ハリボテの指揮官   作:杜甫kuresu

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美しくあれ戦士よ。
強さではなく、正しさでなく、賢さではなく。
他ならぬ心持つ者として。


ツギハギの主人公

 その日の晩飯は、何だか無機物を食っているようで味気なかった。残念ながら俺の精神というのは並なので、事実を突きつけられるとあっさり揺らぐものだった。

 

 言葉が上手く耳に入らない、恐らく瑞鶴の言葉が散らばっていたのだが分からない。

 声は黒板のひっかき音で、他の物音はまるで発泡スチロールの擦れる音。何もかもがストレス源に切り替わっているが分かったし、そうである自分が嫌だった。

 

 悲劇のヒロイン基質な主人公は嫌いだった。

 不幸だけど頑張ってますみたいなモーションとか、それに何故かついてくる仲間とか、勝手に空回りして周りを傷つけてるのに許容される妙な虚無感とか。

 

 俺はそういう人間に今、まっしぐらで走っていた。

 

 

 

 

 

「指揮官、どうしたわけ? 何か勢い無いけど」

 

 瑞鶴の声がエコーがかかって聞こえる、何だか世の中を信用出来ないやつの気持ちがわかる。

 元々そんな事当たり前なのに、その一挙一投足の全てに疑念を持つのはまさしく下らない俺辛い系主人公で、こうやって自分を卑下することすら愚かしい。

 

 俺は今までもこうすぐ落ち込む性格だった覚えはない、明るく元気溌剌となんてわけではないが。

 だが何となく俺は思っていたのだろう。

 

『俺は上手く立ち回れてきてるんじゃないか』

 

 何か美少女ともそこそこに良い関係で。業務はちょびっとずつだけど着実に覚えてきて、でも普通の指揮官とは俺は違うんだって思おうとしてたんだろう。

 

 だが違う。むしろ、他のヤツのほうがちゃんと足元を見て判断してるだけ。俺は先延ばしにして、都合良く動いただけ。

 それはショックと言うより呆れる。会社を辞めた時から俺の浅はかさは、さっぱり変わっていないのだと。

 

「ねえってば!」

 

 椅子に脱力して溶け込もうとするのを、彼女は引っ張っていた。

 保とうとしていたものが崩れた時ってのは呆気ない。俺は空元気だけは得意だが、それがない時は正直ネガティブな部類だと思う。

 

 空元気が本当に得意だった。誤魔化すのが大得意。

 転生したことも気楽に受け止めて、微妙な寂しさとか両親とのすれ違いをよくあることだと流して、そして今までもそうだった。

 気づいていても見ないふりをするっていうのが、今回の場合の俺の空元気のキーだった。

 あっさり崩れた。

 

「いや、すまんな。今日は休んどいてくれ」

「俺は疲れた」

 

 ふと、小野の言葉が残響する。

 

『どこまで有効かはぶっちゃけ分かってない』

『ただどれが真実であって、どれが作り物であっても受け止める義務は有る』

 

 それは恐らくアイツなりの答え。多分俺ほど極端でなくとも、崩れ落ちた日が何時か有ったのだろう。

 義務だ、ああそれはそうだろう。ロボットものの主人公は殺人について考える義務が有るし、日常者の主人公には基本的に適当である義務が有る。

 

 同様。それが指揮官の義務だ。

 

「…………そう」

「まあいいけど、そこで寝たら駄目だからね」

「分かってるよ」

 

 何だか心配したような表情で瑞鶴は扉を開けて、最後にチラリと俺を見た。

 

――それは、誰が決めた行動なんだ。

 答えなんか有るわけない。扉が閉じるのをぼんやりと眺めている内に、静かな音でその動作は終えられた。

 

 

 

 

 

 

 

 次の日は、一応まともな態度に戻った。

 

「おはよう、瑞鶴」

「おはよう、ちゃんと寝れた?」

「ダイジョブダイジョブ、六時間だ」

 

 まだ少ないと言われるかと思ったが、何故か安心された。

 昨日が酷かったからな、寝ただけマシと判断したのだろう。というか今俺がそう思ったから、そういう風になってる可能性もある。

 

 疑心暗鬼は取れなかった。本当に何で小野はあんな事をわざわざ教えたんだと思ったが

 

『無知は罪だからな』

 

 それに尽きた。概ね同意だ。

 

――朝から普通に業務をこなしていた。

 横から入る瑞鶴の注釈と、持ってる「はじめてのしきかんっ!」の情報を同時に処理しては、偶にミスして、瑞鶴に呆れられながら訂正印を押したりして。

 今日に関してはこのへんちくりんな本への反応もあまり出来ない。何だか業務に集中してるほうがマシだ。

 

 俺は至ってマトモな指揮官としての義務を、一つを除いて全うしていた。

 

「あ、また名前間違えてる。自分の名前間違えるってどういうことなのよ…………」

「弘って何か弧とか狐とかに似てね?」

「うーん? すっごい譲歩すればそうだけど」

 

 譲歩しすぎだろ。自分で言っててそれは無いと思ったんだがな。

 瑞鶴の一挙一投足を疑うのは正直俺が辛い。何を甘えたことを、なんて思えない。

 

 辛いもんは辛い。俺は自業自得だからと納得できるような、主人公じゃない。

 

「後振り仮名のひらがなとカタカナの所間違えすぎ、ちゃんと見れば?」

「何かこういうのをミスるんだよな、大筋はオッケーだけど細かい所が違う」

 

 漢字だと部首を間違えたり、数学の証明問題で一つ記入ミスが有ったり、分かってるのに違う記号に実験器具の名前を書いてしまったり。

 所謂凡ミスの天才だ。実際今も、凡ミス中なわけで。

 

「ええ~、それって大筋もミスって言われるじゃない」

「…………そうだな、大筋もミスと変わんねえよ」

 

 そう、木は枝が一つ腐ればほっとくと全部腐る。

 物事には一定に似通った法則があると思うが、これもそうだ。

 

 99%正解の行動も、その1%の不正解が課題となってくるのが世界の摂理だ。だから正論はまかり通らない、1%の間違いもない正論がないからだ。

 世界は大多数に都合良く展開する事は有るが、結果的に個々人に都合良くなってくれることは滅多にない。

 

「それは違うんじゃない?」

「…………どういう意味だ?」

 

 どういう意味もこういう意味も、と身振り手振りで何だか変な動きをする。俺もいつもこんな感じで見えてるならピエロと言うか変な人だな。いや、俺は変な人だわ。

 

――もごもごとしていた口が、漸く言葉の体を成したものを吐き出す。

 

「何ていうのかな…………うーん、そうだそうだ。ナポレオンってすごい人居るじゃない?」

「一応聞くがどの国で偉い人だったか知ってるか」

「ユニオン?」

 

 君はアホの子だな、なんか期待通りなのは冗談抜きで複雑な気分だ。

 

「フランスな、それで?」

「まあナポレオンが何をしたかは知ってるんだけど、あの人海戦って結構負けてたの知ってる?」

 

 そういやそうだった。陸は凄いんだがどうにも海がな。

 ナポレオンのポイントは睡眠時間は意外と短くきってるけど取ってた所だろうな。俺みたいに短い睡眠時間のやつは実際、何やってもダメなパターンが少なくない。

 

 で、それが何だ。というかあんまり返答も聞きたくない気分なのに。

 何で聞いちゃうんだろうな、都合の良い答えが欲しいのか。それとも瑞鶴に何か期待してるのか。

 

「じゃあナポレオンって結果的にダメな人?」

「うん? いや、海戦がダメなんだろ。海戦はダメな人で終わりじゃね?」

「でしょ? ほら、そういう感じ」

 

 何か話が違うような…………。

 

「でも俺が今ミスをしていた事実は、そこだけ切り取られて問題視されるだろ」

「だからそれは切り取られてるだけでしょ? ちゃんと出来てる所は出来てるじゃない」

 

 まあ物は言いようって感じだが事実では有る。

 瑞鶴は難しいことを考えすぎたらしく、困ったように頭をかいて喉に骨でも引っかかってるような顔をする。

 

「失敗したら全部ダメなんじゃなくて、失敗したのにまだダメなのが悪い…………と思う」

「何だ、急に歯切れの悪い」

「だって何か上手く言えてない感じするし!」

 

 まあ何か言いたいことはわかったけどな。

 

――一応励まそうとしてるのかね。俺はそんな深刻な顔で大筋云々の話はしてないと思うんだが。

 

「ま、まあともかく! これの場合はミスを直せば終わりなんだからそれでいいじゃない! はい話終わり!」

「えぇ~、何か上手くオチつけろよ」

 

 瑞鶴はバツの悪い顔をして一言、

 

「正解がない話だし無理よ」

 

 と静かに答えた。

 

 

 

 

 

「どうしたんだ瑞鶴、最近は勝負を挑んでこないな」

 

 何でそれがおかしいみたいな言い草してるのよコイツ。

 まあ確かに指揮官が何処と無く変になってから五日間、そもそも目の前に顔をだすのも食事だけだったと思う。

 

――今日のお昼ごはんは、指揮官が気分で作ったらしいカルボナーラ。

 あの日から挙動不審だったけど、この一週間で一番おかしな行動だと思う。

 

『食堂の人の仕事が無くなっちゃうからなあ』

 

 とか言って作らないと思うんだけど。

 厨房を半ば無理やり強奪して作り出した時はビックリした。

 

――――そしてこれ。

 

「正直美味しくない…………」

 

 前のチャーハンは美味しかったのになあ。胡椒すっごい入ってたけど雑じゃなかったし、何か。何か美味しかったのになあ。

 

 味もするんだけど、何だか足りない。

 

「無理をして食べる必要があるのか?」

「作ってもらったんだから残さず食べるのよ、何考えてんのよアンタ」

「それはそうだが、本当にゴムでも食べているような顔だぞ」

「それでもよ」

 

 指揮官があんな感じなのに私まで気を張らなくてどうするのって話よ。

――ちょっと余所余所しい時は正直辛いけど、秘書艦だから。

 

 全然何考えてるのかわかんないし、ビックリすることもそれこそ砂の数星の数。

 何だか考え方が軍人っぽくないし、セクハラもしてくるし。

 多分良い人じゃないのも見れば分かる、どうしようもない中身が普通の人だし。

 

「それでも、一生懸命やってるんだから私も応えなきゃ」

 

 相談してくれないのも、多分何か理由が有るんだと思う。

 あの人が一人でなにか抱え込むのって想像つかないしね、すぐ泣きついてきそう。

 

「…………瑞鶴、後でちょっと付き合ってくれるか?」

「は? 嫌よ」

「良いから」

 

 何よ急に、気持ち悪いわね。

 

 

 

 

 

「さて、佐藤さん」

「何だよ、久しぶりに顔見せたと思ったらニヤニヤと」

 

 まあ元々ニヤケ面してそうな感じだけどさ。わざわざ執務室まで来て俺を笑いに来るって趣味悪いぞ。

 

――アレから小野とは顔を合わせていなかった。コイツ自身、俺と敢えて顔を合わせていなかった。

 考えろってことなのは俺でも分かる。でも考えりゃ答えが出る問題か?

 

 俺が甘っちょろいのは、同じ立場を想像しやすいお前なら分かるはずだろ。

 

「いや~、思ったよりメンタル弱いね。さじ加減ミスった」

「人心掌握が簡単にできると思うなよな」

「いや全くその通りだ、いきなり崖に落とす形になっちまったよ」

 

 難しいな、と頬をかいて笑う。こっちはただいまドブに浸かってる感じなんだがな。

 

――いや、別に小野を責めたりはしない。いつか来る事実なわけだし、本当は視野の狭い俺にも多分に原因は有る。

 納得はできないが、そういうことだから。

 嫌なことだが、コイツにやいのやいのとキレて回ることともちょっと違う。

 

「瑞鶴がヘコんでるの、気づいてるか?」

「…………どれが本当で、どれが俺が変えたものなのか分からない」

「そりゃそうだな」

 

 瑞鶴の言葉がふと、脳裏をよぎった。

 

『失敗したら全部ダメなんじゃなくて、失敗したのにまだダメなのが悪い…………と思う』

 

 そうだ。知ってるよ、だって俺はバカだから。バカは分かってても出来ないもんだから。

 

――分かってるんだよ。意味がない。

 俺の悩みは全部無意味、明確な解決方法がないし何よりそれを考えること自体が――瑞鶴に失礼なことだ。

 頭の中身をいじってるんじゃないんだから、常に疑って自分のせいではと被害妄想なんて本当にバカだ。

 

「まあ正論が効くって感じじゃ無さそうだな、分かってても出来ないってやつか」

「…………ああ仰る通り、理屈は分かってるよ。折り合いつける内容なのもな」

 

 小野の正論が効いてないっていうのは嘘だが。痛いさ、分かってても痛いんだって。

 

 強くなれる気もしないし、この性分は変えれない。

 俺は無鉄砲で、無責任で、そして普通だ。主人公じゃないっていうのはそういう理由、問題はこっから成長は殆ど望めない事。

 

 紛いなりにも俺の理論には完成があって、粗があるから潰せるという単純なものじゃない。

 俺は目の前にある問題に対して、毅然とすることも出来ない。

 

「…………まあ、言った本人が引っ掻き回すようなこと言うけど」

「言うなよ」

「言わせろよ、アンタの物語の転換点だぜ。多分」

 

 んなもん有るのかね、二次創作ならダラダラと続くものだと思うが。

 

「俺は事実を認識しないのがダメだと思うだけで、別に今のままでも良いと思うんだ」

「前も言ったけど佐藤さんみたいなのは好きだ。甘っちょろい、それが最高に良いんだ」

「ピリピリしたやつばっかで飽きてたしな、まあそういう理由もある」

 

 でもな。小野はまた妙な接続詞を繋げた。

 

「今から非情に徹するのも手だぜ? 別にアリだろう」

「問題は――――アンタはどっちがしたいか、だ」

 

 何だ、意味深なことばかり。やりたいことしか俺はしないと言ってるだろうに。

 今はそれが分からなくて困ってると、分かってるだろうに。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()――――事実を見て、やりたいことをちゃんと見つけて欲しい」

「じゃないとアンタ、あっと言う間に潰れるような運命だと思うぜ?」

「なにせ、主人公だからな」

 

 以上、要らないお節介でした。フィクサー楽しい~。

 そんな事を陽気に言ってまたフラフラと何処かへ消えていく。全く、人の感情を振り回すことしかしない奴だな、一周回って感心する。

 

 悪いやつではないんだろうな、良いやつじゃないだけで。

 

 

 

 

 

 

 

「はいテンプラおまちどうさま!」

「え、何急に。熱でも有るのか瑞鶴」

 

 ってか晩飯時だってのに誰もいねえぞこの食堂。すっげえフラグだわこれ。俺執務室に籠もりっきりだったし話し合うチャンス大量にあるもんな。

 

 ガンと机の中央に置かれたのは山程有る天ぷら。食えるわけないよな? 何この量は。

 

「なあこれ何人前なのよ?」

「良いから食べれるだけ食べるの!」

「うっそ~」

 

 嫌ですけど? 普通に嫌ですけど?

 明らかに苦い顔付きの俺を差し置いて瑞鶴の箸が伸びていく。

 

――すげえ、一口で一本食った。どんだけ頬張るんだよ。

 

「自分で言うのも何だけど絶品じゃない」

「ほんとに自分で言うなって感じだわ」

 

 まあ何か、何かする気なんだろう。別にやりたいことが有るわけでもないし、付き合おうかな。

 そう思いながら天ぷらを一つ取って醤油につける。

 

――半分ほど食べてみるが、美味い。よくこんだけカリッと出来るもんだ、俺がやるといっつもふやけてるんだよな。

 

「実際美味い腹立つ」

「でしょ」

 

 美味いとも。それは間違いない。

 

「飯が進むとはこの事だな」

「そ、そこまで褒めろとは言ってないけど…………」

 

 恥ずかしがる要素あるか?

 

 

 

 

 

「まだ有るのかよ…………」

「私ももう無理…………」

 

 結果は共倒れ、お互いに天ぷらを醤油に浸して突っ伏している。さながら様子は毒殺事件であるな。

 

――ってかこれでなんなんだ? いや美味かったけど、ホントに天ぷら自体はくそ美味かった。

 それで?

 

「後の残りどうすんのこれ……」

「わかんない……グレイゴーストに押し付けようかな」

 

 不憫枠エンタープライズ。確定しちゃうからそういう行動は慎んで欲しいな。

 何かエンタープライズが天ぷらをめっちゃガッツク絵面を想像して笑いそうになる。

 

「アイツ、案外食いそうだな」

「どうなんだろう…………」

 

 瑞鶴は真剣に考えているようだ。当人に聞かなきゃ間違いなく迷宮入りする謎だけどなそれ。

 っていうか突っ伏したまま会話進行するのお通夜すぎねえか。

 

「あの…………ユニオンの指揮官? あの人にあーんとか?」

「はははは! そりゃ無いだろうな!」

 

 アレは非公式カップルみたいなもんだ。当分関係も進展しねえだろうなあ、二人共奥手の匂いしかしないし。

 

――久しぶりに笑ったな。完璧不意打ちだった。

 

「いやあ、笑わせてもらった。ありがとう」

「うん? まあお礼なら受け取ったげる」

 

 何という自信家。何となく感謝されるのを何となくで受け取るとは。

 俺も適当に生きてるがそれは中々しないな。

 

――瑞鶴がニィと歯を見せて笑う。

 

「食べたら元気出た?」

「うん、お腹壊しそうだけど」

「奇遇ね、私もよ…………」

 

 バカだなあ、ホントバカだなあ。何やってんだよ、お前。俺もだけど。

 

――こんなおバカな美少女、俺は絶対欲しくないよなあ。

 俺はクールビューティー派で、クーデレが大好きで、種田梨沙より石川由依で、ぶっちゃけ言ってゲームの時は完璧にエンタープライズ派だったしな。

 

 全然コイツって、相棒として都合良くないよなあ。

 ああ。それが俺の欲しい相棒なのかもしれないが。

 

――都合良くは、行ってないはずなんだよなあ。

 

「…………心配かけたな」

「ホントよ、全然変なこと言わないし」

「俺は変なこと言う人なのかよ」

 

 ああ馬鹿馬鹿しい。馬鹿馬鹿しいけど、すっごい楽しい。

 

――眼の前に居るのが都合のいい妄想ってわけでもなし。

 どうにもならないことはどうにもする気がないのが俺の原則で。

 俺のこの妙な能力は解決不可能で。

 

 瑞鶴は、さっぱり制御不可能だからな。

 一生懸命で、グレイゴースト馬鹿で、地味に寂しがりやで、何だかんだ俺にも親身なお人好しで。

 

「まあ仕事はしないけどテンションは元に戻ると思う、後一日ぐらいで」

「仕事はしてよ!?」

「冗談言え、しないぞ俺は」

 

 俺の苦手なことは10分以上考えることだって忘れてた。

 

「なあ、何となくもう一回自己紹介していい?」

「また大声出す気? 今、夜だよ?」

「大丈夫だって、今回はちゃんとやるから」

 

 

 

 

 

「大本営に無理やり指揮官にされた佐藤弘だ。これからも適度にサボるから、愛想を尽かさないなら今後もよろしく」

「ああ――――悪いけど、このタイミングでマトモに名乗り直す気にはならないかな」

「瑞鶴君空気読んで?」

 

 まあ良いや。突っ伏してる状態で自己紹介し直すとか、変人の仕事だしな。

 

 それに、言う事聞かないくらいが瑞鶴らしいんだろう。

――程々に甘っちょろく行こうぜ。

 

 何せ俺はアイツいわく、「ハリボテ」なんだからよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの二人のストーリーは取り敢えず……一章終了ぐらいかね?」

 

 双眼鏡で覗き込んでいた小野が横のエンタープライズに尋ねる。二人は自室から食堂の様子を眺めていた。

 突っ伏している様子から何を汲み取ったかは知らないが、二人して笑いだした辺りでニヤリとしだしたのは、正直エンタープライズは怪訝な目つきで見ていた。

 

「私に分かるものか」

「っていうけど、俺達もきっと物語だったんだぜ?」

「そうなのか」

「そうなんだよ」

 

 小野のあからさまなメタ発言をエンタープライズはふんふんと適当に流した。慣れているとしか思えない。

 

――エンタープライズは裸眼で二人の様子を捉えている。小野の記憶では読唇術も一応出来るはずなのだから、会話の内容は分かっているのだろう。

 

「なあ、何話してた?」

「秘密だ、趣味が悪いぞ。指揮官」

「お前はどうなんだ」

「私はグレイゴーストだからな、亡霊に趣味が悪いも何も無い」

 

 屁理屈ばっかり言っちゃってえ、と小野は不満げに唇を尖らせた。

 

――何笑ってんだよ、亡霊さん。

 笑ってるのを見ると、やっぱり内容が気になるのは変わらなかった。

 

「今日は満月か。美しいものだな」

「月が綺麗ですね?」

「死にたくないな」

 

 マジかよ、と小野は小さく笑った。

 

「あなたが待っている場所に、この足で帰りたい」

「…………はい?」

 

 小野は気まずくなって顔を逸らした。

 

――見えたのは欠けのない満月。

 欠けたものだらけの男を慰めるには、丁度いい程々の美しさだろうか。小野はそんな事を考えながら月を見上げたまま魅入っていた。

 

 

 

 

 

 

 

「ってか新しい艦は何時来るのよ櫻井さん」

 

 久しぶりに電話した。本当は初めての電話は母上が良かったが多くは言えんよなあ。

 電話の向こうからはそうでしたね、と慌てた声。お前ラスボスのくせに何か抜けてんな。

 

『近い内に手配しましょう。要望は、有るならば一応考慮しますが』

「翔鶴。姉貴居ないと寂しいだろうからな」

 

 櫻井は作ったような笑い。まあ良いさ、いざって時に捨ててやるから覚悟しろ。

 

――俺はこのまま逃げ切るからな。

 これから来る艦も全員何とかして、重桜転覆なんかつゆとしらぬ顔で俺は家に帰る。

 変わらないさ、俺は目的意識は最初からはっきりしてるんだから。

 

『わかりました。最優先としましょう』

「あー、後な…………」

『後は、何ですか?』

「まあ良いや、じゃあな」

 

 プツン。無理やり切った。

 

――と同時に小野君ご入室。タイミング良すぎるぞ、やっぱお前転生者じゃねえだろ。

 

「故郷に電話かね佐藤くん」

「馴れ馴れしいぞヘタレ」

「え、何でこんな言われんの俺!?」

 

 当たり前だ。

 

 全く、要らないことにカロリー使わしおってからに。




身バレした。狙ってたので俺は面倒くさい男である。
何か「こういうのやってほしいなあ!」って思ったらsincerityにメールでどうぞ。行けそうなのは頑張って書く。
これから始まる誤魔化し日常パートは発想力が頂けるなら使わせていただきたい。萌えるシチュが書けなくて……。

何はともあれ一章終了! 瑞鶴カワイイヤッター。こっからはゆっくり書こっと。死ぬかと思ったぞこのペース。

こう、溜め込んできた「俺のエンプラと瑞鶴の面白い絡みがあるんだ!」とか「櫻井のホモレベル上げた話思いついた!」とかそういう軽いので良いんで。
妄想を踏み荒らさせてください。多分発案者の理想のものは書けないですが。
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