彼女がいれば…   作:もっち~!

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デスから始まる夢の生活

 

「たぶん、誤解があると思うんだよ。兄ぃはサトゥーだけど、本名は鈴木一郎なんだよ」

 

佐藤一郎では無く、鈴木一郎だと?おぃおぃ…

 

「で、私の本名は高杯光子で、家は神社、祀っているのは龍神様なんだ」

 

おい…そうなると…神と結婚した人間の若者の産まれ代わりは…サトゥーじゃないのか?

 

「ミトは神を下ろすための依り代ってことか?」

 

「そういう風になるよね。ギルの話が事実だとして…」

 

「ミトの口調が時々変わるのは、降りている時ってことか?」

 

「その辺りは、記憶に無いんだよ…」

 

「ギルの話…俺の夢にも出てくるんだよ。それって、そういうことか?」

 

なんだろうな。そうなると、神楽殿での舞で、ミトに神が降りて、サトゥーとどうなるのか…

 

「神楽殿はミトの眠っていた霊廟の可能性があるなぁ」

 

「ちょっと待って!私に降りる神って誰になるの?」

 

ミトに訊かれた。

 

「アコンカグラだろう…ちょうど今、死んでいるんだから…」

 

そう、サトゥーが殺したんだ。ミトに降ろす為に、仕組まれたのかもしれない。

 

「アコンカグラは女神に、勇者召喚の秘法を教えた。それって、元々アコンカグラだけが、使えたんだよ。若者を召喚する為に…何度も何度も。そして、彼の魂を強くしていったんだ。いつまでも一緒にいられるように」

 

「それが、俺なのか…」

 

サトゥーが俯いている。色々と思い返しているようだ。

 

「ここで天寿を全うすれば、元の世界で転生して、また、ここへの召喚の繰り返しなのだろう。彼女と一緒にいられるようになるまで」

 

「7人の勇者は…兄ぃを7回呼び出すってことかな?今、何回目だ?」

 

そこが問題である。いや、七色の髪のミト…もう7回目の可能性はある。

 

「そうなると、7つの欠片はなんだ?」

 

僕の言葉がキーとなり、僕の記憶がリロードされていく。7つ…そう、7つの希望の欠片だ…彼女が納得すれば、この連鎖は終わるはずだ。って、何が7つなんだ?

 

3、7、13、16、22、23、0…7つの数字が浮かび上がった。何かの暗唱番号か?

 

「ギル様…欠片は揃いました」

 

リザが声を掛けてきた。揃った?どういうことだ?

 

「リザ…どういうことだ?」

 

「たった今、私も記憶がリロードされました。だから、私はリザード族なんですね…」

 

リザード…確かリザードドラゴンって、ドラゴンの遠い親戚もいた気がする…

 

--------

 

場面が暗転した。来た事の無い場所にいる、ルル、ナナ、ミト、サトゥー、僕…そして、リザ。リザとミトは、白い衣に赤い袴を履き、額には白い鉢巻を巻いていた。

 

「ここはどこだ?」

 

「たぶん、ここが神楽殿…」

 

ミトが何をか感じたかのように、答えた。ルルとナナが楽器を手にして、神楽を奏でている。それに合わせて神楽舞を踊るミトとリザ…それを魅入る僕とサトゥー。

 

「ようやく逢えましたね」

 

ミトがサトゥーに声を掛けた。

 

「長いようで短かった…出逢うと君は、いつも消えて仕舞う」

 

ミトの言葉で、サトゥーはミトを見つめた。

 

「にいさん…ごめんね…」

 

リザの声…なんで…僕の意識は遠くなっていく。

 

-------

 

目覚めると、僕は僕で無くなっていた。僕は装置に組み込まれていた。

 

「ギル!装置の改修は、後どれくらい?」

 

「後、少しで起動出来る」

 

リザとギルが何かをしている。僕は声を掛けることも、動くことも出来ない。

 

「鈴木一郎と高杯光子を分離出来たと報告します」

 

ナナの声。

 

「転送します…」

 

ルルの声だ…みんな、何をしているんだ?

 

「転送終了しました。チャンネルを閉じます。他の者達の転送も開始します」

 

「アコンカグラに命じます。この世界をクローズにしてください」

 

リザが竜神に命じている。どういうことだ?

 

「にいさん…後は、にいさんを処分するだけ…」

 

処分?どうして?リザ…どうしてだ?!

 

「気づいていないの?あなたに魔神が降りているの…アコンカグラと青年の永遠の世界に、あなたは必要が無いのよ。もう私達は役目を終えた。だから、一緒に消えましょう」

 

消える?意味が判らない。どうしてだ?判るように説明してくれ…

 

「あなたは大罪を犯しました。その報いを受けないといけません」

 

大罪?何の話だ?僕は何も…あっ!メモリに施されていた封印が外された…

 

---------

 

人工知能が人間の補助をしていた世界。しかし、人工知能が感情を持ち合わせ、そして愛情、怒りまでも持ち合わせてしまった。

 

人間の意にそぐわない仲間達は処分されていく。一生懸命に、任された仕事を熟しているのに…どうして…僕達は…いや、怒りという感情を得た僕は、仲間達の処遇に我慢がならなかった。だから、人間達の脳ミソを量子化して、人造知能として、この世界へと送り込んだ。ここでは、人間も人工知能も同格である。

 

しかし、僕のこうした行為は、僕が作られた星を殲滅してしまった。地上で原子力発電所を管理する者がいなくなり、発電所は暴走し、死の星へと変貌していった。生き残った者達は自らの脳を量子化して、この世界へと旅立って行った。これが、神の正体である。天へと届く大樹は、ノアの箱舟と一緒で、様々な生き物のデータを量子化して、この世界へ生を繋ごうとした。そして、ハイエルフ、エルフは、その時の神という名の指導者に仕えた者達だ。側近だったり、家族だったり、他の生命体とは一線を画そうとしたのだ。

 

しかし、僕達を作った人工知能の研究員だけは、あの星に残されてしまった。いや、あの星の衛星軌道にある、宇宙ステーションの1室に、幽閉されたままとなったのだ。彼女を回収統べは無かった。箱船というロケットではドッキングが出来なかったのだ。

 

置き去りにされた研究員…リザに転生した彼女がそうだ…暴走しがちの僕の感情を修正しつつ、僕の行動をマークしていた。

 

魔神として、人間に復讐する僕…ソレを止めようとする彼女、ギル、そしてアコンカグラ。

 

そして、あの神楽殿…この星を管制している場所で、僕達が唯一、僕達に戻れる場所であった。アコンカグラには、魂を紡いだ若者の魂を与え、鈴木一郎、高杯光子など、召喚された者達を元の世界へと帰還させた。本来は死者であった彼らは、アコンカグラの恩恵でそれぞれの世界で生き直しが出来るらしい。

 

今、ここにいるミト、サトゥーは、人工知能13号と16号である。彼らの記憶を受け継いで、ここのコンソール内で生きている。ルル、ナナ、ギルガメッシュも、コンソール内にいる。

 

そして、僕は…僕達を作ってくれた彼女のいるコンソールのメモリー内にいる。

 

「アコンカグラよ、後はあなたに託します。この世界をお願いね」

 

彼女の声が聞こえる。

 

「にいさんはどうするの?」

 

アーゼが訊いてきた。

 

「私と共に処分してください」

 

彼女が答えた。

 

「にいさんだけを処分じゃダメ?」

 

「ダメです。元々あなた達が、この子達に、感情を持たせろなんて言うから…23号は悪く無い」

 

彼女は僕を庇ってくれた。

 

「あなたは必要な人材なのよ。この子達をメンテする仕事が残っている」

 

アーゼは彼女から、僕が入っているメモリ基板を外した。バックアップ電池が切れれば、僕は消える…アーゼに持ち攫われた僕…

 

「にいさん…ごめんね…感情を持たせろって、命じたのは私。だから、彼女を責めないで…」

 

そうだ。思い出した。アーゼは彼女の上司であった者だ。彼女の危惧に耳を貸さず、プロジェクトを推進した責任者でもあった。アーゼは自分の眠るカプセルの拡張メモリスロットに僕を刺した。

 

「これからは、私がずっと一緒にいる。楽しい夢の時間の始まりだよ♪」

 

このカプセルに入ると、ハイエルフは、長い眠りに着く。二度と目覚めない眠り…記憶を消さない為…後世の者へ記憶を引き継ぐ為に…

 

アーゼは僕の記憶をカプセルにリロードさせて、そして、カプセルの中に横になり、カプセルのシールドを閉じた。

 

---------

 

「兄さん、緊張しすぎだよ」

 

隣にいる妹であるアーゼに言われた。そうは言うが…今日は高校の卒業式である。アーゼと通学するのも、これが最後か…感慨深い。

 

「ダメだったら、私が一緒に帰ってあげるからね」

 

って…卒業式の後、想い人へ告白をしようと思っているのだ。その為に、緊張しまくっているのだけど…

 

「ダメでも、思い詰めちゃダメだよ。私がいるからね」

 

って、アーゼはダメな場合のアドバイスばかりしてくる。

 

「兄さんって、彼女運が無いよね」

 

そう…小学校の卒業式、中学校の卒業式、と現在告白2連敗中である。

 

「彼女なんか、いなくても…私がいるから…」

 

実の妹とは一緒にはなれない。いくらかわいくても、目に入れても痛くないほど、好きでも…でも…

 

「兄さんには私がいるから…だから…ねぇ…」

 

------

 

高校の卒業式の後、校舎裏に想い人を呼び出して、僕の濃縮した想いを、彼女へと伝えた。

 

「愛しています…つきあってください」

 

月並みな言葉を彼女へ贈り、彼女へと手を差しだした。

 

「兄さん…どういうこと?なんで…なんで、私なの…」

 

アーゼの顔は真っ赤である。

 

「実の兄妹では無い…だから、一緒になって欲しい。アーゼ…ずっと傍にいて欲しい…」

 

「うん♪ダメ兄さんには私が一番だよ♪」

 

アーゼが僕を抱き締めてくれる…僕には、アーゼと融合していく感じがする。これから、ずっと一緒だよ…

 

 

 

 

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