彼女がいれば…   作:もっち~!

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告白から始まる異世界生活

「兄さん、緊張しすぎだよ」

 

隣にいる妹に言われた。そうは言うが…今日は高校の卒業式である。妹と通学するのも、これが最後か…感慨深い。

 

「ダメだったら、私が一緒に帰ってあげるからね」

 

って…卒業式の後、想い人へ告白をしようと思っているのだ。その為に、緊張しまくっているのだけど…

 

「ダメでも、思い詰めちゃダメだよ。私がいるからね」

 

って、妹はダメな場合のアドバイスばかりしてくる。

 

「兄さんって、彼女運が無いよね」

 

そう…小学校の卒業式、中学校の卒業式、と現在告白2連敗中である。

 

「彼女なんか、いなくても…私がいるから…」

 

妹とは一緒にはなれない。いくらかわいくても、目に入れても痛くないほど、好きでも…妹から卒業する意味でも、彼女は欲しいのだ。妹の兄離れには必要だと考えている。

 

「兄さんには私がいるから…だから…ねぇ…」

 

------

 

高校の卒業式の後、校舎裏に想い人を呼び出して、僕の濃縮した想いを、彼女へと伝えた。

 

「好きです…つきあってください」

 

月並みな言葉を彼女へ贈り、彼女へと手を差しだした。

 

「えっ?!本当に?実は…私も、あなたが気になっていました。で、呼び出されて…嬉しい…」

 

彼女が僕の手を握ろうとした瞬間…

 

「ちょっと待った!」

 

知らない男の声…

 

パン!

 

乾いた破裂音…左胸に激痛…意識が途絶え始める。悲しそうな彼女の顔…脳裏で浮かぶ妹の顔…

 

「お前みたいな愚民は、彼女に相応しくない」

 

知らない男の声を最後に、僕の意識は消えていった。

 

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くらい…闇の世界

 

つらい…僕しかいない世界

 

クライ…僕は叫んだ…誰かの名前を…

 

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意識が再起動したかのように、僕に感覚と思考が戻って来た。瞼をゆっくりと開けると、洞窟らしき場所の天井部分が見えた。ゆっくりと起き上がると、僕は何かの箱の中にいた。

 

『システム再起動します』

 

と、目の前に文字が現れ、何かのシステム画面が目の前に広がっていく。見た事のあるようなシステム。妹とプレイしていたヴァーチャルリアルティーなゲームの画面に、似ている。

 

頭を手で触るが、ヘッドセットは装着していない。なのに、ゲーム画面が目の前に広がっている。どうして?

 

『全マップ探索』と念じると、マップウィンドウが開き、現在位置とこの洞窟のマップが表示された。ウィンドウタブには『竜の谷地下ダンジョン』と表示され、マップの上部には階層が表示されているのだが、地下100階らしい…はぁい?地下100階って…どうしろって言うのさぁ。

 

今いる場所は何かの部屋のようだ。僕の傍には何かの死体があった。その死体を調べると、

 

『聖剣エクスカリバーを手に入れました』

『聖槍ロンギヌスを手に入れました』

『聖剣アスカロンを手に入れました』

『金貨1000枚を手に入れました』

『龍鎧ドライグを手に入れました』

『龍翼アルビオンを手に入れました』

 

コイツ…何者だ…超レア装備を持っている死体。

 

『龍盾ベオウルフを手に入れました』

『無限なる力ウロボロスを手に入れました』

『表裏一体なる力メビウスを手に入れました』

『最後の希望パンドラを手に入れました』

 

おいおい…初心者歓迎ガチャか?

 

『ギルガメッシュの名を引き継ぎました』

 

…ギルガメッシュ?どこかの神話に出ていたような…

 

『通称をギルに設定をしました』

 

これはゲームなのか?レベルは1…ここはたぶん、ラスボスの部屋…始めたら終わって居る…ここでも運の無い僕…頬を抓ると痛い…現実なんだね。

 

『称号「勇者殺し」を手に入れました』

 

あの死体は勇者ってことか?。そう言えば、そういう装備だよね。そうなると、僕はラスボスなのか?いやいや、神様転生特典って無いのか?

 

ステイタス、ストレージを見てみると、今手にいれた物しかない。スキル、能力欄も空…ゲームだとしても終わっている感が強い。スキルも無しに聖剣など使えない。宝の持ち腐れ、タンスの肥やしだと思う。

 

そうだ、魔物にやられて死ぬと、戻れるのかな…いつも一緒にいてくれた妹…ここにはいない。とても不安である。どんな局面でもダメな場合の救済策を提示してくれていた妹。本当は嬉しかったんだよ。

 

こんな局面で、妹のありがたみがわかるとは…死んだら妹に会えるのかな?会いたい…一緒にいた時は迷惑だったけど、今は物凄く会いたい。無いものねだりだとわかっている。僕は愚か者なんだろう。

 

ここにいても何も解決しないので、部屋の扉を開けて、外に出た。マップによると、真っ直ぐ行くと階段があるようだ。そこへ向かう。

 

階段を昇ると、そこはドラゴンの巣窟だった。噛まれたら痛そうと思うと、足が踏み出せない。どうするよ、これ…1匹のドラゴンが僕に気が付き、近づいて来た。僕は咄嗟に何かを振り抜いた。悲鳴を上げること無く倒れるドラゴン。何が起きたのだ?

 

『経験値を獲得しました。レベルが上がりました』

『スキル「真空斬り」を覚えました』

 

ストレージには、倒したドラゴンから得られた戦利品が、次々に追加されていく。角やツメ、皮、肉、魔核などが手に入った。手に入っても、街まで行く自信が無いんだけど…

 

マップを見ると、反対側の端に階段があるようだ。運が悪くても生き残るだけだし。装備を身に着けて、階段まで足掻いてみる…

 

『スキル「ドラゴンキラー」を覚えました』

 

ドラゴンの弱点が見える。身体が反応して、そこへ迷い無く太刀を入れている僕。なんで?

 

『スキル「オートバトル」を覚えました』

 

僕の意志とは関係無く動く身体。僕はジェットコースターかフリーフォールに搭乗している気分である。迫り来るドラゴンがなぎ倒されていく。ゆっくりと確実に一歩一歩進むだけの僕。

 

そして、階段まで辿り着いてしまった。怪我もせず…レベルは100まで上がっている。

 

『スキル「二刀流」を覚えました』

 

『スキル「忍び足」を覚えました』

 

『称号「ドラゴンハンター」を得ました』

 

などなど、多彩なスキルを覚え、様々な称号を得たとのメッセージが延々と流れている。生き延びてしまう。こんな先の見えない世界で…どうして…僕の疑問には誰も答えてくれない。

 

僕の願い…死にたい…そう思えた。でも、僕の中のシステムはそれを許さないようだ。何が何でも生きろと言っているように感じる。ダメなら…妹が骨を拾ってくれるかな…

 

 

そして、無傷で地上に出られた。地上は辺り一面の荒れ野原。何かで抉られたように見える。巨人が百烈拳を放ったような感じである。マップを見ると『竜の谷 源泉 支配者サトゥー』と表示された。サトゥーってヤツが荒れ野原にしたのかもしれない。ここで、命を失った者達に祈りを捧げた。明日は我が身かもしれない。そのサトゥーってヤツに殺されるかもしれない。

 

さて、どうするかな。レベルは…見てはいけない物を見た気がした。9が三つ並んでいる。カンストか?経験値は『MAX』と表示されているし。寝首を掻かれない限り、死なないかな?

 

はぁ…とりあえず、街へ行くか…マップ探索で街を探す。セーリュー市という街を見つけた。そこへ行くか…トボトボ歩き始めた僕。鎧などの装備は外し、Tシャツにジーパンって姿である。聖剣は念じるとナイフ状態になったので、腰に鞘に入れてぶら下げている。護身用って感じではある。

 

途中、食べられそうな植物を見つけては『鑑定』して、食べられる物は食べ、薬草類はストレージへ入れていく。

 

で、セーリュー市に到着。門を潜ろうとすると、門番に知らない言葉で話し掛けられた。現地語ってヤツだな。自慢では無いが日本語以外だと、プログラム言語しか知らないんだけど…

 

「●●! ●●●●●● ●●●●●●●●●!!」

 

何を言っているんだ?お手上げか…

 

『多言語対応の自動通訳ルーチンを、追加起動しました』

 

システムメッセージウィンドウに、表示された。そんな便利なアドオンがあるのか。

 

「ボウズ、一応規則だから身分証見せな。入市税は大銅貨1枚だ」

 

「身分証?無いです…」

 

「どうした無くしたのか?新しく発行してやってもいいが銀貨がいるぞ?」

 

「お願いします…」

 

うん?銀貨かぁ…金貨1枚でおつりを貰うかな…

 

「ボウズ、こっち来な!」

 

詰め所のような場所に連れ込まれた。

 

「じゃあ、このヤマト石の上に両手を置いて名前を言いな」

 

この世界の嘘発見器は石製なのか?すごい技術力だな。石で精密機械を作るなんて。

 

「ギルです」

 

石版の上に手を置いて、名前を言ってみた。石版は青い光を灯し、何か文字列が浮かび上がってきた。

 

「ボウズ、もう手を離していいぞ」

 

手を離して、石版の文字を見た。

 

『多言語対応の自動翻訳ルーチンを、追加起動しました』

 

通訳だけでなく翻訳も出来るのか。石版には、『「種族:人族」「レベル:1」「階級:平民」「所属:なし」「職種:旅人」「称号:なし」「スキル:なし」「賞罰:なし」』と表示されている。

 

『偽装ステイタス表示を起動しました』

 

と、システムメッセージが流れた。便利である。このシステムは。石版に書かれたデータを、門番のオッチャンは紙に羽ペンでスラスラと書き込んでいく。最後に「証明者:セーリュー伯爵家家臣、騎士ソーン」と記入して、印章が付いた指輪を外して、オッチャンの名前のところに判を押した。

 

「ほれ、今度は無くすなよ!」

 

「ありがとうございます」

 

と言いながら、証明書を手にした。そうだ、お金を払わないと…オッチャンに金貨を1枚渡した。

 

「溜め込んだ、小遣いか?ちょっと待て、お釣りを渡すからな」

 

小銭を袋に入れて、手渡してくれた。

 

「スリ取られるなよ。治安は良い方だけど、スリとかはいるからな」

 

「わかりました。ありがとうございました」

 

お礼を言って、やっと街の中に入れるのかな。

 

「ちょっと待て!滞在許可期間は10日間だ。それ以上滞在したい場合は、この詰所か中央区の役場まで行って、延長申請しておくんだぞ。どっちでも銅貨3枚で手続きしてくれる。期限切れで街にいて、浮浪者狩りに見つかると、銀貨1枚の罰金。払えなかったら一般奴隷に落とされるから注意しろ」

 

なるほど、用もなく長いは出来ないんだな。奴隷はいやだよな…

 

「あと、何か困ったら、詰所の横にある、何でも屋に相談しな。金は取られるが、邪険にはされないはずだ」

 

「ありがとうございます♪」

 

オッチャンに頭を下げて、漸く街の中に入った。大切な物はストレージへ入れて置く。摺られる心配は無いから。ジーパンのポケットがストレージに連動しているって、気が付いたのは街に入って暫く経ってだった。便利だな。これ…

 

市場みたいな場所に出た。着替えを買わないとダメだよな。軽装過ぎるし。通り縋る人の中に首に首輪がある人がいる。あれが奴隷かな…結構かわいい子もいるようだけど…目を付けたかわいい子達の後を追うと、怪しい雰囲気の集団にこき使われているようだ。彼女達を奪うかな?奴隷って盗むと犯罪かな?

 

「おい!何を探っているんだ?」

 

彼女達の主に、見付かってしまったようだ。目付きの悪い集団に取り囲まれてしまった。どうするかな?

 

「お前も奴隷にするかな。女児ばかりだと、力仕事がはかどれ無いしな」

 

それを合図に、何かの呪文を唱え始めたローブを着た男。魔法使いか?

 

『アシッドブレス』

 

呪文を唱え終わる前に、僕から何かが発せられ、彼女たちを除く奴らが苦しみ藻掻きだした。

 

『スキル「龍の息吹」を覚えた』

 

ブレス攻撃ってやつか?この隙に、彼女達の元へ行く。彼女達のステイタス欄には「職種:奴隷」と表示されている。これを無効にしないと連れて行けないようだ。どうすれば良いんだ?咄嗟に一番大きな子の首にある首輪を掴んだ。

 

『メビウスの輪を発動しました。彼女たちの職種欄を初期化します』

 

ステイタス欄を確認すると、「職種:なし」「所属:ギル」と表示された。便利な機能である。その変更に伴い、首輪が外れた女の子達。

 

彼女達を連れて、何でも屋へと向かった。身分証が無いと、危機は乗り越えていないから。彼女達を連れて、何でも屋へ入店した僕。

 

「どうされましたか?」

 

店番の女性に声を掛けられた。

 

「奴隷の子達を奴隷から解放したのですが、身分証が無いので…どうしたら良いですか?」

 

女性に訊いてみた。

 

「そうですね。身分証を発行して貰うのが良いですね。有料ですが代行しましょうか?」

 

「お願いします」

 

発行業務の代行を依頼した。

 

「お名前は?」

 

女性に訊かれて、表情を強張らせている三人の女の子。

 

「名前を教えてくれるかな?」

 

僕が訊いてみた。

 

「蜥蜴」「犬なのです」「猫」と返答があった。種族名で呼んでいたのかな?それじゃ、あんまりだよな。

 

「名前を付けてあげる。リザ、ポチ、タマにしようかな。どうかな?」

 

表情は強張ったままだけど、尻尾が嬉しそうに踊っている。ソレをみた女性が、

 

「リザさん、ポチちゃん、タマちゃん、このヤマト石に手を載せてくれるかな?」

 

って、声を掛けてくれた。三人は言われた通りに順番に手を載せ、最後に僕が手を載せた。

 

「確認できました。ギルさん。所属が三人ともギルさんに移っている上、奴隷から脱却していました。職種をメイドにしておきますね」

 

「お願いします」

 

代金を前金で支払った。

 

「うん?この金貨…ずいぶんと古いわね。大切にしまっていたのかな」

 

そういや、あの死体はどのくらい前の人なんだ?興味が無いので、調べなかったけど。

 

「そうだ。買い取りをしてもらえますか?」

 

死体で思い出した。ダンジョンでのドロップ品を売れば、小銭になりそうだ。

 

「どういった物かな?」

 

ドラゴンの角、ツメ、皮、肝の干した物、肉、魔核などをカウンターに並べた。それらを見て目が点になる女性。

 

「どうしたの…これって…」

 

「倒した魔物のドロップ品ですけど…」

 

「肉以外は買いたい…肉は彼女達が狙っているわよ♪」

 

三人の女の子が肉をロックオンしている。

 

「生でも食べたい?」

 

頷く三人。肉のブロックを三等分して、彼女達の前に置いた。

 

「食べていいよ♪」

 

かぶり付くように食べ始めた三人。食い気の凄さに圧倒され、カウンターの女性に向き直った。

 

「どのくらいで売れますか?」

 

「金貨100枚でどうかな?」

 

なんか、物凄く高額で売れるようだ。

 

「金貨50枚で、代行込みでお願い出来ますか?あと、安全の部屋を借りたいです」

 

「そうねぇ…金貨75枚で、どうかな?食事のまかない付きで。延長申請もするから」

 

ぼったくりにならない価格を模索してくれているようだ。僕は彼女の前に手を出した。契約成立だ。

 

「私はナディよ。よろしくね。ねぇ、これ1匹分ってことは無いわよね?」

 

頷く僕。何匹分あるかは、カウントしていないから…ストレージ内の数を確認すると…9が6個位並んでいる。一生売り続けられる気がする。

 

「まだ有ります。後何匹分、要りますか?」

 

「資金が出来次第、買えるだけ買いたい。ドラゴンの皮と肝の干物は、滅多に出ない物なの」

 

貴重品なんだ。で、下宿として、この何でも屋さんの1室を貸してくれた。これで、寝首は掻かれないだろう。

 

 

 

 

 

 

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