らき☆すた〜変わる日常、陵桜学園桜藤祭編~   作:ガイアード

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旋律のもう1つの邂逅そして、つける心の決着

俺の知る、俺の世界に居ないはずの旋律達との邂逅を経て俺は、この世界に於いては元の世界で一緒に過ごす事ができなくなっていた2人の旋律と共に、この世界を救うまでの間ではあるが、一緒に居れる事に密かな喜びを感じていた。

 

と、同時に、この世界に於いて、俺自身がどうして存在していないのかを疑問に思っていた俺は、やまとの仲間にその事情を問い正す。

 

そして、俺は、やまとの中にやまとの仲間がいる理由と、俺だけがこの世界に存在しないその理由(わけ)を知った。

 

俺の存在しない理由を知り、少し落ち込む俺だったが、それでも、瞬やしおんがこの世界で元気でいるなら、と前向きにこの状況を捉える事にしたのだった。

 

そして俺は、学校での用事も済ませて待ち合わせ場所であるコンビニに向かったのだが、そこで、俺の気付かぬうちにトラブルが起きていたのだった。

 

遡る事20分程前・・・・・・

 

つかさside

 

今日からやってきた、新しい転校生である森村慶一くんとお友達になったわたしとこなちゃん達。

 

色々あって自己紹介も済ませたのだけど、とりあえず今日は、桜藤祭の準備は出来ないとの事だったので、おねえちゃんの提案に乗って私達はコンビニへとやってきた。

 

こなちゃんは雑誌の立ち読みをし、おねえちゃんはお菓子等を買い込み、ゆきちゃんも軽く食べられそうなものを買い、しーちゃんは頼まれたお使いを済ませ、まーくんはトイレへと向かったようだった。

 

わたしも買いたい物を買い込んでから、一端コンビニの外にでてそれを口にしようと、人の邪魔にならない場所へと移動して買い込んだお菓子の袋をあけたんだけど、その時にうっかりその袋を破裂させてしまい、近くで集まっていた不良っぽい感じの人に、そのお菓子を浴びせる事になってしまった。

 

そして、わたしは慌てて、その人に謝ろうと口を開こうとしたのだけど、その人は怒りの形相でこちらへと詰め寄って来て

 

「ああ?てめえ、いきなり何してくれてんだ、こら!」

 

と、いきなりわたしの胸倉を掴んで来て、怖い顔でそう言ってくるその人が怖かったけど、とにかくあやまらなきゃ、と思ったわたしはその人に涙目になりつつも

 

「あ、あの、ごめんなさい・・・わざとじゃないんです・・・その・・・ごめんなさい~。」

 

そう必死に謝る私だったが、その人は聞く耳を持ってくれないようで、わたしの胸倉を掴んだまま

 

「なあ、ねえちゃん。ごめんで済んだら警察はいらねえんだよ、わかってんのか?ああ!?どうしてくれんだ?てめえが浴びせたもんの所為で、俺の服にこーんなみっともねえ染みができちまったじゃねえか!!」

 

そう凄んでくるその人にわたしは涙目になりながら

 

「クリーニング代は出します。だから許してください~!」

 

そう言ってパニックになりつつも、必死にそう言葉を搾り出すわたしをその人はじろじろと眺める。

 

その態度にわたしは、ますます体がすくんで動けなくなっていった。

 

そんなわたしを、その人の取り巻きらしい人達がニヤニヤとしながら見ているが、その人達もこの人を止める意思はなさそうだった。

 

そんな状況に、ますます絶望感を募らせるわたしの心を知らない、わたしの胸倉を掴んでいるその人は私に

 

「・・・ふうん?よくみりゃあんた結構可愛いじゃないか。よう、ねえちゃん。これから俺達と付き合えよ。そうしてくれる、っていうんなら、さっきの事はなかった事にしてやってもいいぜ?」

 

そう言ってくるの聞いて、わたしは更に恐怖心に包まれて

 

「え?あの・・・でも・・・わたしは・・・。」

 

何とか断りたいわたしは、必死に言葉を発しようとするが、中々上手く言葉が出て来てくれない。

 

そんなわたしの態度を見ながらその人は、再び私を睨みつけると

 

「なんだあ?断ろうっていうつもりかよ。だったら仕方ねえなあ。痛い目見る方を選んだ自分に後悔するこったなあ。お前等!こいつを連れてくぞ!?」

 

と、その人は取り巻きの人に声をかけ、わたしの腕を引っ張ってどこかへと連れて行こうとする。

 

わたしは恐怖のあまり

 

「いや!やだ!!行きたくない!!離して~!!」

 

そう言って精一杯の抵抗を見せるが、そんな抵抗も無駄のようで、わたしはもうだめだと思い、目を瞑る。

 

「こらっ!あんたたち!!私の妹に何してくれてんのよ!!その手を離せ!!」

 

その叫び声にそっと目を開けると、そこには私のピンチに気付いてくれたおねえちゃんが、わたしを連れて行こうとする人に食ってかかり、わたしをその人から引き剥がそうとした。

 

「なんだあ?こいつの事を妹、って言ったな?よくみりゃお前も中々可愛い顔してるじゃねえか。丁度いい。お前も一緒に来な!俺達がちゃあんと可愛がってやるからよ。おい、お前等!もう1人追加だ!!」

 

そう言って掴みかかるおねえちゃんを、取り巻きの1人が取り押さえる。

 

おねえちゃんは必死に抵抗して

 

「ちょっ!離しなさいよ!!あんたら、こんな事して、ただじゃすまないわよ!?」

 

そう叫んで必死に暴れるおねえちゃんに、取り巻きの1人がおねえちゃんのおなかを殴るのが見えて、その瞬間、おねえちゃんが気絶したのを見たわたしは、必死におねえちゃんの事を呼んだ。

 

「!?おねえちゃん!おねえちゃ~ん!!」

 

そう叫ぶのを見た取り巻きの1人が、わたしの側に来ると、わたしのおなかを殴りつけた。

 

そして、わたしはそのまま意識を失ったのだった。

 

しおんside

 

かがみさん達と一緒にコンビニに来た私達は、それぞれ思い思いに自分たちの用事を済ませていた。

 

しかし、そんな時、コンビニの外で、つかささんとかがみさんの叫ぶ声が聞こえたのを受けて、それがただ事じゃないと悟った私は、すぐさま表へと飛びだした。

 

その際に、こなたさんや、みゆきさんも騒ぎに気付いたようで、一緒にコンビニの外へと飛び出して来た。

 

そして、声のした方へと視線を向けると、そこには、ぐったりしながら男達に連れて行かれる2人の姿が見えた。

 

「え?ど、どうなってるの?」

 

そう呟く私だったが更にこなたさんが

 

「かがみ?つかさ?た、大変だ!どうしよう・・・。」

 

そう言って慌て出したのを見て、みゆきさんも青い顔をしながら

 

「わ、私、牧村さんを呼んで来ます!」

 

そう言ってコンビニへと駆け出すみゆきさんを見て、私はこなたさんに

 

「こなたさん。私が連中の後をつけるわ。牧村君が戻ったら、GPS起動させて私の後を追って来てと伝えて。」

 

そう言うと、こなたさんは慌てつつ

 

「え?で、でも大丈夫?しおんさんまであいつらに捕まっちゃったりしたら・・・。」

 

その言葉に私はこなたさんの両肩を掴んで

 

「大丈夫。無理はしないわ。遠目から奴等を追うようにするし、むやみに手出しもしない。だから、伝言お願いね?それと、慶一君が来たら、この事を伝えて助けを呼んでもらって欲しいの。お願いね?」

 

その私の説得にこなたさんは渋々頷いて

 

「わかったよ・・・でも、絶対無理しちゃだめだよ?」

 

そう言うこなたさんに私も「分かってるわ。任せて。」と力強い頷きで答えると、すぐさま連中の向かった方へと走り出した。

 

そして、奴等が曲がった曲がり角の方へと辿り付いた時、奴等の姿を捉えることが出来た私は早速GPSを起動して牧村君の携帯へと情報を送ったのだった。

 

それから、奴等の後をしばらくつけていくと、奴等は人気のない公園へと2人を連れ込んでいくのが見えたので、私は奴等に見つからない場所から、連中を監視しつつ、状況報告のメールをこなたさんと牧村君の携帯へ送ったのだった。

 

瞬一side

 

今日からやってきた転校生との挨拶も済ませ、今日の所は桜藤祭の準備も出来ないとの事だったので、このまま解散となったのだが、かがみがコンビニへ行こうと言い出したのをきっかけに、俺達もそれに付き合ってコンビニへと行く事にした。

 

そして、後から来るといった慶一を待ちつつ、それぞれに用事を済ませていく中、俺もちょっとトイレに寄りたくなったので、トイレへと入ったのだが、その最中にコンビニの外でのトラブルが起きていた事を知らなかった。

 

トイレを済ませ、店の中を見回してみると、店内にいるはずのメンバーの姿がない事に首をかしげていた俺だったが、そこに俺を見つけ、なにやら慌てた様子で俺の所にやってきたみゆきさんが

 

「瞬一さん、大変です!かがみさんとつかささんが店の外で集まっていた不良集団に連れていかれてしまったんです!しおんさんが彼らの後をつけて居場所が判明し次第、GPS情報を瞬一さんの携帯に送信する、と言っていました。しおんさんからの連絡は来ていますか?」

 

そう報告してくるその言葉に俺は驚いて

 

「な、なんだって!?ちょ、ちょっと待ってろ、今確認してみる。」

 

そう言って俺は、自分の携帯を取り出すと、しおんの携帯のGPS情報が来ているかどうかを確認する。

 

そして、情報が届いている事を確認した俺は、みゆきさんに

 

「どうやら居場所は特定できたようだな。俺は篠原のいる場所へと向かう。みゆきさん、悪いんだけど、慶一を待っててやってくれないか?あいつもそろそろ来る頃だろうし、その時に俺達の誰もいないんじゃあいつにも悪いからな。で、それを伝えたら警察を呼んでくれ。それまでには、そいつ等と決着はつけておくつもりだからな。」

 

そう伝えると、みゆきさんは心配そうな表情を俺に向けながらも頷いてくれ

 

「わ、わかりました。くれぐれもご無理はなさらないようにしてください。それと、しおんさんと連絡が取れるようでしたら、私の携帯にもGPS情報を送信して下さいとお伝え願えますか?」

 

そう言ってきたので、俺はその言葉に頷くと

 

「わかった。伝えとくよ。それじゃ、俺はすぐに出る。2人は必ず助けてくるからな?」

 

その言葉に、みゆきさんが頷いてくれたのを確認した俺は、すぐさまGPS情報を頼りに店を飛び出して篠原の待つ、かがみ達の連れて行かれた現場へと走り出したのだった。

 

慶一side

 

コンビニの方でそんな騒ぎになっていた事を知らない俺は、少し足早にコンビニへの道を急いでいた。

 

そして、ようやくコンビニ前に辿りついたのだが、店の外にはこなたとみゆきの2人はいたけれど、それ以外の連中の姿が見えなかったので、俺が遅くなったから、用事もあって先に帰ったかな?と考えつつ、店の前にいる2人に声をかけたのだった。

 

「こなた、みゆき、すまん、遅くなった。他の皆はどうしたんだ?用事があって先に帰ったとか?」

 

そう声をかけると、2人共明らかに焦りを滲ませたような顔で俺の声に振り向くと

 

「慶一君、やっと来たんだね!?大変なんだよ!かがみとつかさが不良連中に連れてかれちゃったんだ!しおんさんと瞬一君が後を追ったんだけど、私達は君を待っていなきゃいけなかったからここに残ってたんだよ。」

「お待ちしていました、慶一さん。実は泉さんの言った通りなんです。あなたと合流したら、私はすぐに警察を呼ぶ、その予定でしたので・・・。」

 

そう説明する2人の言葉に俺は驚いて

 

「なんだって!?こなた、みゆき、2人の居場所は分かるのか!?分かるなら俺もそこへ向かうぞ!?かがみとつかさもそうだけど、瞬達もほおってはおけない!!」

 

そう言う俺に、こなたは驚きつつ

 

「え?ほ、本気?でも、大丈夫なの?」

 

そう言うこなたに、みゆきもまた心配そうに俺を見ると

 

「慶一さんのお気持はとてもありがたいのですが・・・やはりここは警察にお任せするべきかと思います。下手に加勢にいったとしても、手助けができるかどうかは・・・。」

 

そんな2人に俺は決意を込めた目を向けながら

 

「2人の不安な気持はよくわかる。けど、今は一刻を争う時。頼む、俺の事を信用してくれ。俺なら・・・いや、俺と瞬とでなら、きっと2人を助け出せる。だから、俺を現場へと案内してくれ。頼む、2人共!!」

 

その言葉にこなたとみゆきは、少しの間どうするべきかと悩んでいるようだったが、俺に顔を向けると

 

「わかった。慶一君を信用するよ。みゆきさん、しおんさんからのGPS情報は届いてるよね?すぐに瞬一君達の所へ行こう!!」

 

そう言ってくれ、みゆきもまた俺に真剣な目を向けると

 

「・・・慶一さんのお気持は分かりました。大丈夫です、泉さん。しおんさんからのGPS情報は届いています。すぐに向かいましょう。」

 

そう言ってくれたの見て俺も力強く頷くと、3人で現在しおん達がいる場所へと向かって走り出したのだった。

 

不良side

 

2人の女を拉致して人気のない公園へと連れて来た。

 

そして、2人を取り巻き2人に抑えさせておいて、俺は取り巻き達と話をしていた。

 

「に、しても、中々可愛い子達だよなあ・・・へへへ、こりゃ色々と楽しみだぜ。」

 

そう、下卑た笑みを含ませてそう言う奴とはまた別の奴が

 

「なあ、さっきのコンビニにいた時にちらりと見たんだが、このねーちゃん達と一緒に牧村の奴も居やがったぞ?丁度いい人質も出来ている事だし、あの人を呼んだ方がいいんじゃないのか?」

 

そう言う奴に俺は頷きつつ

 

「・・・そうだな。牧村の野郎には俺らも散々むかつく目にあわされて来たしな、それに、あの人もあいつへの復讐は望んでいた所のようだからな。よし、俺が連絡をつける。お前等はその2人が逃げないようにしっかりと見張ってろ!」

 

そう言いつけてから、俺は携帯を取り出し、あの人”成神章”さんへと連絡を入れた。

 

俺の話を聞いたあの人は、すぐさま駆けつけるといっていたので、俺達はこの場にて成神さんがやってくるのを待つ事にしたのだった。

 

そして、それから5分程度で成神さんは俺達の居る公園へと現れた。

 

「奴の連れを人質に取ったそうだな?よくやった。こいつは報酬だ、受け取れ。それと同時にもう一働きしてもらうぞ?」

 

そう言って、成神さんから報酬を受け取った俺達は、更に牧村を倒す為に仕事をする事となった。

 

そして、それから少しして、牧村は俺達の居る公園に現れたのだった。

 

牧村side

 

篠原からのGPS情報を受け取った俺は、それを頼りに篠原の居る場所を目指して走った。

 

連中はどうやらそんなに遠い場所にはいなかったようで、すぐに公園内を見つめる篠原を見つけると、俺は篠原の側に寄って声をかけた。

 

「待たせたな、篠原。ここがそうなのか?」

 

その声に振り向いて頷きながら

 

「待ってたわ。ええ、そうよ。とにかく、あれを見て?」

 

そう言って篠原は公園内を指差したので、俺はそっちへと視線を移す。

 

すると、そこには10人の不良に加えて、見知った顔がその中に混じっているのを見つけた。

 

「・・・あれは、成神?何故あいつが・・・まさか、あいつはあの不良どもとも関係を持ってた、って事か?流石に姑息な事が好きな奴だぜ、自分じゃまともに俺に勝てないくせに、そういう所には知恵が回りやがる・・・。」

 

俺は公園内を見つめつつそう呟いたのだが、その言葉に篠原は俺に不安気な視線を向けながら

 

「牧村君、どうするの?相手は10人以上、そして、かがみさん達も人質に取られてる。このままじゃ打つ手がないわよ?」

 

そう言う篠原の言葉に俺は、奴等を見つめて考え込む。

 

しばらく考え込んでいたが、結局上手い手が見つからない俺は、とにもかくにもかがみ達を救出する事を優先させようと考え、1つ決意を固めると、公園へと乗り込んでいこうとした。

 

だが、そこに、俺に声をかけてくる奴が居たので、俺は思わずその場に踏みとどまったのだった。

 

「ふう、やっと着いたか、しおん、瞬、待たせたな。」

「はあ、はあ・・・慶一君足はやいねー・・・置いてかれるかと思ったよー・・・。」

「け、慶一さんの運動能力はかなりのものなのですね・・・かなり・・・きつかったです・・・。」

 

そう言う慶一達に俺は驚きつつ

 

「慶一、それに、泉や高良も・・・お前らどうしてここへ?」

 

そう声をかける俺に、慶一は真剣な表情で頷いて

 

「友達の・・・ピンチだからな。その手助けの為に俺はここへやってきた。瞬、俺もかがみ達の救出の手助けをさせてくれ。」

「慶一君がどうしても、って聞かないからさ、私達も慶一君を信用してここまで連れてきたんだよ。」

「私もしおんさんからのGPS情報は受け取っていましたからね。それで慶一さんを案内してきました。」

 

そう言ってくる慶一に俺は、困惑の表情を向けつつ

 

「それは・・・ありがたい申し出だが、いいのか?今回の事は、結構荒事だぞ?」

 

そう言う俺に、慶一は不敵に笑って

 

「上等さ、それに、俺も一応は荒事には慣れているんでね。奴等との戦闘も望む所だ。」

 

その言葉に驚きつつも、何故かそうやって不敵な笑みを見せる慶一に頼もしさを覚えて

 

「・・・なら、手を貸してくれ。」

 

そう言う俺に慶一も力強く頷いたのだった。

 

慶一side

 

みゆきがしおんから受け取ったGPS情報を頼りに俺達もちょっと遅れはしたが、しおん達の待つ現場へと到着した。

 

そこには、公園内を伺う瞬としおんの2人がいて、この先をどうするか、という事で悩んでいるようだった。

 

俺はそんな瞬に声をかけ、2人を取り戻すのに協力すると申し出た。

 

最初こそ俺に遠慮していた瞬だったが、俺の自信ありげな態度を見て、協力して欲しいと言った来たのを受け、俺もまた瞬に頷き返し、俺達は再び公園内の状況を探った。

 

「なるほど、全部で11人か・・・ん?あいつは・・・まさか、成神?何故、あいつが・・・。」

 

そこまで言った瞬間、俺は元の世界におけるあいつのしでかした事を思い出し、思わず強い殺気をだしたらしい。

 

それに気付いた4人が思わず

 

「知ってるのか?っておい!」

「慶一くんも知ってるの?って・・・何、これ?」

「うわあ・・・人数多いねえ・・・っ!?」

「これは・・・やはり応援を呼んだ方が・・・はっ!?」

 

という皆の言葉に俺は思わず

 

「ふう・・・いかんいかん、ちょっと冷静になれ、取り乱したら連中の思う壺だ・・・って、皆、どうした?」

 

そう呟きつつ、驚きの表情で俺を見つめる4人に声をかけると、4人は

 

「おいおい・・・今すげえ殺気だったぞ?あいつと何か因縁でもあるのか?」

「せ、背筋が凍ったわ・・・今のが殺気っていうものなの?」

「す、すっごい怖かった・・・慶一君、そういうの勘弁だよ。」

「お、思わず身がすくんでしまいました・・・こんな感覚を感じたの初めてです・・・。」

 

その言葉に俺は、奴の姿を見た時に思わず取り乱した事で殺気を放ってしまったらしかったようで、俺はすぐさま皆に謝り、更に瞬へと俺の考えた作戦を伝える。

 

「すまん、まあ、ちょっと嫌な事を思い出してついな。それはともかく、作戦を立てないと難しそうだ。とりあえずは・・・瞬、お前が正面から出て行って奴等の注意を引いてくれ。俺は隙を見てかがみ達を捕らえている連中をぶちのめしてかがみ達の安全を確保する。それまでは、下手に手出しは出来ず、殴られる事になるかもだが、少しの間だけ耐えてくれ。」

 

そう言うと、瞬は腕組みをしながら考え込んでいるようだったが、そのままの体制で俺に顔を向けると

 

「その作戦はいいかもしれない。だが、本当にかがみ達の事、任せてもいいんだな?」

 

その瞬の言葉に俺は力強く頷いて

 

「ああ。任せてくれ。俺が自分で言った以上はこの責任、俺の名誉に誓って果たす。だから、連中の注意のひきつけは任せるぞ?」

 

その言葉に瞬も頷いて

 

「わかった。こっちは上手くやってやるよ。それじゃ作戦開始だな。」

 

そう言うと、瞬は公園内へと足を踏み入れた。

 

それを見届ける俺達だったが、しおん達は俺に

 

「本当に大丈夫かな?」

「慶一君、信じていいんだよね?」

「慶一さん、あまりご無理はなさらないで下さいね。」

 

そう言って来るのを聞いて俺は、再びみんなの不安を取り除くように力強く頷くと

 

「大丈夫だ。絶対にかがみ達も助けるから。それじゃ、俺も行動開始と行きますか。こなた、みゆき、これを持っててくれないか?」

 

そう言って、俺は学ラン脱いで、更に鞄も2人に預けると、かがみ達を拘束している連中の近くへと忍び足で動き出した。

 

その頃、瞬は・・・・・・

 

瞬一side

 

慶一から、かがみ達の救出作戦を聞き、俺は、とりあえずあいつの立てた作戦に乗ってあいつの言うように他の連中の注意をひきつける為に公園内へと足を踏み入れる。

 

「おい!成神!!てめえ、俺の連れをさらうとはいい度胸してやがるな!?人質なんて姑息な真似使ってねえでたまには正々堂々勝負してみたらどうなんだ!!」

 

という怒号を響かせると、それに気付いたかがみ達のを拘束している3人を除いた8人が、俺の側まで嫌な笑みを顔に浮かべながらやってきた。

 

「よう、牧村ぁー!今まで散々俺をむかつかせてくれたてめえも今日は形無しだなあ!?お前の連れであるあの2人はこっちの手中だぜぇ!?あいつ等を傷つけたくなかったら、下手な抵抗はすんじゃねえぞぉ!?おら!お前等、やっちまえ!!」

 

そう言って、成神以外の7人が俺を取り囲む。

 

そして、一方的な暴力による蹂躙が始まった。

 

俺を羽交い絞めにして、そして、6人が殴る蹴るを繰り返す。

 

ゴッ!ドコッ!ズガッ!ガスッ!バキッ!!ガン!!ズン!!

 

「おらおらどうしたよ!?悔しかったら反撃してみろや!!もっとも、その為に行動を起こそうものなら、あいつらの無事は保証できねえけどなあー!!」

 

そう叫びつつ、更に殴る蹴るを繰り返す奴等。

 

そうしているうちに、かがみとつかさが奴等の腕の中で意識を取り戻したようで、一方的に殴られる俺の姿を見て

 

「・・・う、ここは、一体・・・え?瞬一くん?ちょっ!あんたら何やってんのよ!?やめなさいよ!!やめてってば!!」

「ふえ?おねえちゃん?あ・・・まーくん!?やめて、おねがい!やめてよ~!!」

 

と叫ぶ2人を見て、悔しさで奥歯を噛み締めていた。

 

俺は、この暴力に耐えながら心の中で

 

(くっ!慶一、急げ!このままじゃ俺も、そんなにはもたねえぞ・・・)

 

そう考え、慶一が動く時を待った。

 

慶一side

 

瞬の陽動が始まったのを横目に俺は、2人を拘束している奴等へと一足飛びでたどり着ける位置へと移動していた。

 

瞬が殴られ始め、その時にかがみとつかさが意識を取り戻したらしく、殴られる瞬を見て、この非道さに悔し涙を流しながら叫んでいるのが見て取れた。

 

俺はそんな様子を見て、奴等に対して更に怒りを増しつつ、飛び込むタイミングを見計らう。

 

そして、奴等に隙が出来たその瞬間、俺は龍神流の歩法、瞬神を使い奴等の前に一瞬で移動した。

 

そんな俺に気付かない、かがみを拘束する奴の両肩目掛けて俺は

 

「螺旋連弾!!」

 

ドカカッ!!ボコン!ボコン!!

 

と螺旋の捻りを加えた拳を打ち込んで奴の両肩を外した。

 

その衝撃で「うぎゃあああっ!!」と悲鳴を上げ、両腕をだらりとたらすそいつの顎を打ち上げるように俺は更に

 

「螺旋掌!!」

 

ズガンッ!!

 

と、螺旋の捻りを加えた掌打を叩き込み、そいつを後ろの植え込みに吹き飛ばす。

 

そして、突然何が起きたのか、事態を把握できず呆然とする、つかさを拘束する男のわき腹にすかさず掌を添えて

 

「螺旋通打掌!!」

 

ギュルッ!ズンッ!!

 

と剄を内部に通すように打ち抜くと、つかさを拘束していた男は白目をむいて気絶した。

 

そして、ようやく俺の存在に気付いたもう一人の見張りが俺に食って掛かって来たが、俺はその突進を軽く避けると同時に

 

「螺旋連弾四壊!!」

 

ドカカカカッ!!ボコン!ボコン!!ボコン!!!ボコン!!!!

 

という嫌な音と共にそいつの四肢の関節を外したのだった。

 

そして、かがみとつかさもようやく俺の事に気付いたようで

 

「え?一体何が・・・って、慶一くん!?」

「なに?どうなっちゃったの?あ、けいいちくん!」

 

そう言って、涙目の顔を向ける2人に俺はにっこりと笑うと

 

「お待たせ、2人共。怪我はないか?」

 

そう言うと、2人は俺に飛びついて来て泣き出した。

 

「うん・・・うん・・・私は大丈夫・・・慶一くん、ありがとう・・・。」

「怖かったよ~・・・ありがとう、けいいちくん。ほんとうにありがとう・・・。」

 

そう言って泣く2人に俺は、優しく諭すように

 

「すまん、遅くなって怖い思いさせちゃったな。もう大丈夫だ。これから瞬も助けなきゃならない。だから、少しここで待っていてくれ。連中は気絶してるし、危険はもうないからさ。」

 

そう言う俺に、2人はどうにか心を落ち着けると

 

「わ、わかったわ。慶一くん、あまり無理はしないでよ?」

「無事に帰ってきてね?まーくんと一緒に・・・。」

 

そう言う2人に俺は頷くと、瞬をボコボコにしている連中の方へと向き直った。

 

そして、そんな俺を成神が驚愕の表情で見ていたのだが、俺はそんな成神とそして、瞬に2人を無事救い出した事を伝える為に叫んだ。

 

「瞬!こっちは大丈夫だ!!お前もそろそろたっぷりとお礼を返してやれ!!成神っ!!お前が何をしようとも俺が全部そんな下らない企みなんざぶち砕いてやるぞっ!!手前だけは俺が許さない!!」

 

そう叫ぶ俺に、成神は俺を指差しながら

 

「お、お前はなんだ!?俺はお前の事なんて知らん!!俺に何の因果があるのか知らねえが、手前のような見ず知らずの奴に恨みを買う覚えもねえ!!」

 

そんな風に叫ぶ成神に俺は更に

 

「手前にはなくても、こっちにはあるんだよっ!!今ここで、2度とくだらねえ企みなど立てられないようにしてやる覚悟しやがれっ!!」

 

そう叫ぶと同時に俺は瞬達の方へと飛び出した。

 

瞬一side

 

慶一の作戦どおりに事を進め、そして、今俺は、物凄い速さで3人を撃退し、かがみ達を救い出した慶一を目の当たりにして、俺は奴の自信のある理由を知った。

 

あの動き、スピード、そして技の切れは相当な物だと思えたからだ。

 

そして、奴はかがみ達を解放し、俺に反撃開始を告げる。

 

その声に応えて俺もまた、俺を羽交い絞めにしているやつに頭を打ち付けて拘束を解くと、慶一と共に反撃を開始した。

 

俺の背中にぴったりと納まり、俺の背中を守る慶一が凄く頼もしく思えた。

 

そして、俺達は数分もしないうちに残りの7人を叩きのめしたのだった。

 

「ナイスファイト、慶一。」

「お前こそな、瞬。俺を信じてくれてありがとよ。」

 

そう言って堅い握手を交わす俺だったが、俺はこいつとは本当の意味で親友に成れそうだ、と思えた。

 

だが、この時俺達は失念していた。

 

こっそりと俺達を狙う、何時の間にかこの場から姿を消していた奴がいた事に。

 

そして、そいつは俺の油断をついて持っていた鉄パイプを振り上げて、俺の背後から襲いかかって来たのだった。

 

慶一side

 

瞬と共に残りの連中を片付けて、俺と瞬は改めて親友と認め合える握手を交わした。

 

そして、かがみ達を連れてその場を後にしようとした俺達の隙をついて、こっそりとどこかに隠れて隙をうかがっていた成神が、鉄パイプを振り上げて瞬に襲い掛かろうとしていた。

 

「瞬一くん、危ない!!」「まーくん!逃げて!!」

 

と言う2人の言葉に、俺はそれに気付いて成神に向かってダッシュする。

 

「瞬!?やらせるかよっ!!今度は俺が助ける番だ!!」

 

そう叫びつつ、瞬と成神の間へ飛び込もうとしたその時、俺の頭の中にあの声が響いた。

 

(・・・いいのですか?たとえ今、この時に成神を叩きのめしたとしても、ループする事になれば、それさえも無駄になってしまうかもしれないのですよ?)

 

そう言ってくる声に俺は

 

(・・・それでもいいさ。たとえこれが俺の自己満足だったとしても、元の世界で出来なかった事が出来るなら、たとえ無駄になろうと構いはしない!今ここで、あいつの為に行動が起こせないようなら、俺はこの世界でもあいつの親友で居る資格なんてないんだ!!)

 

俺に忠告してくる声にそう叫び返すと同時に俺は、成神の懐に飛び込み

 

「龍神流奥義!百烈螺旋弾!!」

 

フォンッ!ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!

 

と、今までの万感の思いを込めて、成神に龍神流の奥義を叩き込んだ。

 

顔面からボディからボコボコに拳を打ち込まれて「ぎゃあああああっ!!」と叫びながら吹っ飛んでいく成神を見つめ、俺はこの世界でやっと、瞬との心残りを消し、瞬の無念を晴らす事が出来たのだった。

 

そして、全てを終えた俺の元に皆が駆け寄って来る。

 

「慶一、助かったぜ。ってか、すげえ技だな・・・流石にちょっと成神がかわいそうに思えるがな・・・。」

「慶一くん、お疲れ様。あなたって結構強かったのね?見直しちゃったわ。」

「慶一君、おつかれー。いやあ、まさかあそこまで強いなんて思わなかったよ。どこかのバトル漫画の主人公みたいだねえ。」

「慶一さん、ご無事で何よりでした。それと同時に、かがみさんとつかささんを助けてくださってありがとうございます。」

 

と言う言葉に俺は苦笑しつつ、ほおをぽりぽりと掻いていたが、更にかがみとつかさも

 

「慶一くん、本当にありがとう。瞬一くんと一緒に助けてくれた事、感謝してるわ。それに、皆の言うように本当に強いのね?助けられた瞬間は何が起きたのか分からなかったわ。」

「けいいちくん、まーくん。迷惑かけてごめんね?それと助けてくれてありがとう~。わたしもけいいちくんの動きが全然見えなくて何が起きたのか全然わからなかったよ~。」

 

そう言う2人に俺は笑顔で

 

「はは。今回はスピードも命の作戦だったからな。まあ、一応、俺も鍛えている、って訳さ。だからこそ、今回は2人を助ける事が出来たんだけどな。とにかく、2人共無事で何よりだ。さあて、もう遅いし帰るとしようか。」

 

その言葉に皆も頷いて、俺達は家路についたのだった。

 

帰る時に俺達はそれぞれにメルアド交換等も済ませ、俺達は本当の意味での友達になったのだった。

 

ちなみにあの後は、親父<この世界では叔父さんとなっているが>に後処理を頼み、成神以下の連中には俺達には2度と近づけないように処置をとってもらった。

 

こうして、波乱の転校初日が終わって行く。

 

そして、その日の夜、皆からの初メールが届いたのだが、その中でこなたのメールが少し気になった。

 

その内容は・・・・・・

 

from:こなた

 

今日は転校初日だったけど、色々あったねー。

私としてもかなり刺激の強い1日になったよ。

それとさ、今日、あの公園を後にした時にちょっと気になったんだけど、慶一君、ずいぶん晴れ晴れとしたような顔してたよね?

それだけがちょっとだけ気になってたんだよねー。

いつかその顔の意味を教えてくれたらいいなって思ったりして。

 

話は変わるけど、明日から桜藤祭の準備も始まるけどさ、これからも一緒に頑張っていこうねー。

色々手伝い、期待してるよー?

 

最後に、今日から始まる深夜アニメで面白いのがあるから、それをちぇきしてねー。

 

 

というメールだったのだが、俺自身気付いていなかったあの後の晴れ晴れとした表情って奴はきっと、俺自身の心残りと後悔を清算できた事に対するものだったのかもしれないな、と思う俺だった。

 

明日から、桜藤祭に向けての準備が本格的に始まる。

 

それを前にして俺は、あの分厚い資料に目を通しつつ、改めて気合を入れなおすのだった。 

 




こちらのストックはここまでです。

なるべく更新をしていけるように頑張るつもりですが、どうしても更新速度は落ちてしまうと思われますので、こちらは気長に待っていただけたら、と思います。

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