Fate/Cross Order 人理修復異界課   作:九咲

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No.19「斬魔大戦⑱~涙拭って今吠えろ~」

私は彼の事を知っていたのだろうか?

 

否、名前すら知らない

 

既存のキャラクターではない転生者のサーヴァント

 

戦う理由すら知らない

 

知らなすぎていた

 

ねぇなんで教えてくれないのだろう?

 

『常世総てのセイヴァー』って??

 

『崩界のアヴェンジャー』って???

 

 

冬羽野咲良(とわのさくら)さん』って誰なのかな?

 

 

前回の特異点から多少の軋轢を感じていた

 

『禍神殺し』の力に覚醒してからだ。彼の目が変わったのは

 

『そもそも信用されていたのかお前は』

 

うるさい

 

『一蓮托生とか恥ずかしいね』

 

うるさいってば!!

 

『………中身のないお前が理解出来るわけないだろう?』

 

うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい

 

『隷属転生者を救いたいとか偽善者が笑わせる。『禍神殺し』とかわけの分からない力を与えられただけの人形に過ぎないお前が』

 

本気で誰かを救いたいの願った事も無いくせに

 

救えてもいないくせに

 

「やめてよ…」 

 

 

「救いたいのは本当なんだよ…………信じてよ…」

 

 

   嘘だ!!

 

ありったけの自己否定がぶつけられる

 

 

藤川五火時代の当たり前のこと。私は私を肯定出来ない

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

 

「藤丸さん、大丈夫でしょうか」

 

覇道瑠璃は困惑していた。あそこまで力強くデモンベインレイドクローを駆った彼女がこんなにも塞ぎ込んでいる

 

2日間。『ブラックロッジ』は沈黙していた

 

二人の『逆十字』失った今。この沈黙は怖いものがあった

いつ異変が起きてもおかしくは無い

 

デモンベインレイドクローのパイロットである彼女が動けないのは好ましくない

 

が彼女の心的ダメージを回復させる声かけが出来るほど仲が深くないのも事実で歯痒かった

 

彼女の双肩に頼らざる得ない身としては……悩み抜いていた

 

彼女に貸し与えていた居住地まで赴き扉の前でどう声かけしようか思案する

 

「…………」

 

そもそも友人というものが少なかった自分自身に頭を痛めている

 

祖父と両親を失ったあとは帝王学を学び覇道家総帥として奔走する日々であり社交界でも他のお嬢様という人種とも些か違う立場でも有り交流を深めてはいない

 

「……まさかのぼっち説」

 

思考が飛躍してしまい頭を振る瑠璃は溜息をつく

 

 

「……いつまでそこにいるのかしら?覇道瑠璃」

 

「うぎゃ!!?………ら、ランサーさん…?」

 

淑女らしからぬ声を出してしまい咳払いをし振り返る

 

「……ふん、うちの馬鹿マスターなら心配無いわよ」

 

先の戦闘にてあの金髪の少女に傷付けられた傷はもはや見当たらないランサーの姿に目を見開く

 

 

「え?…それはどういう…」

 

 

「今から殺してでも立ち直らせるから」

 

物騒な物言いをし『紅夜のランサー』をなのる藤丸さんの護衛は涼しい顔で藤丸さんの部屋のドアを蹴破る

 

「え、え!!?」

 

 

ドアは開きかつかつと不躾に部屋に入るランサー

 

怜悧な視線が射貫くのは部屋の隅っこで縮こまる藤丸さんの姿だった

 

年相応に可愛らしい容姿であった彼女の面影は薄れ髪の毛は乱れ何より隈が酷く目に光がなかった

 

「無様ね。立火」

 

ランサーはその姿に心底落胆し見下す

 

「貴女……!!藤丸さんの護衛なのでは…!!?」

 

 

「……子守とは違うのよ覇道瑠璃。この子を叱咤出来ないのであれば黙って頂戴。」

 

 

「それでも…!!彼女は傷付いているのでしょう!!?もうひとりの『赫月のセイバー』さんが敵に回ってしまったのでしょう!!?」

 

 

「黙りなさい。覇道瑠璃」

 

圧倒的重圧の視線にぐっと黙らざるえず口を噤む

 

 

「…『赫月のセイバー』があの古本女にとられて悔しいって訳じゃないんでしょう立火。私はあの場面に立ち会ってはいないわ」

 

 

「…………『禍神転生者』が私に説教?」

 

虚ろな瞳でランサーへ視線を向ける藤丸さん

 

 

「気が付いてたの」

 

 

「…こんなにもキミを殺したいんだもの。気付くよ」

 

 

「私の目的が終われば殺されてあげるわよ。私は妹を救えればそれで良い。そのために『禍神転生者』にまで堕ちたのだし召喚にも応じたのだから」

 

「信用出来ないよ…」

 

「サーヴァントは何かしら思惑があるのは当然。『禍神』なら、尚更。お前はサーヴァントと友達ごっこがしたいのか」

 

「…ビジネスとかに割り切りたくはないよ…けれど私はセイバー君も沖田さんも信長も、…ランサーとも友達として…信用していたかった」

 

膝を抱える藤丸さんの姿に私は居づらくなり退室する

 

彼女らの問題で私には私達には解決出来ないだろうと、身を引く

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

 

「私の中の知らない何かが怖いんだ。知らない情報。知らない感情がじわりと私の中に当たり前にいすわるんだよ…それが藤丸立香なら彼女に居座った私だから納得する」

 

私は手の平をみて、ぎゅっと握る

 

「でも、明らかに藤丸立香ではなくて別の物なんだよ…『識者』も明確には教えてくれないし」

 

「そんなんだからセイバーくんにも見限られて…」

 

 

「…………禍神殺し計画。神共の我等を殲滅せしめんとする走狗を生み出す計画があったらしいわ」

 

「…?」

 

「転生者がありふれた現状を打破する事が根幹にあるようだけれど」

 

「過剰な転生者権限による転生者の暴虐。それを取り締まるクロスオーダーマスター。」 

 

「……そして根幹より悪の『禍神転生者』」

 

 

「クロスオーダーマスターの手だけでは余る現状に。根源悪の『禍神』すら殺す『転生者』を生み出す事を思い付く…その9番目が貴女よ立火お分かり?」

 

「…なんで知ってるの?」

 

 

「『禍神殺し』は何人か殺されてるわよ。生き残っているのはNo.6とNo.1と…No.Extra」

 

 

「…『赫月のセイバー』よ」

 

知っている。あの時…そう言っていたから

 

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

リベルレギス。『デモンベイン』シリーズのボスキャラ

『聖書の獣』大導師マスターテリオンの愛機。彼の魔導書『ナコト写本』が召喚する最強の深紅の鬼械神

 

ナコト写本の精霊エセルドレーダ。闇の少女の隣にはマスターテリオンではなく見知った青年だった

 

『赫月のセイバー』…私のメインサーヴァント。私の初めてのサーヴァント。私の…

 

 

「答えてよ!!?セイバーくん!!」

 

禍神殺しの戦闘高揚は霧散する。無様に叫ぶだけ

 

デモンベインレイドクローのモニターカメラをアップにするが彼の表情は無表情

 

目に光が無かった

 

 

「私が貰ったわ藤丸立火?中々いい傀儡だわ。貴女のもとで腐らせとくのも勿体ないでしょう?」

 

クスクスと笑う闇の少女は嘲る

 

「この…!!」

 

 

交錯するデモンベインレイドクローとリベルレギスの拳

 

相殺される衝撃

 

「怒りのまま殴るのは猪と同じよ。藤丸立火?ふふふ」

 

「マスター!!?落ち着いて!!」

 

 

「セイバーくんを返せ!!!」

 

 

「…………返せとは笑わせるリツカ。己はキミの所有物ではない」

 

セイバーくんの声にしては冷たかった

 

「操られてるんじゃ……」

 

芯まで冷えるような感覚に指先が震える

 

 

「操られてるさ。けれど自我は残されてるよリツカ」

 

黒いコートのマギウススタイルの彼は自嘲気味に呟く

 

かつてのマスターを見る目では無かった

 

「きみといては『咲良』を救えない。『真白』を殺せない。己は弱いままだ」

 

 

「己はその『禍神殺し』の力を畏怖し嫉妬しているんだ。リツカ。己はきみと決別する」

 

 

「なんで!!?私はこの力は望んだわけじゃない!!怖いんだよ!!セイバーくん!!助けてよ!!」

 

 

「なら尚更だ。失敗作『禍神殺しNo.1』として成功例のキミを妬ましく思う。己に固執する理由が分からないな。『魔神』の彼女をメインに添えて新たに召喚するといい」

 

「私は…君と……!!」

 

 

「どちらにせよ。私達は現状貴女達と敵対するつもりは無いわ。『無限のフォーリナー』と敵対する同士協力は無理として邪魔はしないで欲しいわ。」

 

エセルドレーダは会話を阻む。

 

「……貴女達『転生者』の干渉はウンザリだわ。私とマスターの物語を阻まないで欲しいわ。どうしてもというならマスター復活後殺してあげる」

 

弩級の殺意を放った後消える

 

 

「セイバーくん!!」

 

私の叫びは虚しく木霊するだけだった

 

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 

 

『禍神殺し』

 

禍神すら殺す転生者を狩る転生者。

 

その、9番目…か

 

ぼんやりと考える。ランサーの侮蔑するような見下すような視線は気になるがそれどころではない

 

「立火。どうするの?いつまでそうして塞ぎ込んでいるのかしら」

 

『禍神転生者』にしては私を見捨てずにいるのは他の『禍神転生者』とは違うのかもしれない 

『禍神殺し』という私が有用だからかも知れないけれど

 

「…マスター……」

 

キャスターもいつの間にか来ていた。ゴメンね。啖呵切った癖にこの様で

 

「マスターに私は救われた。私を私にしてくれたの……それは分かって欲しい」

 

紫の髪を揺らし金の瞳でこっちを縋るように見てくるキャスター

 

「……キミを救ったのは『禍神殺し』だ…弱い私……じゃない」

 

「…………貴女だよマスター立火。私を救ってくれたのは貴女。貴女が決めつけないで。救われた私が言うのだからそれだけは否定しないで」

 

「…………そう、ダヨネ…………」

キャスターはゆっくり抱き締めてくれた

 

暖かい。認めてくれる人がいるなんてそれは素晴らしい事なんだ

 

……かつては認めてくれる人は、いなかった

 

認めて欲しい人はいたけれど

 

………それ以上に認めていないのは自分自身だった

 

「マスター立火。」

 

 

「立火。どうする?あの古本女は『獣』の復活が狙い。…ならばあの馬鹿はそれまでの使い捨てなのは自明の理」

 

「そうだね、……『ナコト写本』は5000年を生きる狡猾な魔導書で『獣』の狂信者……あの人のことなんてどうでも良いはず」

キャスターはランサーのことばに追随する

 

「…自我はあると言ってるけど正常な判断は出来ず…『咲良』さんって人を救いたい強くなりたい気持ちだけで操られてるのか」

 

多分私を畏怖して嫉妬しているのは本当だろう

 

でも…私達には話し合いが足りなかった

 

私は甘えていたんだ。彼の彼女らの優しさに

 

殻を被りすぎていた自分自身と決別する

 

藤川五火を『殺さなければならない』

 

 

『彼女』はきっと『禍神殺し』に押し潰されるだろう

 

だから私は『藤丸立火』にきちんとならなければならない

 

「……一発殴って目を覚まさせてやる!」

 

 

涙拭って今吠える。

 

セイバーくん!!待ってろ!!!!

 

 

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