ハリボテの指揮官   作:杜甫kuresu

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ちゃんと瑞鶴も立てる。こっちがメインヒロインだからな皆、エンタープライズはサブで彼氏持ちだぞ。俺はエンタープライズの人じゃないから。

パッと見サトー以外は皆主人公級のキャラに視える。この中でもやっぱりサトーが特異点なのが重要なんですよ。


ヴァイオレンスアワー②

「缶コーヒー欲しい?」

「ヘンタイからの施しは受けないわよ」

 

 わお手厳しい。人間誰でも間違いを犯すものだぞ、俺は特に。

 

――しっかし碌でも無い事に巻き込まれた。櫻井さんは派閥闘争だとは言ってるが、実際は何処までホントかも正直分からん。

 ああキモチワル。いろ○す飲んでスッキリしよう。

 

「あ、クソ。テンパって百円玉も入れられないぞ」

「取り敢えずそれ百円玉じゃないから」

 

 相当おかしくなってますね俺。あ、これゲーセンのコインじゃねえか、ゲーセン野郎あるあるか?

 ようやっと百円玉にありつけた自販機くんからお礼のいろ○す。ゴトリという音に小さく反応してしまうのはもうしょうがない。

 

――瑞鶴はピリピリしている。話の抑揚こそいつもどおりなのはこっちに気を遣ってるんだろうが、あちこちに飛んでる視線に殺意じみたものが有る。

 俺はそういうのを見たことがないからちょっと怖い。

 

「ってか瑞鶴飲めって、お前此処に来るまでに水分摂ってないだろ」

「…………まあそうかな」

 

 さっと受け取ってすごい勢いで四分の一ほど飲み干す。

 やっぱ喉乾いてたんだろうね、相変わらず目つきは険しいが飲んだ後にはちょっとだけ顔が綻んでいた。

 

 受け取る。

 

「もっと飲んでも良いぞ、これからそっち忙しいんだし」

「お腹タプタプになっちゃうでしょ」

「デブになるってこと?」

 

 顔も見ずに頭を叩かれた、上体ごと体が落ちる。

 だって普通そう受け取るだろ。

 

「トンダ暴力美少女だぜ!」

「変なことばっかり言ってるからでしょ、結構気が抜けないんだからね今」

 

 あっそ、俺はそれを自覚したら倒れるからこのテンションで行ってるんだけどね。つまり夢見心地で生存しているということだ。

 アレだな、疲れとか忙しいとかでテンションがハイになって色々麻痺ってる状態。ふと冷静になった瞬間にまたSAN値チェック入るんじゃないかなあ。

 

「だからって常に刀に手を添える必要はなくね――――ぷはぁ、生き返るぅ」

 

 やっぱり天然水とかが一番ですよ。ジュースは甘えだな、実際甘いし。

 

――ふとこっちを見た瑞鶴の目が白黒する。

 

「え、飲んだの」

「は? そりゃ買ったんだから飲むだろ」

「え――――ええ!?」

 

 そんな焦ることかよ。俺はお前の腰の鞘からするりと抜けていく刃が煌めいてる方に焦ってる。

 え、何。殿中、殿中でござるぞ?

 

 ヤベえよ半分以上抜いてる、何で涙目なんですか!?

 

「もうアンタ殺すしか無いじゃない!」

「それお前が死ぬフラグじゃねえかあ!」

 

 というか年上に向かってアンタとは何だ、わしはそんな子に育てた覚えはありません!

――完全なる死亡案件かよ!? ヤバイ、(輪廻転生に)達する達する!

 

 ああ。舞い降りた名推理に、急に手をポンと叩いた。すげえスッキリしたんだもん、ついやっちゃうよね。

 

「間接キスね、あっ成る程」

「今更気づいても遅いのよ!」

「もう歳的に気にしてないんだってすまんかった!」

「子供っぽいって言われてるみたいで尚更腹立つわ――――ッ!」

 

 もう人斬り抜刀斎に変わってしまった瑞鶴に襲われる直前に

 

「イチャコラしてないではよ戻ってこいやアンタラ!」

 

 と扉を開けたママに怒鳴られた。ごめんなさい小野ママ。

 

「ママじゃねえから!」

「なぬ、読心術か!」

 

 誰でも分かるわと怒鳴られた。まあ瑞鶴がギリで止まってくれたから正直ナイスタイミング。

 

 

 

 

 

「佐藤さんも艦との関係は良好のようですね」

 

 何いってんだこの人。っていうか水買いに行ってる間に部屋から出ていってるかと思ってた。

 

「それは殺し愛的なニュアンスで言ってるんですか?」

 

 っていうか今日の皆は言葉通り暴力的だよなあ、何なんだこの妙な空気感。また暴力系ヒロインが流行りだして作者が乗っかってる? いやいや、もうアレはハヤランテ。

 

 美少女もリアルを呑む時代。多少はリアリティに反さない面が要るんですよ――ってこの話ある界隈では世知辛すぎるのでは?

 

「そうよ、指揮官との関係が良好って目が節穴じゃない?」

「節穴どころか色眼鏡じゃね?」

「それよそれ」

「やっぱ仲いいなあ、佐藤さん良いな――――ああゴメンて、隣の芝生は青いんだよ!」

 

 ちゃっかり浮気しようとしてるやつ居るんだけど。瑞鶴は何やかんや言うことを聞いてくれそうだし好きにして良いんだけど、エンタープライズ可哀想過ぎるぞ今のは。

 無い物ねだりってもんだ、十分良いじゃないか。

 

「瑞鶴よりよっぽど堅実な嫁さん貰っといて贅沢だなあ、ヘタレ君は」

「私は嫁じゃない! 何なんだ、全く………」

 

 また怒られた。っていうか窓ごしに声聞こえてるんかい、ほんとに見張ってるのかあの娘。

 変な線を引っ張る才能ばっかり目覚めていってボンファイア。

 

「そうだぞ、俺の嫁だけどどうせならもっと良い所に嫁いでもらわねえと」

「多分ヘタレ君の言ってる嫁と俺が言ってる嫁は違うね、うん」

 

 何お前、この期に及んで萌えとか感じてるのか? 眼の前に居るとそうはならんと思うの。

――まあ、言わんとする事自体は分かる。

 

「そうだなあ、瑞鶴って男選び下手そう。俺が選んでもいいぞ?」

「さすがにセクハラよ、指揮官」

 

 くっそ手厳しい。ガード堅い。

 

「恋愛クソザコ幸運空母のくせに」

「佐藤さんまだそれ言ってるんだ」

 

 いつまでも言い続けるからな俺は。二次創作設定を気づけば公式設定と同じくらい浸透させてやる、エンタープライズと対比されて苦しむ瑞鶴二次創作の未来が見える見える。

 俺は千里眼スキル持ちらしい。

 

「というか夜中まで騒いでたら良いってどういうこと?」

 

 小野と櫻井さんの厳粛な審議の結果とは聞いたけど、何か意味が分からん。

 っていうか半分気絶状態だったし、話も瑞鶴から聞いたのはかいつまんだ感じだし。

 

――櫻井さんが殺されに行ってる時は流石に一瞬目が覚めたけど、まあアレだね。防衛本能的なやつ。記憶があんまりはっきりとしてない。

 

「佐藤さん、それはあんまり難しくない話だよ」

「そうなんだ」

 

 でも俺って戦闘とかからっきしだから分かんないよね、何というか「セオリー」が無いと分からんだろうさ。

 

「やっこさんは俺らが寝静まったら殺すでしょ? でも寝てないから襲われないんだ」

「はあ。何で?」

「窓の外で見張ってるエンタープライズさんが怪力だからね、10人ぐらいはバッタバッタなぎ倒す――――――オホン!」

 

 あ、また窓の外から見られてた。ずいぶん尻に敷かれてんなあ、良い嫁さんだぞホントに。

 

「うちの素敵なレディが目を光らせてる間はアッチは勝てないと踏んでるんだよ」

「さすエン」

「さす○にみたいに言うな」

 

 さすエン。当方が大変お世話になっている最強のサブヒロインですからね、やっぱさすエン。

 

「それに、私だって丸腰で来る程ではないですよ」

 

 突然櫻井さんが横入りしてくる。実は小動物的な要素が強いと判明して一瞬ほっこりしたけど、アンタが居なけりゃこの状況は絶対生まれないんだよなあ…………実質黒幕だ。

 

「私の周りには誰も置いていませんが、彼らを囲む形で軍を配置してあります」

「何でちゃっかり自分まで囮にしてるのかはマジで分からんな、これが重桜流ってか?」

 

 確かに小野の苦言は最もだ。指揮するべき男が囮なんて間違いなく現代の軍略ではおかしい。

 

「作戦の成功の為には、時に自分ですら駒にするものです」

「脚本作りに必要なのはセオリーではなく、全てを投げ捨てた成功率ですから」

 

 アンタえらくあの言い回し気に入ってるんだな、俺は適当な例えのつもりだったんだが。

――しっかし言われてみりゃその通りだなあ。

 

 集団が成功したいなら身分も使って命を賭けて。為政者の鑑みたいな台詞だと思うよ、暴君になる可能性は低からず有るように俺は思えるが。

 

「櫻井さんが死んだら(俺の安全とか特に)困るから頼むよ」

「勿論ですよ、死ぬために生きている訳では有りません」

 

――じゃあ何で生きてる。とは聞けなかった。

 ちょっと怖い。なんて答えたって信じられないし、でも信憑性を帯びてる返しをするんだと思うよ。

 

「それに貴方だけに業務を任せるのは、ちょっと不安ですからね」

「おいおい俺は頼りにしてんのにディスるとかさすが櫻井きたないぜ!」

 

 まあ身の安全のためだけど。実際業務が増えるのは怖いな、普通にこなせないかも。

 

「ってかエンタープライズはアレで良いのか、何か一人蚊帳の外で」

「俺は正直怖いからアレでいいです…………」

「アレで甘えてるつもりなんだと思うぞ、個人的な見解だけどさ」

 

 ゲームの頃から我儘を言わないからなあ。我儘に振る舞ってもらえるって相当だぞ、俺では一生拝めん絵面を一杯知ってるお前は素直に羨ましいぜ。

 

――まあ小野くんは敢えて一歩距離を置きたがってるから、俺がどんだけ「このエンタープライズは素晴らしいんじゃないかな!?」とオタク特有の早口ムーブで畳み掛けても駄目なんだろうな。

 

「いやぶっちゃけるけどさ、偶にプライズちゃんに見捨てられないか怖い」

「おうおう惚気んな鬱陶しい」

 

 言動をちまちま気にしてると俺みたいになるぞ。でっかい所で間違えて細かい所間違えないより逆が良い。

 

「アイツ私とご飯食べてる時、小野さんの話しかしてないよ」

「へえそうなんだ~! 一緒にご飯を食べるとは仲がいいね瑞鶴君! 指揮官は嬉しいぞ!」

 

 いだぁ! 耳引っ張られた、デジャブい!

 

「私、扉の外で見張ってるから」

「ああ悪かったって、冗談だからなんとか笑って流してくれよ」

 

 小野から情けねえなあと言わんばかりの視線が飛んでくる。お前にだけはそんな目で見られたくない。

 例えワカメに嘲笑されてもお前にだけは勘弁だ。

 

「そういうのじゃないわよ、実際アイツだけにさせると効率も悪いし仕事量が均等じゃない」

「…………成る程ね、まあやりたいようにやってくれ。俺はせいぜい此処で――――」

 

 バッグから敷かれた布団に投げつけたのは――――トランプ。

 

「これで夜を明かしてみせるからよ」

「佐藤さんって偶に高校生みたいな事考えるよな」

「分かります」

 

 二人揃ってなんでい、何もないよかマシでしょーが!

 

「呑気よねぇ、指揮官は」

「お前が守ってくれるんだろ? 一応信用してんだよ」

 

 何やかんやと最後の一線で必ず踏ん張れるやつってのは何となく分かる。

 

――まあ、希望的観測でなけりゃ良いけども。

 

「――――――あっそ」

 

 

 

 

 

「さて、男だらけのトランプ大会だ」

「アレ冗談じゃないんだ、ちょっと格好いい嘘をついたぐらいに思ってたんだけど」

 

 俺がそんな主人公的な気を遣うように見えるか? 見えるころには俺の転生人生は終わるよね。

 

「よっしゃじゃあこれから勝敗数えて一番負けたやつが最初に混浴覗こうぜ」

「すげえアホっぽいな佐藤さん」

「実際バカだよ俺」

 

 俺はそれでも混浴に入ってみせる。

 

「何が何でも俺は瑞鶴のボディラインが見たい」

「案外うまく夜を明かせれば見れるかもしれない。ただしその頃にはあんたは八つ裂きになっているだろうけどな」

「お前もしかして完了形変態さん?」

「完了してない絶賛成長中の変態さんですが」

 

 知ってる。っていうかお前腕っぷし強いのか?

 チェリオー!

 

――櫻井さんどうしたんだ、何で固まってるんだ。

 

「え、どしたの櫻井さん。敵襲? 殿中ですか?」

「いえ、その――――他人とトランプをするなんて随分久しぶりだと思って」

 

 まあそりゃあね。俺達みたいに大学生みたいな馬鹿騒ぎばっかりしてる大人も少なかろう。

 大人になると見え過ぎちまうから、何でも気楽にできなくなる。気楽にできないとどんどん息苦しくなって、こんな下らないことも遠くなっちまう。

 

――あの会社が嫌だったのはそういうのを呼び起こす当たり。なんかムカつくというのも十二分にあったが、何より気楽さを失わせる所。

 転生者は良くも悪くも自分の生には無責任だからこう生きていけるんだろうねえ。

 

 考えすぎて頭痛い。また膝枕してくねえかなあ。

 

「んじゃあ肩慣らし。俺が勧めるのは王道を行く――――スピードですかね」

 

 スピードは良い。頭使わないからな、物理で相手のカードをへし折れ。

 

「アレ途中で若干相手の手を殴りに行くから駄目じゃね?」

「分かる分かる。何か自分のスピード上げるより相手のスピード削ぐ方に行っちゃうよな~」

 

 クソ、コイツ頭を使わせようとしてやがる。こんな状況でそんな頭使って何が楽しいんだよ!

 

「はいはい、小野也人はポーカーを推します! セブンカード・スタッドな」

「くっそ難しい単語に櫻井さんがパンクしてるんだけどどうすんのヘタレ君」

 

 この人遊び慣れてねえなあ。

 

 

 

 

 

 

 

「か、勝った…………は、はははッ!」

 

 櫻井のトチ狂った笑い声。

 朝日も登り始めた最中、男達は実に下らない戦いを続けていた。

 

「クソォ! 最後の最後で裏切ってくれやがってこの櫻井ィ!」

 

 佐藤が畳を叩いて悔し涙。お前何でこんな下らないことに本気になってるんだ?

 どうやら賭け事に圧倒的に強い小野相手に二人で悪戦苦闘していたようだった。にしてもこんな明らかに怪しいやつと組む佐藤にも問題はないだろうか。

 

「いやアンタラ仲間内で揉めて見苦しすぎんだろ…………結局俺一位だし」

「やかましい! お前が天然チートなのが悪いんだい!」

 

――何でふっつーに俺ら二人相手で勝つんだよお前は!

 そりゃポーカーで組むメリット無いからだと思うのだが(語り手)がそれを言っても仕方がない。

 

 佐藤がトランプを投げて絶叫する。

 

「何で俺が行かなくちゃいけないんだ――――ッ!」

「いや佐藤さん自身がそう設定したんでしょーが」

 

 全く小野の仰る通りである。

 そんなバカバカしいにも程があるやり取りを二人で繰り返していると、突然に櫻井に無線がかかってくる。

 

「ああ、私だ――――――ええ!? 数時間前から駆除済みだと!? 何故私に言わないんだ――――え、私が返事をしなかった?」

「何してんだ櫻井さん」

 

 櫻井が素で謝っているのを見ながら二人は「コイツ遊ばせるとろくなことにならないな」というアイコンタクトを交わす。

 

 かなりの平謝りで謝った後、静かに無線を置く。

 

「…………では佐藤さん、オペレーションSを決行しましょう」

「嫌だ、俺は嫌だぁ!」

 

 櫻井の真っ黒い笑顔に駄々をこねて逃走しようとする佐藤を小野が襟を掴んで捕まえる。

 佐藤がヒッと情けない声を上げながら顔を見ると――――櫻井の比ではない、ドス黒い微笑を浮かべた小野がこちらを見ている。

 

――やべーやつに火をつけてしまった!

 一番誰がやばい奴かを彼は見誤った。

 

「いっぺん――――死のうか?」

「いーやーッ!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…………」

 

 ちゃぷり。アイツが湯船に浸かる音がした。

 私も体を軽く流して湯船に浸かる。ひたりと湯に触れる足から体がぞわぞわとして、何だかいっそ心地が良い。

 体全体を沈めこむと、芯から温まって何だか軽い高揚感。労働の後の風呂はいい、なんて指揮官が言っていたが本当だったらしい。

 

「聞いた? あの三人、夜通しトランプしてたらしいわよ……」

 

 全く呆れるわ。一応狙われてる立場だって自覚は有るんだろうか。

 

 私が今後を憂いて溜息をつくのとは対照的に、エンタープライズは外にまで響きそうな大きな笑い声。

 

「相変わらずだな」

「何時になったら大人っぽいところを見せてくれるんだろうねアレ…………」

 

 何だか年の離れた大人だという感じがしない。

 頼りないと言うか情けなくて、子供っぽいと言うか適当過ぎる。夜通し廊下とにらめっこだったコッチの身にもなって欲しいと言うか。

 

「アレくらいが丁度良かったりもするんだ。堅苦しい軍人ばかりでは世の中が上手く回らない」

「そりゃそうだけど…………」

 

 それだと私達は貧乏くじってことになるんだけど。

 

――いや、別に指揮官が特別嫌いなわけじゃない。むしろ割と相性はいいほうなんだと思うのだが、それでもあの偶に見せるとんでもない行動には驚かされてしまうというか。

 まあ、コイツの指揮官も中々だけど。

 

「小野さんも指揮官と意気投合してるし、アンタもユニオンに居る時は大変でしょ?」

「まあ否定はしないとも」

 

 あまりよろしくない記憶でも有ったのだろう、湯船から手を出して頬を掻いて力のない笑い。

 

「私は指揮官が好きだ。彼もそれを迷わず私に言ってくれるだろうし、信頼関係という言葉にすると少し堅苦しいが――――ともかく理屈ではない関係がある」

「サトーも少し逃げ癖は有るが悪い人ではないだろう?」

 

 まあそれはそうだと思うけど。

 

 ちょっと引くぐらいに逃げ腰な時は有っても、何というか――――何だかんだコッチのことも考えてるし。

 多分理由を聞いたら『中途半端な情』とか『自分が納得できないから』みたいな返事をするんだろうし、それで事実な部分もある。

 

 でも、それでも行動が表す限りは

 

「そうね、まあ良い人なのかな。あんまりそういう考え方で関係性を作らないけど」

「ではどういう考え方だ?」

「直感よ」

 

 らしいな、とクスリと笑われる。何だかいつも妹扱いされてるような気がして気に食わない。

 

 こういう時は仕返ししてやるに限る。

 

「ま、明らかに上司との関係に恋愛沙汰持ち込んでるヤツに笑われる筋合いないけどね」

「なっ!? だから違うと――」

「いや、理由つけて胸とか押し付けちゃって白々しい。露骨なのに小野さんも煮え切らないと言うかねぇ?」

 

 怖がってるのかな、進むことを。

 今の関係が大事だから、変に壊したくないというのは分かる。私だって指揮官の距離を不用意に壊したくはない。

 

 だがこの場合はちょっと違う。

 

「アンタ誠実なのが望みとかほざく割にはこういう時はハッキリ言わないわよね。言葉にしないと伝わんないんじゃない?」

「大きなお世話だ!」

 

 子供みたいに拗ねてしまってそっぽを向かれる。純情と言うか、根が普通というかねえ。

 案外私より年相応な部分が多い。っていうか私が偶に妙に変わってるのかもしれないな、別にそれがどうというわけでもないけど。

 

「顔もスタイルもいいわけだし、無理やり襲っちゃえば? ソッチのほうが早いわよ正直」

「えげつないことを言うな…………と、というかそれこそ不誠実ではないか!」

 

 まあ他人事だしね。ちらりと湯船の奥の肢体を覗く。

 

「いや~、私が男だったらアンタみたいな女に襲われたらもう流れで――――」

「も、もう終わり! この話は終わり! 良い!?」

 

 何か素になってる、初心よねえ。精神年齢で言えば20は越しているでしょうに。

 まあそういう所があるから小野さんも躊躇うのかもね、土壇場で拒否られたらショッキング過ぎるし。

 

――うーん、イマイチピンとこないけどそれでも結構クルわねそれ。

 

「ま、とにかく頑張んなさいな。何か見てて焦れったいし大真面目に体に訴えるのを勧めるわ、私は」

「分かった、分かったからもう辞めて!」

 

 顔真っ赤っ赤、うわー楽しー。指揮官が時々遊んでたのも納得だわこれ。

 

 エンタープライズが色々と限界を迎えて湯船から上がってしまった辺りで私も上がろうかと思った時に

――ぺた。小さな足音。

 

「…………さて、グレイゴースト。ちょっと下がってて」

「な、何だ唐突に」

「いや、アンタは見られたらそのままテンパりそうだから」

 

 音を立てないように湯船から上がる。エネミーはどうやらこの手の隠密行動のド素人のようだ、足音を消すなら足刀からゆっくりと足を降ろせと教わらなかったのだろうか。

 

――まあ、あの人知らなそうだなあ。よくそれで来るもんだけど。

 

「ほら早く、一撃で仕留めたいから音はあんまり立てないで」

「何だ? 本当に何をする気だ?」

 

 気づいてないと言うより、それを想定してないのか。幸せな感覚を持ってるものだ、そのまま純粋に生きて欲しい。切に。

 

 扉の前まで立っている。このへっぴり腰は――――分かんない、どっちもへっぴり腰で来そうだし。

――よし、殺す。

 思い切って扉を開けながら回し蹴り。顔が見えると同時タイミングで蹴っ飛ばす。

 

「何ホントに覗きに来てんのよこのスケベ!」

「ありがとうございますぅ!?」

 

 指揮官だ。まあ予想通りだけど、タオル巻いてお風呂入る気満々だったのは一周回って最早感心モノよね。

 

――その後少し首が痛いとか言ってたけど、ぶっちゃけ自業自得である。




violence hourとviolence ourを掛けてます、わかりにくい。エンタープライズのポンコツの原因もこのタイトルというオチ、幕間と言うだけ有って巫山戯に巫山戯た。

小野くんは問題を誤魔化すことに全力で、しかしサトーくんは問題を「何か上手く行かせる」事に全力。どっちも有りですし俺はどっちも好きなやり方。
サトーと絡んでると一応誰とでも喋る(というこじつけ)。書いた後でアレってなった。ゆるして。

せっかく高評価もらったのでこっちを終わらせた。
時間を置けばあっさり書けた。
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