どこをどう飛んだのかわからない…暗転はしない。このまま、どこかに…
マップに街が見えて来た。寄ってみるかな。マップ名は『シガ王国王都』と表示されている。関所で身分証明書を見せると、どこかへ連行される僕。サトゥーに濡れ衣を着せられて、牢屋かな…それも悪くない。もう生きる気力は…足掻く気力も…
しかし、僕が連れて行かれたのは、王様の前であった。
「ギルガメッシュ様ですね。リリー殿、リリアン殿から、保護願いが出ております」
この国の宰相が、僕に伝えてきた。リリアンって言うのはギルド長の昔の名前らしい。
「自暴自棄状態であると聞いております。理由もです」
「セーラを助けてくれたそうだな。感謝する」
王様に言われた。だからなんだ?
「セーラと一緒になりたいそうだな」
王様に訊かれた。
「無理なんですよね。サトゥーの女だから…もう、僕にかまわないでください」
部屋から出ようとすると兵に囲まれた。
「牢屋にでもぶち込んで下さい。もう、疲れました」
「待ってくれ。時間を少しくださらぬか?」
王様が妙なことを言う。時間?
「サトゥーが飽きるまで待てってことですか?論外ですよ」
「今、セーラを呼び戻している。だから、待って欲しい」
呼び戻す?王令でか?
「では、待つまで、牢屋にいます」
こうして僕は牢屋に入った。
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あれからどれくらいの時が経っただろうか?僕の身体には埃が積もっている。もう、忘れ去られた存在なんだろう。このまま朽ちていきたい。愚民である僕は、彼女運が無いのであろう。仲間運も無い。愚民は愚民らしく…どうすれば良いのか…って、いうか、愚民って何だ?
コツンコツン
誰かがやって来たようだ。死刑かな。それも悪く無い。もう、無駄に生きたくない。何者かの気配を感じた。懐かしいような気配である。
「ギル様…遅くなりました。リザでございます」
「サトゥーの片腕が、今更どうした?」
サトゥーのとこで、槍使いとして名を売っているらしいリザ。出世したな。この国を代表するヤリ使いのようだ。
「私を今一度、ギル様の物にしてください」
リザの言い回しに、何かひっかかった。何だろう?リザなら、言わないはずの言葉なのだが。
「サトゥーが許さないだろ?」
即答できないリザ。リザの一存で来たのであろう。
「ギル様が許して下さるまで、私もここにいます」
はぁ?僕の目の前で正座をしたリザ。何をしているんだ?
「僕は爵位持ちでは無い」
「かまいません。私はギル様のお供になることだけを考えて、精進してまいりました」
ステイタスを確認すると、奴隷からは解放されたようで、所属はサトゥーになっている。
「わかった。ここを出よう。あの時の肉がまだ有るんだよ。食べるか?」
「いえ」
言葉は否定しているが、尻尾が嬉しそうに踊っている。お前も正直だからな。牢から出て、リザを立ち上がらせて、彼女を優しく抱き締めた。
『パーティー編成を変更しました。槍使いリザが加入しました』
ステイタスを見ると所属はギルに変更された。
「じゃ、二人で旅をするか」
「はい♪」
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リザの手引きで城を抜け出し、王都を脱出した。しかし、アイツが目の前に現れた。
「リザ、ソイツと旅するのか?」
「もとより。私はギル様のお供です。勝手に奴隷されて、しかたなく仕えていました。でも、私の主様はギル様だけです」
アイツの周囲にゾクゾクとアイツの眷属が集まってきた。セーラがいる。ゼナがいる。ポチもいる、タマもいる。なぜか、ミーア、アーゼ、ナナもだ…それでも、リザは返せない。この命が果ててもだ。
「サトゥー、ケリをつけよう」
「お前に勝ち目は無いぞ」
そうかもしれない。でも、やるだけやる。
「リザ、これを使え!」
リザにロンギヌスを手渡し、僕は聖剣と魔剣を手にして、鎧を装備した。
「ごめんなさい」
えっ!背中に激痛が走る。リザが寝返ったようだ。そうか…それが望みなら、それでいい。目の前が霞んでいく。ここで暗転か?
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場面が暗転した。僕に行く場所はもう無い。妹が待つ世界へ帰りたい…
「ギル…しっかり…」
誰の声だ…思い出せない…
「どう?」
「ダメです。私達ではこれが限界です」
「そうなの…」
思い出した。この声は…
「リリー…」
「あぁ、ギル。意識が戻ったのね。良かった…誰にやられたの?」
「サトゥー…」
「まさか…そんなはずは無い…」
どうして?どうして言い切れるんだ?
「ギルは王都から逃げてきたのよね」
僕の身分証明証を確認しているリリー。入国の記録が残るんだっけ?オーバーステイの確認の為に。
「サトゥーはまだ、迷宮都市にいるのよ」
うん?意味がわからない…
「王都には、まだ入国していないのよ」
どういうことだ?ログを確認してみた。王都でのログデータは牢屋に入ったところまでしか、記録されていない。リザがパーティーへ再編入した記録は残っていない。どうして?
「牢屋にいるときに、術師にやられた可能性があるかもね。王城には敵対勢力がいるってことよ」
システムを乗っ取られたのか?くそっ!そうだ、ロンギヌスはどうなった?ストレージを確認すると、収納されている。盗まれてはいないようだ。
「ギルが、やられるとは…まぁ、心が荒みすぎだから…そこを突かれたのでしょうね」
そうかもしれない。
「巫女長様、お着きになられました」
誰かの声がした。ドタドタと誰かが走ってくる音がする。
「ギル様♪」
リザが僕に泣き縋ってきた。
「ギル様?」
「ギル様なのです」
ポチとタマが、リザと同じように泣き縋っている。
「ギル」
「マイマスター♪」
「ギルさん、大丈夫ですか?」
ミアとナナ…そして、セーラが入って来た。セーラが心配そうな顔で、僕の手を握ってくれた。
「リリアンがペンドラゴン卿と話し合いをしてね。ここいるメンバーは返すことで決着したのよ」
リリーが説明をしてくれた。ステイタスをチェックすると、所属が僕になっている。リザ達のステイタスには奴隷という項目も消えていた。
「まぁ、なかなかペンドラゴン卿が、かたくなだったそうだけど、エルフの店長さんからの知らせを聞いて、取引材料にしたそうよ」
店長は何を知らせたんだ?
「サトゥーさんが、ギルさんの彼女を奪って婚約したって、書かれていました」
って、セーラ。あぁ、アーゼのことかな?彼女では無いのだけど…
「それでね、神聖なるハイエルフを愚弄するのかって…で、私達とそのハイエルフのどっちを取るんだって、訊いたそうなんだけど、即答でハイエルフって答えたそうですよ」
サトゥー…お前、仲間よりハイエルフか…おいおい…
「で、私達は、こうして、ギルさんの元に戻れました♪」
サトゥーと一騎討ちの夢は…儚く消えたらしい。
「相手は何者ですか?」
リザがリリーに訊いた。
「ギルの判断力を狂わせる敵だよ。注意しなさい」
頷くリザ。
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次の日からリハビリを始めた僕。セーラが回復術に取り組み、僕をサポートしてくれるようだ。
「セーラのことを頼むよ、ギル」
リリーに頼まれた。頷く僕。そんな僕に、立場って物が用意された。リリアンが、僕が勝手に死なないように、責任を持たせる為らしい。約束は護る子って判断されたらしい。で、立場は、リリアン公爵付きのイエローゲート子爵らしい。子飼い爵位で、黄門様ってことか?
リザ達は見違えるように強くなっていた。サトゥーがパワーレベリングを行ったらしい。僕的には、リザ達には戦士以外の道を、模索してあげたかったんだけど。
「よう、調子はどうだ?」
そのサトゥーがやって来た。ここで、殺すか?
「ダメ?」
「ダメなのです」
タマとポチが僕の殺意を読み取り、僕を止めに入った。
「おいおい、まだ俺を恨んでいるのか?」
「当たり前だろ?」
「アーゼのことは悪かった。知らなかったんだよ」
「そのことでは無い。リザ達のことだ!」
「随分前のことだな。うじうじしすぎているぞ」
お前に言われたく無い。サトゥーのレベルは50と表示されている。ダミーだな。きっとこいつもカンストしているはずだ。
『メビウスモードで探索しました。サトゥーのレベルは315です』
メビウスモード?メビウスの輪か。裏が表になる、あれかな。思ったよりレベルが低い、おかしい。
「サトゥー、お前のレベルは315なのか?」
無表情のサトゥー。読心術を起動すると、動揺しまくっているようだ。正解なのか?
「どうして…お前こそ、レベル1は、おかしいだろ?」
「なんで?僕は戦士では無いからね」
無表情なサトゥー。もしかして、あの無表情ってスキルなのか?
「その無表情はスキルか?」
心の中では動揺しまくっている。正解だな。スキルで誤魔化すって、意外に精神が脆いんじゃないのか?
「サトゥーさんって、レベル300を超えていたんですか…」
絶句しているセーラ。僕のレベルは言え無いなぁ。きっと卒倒されてしまうだろう。
「ギル様のレベルは、いかほどなのですか?」
リザに訊かれた。
「僕は1だよ」
「ダウト♪」
知らない紫髪の少女が割り込んできた。ステイタスで確認すると、名前はアリサ。サトゥーの奴隷だ。まだ、少女の奴隷を持っているのか。この女好きは…
「サトゥーに挑む者がレベル1はおかしいわ。本当のレベルはいくつかしらねぇ♪」
「1だよ。僕はサトゥー以外と戦う理由が無いからね」
「リザに訊いたわよ。物凄く美味しい肉を持っているそうじゃない。それを倒した時の経験値はどうしたのかな?」
いいところを突いて来るな。
「お店で買った」
「お金はどうしたのよ?」
「拾った♪」
お金に関しては嘘は言っていない。
「サトゥー…こいつのスキルは何?」
「持っていないようだ。これもおかしい」
サトゥーとアリサが疑っている。ポチとタマが離れない。隙あらば、斬ると思っているようだ。半分は正解だよ♪
「チートだな。サトゥー、詐称スキルもあるのか?」
メビウスモードの探索は、嘘をあぶり出し、真実を隠すのが解せないけど。心の中で動揺しまくっているサトゥー。
「お前…何のスキルを使っているんだ?」
「スキルは無い」
あれ?スキルってレベルがあるのか…サトゥーのスキルにはレベルがあった。僕のは?どうやってもレベルが上がらない。何が違うんだろうか?
「サトゥーさん…騙していたんですよね…」
セーラがサトゥーを睨んでいる。リザはいつでも、僕の助太刀が出来る位置に陣取っている。ナナは、万が一の時に、僕を護れる位置にいるようだ。
「俺は…騙していないです」
「ひどい…だって、私を助けてくれたのは、ギルさんだったそうじゃないですか」
セーラが近づいて来て、僕に泣きすがった。彼女の頭を優しく撫でてあげる。心が落ち着いてくるといいなって思いながら。僕みたいにやさぐれちゃダメだよ。って、いうか、サトゥーは、セーラさんを助けたことにしていたのか。僕の怒りが増大していく。
「ギル…お前…アリサ、空間魔法で、剥がせるか?」
空間魔法?何をするんだ?
「まっかせなさぁ~い♪」
アリサの魔法の効果なのか、僕に縋っていたセーラ、ポチ、タマが消えた。また、奪ったのか?召喚術を起動した。
『ミカエル、ルシファーを召喚します』
僕の両隣に現れた僕の仲間達。
「ふん…人間風情が、ギルを虐めるとはなぁ」
「ミカエル、油断するなよ。コイツら、ただの人間ではない。特にあの娘は危険だな」
アリサの方が危険なのか。サトゥーよりも…まさか、黒幕は…
「なんだ?そうか、お前の能力は召喚か!」
ミカエルとルシファーの攻撃を、容易く避けたり、受け流すサトゥー。アイツこそ何者だ?
「アリサ…仲間達を返せ!」
アリサに詰め寄る僕。
「人質よ!あの化け物を引かせなさい」
「仲間を化け物呼ばわりするなよ!」
僕は装備を身に纏っていく。
「マズい…ギル様、お止めてください!」
リザの叫ぶような声を発しならが、僕に抱きつく。
「ダメ…止めて下さい。落ち着いて下さい。ですから…優しい主様に戻って下さい」
リザの言葉で思いとどまり、装備を解除して、召喚術を解いた。ミカエルとルシファーが「また、呼んでねぇ♪」といいながら、それぞれの剣へ戻っていく。
「アリサ、セーラ達を返しなさい」
リザがアリサに向き直り、語気を強めた。
「やだよ~♪」
アリサが転移術で消えた。サトゥーもだ。くそっ!また、護れなかった。
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リリーの部屋に行き、リリーに頭を下げた。
「すみません。セーラを護り切れず、サトゥーに攫われました」
「また、連れ去ったの?懲りない男ねぇ。ギル、頭を上げなさい。涙を拭きなさい」
涙?大粒の涙が零れていた。
「ペンドラゴン卿は、相当の女好きのようですね」
やはり、そうなのか。アノ野郎…
「ギル…あなたは動かないで。政治力で取り戻すからね」
政治力?何をするんだ?
数日後、サトゥーとサトゥーを配下にしている男爵の詫び状と共に、セーラ、ポチ、タマが返された。三人とも僕を見るなり、泣き縋って来た。
「ごめんなさい。心配をおかけしてしまって…」
「めんご?」
「ごめんなさいなのです」
乱暴されていないかをチェックする。怪我は無いようだ。ステイタスも弄られていないようだ。
「何をされたの?」
セーラに訊いた。
「ギルさんの本当のレベルとかスキルを…あと、プライベートな言いたく無いことまで…」
自白剤か自白スキルを使われたようで、色々なことを自白してしまったそうだ。後悔しまくりで凹んでいるセーラ。何かを決心して、僕に言葉を吐き出し始めた。
「自白してしまったことで、ギルさんにも言っておきたいことがあります。私…シガ王国の王様の孫なんです」
え…それは予想外な発言ですね。普通に生きたいセーラは、隠しておきたいことだったようだ。それを無理やり訊き出したのか…あの野郎…
「ダメ」
「ダメなのです」
タマとポチが慌てて僕に抱きついてきた。また、殺意が湧き上がっていたようだ。