『虚月天墜』と奴が呼んでいたそれ
巨大な霊力の塊、月牙の集合体
……『始解』状態のそれは月牙天衝のあと知覚し難い2撃目を付随させていた
これは……連続的に月牙を、放ち付随し続けたものか
「……セイバーくん!」
「……気絶した阿散井苺花と離れてろ!!リツカ!」
背後にいる彼女にそう声をかける
「…………投影、開始」
虚化した死神の状態でそう呟く
頭上には『虚月天墜』まるで隕石の如く降り注ぐ為に滞空している、恐ろしい程の威容を放つ
籠められた殺意の濃度に怖気が走る
逃がす気は無いとそう言いたいのか、奴の執念を感じる
ああ、己もお前を逃がす気はねぇ
洗いざらい話して貰う、禍ツ聖杯も奴のことも……あいつの行き先も
だから……ここで死ぬわけにも行かない
……リツカも死なせるわけにはいかない
最初は弱々しいマスターだと思った
人見知りするただの少女に見えた
実際そうなのだろう
けど彼女には怒りがあった、悲しみがあった
邪悪を憎むそれがあったのだ
だから彼女の剣として応えなければならないだろう
「………
自分の魔力回路全てを起動させる
『天鎖斬月』に魔力を通す、強化の要領で投影を付加させる
『天鎖斬月』と自身の魔力回路が繋がる
『常にイメージするのは最強の自分だ』
反芻する彼の言葉、己に力を貸してくれている彼の意思が思い浮かぶ
『だがな、私の戦い方を模倣すべきではない。きみは私ではないし私もきみではない』
わかっている、だから今までもアレンジはしてきた
『常識に囚われるな赫月、君には君の力もある……ならば君を阻むものなどなにもないだろう』
彼の言葉は力強く
『君を助ける力もあるだろう』
『明確な邪悪はそこにいる、我らは君の正義の為に尽力しよう』
『限界はそこではないのだからな』
赤い外套の男は皮肉っぽく笑った気がした
ああ、……行ってやる
限界を越えてやる
「何をやっても無駄だ!!死ね!」
鬼のような虚の仮面を付けたアサシンは笑う
嘲るように斬撃の塊である『虚月天墜』を振り下ろす
まるで強大な流星のように己達を潰そうと降り注ぐ
「セイバーくん!?」
苺花を抱え距離を取ろうとしているリツカ
「………任せておけ、リツカ己のうしろ一切の魔力もとおさねぇ」
安心させるため僅かに笑う
「…………うん、一蓮托生だからねセイバーくん」
ああ、そうだな
リツカはリツカなりに覚悟を決めたようだ
阿散井苺花も死神、戦士の覚悟もあるだろう
「は、余裕綽々ってかぁ!!?赫月のセイバー!!」
奴は吠える
「さてな、……素を出すと小物くさいな虚影のアサシン」
投影を完全に行う、天鎖斬月は装飾された投影物を纏い強化される
「『叛逆ノ天鎖斬月』」
を織り交ぜ投影を付加した天鎖斬月を構える
「!!?」
「行くぞ、……『赤雷ノ月牙天衝』!!」
『叛逆ノ天鎖斬月』の鋒から赤き雷の斬撃を放つ
「宝具と月牙天衝を混ぜたの!!??」
リツカは驚愕の声を上げる
放たれた赤雷の斬撃は濁流となり『虚月天墜』へぶつかる
「この程度!!……ちぃ!!」
「……でぁぁぁぁぁぁ!!」
赤雷は力を増す、勢いを得たそれは『虚月天墜』を真っ二つにする
「ぐぁぁ!?」
『虚月天墜』は霧散する、『赤雷ノ月牙天衝』に押し負ける
「てめぇ…………かくづきぃ……!!」
赤雷の斬撃を喰らいダメージを負うアサシン、仮面が割れている
宙に浮く奴は激昂している、傷を与えることが出来た。奴も無敵ではない
『天鎖斬月』に纏っている装飾、魔力が霧散する
さすがに一発が限度か
奴は割れた仮面を修復する
「……『双月童子・断御前』!!!!」
纏っていた月牙を右手に収束し巨大な刀になる
「…変形するのか、………投影、開始」
再び投影しようと魔力回路を起動
「させるかよ!!!調子づくんじゃねぇぞ!?ああ!?……!!てめぇはあれが生誕するまでの暇つぶしだろうが!!」
奴は己の首をつかみ壁に叩きつける
「ぐっ…!!」
「『虚月天墜』!!」
そのまま虚月天墜を放ち壁ごと吹き飛ばす
己の体は壁の中に埋め込まれてしまう
「セイバーくん!?」
「……そろそろ『境界を喰らうモノ』は孵化する、そこで指をくわえて見ているがいい!!」
「雷鳴の馬車 糸車の間隙 光もて此を六に別つ」
「縛道の六十一、『六杖光牢』!」
六つの杖状の縛道で縛り上げられる
「く……!」
「『境界を喰らうモノ』が孵化すれば!!この世界の境界はあやふやになりさらに他の特異点をも喰らい始める!!……そうすれば他の『禍神転生者』を蹴落として俺が勝者だ!!」
高笑いするアサシン
私の番
あまりにも醜悪すぎる、反吐が出そうだった
あの、邪悪がまかり通るのか
「醜い、……醜すぎる……」
私はわなわな震えながらアサシンを睨み付ける
「あ?何も出来ない弱小マスターが何をほざく?…貴様を護るサーヴァントはあの様…吠えるだけは吠えれるのか」
アサシンは私のほうへ歩き、髪を掴む
「きゃ…!」
「……『禍神転生者』は醜いかよ、カルデアのくずマスター?…だが……常に俺達が強者だ!!貴様らは常に喰われる側の弱者だ!!……あぁ貴様を殺せば忌々しい赫月のセイバーも顕界出来ず消え去るか」
私の腹部を掴み虚閃を放とうとする
「…お前なんか……セイバー君が倒して……くれる、……助けて!!セイバーくん!!」
「は、……縛道で身動きできないやつがどう貴様を助ける……って」
バゴォ!!
と思いっきり吹き飛ばされるアサシン
短い付き合いだけど……助けてくれる……え……?
「……リツカに手を出すなよ……アサシン」
無理やり縛道を破り血だらけになっているセイバーくん
虚の仮面は剥がれ素顔が再び見える……傷だらけ
「あぁ……リツカ、必ず『護る』」
ぽんと頭をなでてくる
「セイバーくん……」
「エミヤ、黒崎一護……限界はここじゃない………限界はここで越える力を貸してくれ」
『身体は剣で出来ている』詠唱を始める
「かくづきぃ…!!……いい加減ウゼぇ!!…ぶち殺してやる…!」
アサシンは再び立ち上がる
「…………時間稼ぎくらいしてやる」
ふらふら苺花が覚醒して立ち上がる
「……苺花ちゃん、無理したら……」
「いや、いい…ここで何もしなかったら後悔する、一護さんにも母上にも顔向け出来ねぇ…やらせてくれ立火」
「…死なないで」
「は、死にはしないぜ……無敵の苺花ちゃんだ……!」
卍解『裏界白蛇姫ノ恋情』
白い氷の卍解を纏う、白い死魄装に代わる
「偽者野郎!!一勇を返して貰うぜ!!」
苺花ちゃんは傷だらけの身体でアサシンへ向かっていく
「まだ救える気でいるのか!!阿散井苺花!!」
『血潮は鉄で、心は硝子』
苺花ちゃんは追いすがる、力の差は歴然だった
それでも、追いすがる
一勇を救うためと……意地を見せている
「『破道の七十三、双連蒼火墜』!!」
『幾度の戦場を越えて不敗ただ一度の敗走もなくただ一度の勝利もない』
青い炎の鬼道は弾かれる
「まだ救える眼でいやがる!どいつもこいつも!てめぇら弱者如き俺の邪魔をするんじゃねぇ!!」
「……その弱者如きに、足元掬われるんだよ!偽者野郎!『白蛇姫ノ情念』!!」
凍結させる斬撃を放つ
『担い手はここに一人、剣の丘で鐵を打つ』
「……『月牙天衝』!!」
「苺花ちゃん!!!?」
苺花ちゃんは走る走る走る走る走る走る
アサシンへ向かって突進する
ぎりぎりで月牙をかわす
「あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぉ!!」
苺花ちゃんは咆哮、叫びながら白い刀を振り上げる
『ならばその生涯には意味は無く』
「くそ………!」
白い刀は、折れていた
「残念だったなぁ……」
二の太刀にて苺花ちゃんは切り捨てられる
勢いよく吹き出す鮮血
「苺花ちゃん!!」
「……後は頼んだぜ…英雄さんよ…」
『借り物の身体はそれでも、剣で出来ていた…!』
世界を塗り替える
固有結界の展開、心象風景は大空洞を浸食していく
剣の墓の荒野に
「ち、固有結界……心象風景の具現化か……!!?」
アサシンは辺りを見渡す
頭上に浮かぶ逆さまの摩天楼
二人の『心象風景』……エミヤシロウの心象風景に黒崎一護の力が混ざっていた
「『
「混ざったから何だ!!」
アサシンは突進、セイバーくんへ向かっていく
荒野の山、頭上の摩天楼に刺さっている無数の『天鎖斬月』を全てを引き抜くセイバーくん
「『天嵐ノ月牙天衝』」
迎撃すべくアサシンに嵐のように降り注ぐ
「がぁぁ!」
「ぐ、……『虚月』……!」
反撃しようと手を振り上げるが剣が、振り注ぎ打ち抜く
「………断罪の時間だ、アサシン」
ハリネズミのように剣山になっているアサシンの首に剣を突きつける
「……終わるかよ!!!……あれが孵化すれば!禍ツ聖杯の欠片が完成すれば俺はユーハバッハの因子で奴の『聖文字』全知全能を手に入れれば敵は居なくなる!!てめぇも『崩界のアヴェンジャー』も『血怪のバーサーカー』も敵じゃねぇ!他の『禍神転生者』も出し抜けるんだよ!」
べきべきと刺さっている剣が、抜けていく
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
虚化を暴走させている、霊圧値が異常値を叩き出す
虚の穴が広がる
鬼のような『完全虚化』となる
「ガァァァァァァォ!!!!」
咆哮、ビリビリと霊圧を放っている
「……投影、付与」
天鎖斬月本体がセイバーくんの前に飛来する
掴み魔力回路を天鎖斬月に接続
魔力を通して再び付与投影を行う
『超越の剣製』により全ての工程、省略
憑依経験は、既に実行済み
その、幻想は……実を結び形をなす
「…………『約定ノ天鎖斬月』」
星の聖剣を天鎖斬月に纏わせる
「さぁ、虚影のアサシン……彼女たちの怒りを喰らうがいい」
『約定ノ天鎖斬月』を上段に構える
荒野の中央、光は収束する
「因果は応報する、禍神に与する邪悪……森羅万象に代わり……罰を下そう」
「ワラワセルナァォァァァ!!!!」
汚濁に似た霊圧を撒き散らしながら鬼のようななったアサシンはセイバーくんに突進していく
「……『極光ノ月牙天衝』」
光は収束を繰り返し刀身に光を纏わせる
セイバーくんは、思いっきり振り下ろす
鋒から放たれた光の濁流はアサシンを呑み込んだ