ダンガンロンパアンサンブル ~希望の転校生と絶望の学院~ 作:粒餡
「・・・ここが体育館、でいいんだよな?」
「多分そうだと思うけど・・・」
「ていうか、すっごい近かったな、ほぼ一本道じゃん」
「まあ元々十六人目、待ってただけだしね、どこぞの遅れた十六人目のせいでだいぶ来るのが遅れちゃったけど」
「あ、あはは」
「とりあえず、さっさと体育館の中に入りましょう! あっしいちばーん!」
「あ、ずるいです! じゃあ私は二番です!」
「じゃああずさは三番!」
「ちょ、そんな走ったら怪我するアルよ!」
「あははー、みんな元気だねぇ」
「全く・・・ま、いいわ。こんなところで油売ってる暇あったらさっさと中に入りましょ」
「そうですね」
そう言って全員が体育館と書かれたプレートがある扉を開けて中に入っていく、俺も最後らへんで入ろうとしたが・・・
「・・・あれ、神樹、入らないのか?」
「・・・」
「神樹ー?」
「え、あ、はい?」
「いや、はいじゃなくて、みんな入っちゃってるぞ」
「あ、あれ・・・? ああ! 本当だ!」
「たく、何ぼーっとしてんだよ」
「ぼ、ぼーっとしてたわけじゃないもん! ただ・・・」
「ただ?」
「・・・ただ、入りたくなかっただけ」
「はぁ?」
「何となく、嫌な予感がするんだよ・・・この体育館の中から・・・」
・・・探偵の勘の次は霊媒師の勘、か。
「・・・そんなんただの気のせいだって、ほら、置いてくぞ」
「・・・そう、だよね。うん、そうだよね! じゃあ、中に早く入ろ! みんなまってるから!」
「お前に言われたくねえよ・・・」
明らかに無理してる感が見え見えだったが、まあ落ち込まれてるよりはだいぶましだ。中に入ると、そこにはトロフィーや、よくわからない金ピカの刀などあり、その奥にも扉があり、そこが開けっ放しになってることからその先が体育館だということが分かる。それにしてもトロフィーの量結構あるな・・・だけど、これもほんの一部なんだろうな。
「と、こんなことに気をかけてる暇はなかったな、俺も早く体育館に入ろう」
そう、独り言を呟き、俺は体育館の方へ足を進める・・・中に入ると、そこには至って普通な体育館だった。ただ、中央には椅子が並べられていて、数えてみるとそれはちょうど十六個ある。
「・・・これは」
「・・・入学式?」
「うわ!?」
「あ、いたんですね時国さん」
「・・・」
「き、気付かなかったのは謝るんでその目やめてください・・・」
「あんたら何してんのよ・・・だけど、確かに簡素ではあるけど、確かに入学式っぽいわね、ということはここで行う、ということで合ってるようね」
「だけど、肝心のあっしらを呼び出した張本人がいないですぜ?」
「私たちを呼んで、当の本人が遅れるというのは感心しませんわね」
そう、各々が愚痴を言っていると、突然”それ”は現れた。
『オマエラー! やっと集まったのか!』
「・・・え?」
「声は聞こますが、声の持ち主はどこにいるのでありますか・・・?」
「・・・あっち」
そういい、時国さんがゆっくりとステージの方を指差す、俺たちは全員時国さんが見ている方向を見る、すると。
『ここだよここ! 全くもう、君たちが遅いから先生は待ち続けて』
そう言って、”それ”は俺たちの目の前に姿を現す、”それ”の姿は・・・
「こーんな姿になっちゃったよ!」
――変なぬいぐるみだった。色は右半分は黒、左半分は白というモノクロカラーで、何となくクマっぽい形をしていたが、白い方の表情は黒い丸の目に、口も至って普通のマスコットポイとも言えなくはなかったが、黒い方の表情は目はギザギザの赤い目に加え口を釣り上げギザギザの歯を見せつけている・・・やはり変なぬいぐるみだった。
「・・・へ?」
「パ、パンダが喋ってるー!?」
「んー、パンダかどうかは微妙なところだけど、多分あの変なぬいぐるみの中からスピーカーか何かで喋ってるんじゃないかなぁ、私もたまに盗む時に使ったことあるし」
「こらー! 僕をそんなちゃちなおもちゃと一緒にするんじゃないよ! 後僕はパンダじゃなくてクマだよクマ!」
「しかも動いてますー!?」
「ていうか、普通その色合いじゃわかんないだろ・・・」
「突っ込むところはそこなんですか・・・? まあ、動いてるのも恐らくラジコンかなにかなんでしょう」
「全く・・・オマエラは夢がないなあ・・・もうちょっとメルヘンチックに考えなよ! 普通にクマさんが喋ってるって認めなよそんな無粋な推測ばっかりしないでさー! はあやだやだ、もうちょっとボクみたいにメルヘンチックな想像をしたりしなよ、自分たちが作ったロボットに世界をぶっ壊される想像とかさ・・・」
「それのどこにメルヘン要素があるのかな!?」
「ちづる、ちょっと黙ってなさい、話が進まないわ、声を聞く限り、こいつが私たちを呼び出した張本人らしいし、さっさと話させて状況を確認するのが先決よ」
「でもこんなクマにまともな話ができるのでありますか?」
「オマエラさあ、ボクのことをさっきからこいつとかクマとかパンダとか超プリティマスコットとか言うなよ!」
「いや、別に最後のは言ってないし・・・」
「ボクにはちゃんとモノクマっていう名前があるんだよ! そして、この『希望ヶ峰学園』の学園長なのだー!」
希望ヶ峰学園長
モノクマ
「・・・は? こんなクマが、学園長?」
「そうなのです!」
「まあ、希望ヶ峰学園というのは才能がある者が入る場所、そういう所の学園長ならまあぬいぐるみの姿で出てきても別に不思議ではないのでは? 才能がある人というのは少しばかり普通ではないところがありますから」
「あなたがそれを言うの・・・?」
「はいはい、とりあえず時間が押してるから入学式を始めるよー、ほらほら、席についてー」
モノクマがそう言うと、みんなは渋々それぞれ自由に席についていく。
「みんな座ったねー? それじゃあ、起立! 礼! おはようございます!」
「・・・」
「全く、協調性がない奴らだなあ・・・はいはい、それじゃあこの学園長である僕がこの学園の説明をしていくよー」
「えー、君たちはそれぞれこの世界の希望とも言える才能を持つ、超すごい高校生の集まりなのです、だけどさあ、そんな希望の象徴とも言える君たちが外に出て事故にあったり、君たちの才能に嫉妬した人たちに殺されたりするかもとボクは不安なのです・・・どのくらいなのかというと、昼も寝れない生活が続くのです、こんなんじゃあおちおち冬眠もできないよ! ということなので! 君たち、超高校級の希望とも言える君たちには!」
「この学園内だけで生活してもらうことにしたのです! いやー、ボクって生徒想いのいい先生だなあ」
「はあああああああ!?」
「そんな、困りますわ。せめて一週間に一度、いえ二度は家に帰ってオニイサマニウムを吸収しませんと私やっていけませんわ」
「私もオネエチャンニウムを一週間に三度は吸わないと死んじゃうよ!」
ふたりの叫びはともかくとして、周りもそれはちょっとという雰囲気が漂っている。
「え、えええ!? 二人共そんなに重大なものを吸わないとやっていけないの!? た、大変だよやこちゃん! 学園長さんに抗議しなくちゃ!」
「あいつらのデタラメを間に受けてるんじゃねえわよ全く・・・まあ、別にいいでしょ、むしろあいつらにはイイ薬なんじゃないの? 確かに私たちの才能に嫉妬して犯行に及んだ、というのもありえなくはない話だし、三年間ぐらいならいいでしょ」
「え、誰が三年間なんて言ったの?」
「はぁ? まさか大学までずっとこいつらと一緒なんて言わないわよね」
「いんや? ていうか、そこの二人が変なところで変な叫びをあげるからこうして僕の話が遮られてるんでしょ! 先生の話はちゃんと聞きなさい!」
「ええ、それで、この学園生活の期限を発表しまーす! オマエラは高校の三年間の過程を終えても、大学生になろうが、大人になってしわくちゃになってミイラになったとしても、ずーーーっとこの学園にい続けてもらいます! もちろん、外に出ちゃいけないよ? オマエラが危険な目にあっちゃったらボクはやっていけないよ、おろろ・・・」
「はあ? あんたふざけたことぬかしてんじゃねえわよ! つまり一生こんなところで過ごせって言うの!? そんなのごめんよ!」
「そ、そうですよ! いくら冗談でもひどすぎます!」
「冗談なんかじゃないよ」
「っ・・・!?」
「ボクは冗談なんかいうやつが大っ嫌いなんだよ! どのくらい嫌いかというと冗談を言ったやつを上段投げするくらいには嫌いなんだよ!」
一瞬、一瞬だが、モノクマの雰囲気が変わった、今までのふざけた雰囲気ではなく、殺意とも、敵意とも言えないようなごちゃまぜの感情をぶつけられた。そして、そんなものをぶつけられた俺たちは、この学園生活が一生続くということが真実であると嫌でも分からされた。
「そ、そんな・・・」
「あ、でも安心してね? オマエラのための資金は潤沢だからさ! 食料とかの補給は勿論色々な娯楽設備を配置していってあげるつもりだからね!」
「そ、そんなのいらないからさ、私たちを外に出せよ!」
「そ、そうです! 私まだ部長に教えてもらいたいことがいっぱいあるんです!」
「私だって、まだまだいっぱい作りたい服とかあるのに・・・!」
「全くもう、オマエラはわがままだなあ・・・自分の意志でこの学園に来たっていうのに、入学式早々出せなんて言うなんてさ・・・だけど、まあぶっちゃけないわけじゃないよ、この学園から出る方法」
「な、何だ・・・あるならあるって早く言ってよ・・・」
「君たちみたいなわがままな子達のために、ボクは特別ルールとして『卒業』というルールを作ってあげたんだよね」
「『卒業』・・・?」
「そう、オマエラにはさ、やっぱり学生だから秩序というものを守らなくてはなりません、だけど、万が一その秩序を破った人が出た場合は、その破った人だけが学園を出ていかなければいけません」
「・・・その秩序、とは?」
「うぷぷ、それはねえ・・・」
モノクマが、その条件を言う・・・俺たちはきっと、普通の学校に行って、普通の学園生活をして、普通な卒業を迎えるはずだったのだろう、だが・・・
「人が人を殺すことだよ・・・」
この場では、そんな普通などは望むのは無駄だと、ようやく全員が、理解したんだ。