ダンガンロンパアンサンブル ~希望の転校生と絶望の学院~ 作:粒餡
さて、と、後は適当に散らばってる人たちに声をかければ終わりかな
「まずは、っと」
「おー、何だ何だ、誰をナンパするかとか品定めでもしてるのかー?」
「し、してませんよ!」
「いやいや、否定しても、やっぱりお前も男だし、私みたいなパーフェクトボディを持つ女性に見とれてもしょうがないからなあ」
話しかけるというか、いちゃもんをつけてくる彼女、だけど・・・
「・・・子ども体型じゃん」
「お前今なんつった!?」
「いいえ、なんにも?」
「子ども体型じゃねえし! これから成長するんだよ!」
「はいはい、そうですねー」
「何だその舐めきった態度はー!」
「いや、最初の会話があんなだったら誰でもこういうふうになりますって、それで、あなたは?」
「ぐぬぬ・・・ふん・・・私は双葉みづき、『超高校級の幸運』だ」
『超高校級の幸運』
フタバ ミヅキ
「幸運・・・」
「そう、私は一般的な高校生の中から抽選でただ一人選ばれた存在! つまりここの奴らより私の方がすごいんだよ!」
「まあ、確かにある意味すごいかもしれませんけど・・・威張るほどでは」
「な、わ、私は中学校の時ではみなちゃんと一緒に『幸運の双子』って言われてテレビにも出たことがあるぐらいすごかったんだぞ!」
「幸運の、双子、ああそういえば聞いたことがあります、その双子に会えたら幸運が訪れるとか、だけどちょっと出ただけですぐにいなくなっちゃいましたよね」
「ぐ、だ、だけど未だに私たちのところに来る人たちは多いんだぞ!」
「・・・だけど、それだとむしろ当選するの周りの人の方なんじゃ・・・」
「う、うるさいうるさいうるさい! いちゃもんばっかつけて何だよ!」
「あはは、すみません、まあさっきのお返しと思ってくれれば・・・だけど、幸運ってすごいと思いますよ、俺なんて『超高校級の相談窓口』だなんて微妙な才能ですもん」
「相談窓口? 変な才能だなー、お前、下手すると私より微妙なんじゃないか?」
一応微妙な才能だとは自覚しているのか・・・
「まあ、そうですね、幸運より下かもしれませんね」
「そうだろそうだろ? わかってるじゃないかお前!」
「ありがとうございます」
この人もめんどくさい人だけど、比較的扱いやすい人ではあるな、うん
「次はー・・・」
「あいやー!」
「うわっ!?」
な、なんだ!?
「あ、ごめんごめん、周りを見てなかったアル、怪我はないアルか?」
「な、ないけど・・・」
「・・・? 本当に大丈夫アルか? 痛いとこあったら言うアルよ?」
大丈夫、大丈夫だけど・・・なんでこの人取ってつけたようにアルとか言ってんの・・・?
「・・・あ、もしかして私の口調が気になってるアルか?」
「あ、う、うん」
「あはは、一応、普通に喋れはするんだよ? だけど、私の叔父さんが『お前は中々学校でも馴染めない子だから、いっそのことアルとか語尾につけたらどうだ、きっと馴染めるぞー、がはは!』って、言ってくれたの、だから私はこうしてアルを語尾につけるアルよ! 恥ずかしいのなら言わなきゃいいのに顔を赤くしながら言ってくれたから、つけなきゃ叔父さんに申し訳ないアル!」
・・・それ、ただ酔ってただけなんじゃ・・・
「えっと、それで何やってたんですか?」
「ああ、ずっと動かないでいるのも性に合わないから、ちょっと体を動かしてたアルよ」
「そうなんですか・・・」
「だけど、やっぱり狭い場所だとダメアルね、むつみちゃんじゃないけど早く体育館を探したいアルよ」
「そうなのか・・・そういえば、君の名前は何ていうの?」
「あ、まだ言ってなかったアルね、私の名前は龍泉寺レンレン、『超高校級の拳法家』アル」
『超高校級の拳法家』
リュウセンジ レンレン
「拳法家?」
「そうアル、私は叔父さんから教えてもらった、『ドラゴン拳法』の使い手アルよ!」
「ド、ドラゴン拳法・・・?」
なんかすごくB級映画で出てきそうな名前だな・・・
「そう、残念ながら私の叔父さんは身につけることが出来なかったけど、私は叔父さんとの修行の末、ついに『ドラゴン拳法』を身に付けることができることができたアル!」
「そう・・・」
「だけど、私はもっと高みを目指すアル、目指すは、全国で『ドラゴン拳法』会得者を増やすことアル!」
「お、おう・・・ちなみに、何て叔父さんに教えてもらってたんだ?」
「うさぎ飛びで神社の階段を登ったり、タイヤをつけて庭を百周したり?」
「・・・」
「とにかく、叔父さんがいなければ私はここにいないアル、叔父さんには感謝してもしきれないくらいアルよ!」
・・・それは、ただ単に龍泉寺さんに才能があっただけなのでは・・・いや、龍泉寺さんの才能を開花させたという意味ではある意味叔父さんすごいのかもしれないけど。
「次は・・・」
「止まれ!」
「え?」
「両手を上げて、頭の後ろに組め!」
「え? え?」
「ハリィ!」
「は、はい!?」
背中に何か突きつけられてるという異常の状況の中、言われるがままに頭の後ろで手を組む、ていうかまじで何この状況・・・
「名前と才能、所属を言え」
「え、えっと、水城新人、才能は『超高校級の相談窓口』で・・・所属って何?」
「ふむ・・・嘘は言ってないな?」
「言ってないって・・・」
「・・・よろしい、じゃあ、普通の状態にしていいですよ」
「は、はあ・・・」
俺は両腕を下ろし、後ろから聞こえる声の持ち主の方に振り返る。そこには、ピンク色の髪をした女の子がいた。
「えっと・・・何のよう?」
「いやね? 事務所から見知らぬ場所で見知らぬ男性と出会った場合はこうしろと訓練されてたから、つい、意外と手で銃の形作って背中に当ててもわからないもんでしょ?」
「ま、まあ確かにわからなかったけど・・・」
「ごめんごめん、あ、ちなみに私は羽森つばさっていうんだ、一応『超高校級のアイドル』ってことになってるよ」
『超高校級のアイドル』
ハモリ ツバサ
「羽森つばさって・・・『merry-melody』の?」
「はい! ご存知のようで何よりであります!」
「いやいや、むしろしらない人の方が珍しいレベルの日本一のアイドルじゃないか・・・」
『merry-melody』、二人組のアイドルで、当初はただのご当地アイドルだったが、相方の子のカンペ芸、そして、羽森さんのツッコミというバラエティ番組による人気だけでなく、歌とダンスも完璧で、瞬く間に日本一のアイドルになった子だ。
「だけど・・・何かテレビで見るのと印象が違うな」
「あはは、当たり前じゃん、今はマスコミとかいないから言っちゃうけどさ、やっぱりメイクとか、編集とかの影響は強いからね」
「そうなのか・・・でも、それ抜きにしてもやっぱりかわいいし、やっぱり『超高校級のアイドル』なんだな、って実感できるよ」
「あはは、ありがと、そう言ってもらえるとわざわざこうして『超高校級のアイドル』としてこの学校に来た甲斐もあるってもんだよ」
「それにしても、やっぱりすごいなあ・・・俺でも知ってるような有名人がいっぱいいて、俺は相談窓口なんてわけわからない才能だから何か肩身が狭いよ・・・それにしても、わざわざって何か、来たくなかったような言い方だね」
「・・・」
俺がそう言うと、羽森さんは何か微妙な顔をしてしまった。
「あ、ごめん、もしかして聞かれたくなかったようなことだった?」
「・・・いや、そういうんじゃなくてさ、やっぱり、超高校級と呼ばれることはあるなーって思っただけだよ、すごいね、そんな何気ない会話から悩みのタネを見つけ出すなんてさ」
「え、えっと・・・」
「・・・なーんてね」
「え?」
「あはは、冗談だよ、冗談、半分ぐらいはね?」
「は、半分か・・・」
「まあ、女の子は秘密がちょっとあったほうが魅力的だからね、ま、というわけでばいばい」
そう言って、羽森さんは去っていった。
「・・・聞かれたくないことだったのかなあ」
「さて、と」
「あ、どうもー」
「え? あ、こんにちは」
俺が次は誰に話しかけようか考えていると、何かすっげえ奇抜な格好した子が話しかけてきた。
「えっと・・・?」
「んー・・・? あ、もしかして私の服が気になるんですかぁ?」
「いやね、流石に気になるといいますか・・・」
「ふふふ、この衣装はですね、私の才能とふかーいふかーい関わりを持っているのですよぉ?」
「へー、どんな才能なの?」
「えへへー、じゃあ、おほん」
「天よ! 地よ! 水よ! この世の全ての生き物よ! 私は七夕セブン! 弱きを守り、強きを挫く、我が名は熊沢ひめの! 今日も天の川に変わって盗んじゃうよ☆」
「・・・」
「あ、ちなみに才能は『超高校級の怪盗』です」
『超高校級の怪盗』
クマサワ ヒメノ
「へ、へえ・・・って、え? 怪盗? 怪盗って、あのルパンとかの?」
「そうだよー」
すげえな、まさか犯罪者までスカウトしてるとは思わなかった・・・、それにしても、『七夕セブン』か、聞き覚えはあるな、確か全国で盗みを働いている怪盗だったか。だけど標的はいつもなんからの悪事を働いている大富豪ばかりで、盗んだものも元々の持ち主がいるなら持ち主に、いないのならば警察に大富豪の悪事の証拠と一緒にいつの間にか届けているという、義賊、だったっけ。
「あはは、もしかして私が怪盗だからってあなたのものを何か奪うかも、って心配してるんですかぁ?」
「い、いやそんなことはないぜ?」
「大丈夫ですよー、私、悪人以外からは何も盗みませんからー、だけど、もしあなたが何らかの犯罪を起こしたときは・・・覚悟してくださいねー?」
「ひゃ、ひゃい!」
間延びした喋り方で、いまいちスゴさがよくわからなかったが、最後の言葉をしゃべる時に開けた目は、本気だった・・・悪いことだけはしないでおこう、いやしないけどもね?
「さて、最後はあの人か・・・」
「あ、こんにちは! 私の番ですか?」
「おう、こんにちは、一応、君が最後だよ」
「おお! なら最後のトリとして立派な自己紹介をしなければいけませんね!」
「私の名前は氷野くるみです! 『超高校級の薬剤師』としてこの学校に来たんですYO☆」
『超高校級の薬剤師』
ヒノ クルミ
「へー、薬剤師ってことは、薬を作ったりしてるのか?」
「YES! と、言っても私は薬を作ってるわけではないんですけどね!」
「え?」
「なんでか知らないんですけど、私が『料理』して出来たモノが何故か料理として扱われてるんですよ! 不思議じゃないですか? やっぱあれですかね、良薬口にあべし! ってやつなんですかね?」
「色々間違ってるけど・・・料理って、何入れたりしてるんだ?」
「そうですねー、最近だと、新鮮な野菜はそのまま食べても美味しいからって採れたてのじゃがいもをそのまま煮て作ったカレーなどを作りましたね!」
「へー、美味そうだな」
「ですよね! 私の先輩もあまりの美味しさに泡を吹いて気絶しちゃったんですYO! やっぱり土をつけたままのが効いたんですかね?」
「つ、土をつけたまま!?」
「YES! ついでに土には栄養がたっぷり含まれていると聞いたので土を鍋の半分くらい!」
「鍋の半分!?」
それもうただの泥じゃねえかな!?
「え、えっと、超高校級の薬剤師、なんだよね?」
「そうですよ? 先輩が風邪をひいてしまった時に、料理を作ってあげたんですけど、間違ってじゃがいもにかけちゃったら、何故かじゃがいもがたくさんできて校庭に埋まるほどになったんですYO!」
「へ、へー・・・そうなんだ」
これはあれかな、無自覚の天才、って奴なのかな・・・
「さて、自己紹介はこんなもんかな・・・」
「ちょっと待ちなさいよ、まだあんたの名前とか私聞いてないんだけど」
「あれ・・・そうでしたっけ?」
「新人くん・・・一応君の自己紹介の場でもあったんだよ?」
「あ、あはは・・・すまんすまん、じゃあ、もう知ってる人もいるけど改めて、俺は水城新人、『超高校級の相談窓口』だ、よろしくな」
『超高校級の相談窓口』
ミズシロ アラト
「相談窓口?」
「まあ、相談窓口と言っても、何でも屋みたいなもんだけどな、色々な相談を受けて大体のことはできるようになったし、まあ器用貧乏とも言えるけど」
「おお! そうなんですか! じゃあ水城さん! 今度私の料理食べてくれませんか?」
「え゛」
「何故だか私の料理食べるとみんな気絶しちゃうんですYO! だけど、『超高校級の相談窓口』なら何か凄そうですし多分食べれますよね?」
「え、いや、え」
「・・・水城、どんまい」
「誰か・・・医者を呼んでくれ・・・」
「薬剤師ならそこにいますが」
「そういえばカレーにはチョコをいれたら美味しいと聞きましたね・・・じゃあチョコは勿論、カカオ豆とか、後は何か色合いが似てますし土入れましょう土、栄養たっぷりですね!」
「oh・・・」
「ど、どんまい新人くん・・・」
そんな、平穏な日常とは言えないが、それでもまだ平和なこの時間。しかし、それを壊すものが唐突に現れる。
『ピーンポーンパーンポーン』
「え、何?」
『えー、今日は入学式当日なんですけど・・・集合場所の体育館に誰も集まってません・・・オマエラ! 遅いよ! 遅すぎるよ! ナマケモノものかよ! いやもうちょっとナマケモノでもマシな速度で動くよ! とにかく、自己紹介なんていいからさっさと体育館に集まんないと、お尻ペンペンの刑に処すからね! 全くもう』
「・・・今の、何?」
「・・・」
その声が玄関ホールに響いた瞬間、先ほどまでの和やかな雰囲気はどこにもなく、異様な空気がこの場に流れていた。
「・・・とりあえず、体育館に行くしかなさそうですね」
「で、でも場所はまだわかんないし・・・」
「大丈夫です、ここを調べた時にこの場所の地図を見つけましたので」
「それ先に言ってよ!?」
「すみません、言おうと思ったら水城さんが入ってきたもので、言うタイミングを失って・・・」
「す、すまん」
「いえ、大丈夫です。とにかく急ぎましょう、流石に本当にお尻ペンペンなんてやるとは思いませんが、万が一ということもありますし」
「そ、そうだなー、流石にこの歳になってお尻ペンペンとか嫌すぎるし」
「では、皆さん、こっちです」
玄関ホールから出て行く藍乃さんを追いかけて、俺たちは体育館に向かう。そこに、とてつもない絶望が待っているとも知らずに・・・。