ハリボテの指揮官   作:杜甫kuresu

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やる気ある内にちょちょっと更新。
艦○れ伝説の二次系オマージュがテーマなのにあんまり無気力な感じに出来なかった。


二話

 さてさて、俺はユニオン派だ。ヨークタウン級とクリーブランド兄貴姉貴が好きだよ、エンタープライズかっこいいよね。でもアイツ主人公過ぎて会うのはちょっと怖い、怒られそうだよな。

 会えるのかね、しかも俺って美少女受けするキャラじゃないと思うんだけどホント大丈夫?

 

「っていうか、いきなり連行?」

「すみません、正直な所逃げるなら武力行使も問わないとすら命令されていまして」

 

 おっかねえ機関だ。多分「国のためだぞ」とかお馬鹿な上の人は思うんだろうなあ――――反吐が出る。

 

 俺は高級車っぽい車の中で、櫻井と隣合わせで座っていた。今もあの「仕事より趣味」シャツ着てるぞ、ちゃんと書いてある通りに実行しないとな!――――冗談だよ。

 ってか周りにさっきの黒いおっさん居る。カイジかよ、俺は連帯保証人になってないし高級車に傷を付けて回る趣味もねえぞ?

 

「ああ、彼らは貴方に危害を加えることはありませんのでご安心を」

 

 ご安心できません。何だよこの圧迫、精神的にもリアルでも圧迫されてんだけど。

 

 まあ俺が見たらニコニコしてくれる辺り悪い奴らとは思わない。ってか子供扱いかよ?

 

「それでは、乗って頂いてからで申し訳ありませんが、聞きたいことはありますか?」

「結構ある」

 

 山程あるね、積み上げたら月に行けるかな。

 車の走行音に何となくピリピリとしてくるのを抑える。何か状況が不安煽ってくるんだよ、誘拐見てえだよ。

 

「まず適正ってなんなの」

「おっと、大事なことを忘れていました」

 

 抜けてるアピールか? 悪いが此処はコバ○ト文庫じゃないから興味ないと思う。っていうか俺にスキ見せてもBLだよ勘弁してくれ。

 

 きりっと顔を引き締め直した櫻井が説明に入る。

 

「簡単に言うと、艦が言うことを聞くか否かというものです」

「適正無いと聞かないの?」

「はい、恋愛関係でも不可能です」

 

 すげえ。徹底されてる世界の秩序だね、こういうの嫌いだわ~。

 

「適正があれば、憎悪を抱いていようが命令に逆らえません」

「成る程、ポケモンのジムバッジだな!?」

「それは分かりませんが……」

 

 そうじゃん。俺はバッジが揃ってて、普通の人は揃ってないんだろ? 簡単な話だ。

 

――でも、言うことに絶対服従ってことか。

 

「じゃあ俺が死ねって言ったら?」

「恐らく死にます」

 

 何だそりゃ、馬鹿げたルールだな。

――ふと、脳裏に浮かんだ言葉が口から漏れる。

 

「チェスの、プレイヤーと駒……」

「そうですね、その関係なら分かります。貴方はプレイヤーとなる権利があるのです」

 

 チェスだったら、敢えて取られる位置に駒を置ける。

――そうだったな。この世界の艦は『駒』だった。丁度いい比喩ってか、気分があんまりよくないが。

 

 量産できる兵器。心ある量産品。伽藍堂。覚醒するまでは、スペアパーツが有る。

 胸がグッと重くなる。他人事だが、他人事じゃない。俺はそういう娘達と関わっていくってことだから。

 

――何か、適当にやっていこうって感じにもならないよな。

 出来れば自立するぐらいの給料で負けるまでやり過ごしたい所なんだが、何かそういうわけにも行かなそう。

 昔っから生きるのに必要ない正義感みたいなのはあるからなあ。俺の性分とは言えバカバカしくもある、こんな時まで何を考えてるんだってトコだ。

 

「ですので、もし愛国心が邪魔して動かない場合は貴方に無理矢理…………」

「しねえよ」

 

 ちょっと自分で驚くほどの即答だったが、理由はすぐ分かった。

 

「それは、俺を辞めさせた会社と同じことだ」

 

――金が欲しけりゃ言うことを聞け。

 言われた。俺は無視をして反抗して、そんな奴だから捨てられた。

 

 捨ててもらえるだけマシだった。艦は、そこで金を頼るツテがないのと同じ。それに心を軋ませて、歯車にすらなりきれなくなるかもしれない。

 

「ポリシーに反する」

 

 それ以上説明できない。

 でも世界なんて理不尽だ。なのに、上司さえ理不尽だったらアイツラに申し訳が立たない。

 

――それは、フェアじゃないことだ。

 櫻井も俺も、重桜の気に食わない所は多分そこのはずだ。同じことをしちゃダメだろ。

 

「…………もし貴方以外に代わりがいる、と言うなら?」

 

 櫻井の冷静な目つきに俺は多分、ちょっと怒った。

 狭苦しい中で腕を組んで、足を組む。

 

「アンタは重桜と同じだ。何かを変えても配役が変わって、悪役がアンタになって同じことが起きるよ」

「自惚れちゃいけないぜ櫻井さんよ。『アンタだから』重桜を倒そうと思うんじゃない、『アンタの立場だから』重桜を倒そうと思うんだ」

 

 そこは弁えるべきところだ。

 俺達個人なんて大したもんじゃない。少なくとも大きな事が起きる場合は、配役によって事が起きている。

 配役は変わりようが有るし、どうなるかは分からない。

 

「変えたいんだろ? じゃあアンタが上に立つ時、台本を書き換えたいんじゃないのか?」

「同じ台本で始めたら、悪役が別にキャスティングされるだけだ。問題が全然解決しない」

 

 まあ、本当は俺なんかが偉そうに言うべきじゃないのかもしれないが。

 でもそうじゃないか? 支配する人間が変わっても、やることが一緒なら同じことが起きるもんだ。

 

 そんなもん、世界史で吐くほど習ってる。そしてドラ○ンボールでも死ぬほど見た。アイツラ何でいっつも戦闘力の桁が違うんだよ。

 為政者がただ変わるだけで国は変わらない。変えるなら、為政者の本質が変わる必要がある。

 

「…………失言でしたね。心に留めておきます」

「いや、偉そうな口聞いて悪かった」

 

 真に受けるな櫻井さん。大丈夫だ、そう思えるならアンタ良いお偉いさんになると思うから、うん。ほんとほんと。

 いろいろ考えてみたが、ぶっちゃけ無職の人の言葉を真に受けてたらストレスで倒れるぞ。

 

 

 

 

 

 という訳で、その後変な施設で俺は色々した。

 

 心理テストみたいなのをした。質問は「貴方は赤の扉と青の扉があったらどっちに行きますか」とか「古き良さと新しき挑戦、どちらが好きですか」とか。ぶっちゃけアズールレーンとレッドアクシスのどっちが好きかみたいな質問だったような気もする。大体はアズールレーン寄りの答えだったね俺。

 

 新体力テストみたいなのもした。最近運動してないからクソザコナメクジも良い所。だって俺求職で忙しいからさ、レジャーとかも出来ないし。

 

 学力テストも勿論ダメ。海戦術はからっきしだったが、まあ漢字は結構読めた。

 二次創作読んでたし、普通の本も読んでたからだと思う。好きなのはKAエ○マ文庫だ、硬派だろ。意外だねって美少女に言ってもらいてえ。

 

 まあそれから服をもらったり、何やかんや有って髪とか髭とかを整えたら後は夜中で、そのまま鎮守府にブチこまれることになった。

 やることもないから寝た。

 

 

 

 

 

 そして、ナウ。さっき(1話)に戻る。

 

 着替えて何か俺ってイケメンじゃね? とか鏡を見て思いながら、ふうと一息ついて執務机に座った所で眠りこけていたらしい。

 だって忙しかったんだもん。夜中まで色々されたんだぜ? 25歳ってもう体の健康のピークは過ぎてるっていうじゃないか。

 

 机は暇だ。書類もないし。櫻井さん曰く

 

『秘書艦は明日の朝には執務室を訪れるでしょうから、まずは二人で会ってみてください』

 

 とのことだった。それは朝チュンしていいってことか――――最近、発想が中年っぽいやらしさにまみれていかんな。

 

 ってか誰が来るかな…………。俺的には何というか、まあ気の合う奴なら誰でも良い。翔鶴とか一緒にイタズラしてくれそうだよな、いやどうなんだろ?

 ああ、でも誘惑された時に負けちゃう悪い大人なんだよな俺。そこだけ頑張る必要が有るよね。

 

――考えている内に、突然扉が開く。思わず背筋が伸びる、気分は面接官だが先日まで立場は逆だったんだよなあ、泣けてくる。

 最初に映ったのは白い羽織――――勝った。

 

 俺はもう何だか勝ったつもりで名乗りを上げるのを待っていた。

 結論を言うと、負けた。

 

「重桜航空戦隊所属、かつての大戦最後の精鋭空母…………瑞鶴よ!」

 

 俺は顔が固まってしまった。

 

――裏主人公枠じゃねえか!?

 

 

 

 

 

「えーと、マニュアルマニュアル…………」

 

 俺は櫻井さんから貰いたてホヤホヤ――ではない「しきかんのはじめかたっ!」という本を取り出して読んでいた。タイトルラノベかよ、あの人実はヤバイ趣味してたりする?

 っていうかこれは不味いな。瑞鶴イベは実質メインストーリーだ、巻き込まれたくねえ。

 

――そんな情けない俺の様子は、瑞鶴の瞳にどう写ったのだろうか。溜息が聞こえてくる。

 

「あのさあ、挨拶にマニュアルって要らないと思うんだけど」

 

 額に手を当てて呆れている。そうだな、確かにそうだ。

 正直ページをめくるという作業で精神を落ち着かせてた所も有る、予想外すぎるんだよ。

 

 面接並の緊張のまま、がたんと勢いよく立ち上がる。あ、ダメだこれキョドりそう。

 

「だ、大本営に無理矢理指揮官にさせられた佐藤弘です! よろしくお願いしまーすっ!」

 

 サ○ーウォーズかよみたいな文句と共に直角の礼、着席。これ謝罪の時の角度だわもう色々終わってる。

 

 急いで顔を上げて何か喋ってみようと思うが、手がもたもたと動くだけでてんでダメ。俺ってコミュ障とかそういう次元超えてるな、これは何とかしたい。

 

「よ、よろしくおねがいします……?」

 

 瑞鶴まで俺につられて変な顔で敬語の挨拶。これは死にてえ。

 

――まあ、でも何か安心する感じだな。瑞鶴って性格に癖がないしな、グレイゴーストさえ居なければ。グレイゴーストさえ居なければな。

 フラグじゃねえ、逆フラグみたいなもんだ忘れろ。

 

「ふう――――いや、ごめんな」

 

 カチリ。スイッチみたいなものがようやくオンになった。

 こうなれば大丈夫だ、喋れる。こうなるのに時間が掛かるから面接落ちるんだよね、俺。

 

「ぶっちゃけトーシロも良い所でさ、艦って美人さんばっかだって言うし俺も困ってるんだ」

 

 ゲームをやってる時はあまり深く考えなかったが、目の前で動く超高性能MMDである彼女はたしかに美しい。

 

 琥珀色の大きくて丸い瞳に、目鼻立ちは櫻井さんなんか比べ物にならないくらいの(あの人もすげえけど)くっきり度合い。睫毛なが。

 朱い縁起物みたいなんで括られた栗毛色の髪は作り物みたいなツヤが見える。

 何より羽織の中に着込んだキャミソールから見える谷間。いや大きさもだけど形すげえな、ボールかなんかか?

 ミニスカートのせいで否応なく目に入る太もも、こちらも大変健康的でよろしい。ガリガリだと普通に心配だしな。

 

「すげえ、人形みたいだな」

 

 感心したように口を開けていると、瑞鶴が照れくさそうに髪をいじって

 

「その…………褒めてくれるのは良いんだけど、そう凝視されると恥ずかしいと言うか」

 

 と言い始める。

 

――破壊力がヤバイ。眼の前で種田梨沙ボイスで喋られることの破壊力はヤバイ。死んでしまう。

 

「すげえ…………悪いんだけど、『先輩』って言ってみてくれると嬉しい」

「え、別に良いけど…………先輩?」

「栗山さんは俺が守るぜ! 特にそのメガネ!」

 

 今なら不死身の半妖になれるかもしれない、右手に令呪は出てこない。今は担当違うからねマ○ュ。

 誰か俺をKENNボイスにしろ、早く!

 

――さて、冗談は置いておこう。好感度上げて色んなものまねしてもらいたいな、いや本気で。

 背筋を伸ばして伸びた鼻を引き戻す。真面目にすればイケメンらしいからな、姉貴の言葉だと胡散臭いが。

 

「さて、早速仕事――――」

「するの?」

「教えてくれる?」

 

 瑞鶴が滑ったかのように頭をがくんと急落下させる。あ、この娘反応面白いタイプ?

 

「教えてって言われても」

「そうだな、着任したら俺何すんだろね。掃除する?」

「掃除は…………いや、確かに汚いけど」

 

 瑞鶴は周りを見渡す。朝陽で埃がキラキラしてるのは瑞鶴の美少女力アップ描写で大変よろしいのだが、実際これは埃なので汚い。

 

――瑞鶴も分かんないのね。

 仕方なく「はじめてのしきかんっ!」を取り出す。誰か略称考えてくれよコレ、愛用するしラノベっぽいから欲しい。感想ついででいいから。

 

 にしてもページが多い。推定300ページ、文庫サイズとかご丁寧過ぎる。

 

「ちょっと待ってくれよ、最初の指揮官の仕事はだな…………」

 

 これだこれ。何々……?

 

『まずは自分に害を加えられないように命令しようっ! 万が一のためだよ☆』

 

 いやしねえよ。

 いきなり出てきた物騒な文面に困惑してる俺が気になるのか、

 

「何が書いてあるの?」

 

 と顔を寄せてくる。やめろ、肌柔らけぇ……じゃなくて!

 

「近い近い近い!」

「ちょっと待ってってば、読めないじゃない」

 

 顔を手で押しやるが座ったまま押しのけるには瑞鶴の力が強いのなんの。ってかほっぺたやわらけえ、すげえ……ナニコレ中毒性有るんだけど。

 

 段々と変なスイッチが入り始めた所で、緩んだ俺の手付きのせいで内容が読めてしまったらしい。

 

「…………ふーん」

 

 途端に冷めた目つき。すっと俺から離れていく。

 

――まあ、嫌な内容だよなこれ。

 だって信用してないって言ってるようなもんだし。アッチは命令に逆らえない時点でアウェーなのにな。

 

 ページを変えもせずに眺めている俺が不満だったのか、瑞鶴は淡々とするように努めて

 

「命令すればいいじゃない」

 

 と素っ気なく言う。

 

「は?」

「そりゃあ命優先でしょ。私が何するかなんてアンタに分かるの?」

「いや知らんよ、翔鶴にテンプラ食わせまくったりするのか?」

「勿論するわよ!…………じゃなくて!」

 

 なんかデジャブな反応。気が合いそうだな。瑞鶴もバカのようだ、うん。凄く良いぞ、好き。

 

「初対面で、身体能力は間違いなく私が上。そのマニュアルが正しいんじゃないの?」

 

 まあそうだな。実際殺されかねない事をする指揮官が居るんだろう。

 

――でもなあ? 今までの俺を踏まえるなら、知らん。

 

「命令しない」

「え?」

「何? もしかして今すぐ俺を殺す気だったりするの!? 軍人サーン助けて!?」

「い、いやそんなことしないわよ!」

 

 あはは、かわいいなあ。超ハッピーだけど、後で殴られそうだから此処らへんにしよう。

 俺の脳内の美少女ってル○ズ辺りの暴力系で止まってる気がしてきたが、実際あんまりからかうと嫌われちゃうからな。そうなると我がつらい、とてもつらい。

 

「俺、嫌われたくないからそういう事しない」

「そういう問題?」

「嫌われなきゃ寝首はかかれないって」

 

 なんかやむを得ずって言うなら仕方ない。俺の運の尽きか、余程行いが悪かったんだろう。

 変なことしてないなら、意味もなく殺されないでしょ。

 

 あ、でも葬式代とか親に掛けさせるのやだな。これからライフが危険でデンジャーなわけだし金貯めて俺が死んだあとの処理とかはっきりさせときたいね。遺書書くか。

 

「大体この文面だとさ――――」

 

 

 

 

 

「俺が間違ったときに、瑞鶴ちゃんが俺の顔をビンタもできないじゃん」

 

 なあ? 俺も一回ぐらい暴走して美少女にビンタされて「何やってんだよ団長ぉ!」とか言われたいよ。混ざりすぎだなこれ。ってかこの場合俺は蜂の巣だな、死にたくないってそれ何回も。

 

 まあ、間違った事はしないつもりだけど、俺は有能じゃない。

 幾ら言っても間違えるし、それが正しいと思いこむこともきっと有る。これから俺の横に居てくれるやつが、顔面の一発も殴れない縛りが有るんじゃやりにくいだろう。

 

「…………変な人」

 

 瑞鶴は呆れて声も出ないという様子だ。まあ、これが正解の反応だろうな。

 でも俺はしない。

 

 もう一回立ち上がって、今度は机の前で瑞鶴と向き合う。

 

「ええっとな…………うーん、ちょっと恥ずかしいこと言うぞ?」

 

 ついつい頭を掻いてしまう。年をとるとこういう物言いをするのは恥ずかしくなるからな。

 息を吐いて、ひーひーふー。これ出産だった、またやらかしちゃったよ。

 

――ともかく、息を整えた。

 

「瑞鶴ちゃん、というか艦と『上司と部下』とか『指揮官と艦』みたいな関係を築きたくない」

「俺は指揮官らしくないから、俺の前で他の所みたいにする必要はないよ」

「えーと、だからな。つまりだな…………」

 

 ああこっ恥ずかしい。

 瑞鶴固まってるよ、絶対自己陶酔野郎とか疑われてるよ。嫌だなあ、でも。

 

――大事なことは言葉にしなきゃ伝わらない。

 行動をしなくては、言葉で伝えなくては。

 放っといてたらなんにも伝わってくれない不便な世の中なんだから。自分でなんとかするしか無い。

 

「俺は指揮官としてじゃなくて、人間として君達と向き合いたい」

「ムカついたら口答えすればいいし、間違ったことをしてる時はボコボコにしてでも止めていい」

「俺だけじゃ答えがわかんないから、一緒に考えて欲しい」

「こっちも一生懸命お前らに反論したり、止めたりするのも同じように受け止めて欲しい」

 

 それで初めてイーブン。命令じゃなくて、心持つ者同士のあるべき形。

 

――軍人的には甘っちょろい。

 知ってる、そんなの見れば分かる。俺が言ってるのは理想的関係で、簡単に築けないものだって知ってる。

 命令した方がさっくりと物事が進むし、悩まなくていいし揉め事も少ないのは知ってる。

 

 でも嫌だ。俺はだから、指揮官になりたくなかった。

 俺達のために頑張ってるやつに、上からなんてしたくない。

 

「だから命令じゃなくて、頼み事を最初に一つ」

「俺をこれから助けてくれるかな? 瑞鶴ちゃん」

 

 これが俺の精一杯。重桜の今の体勢で、これ以上譲歩が出来ない。

 ホントはもっと対等な場を用意してやりたいけど、俺じゃ無理だから。頼むしか無い。

 

――瑞鶴は呆気にとられたと言うか、俺の腑抜けな言動が余程バカバカしかったのだろうか。何かちらちらと睨むようにこっちを見ている。

 

 ちょっと悲しいけど取り敢えず手を差し出す。

 

「なにこれ」

「握手、よろしく。瑞鶴ちゃん」

 

 最初は俺の手を見て戸惑っている様子を見せたが、さっきと打って変わってしおらしい仕草でおずおずと手を差し出してくる。

 

「ちゃん付けは辞めてよ」

 

 ガッツリ掴んで握る。おお、すべすべやね。

 

「分かった。よろしく、瑞鶴」

 

 何だか恥ずかしそうでは有るが、これは俺の譲れない線だ。手をしっかり振って友好の目印。

 

――知ってるか? シェイクハンドって、武器を隠し持ってないって教えてやるために手を振るんだ。

 俺は武器を持ってないし、瑞鶴も武器を持たない。

 

 これが最初の一歩だ。命令から始まる関係だから、拗れるんじゃないか?

 

「まあでも、出来るだけサボるつもりだからそのつもりで」

「え、ちょ!?」

 

 いやだから民間指揮官だからね俺。瑞鶴とかが怪我しないようには配慮するけど、功績とか称賛とか要らない。

 当面の目標は俺が死んだ時の葬式代の確保と正しい遺書の書き方の勉強だ、あーあ忙し。




推しは瑞鶴とエンタープライズ。もう誰かバレてるかもしれない、匿名の意味ないな。
彼は艦は傷つけたくない人、目立たない程度に頑張る予定。巷で流行りのイヤイヤ系の提督とかとは違う。そういうのに出来ない人格にしてしまった。
何だかんだ無職設定から色々パンチの利いた人になってきた。
KANA-BOONのfighterを聞いて出来た小説なので、まあそういうこと。戦うと思う。
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