サトゥーの視点と、セーリュー伯爵の視点です。
---サトゥー---
次の目的地、迷宮都市へと向かう。途中、エルフの隠れ里ってあるようだ。寄ってみるかな。しかし…結界が幾重にも張られていて、里が有ると思われる森へは、入れないようだ。ここで俺の攻略心に火が点いた。結界の近くに野営をして、作戦をアリサと練る。
「あの大樹から侵入すれば?森に結界が張ってあっても、大樹には張られていない気がするのよね。上から侵入するとは思っていないはずだから」
さすが、軍師様である。それは試す価値があるな。俺は、空気を蹴って、上空へと駆け上っていく、大樹を目指した。確かに森の上まで結界は張られていないようだ。大樹まで行けばどうにかなるかな。
---アーゼ---
里にいるエルフ達に、ギル様とのことを報告する儀式をしていた。身も心も汚れなくするように、舞を踊る。そして、踊り終わり、息を整えて、皆の前に立った。
「この場で、皆様へご報告があります」
祭儀場は静寂に包まれた。その時、
ドッスン!
何かが上から降ってきた。私の上に何かが載っている。え…言葉にならない驚き…涙が零れていく。みんなが見ている前で…ひどい…
何者かの唇が私の額に触れていた。皆の見ている前で…取り返しの付かない事態である。
「何…強奪…アーゼ様の婚約を強奪したのか…」
額への口付けは、婚約の印である。ソレも公開儀式の直後、皆の見ている前での愚行…私は何者か知らない者と、婚約の儀式を完遂してしまったようだ。ギル様との結婚の儀式の方が先であるが、皆にはまだ知らせていないので、無効になる。そういう掟であった。
---サトゥー---
大樹に潜入したのだが、そこは吹き抜けだったようで、落下していく俺。何かに引き寄せられるように、落下をして、何かの上に落下した。胸板には柔らかな物が押し付けられ、俺の唇は何かに触れていた。
「何…強奪…アーゼ様の婚約を強奪したのか…」
女性の声が聞こえた。アーゼ様って?身体を起こすと、目尻から涙を溢している少女がいた。この子の上に落下したのか。
「痛くなかったか?」
彼女へ手を差しだした俺。
「酷い…」
俺の手を掴んだ彼女。その途端、パラパラと拍手の音が…
「これで…婚約の儀を終わります…酷い…アーゼ様の心を壊して…」
刺すような視線を感じる。まるでテニオン神殿の時のようだ。
「あなたは、何者?」
亜人らしき女性に訊かれた。ステイタスをチェックすると、ルーアというエルフのようだ。あれ?耳が長くないのか…
「俺は、ムーノ男爵に仕えるペンドラゴン士爵です。大樹から入って来たら、落ちました」
「なるほど…ムーノ男爵の侵略ですか。アーゼは人質ってことか…」
何かを誤解されている気がする。
「いえ、侵略では無いです」
「そう、征服です」
いつの間にか隣に、アリサがいた。
「征服…なんて事だ…アーゼ様は…」
「いいのですよ。私の想いなんか…ペンドラゴン士爵よ。私を好きにするが良い。私はあなたと婚約したのだからね」
目を真っ赤にした少女、ステイタスによると、アイアリーゼ・ボルエナンというハイエルフのようだ。
「何故、泣いているんだ?」
「あなたと婚約をしたことにより、想い人との縁談は破談になりましたから…」
婚約?していないけどなぁ。
「何かの間違いでは?」
「間違い?何を言っているんですか!アナタは、皆の見ている前に、私を押し倒し、額に口付けをしたでは無いですか。そして、了承のサインとして、私と手をハンドシェークしたし」
え…何だ?その風習は?
「さすが、私のサトゥーね。これで婚約者が3人目だし♪」
おもしろがっているアリサ。おぃおぃ…
「一夫多妻なのね…人間族は野蛮だとは訊いていたけど…」
なんか、ものスゴく誤解されている。どうしよう。
---セーリュー伯爵---
何でも屋の店主であるユサラトーヤ・ボルエナンから情報がもたらされた。セーリュー市の名誉市民であるサトゥー殿の活躍である。しかし、やりすぎの気がする。
ムーノ男爵に仕えるペンドラゴン士爵に成り、マリエンテール士爵の娘であるゼナと婚約をし、オーユゴック公爵の孫娘であるテニオン神殿の神託の巫女であったセーラとも婚約をした。そして、ボルエナンの里を征服して、ハイエルフのアーゼ様とも婚約をしたと言う。エルフの里を征服って、問題がある。このシガ王国に戦火を呼び寄せたいのか。
問題は根深いとユーヤが続けた。アーゼ様はギルガメッシュ様と結婚の儀をしたばかりであったそうだ。それなのに、征服されたことで、結婚を破棄しての婚約を選んだそうだ。
ギルガメッシュ様を止めないと危険だ。最後に残された希望…消す訳にはいかない。