ダンガンロンパアンサンブル ~希望の転校生と絶望の学院~ 作:粒餡
一章「ムーン・オブ・ザ・ラビット (非)日常編」 1
とりあえず、通信簿騒動からすこし経った後、俺は仕方がないのでマップを確認することにした。
希望ヶ峰学園
寄宿舎
才能研究室
「・・・才能研究室?」
まあここを希望ヶ峰学園だと書いたり、寄宿舎までは分かるが、才能研究室という単語だけはピンと来なかった。
「あらと君、何か気になることでもあったの?」
「ああ、この才能研究室、ていうのが気になってな・・・マップを見る限り俺らの才能に関わってる何か、ということはわかるんだが・・・」
「ううん・・・まあ、こればかりは流石に実際に行ってみないと分かんないかな・・・」
「だよなあ・・・とりあえず校則も確認しておくか」
「ていうかまだ見てなかったんだね・・・」
「通信簿見てから見ようと思ってたんだよ」
「・・・絶対に見ちゃダメだからね?」
「分かったって、そんな怖い顔すんなよ」
「怖い顔なんてしてない!」
「はいはい・・・」
そんな会話をしながら俺は校則の項目を開く。
校則
1.生徒達はこの学園内だけで共同生活を行いましょう。共同生活の期限はありません。
2.夜10時から朝7時までを『夜時間』とします。夜時間は立ち入り禁止区域があるので注意しましょう。
3.就寝は寄宿舎に設けられた個室でのみ可能です。他の部屋での故意の就寝は居眠りとみなし罰します。
4.希望ヶ峰学園について調べるのは自由です。特に行動に制限は課せられません。
5.学園長ことモノクマへの暴力は禁じます。禁じます! 監視カメラの破壊を禁じます。
6.仲間の誰かを殺したクロは『卒業』となりますが、自分がクロだと他の生徒に知られてはいけません。
7.コロシアイ学園生活で同一のクロが殺せるのは、2人までとします。
8.なお、校則は順次増えていく場合があります
「・・・改めて、俺たちは異常な状況に巻き込まれてるんだなって実感できるな、これを見ると」
「そうだね・・・」
「だが、校則を見てまた気になることが一つ増えたな・・・」
「え、なに?」
「この六番目の校則、卒業云々の場所は説明されたが、他の生徒に知られてはいけません、ってどういうことなんだ・・・?」
「ううん・・・まあ、やっぱりころ・・・殺人なんてバレていいことでもないからじゃない?」
「あのクマがそんなことに気を遣うとはとても思えねえけどな」
「それはそうだけど・・・じゃあ、新人君はなんでだと思うの?」
「・・・人を殺すだけじゃまだ足りない、とかか?」
「た、足りないって・・・?」
「分かんねえけど、わざわざ知られてはいけませんなんて書いてあるんだ、何らかの意味があるとは思ったほうがいい」
「・・・そう、だね。うん、分かった、私も何か考えておくよ」
「あんまりこれについて考えすぎて誰かを・・・みたいのはやめてくれよ?」
「そんなことしないよ!」
「知ってる、お人好しのお前に誰かを殺すことはもちろん、傷つけることですらできなさそうだからな」
「それはあらと君もでしょ?」
「・・・さあ、もしかすると案外俺が一番目の卒業生になるかもしれないぜ?」
「それはないよ、だってあらと君は優しいもん。むしろ人を助ける側でしょ?」
「・・・ああそうかい」
「あれ、どうしたのあらと君、急に顔隠して・・・もしかして、照れてるの?」
「照れてなんかねえよ!」
「はいはい」
「このやろう・・・」
後で絶対に仕返ししてやる・・・!
「あんたら、いちゃいちゃするのも結構だけど、もうそろそろこの学園の探索と行くわよ。マップには希望ヶ峰学園って書いてあったけどまだそうと決まったわけじゃないからね」
「い、いちゃいちゃなんてしてません!」
「あーはいはい、分かったわよ」
「絶対わかってない!」
「三波さんをからかうのはそこまでにしなさい? まあ、仲がいいのは大変結構なことだけどね」
「別に仲なんて良くねえわよ。とりあえず探索はツーマンセルで、八人ずつ希望ヶ峰学園、寄宿舎を調べることにしましょ」
「えー、別にみんな自由でよくない?」
「あら、別にあんたが死にたいっていうなら勝手にしていいわよ?」
「へ?」
「今誰があのクマの言うことを間に受けて殺人計画を立ててるか分かったもんじゃないのよ? 今はなんやかんやみんな落ち着いてるけど探索してる途中に不安になってきて最悪の状況を想像して思わず・・・! なんてのもありえるんだから」
「そんなこと・・・!」
「あら、言い切れるの? 今この場の全員が誰かを殺そうって思ってるって」
「そ、それは・・・」
「はいはいそこまでよ、神樹さん、あなたの言うことも分かるわ。いくらさっき会った仲だからといっても一応はクラスメイト、そんな人たちの誰かが誰かを殺そうと考えてるなんて思いたくないって、私も思いたくないわ、だけど、信じるために疑うのもまた大切なことなのよ? あの人は絶対にこんなことはしない、だから大丈夫だ、そう信じきって行動してたらきっといつか後悔するわ」
「・・・分かり、ました。すみません、何か余計なこと言っちゃって」
「いいのよ別に、まあ私も言いすぎたわ流石にこんな状況ですぐに緻密で巧妙な殺人計画を建てる奴がいるとか私だって思いたくないもの、そんなサイコパス相手したくないわ」
「あー・・・それで思ったんですけど、ちょっとよろしいですか?」
「何よ羽森、もうそろそろ行動を開始したいんだけど」
「いや、大したことじゃ・・・いややっぱり大したことでありますね。悠木さんのその腰につけた日本刀をなんとかしたほうがいいんじゃないかなー・・・って」
そう羽森さんが言うと、みんなの視線が自然と悠木さんの腰に集まる。
「・・・なんですか、私のぴょんぴょん丸に何かご不満が?」
「何で日本刀にそんなやたら可愛いな名前付けてるんでありますかこの人・・・いや、やっぱりこの状況で一人凶器を持ち歩いているのは流石にどうかなーと思った次第でありまして」
「・・・あなたは確か軍人系アイドルということで売ってるんでしたっけ?」
「いや別に軍人要素はそんな全面に押し出しているというわけでもないですけど・・・」
「軍人系アイドルなら拳銃ぐらい持ってるでしょう?」
「悠木さんはアイドルをなんだと思ってるの・・・?」
「まあ今は持ってないですけど普段は常備してますね」
「持ってるんだ!?」
三波のツッコミに合わせて周りの何人かが驚く何でそんなもん常備してるんだよ・・・
「だったら分かるはずです、今、拳銃がなくて落ち着かないでしょう?」
「まあ・・・」
「つまりそういうことです」
「・・・なるほど! これは失礼いたしました! そういうことなら持ってても不思議ではありませんね!」
「いやあんたらの中だけで完結しないで欲しいんだけど・・・」
「ううん、でも、二人組の相方の方に渡すぐらいなら別に渡してもいいんじゃねえか?」
「私ぴょんぴょん丸を取られたほうが暴走しますよ、まあ女子に危害を加えるわけにもいかないので被害は全て水城さんの方にいきますが」
「ぴょんぴょん丸と悠木さんを引き離すだって!? 何でそんな残酷なことができるんだ! そんなことは絶対にさせてはならんぞ!」
「あんたね・・・仕方ないわね、まあいいわ、とりあえずはい、二人組組んでー」
「何か全国の一部の人が悲しみに包まれそうな単語ですね」
「まあこの場にいるのは偶数だし別に余ることはねえだろ」
「あらとくーん、一緒に探索行く?」
「ん、分かった。一緒に行くか」
俺の才能を活かすためにもまだあまり知らない人に関わりに行くのもアリかなとは思ったが、まあそれはあとで暇を見つけたやればいいか。
「それじゃ、とりあえず一通り探索し終わったら寄宿舎の食堂に集合しなさい」
「分かった、それじゃあ行くか、三波」
「うん」