---サトゥー---
迷宮都市のギルド長に呼び出された。
「お前は、何をしたいんだ?」
何を?
「知り合いとの約束を果たしたいだけです」
「知り合いとは誰だ?」
「ギルという者です」
「ギルだと…アイツとどのような約束をしたのだ?」
リザ達のことを話した。
「なるほど…で、お前は、どこまでが演技なんだ?」
無表情スキルがバレたのか?まさか…
「ギル坊想いの言葉を並べた一方で、ギル坊を追い詰めることをしているのは、どういう訳なんだ?」
アイツのことをギル坊と呼んでいるギルド長。
「アイツは何者なんですか?」
「ほぉ~良い度胸だね。私の問い掛けをスルーして、質問返しかい♪」
スルーをしたつもりは無い。
「俺は、アイツを追い詰めていない」
「ふ~ん…どの口が言っているんだ?」
何を言いたいのだ?
「まず、セーラの件だが…お前が救ったと公爵の前で言ったそうだな」
否定しなかったから、そうなるか。
「お前はセーラの何を救ったんだ?」
何を?何を言っているんだ?
「眠りから覚ましました」
「命は救っていないだろ?」
「いや、あのまま寝ていたら、命も危ないでしょ?」
何が言いたいんだ?俺は、何を踏んだんだ?
「なるほど、そういう意味なのか…では、言い方を変える。お前はセーラの惨たらしい死体を見たのか?」
「見ていませんよ。何を言っているんですか?セーラは生きています。死体になんか…」
まさか…誰かが蘇生させたのか…
「気づいたようだな。そうだよ。セーラは一度死んでいるのだ。悪魔に憑依されてな。セーラの惨たらし死体を前にして、大罪を犯した者がいる。その者がセーラを助けた者だと思うのだが、サトゥーよ!お前はどう思う?」
セーラの死体を前にして大罪…復讐をしたのか。悪魔崇拝者達に…
「次に、アーゼの件だが…」
アーゼの件?あれは事故に近いけど、俺にとってはアーゼが本命である。
「アーゼは結婚の儀を済ましていた。なのに…お前は、里を征服して、アーゼと無理ヤリ婚約をしたそうだな。これは王都でも問題になっているそうだ」
問題?何で?
「どうして?俺とアーゼの問題でしょ?」
「そう言い切れるお前が、信用出来ないんだ。お前、アーゼの存在意義を知っているのか?」
存在意義?はて?何を言っているんだ?
「いいか!この世界に於けるハイエルフは、伴侶のいない神の為にだけ存在しているんだよ。お前は神か?竜神を殺しても、神には成れないぞ」
「神の為だけ?どういうことですか?」
「お前…知らないで、ジャマをしたのか…ムーノ男爵はどんな教育をしていたんだ?あぁ、あいつは勇者かぶれだから、神のことはどうでも良いのかもな」
ジャマ?
「可哀想な子羊に選択肢をやる。ハイエルフとセーラ、一人を選べ」
「何故ですか?ギルド長に権限は無いでしょ?」
「こう見えても、私は大臣で名誉伯爵なんだよ。権限はあるんだよ、坊や♪」
伯爵で大臣だって…ムーノ男爵に害が及ぶとマズいなぁ。
「アーゼを…取ります…」
「だそうだ、セーラよ」
えっ!ギルド長の後からセーラが現れて、俺を睨んできた。
「酷い…新しい女が出来たら、私は用済みですか…」
「そうじゃ無い…2択だって言うから…」
「ゼナさんも用済みですね…一番、残念なのは、私の命の恩人って、騙したことですよ、サトゥーさん!」
話を聞かれていた。
「巫女長に言われてました。私は悪魔に憑依され、身体中を食い物にされて、悪魔の糧にされたそうです。そんな私の惨たらしい死体を前にしても、毅然として私を蘇生することに集中してくれた方がいたそうです。その方は、私を蘇生する為に、悪魔を崇拝する者達を大量に殺したそうです」
アイツの顔が浮かぶ…アイツなんだろうな…
「私を助けてくれた方を、どうして追い込んだんですか?そんなことをしてまで、私が欲しいのですか?」
欲しい…それは偽りは無い。だけど、追い込んだつもりは無い。
「セーラよ、わかっただろう?罪深き者は罰を与えられるが、本当に罪深い者はのうのうとしているものだ」
「よくわかりました。かわいそうに…満足ですか?ギルさんから、総てを奪い去って…」
セーラの目には涙が溜まっている。俺には涙を溢す処を見られたく無いようだ。
「後、先程の話の続きだが…ハイエルフは伴侶無き神の為の存在だ。ただの人間であるお前とは交われない」
何?その後出しじゃんけんは…交われないって…え?
「真実を知って、セーラを選ぶか?ギル坊の気持ちが良くわかる。本当にお前はクソだな、サトゥーよ!」
この老女は、心が読めるのか…的確に、俺の悩んで居ることを言い当てている。
「老女?まだまだ若いもんには負けないよ♪」
心が読まれている…完敗である。