のその言葉に、薄い微笑みを向けつつ頷くやまとの姿をした誰か。
(・・・確かに話は大事かもしれません。しかし、あなたのすべき事は、その世界で起きる事故の原因を取り除く事だけでいいのです。そして、それはあなたの力でも十分になし得るものです。ですから、あなたはその原因を見つける為に行動して下さい。)
その言葉に俺はとりあえず頷いて
(わかったよ。俺のすべき事はさ<どうせ夢なんだし、話に乗るのも面白いか>)
そう言いつつ、心の中ではそう考えていた。
そんな俺の、心の中の言葉には気付いていいないっぽいやまとの姿をした誰かは、更に俺にいくつかの注意事項等を伝えてきた。
(・・・ありがとうございます。ご理解いただけて助かりました。それと、私からいくつかの注意事項等がありますので、それを伝えます。)
その言葉に俺もとりあえず頷くと、やまとの姿をした誰かは更に話の先を進めた。
(まず、あなたは向こうの世界に於いては転校生という事になっています。家の場所は変わっていはいませんが、その部分が少し違います。そして、向こうの世界では、あなたはあの子達の事を知ってはいますが、向こうはあなたの事を知りません。その辺りを踏まえてのコミニュケーションを心がけていただければ、と思います。そして、その世界でのループの終わりは桜藤祭の当日、そして、始まりはあなたが転校する日となります。おそらく、事故の原因が判明せず、問題が解決しない場合はその間を行き来する事になるでしょう。)
そこまでの説明を受けて俺も頷きで答えると、それを見て、更に話の先を進めて行く。
(そして、向こうには私の仲間がいます。その仲間は誰かの肉体を借りて、その世界に存在しています。ですが、もし、仲間を見つけたとしても、コンタクトを取るのはかなり難しいかもしれません。何故なら、私達が変えようとしている時の流れを修復する為に、本来流れている時が、その修復の邪魔をしようとして、影響を及ぼしてくるからです。その為に仲間もあなたには大してヒントになるような情報も与えられないでしょう。ギリギリの所は伝えられるかもしれませんが、時の影響がどんな作用を及ぼすか分からない以上、本当に大事な事は伝えてはもらえないかもしれません。本当に厳しい事になりますが、そこはあなたに奮闘してもらう以外にはないでしょう。)
そこまで聞いて、俺は更に疑問に思った事があったので、それを聞いてみた。
(ん?もし、あんたが言ったとおりだとして、俺は今、かなり重要な情報を聞いている訳だが、それを聞く事で時間とやらが影響を及ぼしてこないのか?)
そう尋ねてみると、やまとの姿をした誰かは頷いて
(・・・はい。確かに同じ世界にいる人間に話すと、時は邪魔をしてくるでしょう。ですが、それはあくまでのその世界の時がその世界にのみ影響を及ぼすのです。そこで、私達は、その世界の時以外の場所から協力者を選んだのです。流石に時も、別の世界の時には影響を及ぼせない。だからこそ、私達はあなたにある程度の情報を伝えられたのです。と、これがあなたに伝えられる情報となります。最後に1つ忠告があります。)
そう言って一端言葉を切り、やまとの姿をした誰かは一呼吸おいて、話し始める。
(・・・あの世界に於いて、あなたとあの子達と仲良くもなれると思います。あなたの事を知らないというだけで、性格や特徴もあなたのいる世界の子達とは何ら変わりはありませんから。ですが、問題が解決を見たとき、あなたはあの世界から消えてしまう。それはあなたにとってもつらい事になるかもしれません。その事だけは覚悟していて下さい。突然に現れて、こんな事をあなたに押し付けてしまう事を大変申し訳なく思っていますが、どうか、お願いです。私の仲間を、そして、私の仲間の行っているあの世界の子達を助けてあげてください。どうか・・・よろしく・・・おねが・・・い・・・しま・・・す・・・・・・)
やまとの姿をした誰かは最後にそう言って、俺の夢の中から消えていった。
そして、その数分後、俺は目を覚ましたのだが、俺は何故か夢の内容をはっきりと覚えていて、更にはこの目覚めた瞬間から、俺の周りの世界は大きな変化をしていたのだった。