つまらない女の話をしよう
どうしようもない女の話をしよう
越えられない壁はそこにはあった
越えられない壁なんかないと人は言うけれど
それは欺瞞で綺麗事だ
私は綺麗事が嫌いだった。下を見て安心するような性格でもなかったし傷の舐め合いをするような弱い人間は嫌いだった
それでも『才能』の壁は私を阻んだ
それで折れるような気質ならどんなに楽だったろうと今なら夢想する
残念ながら私は意地っぱりの負けず嫌いの…妬ましさをもつ面倒くさい人間だった
「〇〇さんはなんでそう頑張れるの…正直異常だよ」
「逆にきくけど…なんで頑張れないの?」
理解はされず面倒くさい気質で敵は多かった
「……どうせ、妹さんには勝てないくせに」
そうだ、私は妹には『才能』では勝てない
『理解』は早かった
けれど『納得』は出来なかった
ぐつぐつと煮える地獄の釜のような『嫉妬』が私の中に沈殿していくのを目をそらしながら足搔いていた
妹は2つ下で私とは違い天真爛漫で周りからは好かれるような私とは正反対の愛らしい少女だった
幼い頃から私の後を追いやることなすこと私の真似っこだった
食事の好みもお洒落の好みも異性の好みも
私の『真似っこ』だ
私より料理がうまく私よりお洒落で愛らしく私の初恋も奪ったとしてもそれは別に構わなかった
けれど中学の頃から始めたものがある
今はソレヲ口にするだけで嫉妬で狂いそうになるから口にはしないけれど
「…あ、お姉ちゃんこれやるんだって?なら私も始めよっかな?お父さんいい?」
はじめるにはそれなりに初期費用がかかるもの
私の家はかなり裕福ではあり私より猫かわいがりされてる妹がおねだりするならば厳格な父さえもう籠絡されているのでそのおねだりは口にしただけで決定事項だった
「仕方ないなぁ…ほらお姉ちゃんに習いなさい」
「はーい、お父さん大好き♪お姉ちゃん教えて」
私の熱意までは『真似っこ』出来ない癖にいとも容易く侵略してくるのは常だった
『料理』も『お洒落』も『恋愛』も生きていく上で必要なもので熱意もくそもなかった
私の中ではそうだった。だからこの子がいくら真似っこしても嫉妬したりはしなかった
「そうね」
私は妹のこの『侵略行為』に抵抗する術はない
「……××は器用だからすぐ覚えるわ」
私の熱意と努力を踏みにじりやめた習い事は幾つもあった
周りから見れば飽き性と思われるだろうけどそれなりに努力し到達点には至っていたので様々なことに挑んでいる子としてみらている
妹のような『天才』を見てやはり絶望する
後追いの筈の妹はいつの間にかさきにいるのは常だった
「…………」
私の熱意を踏みにじるのかと激昂したこともあったが妹はただ首をかしげるだけ
責められるのはいつも私だった
中学の時にはじめたもの。世界で活躍する先駆者は努力で天才達と戦い駆け上がっていったという
『天才』と競い打ち負かすというものに心躍った
私も妹に負けることなんかないと
すぐ諦めていた自分を恥じた
その努力に没頭する
妹も始めたそれはすぐに妹に越えられたけれど
努力すればいずれ結ぶと粉骨砕身で寝る暇遊ぶ暇を惜しんで努力した
私の敵は妹だけだった
いつの間にか高校生になっていた
この頃は両親は多忙でよく海外にいっていた
年頃の姉妹二人を残して不在のことが多かった
その事に関しては不満はなかったけれど後悔はあった
…私の暴挙を止める人間がいなかったことに
努力は裏切らない筈じゃないのか
壁を感じる
『絶望』と『才能』の壁だ
そして理解する
あの、あこがれた先駆者も私からすればただの『天才』だった
凡人。ああこの上もなく凡人
私が足搔いていたから妹も飽きずそれを続けていた
真似っこ…異常だと私は妹を変人だと思っていた
けれど今や『天才中学生』と世間を騒がせている
私はただの姉でお姉ちゃんがやっていたから自分がいるという美談すら掲げられている
吐き気がする。
『天才』が侵略行為するな
『天才中学生』が表舞台から消える
テレビ業界ならそんなことは、常だったがピタリと消えてしまった
愛くるしい風貌で人気絶頂でその分野においていずれ牽引していくだろうとまで言われた天才の突然の失踪
何か事件にでも巻き込まれたのではと世間をはじめとして騒がせた
「××ですか?体調を崩してまして…すぐに復活しますのでお待ち下さい」
姉である私はそう答える。事件ではないとそう弁明しながら
その、姉である私が原因故に
「…お姉ちゃん…どうして…」
妹はベッドに縛り付けていた。動けないように
『侵略』してこないように
居座られたくないから
「いい加減限界よ、負けず嫌いは自称するけれど…もうこれ以上は無理だから」
やめるという選択肢はない
私が次に何か始めればこの子は『天才中学生』という立場を容易く捨て『真似っこ』してくるだろうという予感がある
もう強迫観念に陥ってはいただろう
「…なんで…」
「……貴女頭良いくせに私の気持ちだけは分からないわね」
妹の天真爛漫さに吐き気がする
「部屋に閉じ込めるわ。………私の邪魔をしないで」
限界を迎えてしまった私は妹を部屋に閉じ込める。身体の自由奪うため足の腱をきる
「ぎゃ!!?お、お姉ちゃん…!!?」
愛くるしい妹の顔が苦渋に歪む。それは、その様が私の心を幾何か救ってくれた
破綻した、破綻してしまった
「なら責任をとりなさいよ××」
いずれ必ずこの監禁生活は破綻することを当時の私はもう気付けてはいなかった
「………お姉ちゃん……」
「…なに、トイレならオムツにしなさい」
「…………」
妹は衰弱していた。食べるのも一日一食
排泄はオムツに
日々衰弱していた
日々監禁生活のため世話に気をとられる
熱意はとうに霧散した。ただただ妹に、優位を取れる事に優越感を感じるために
「…………〇〇さん」
妹の担任だ
「…××さんは、御在宅ですか」
「妹は伏せてます。いろいろプレッシャーだったのでしょう…回復次第登校させますので」
「……本当ですか?」
疑いの目で見ている。この時初めて破綻することに気付いてしまった
当たり前だいずれ両親も帰ってくるだろうし
担任も、あわせてといってくるだろう
妹の部屋は酷いにおいだ
世話も次第に雑になってきた
「…………ごめんなさい…………お姉ちゃん……」
かほそい声が小さく謝罪する
「………………」
「…………最初は……ただ褒めて欲しかっただけ……なんだよ……?」
「…………次第に…………お姉ちゃん………………より上手く出来て調子に…………乗っちゃって…………」
かほそい声が謝罪を重ねる
「…………お姉ちゃん……代わる代わる新しいことするから……意地になって……」
真似っこしたというのか、褒めて欲しいという純粋な理由で
「………追い詰めてごめんなさい。許してとは言わないけど………うぅん」
「それでも………こんなことしたお姉ちゃん…許さないよ………」
かほそい声が謝罪と共に呪いを吐く
好きだからこそ呪う。と彼女の目はいっていた
妹はそのまま息を引き取る。呪いを残して
妹もまた、普通の少女だったことに気付く。真似っこを異常にする変人だと決めつけてた
褒めてあげたのはいつだっけ…?
ああ、まだ低学年の時か……
満面に笑みを、うかべた妹の顔を思い出す
現実は被害者の衰弱していた妹に酷い顔をした加害者の姉
「……どうしてこうなったのだろう」
座り込み俯く。妹の手を握る
「……………」
ふとかつて夢想した『転生』、別の誰かにあるといういつもの私なら侮蔑する逃げのはず
夢想する。今一度やり直すのは繰り返す自信はあった
故に夢想した。別の誰かになることを
「皮肉ね。……私は立火にも『赫月』にも大層なこと言えない癖にね」
気質だけは、どうにもならないと自嘲的に笑う
こうして私は『レミリア・スカーレット』に転生し『禍神転生者』に堕ちた
あの子の呪いが『禍神』を喜ばすためのものだと思う
彼女の魂もまた『隷属転生』している
『フランドール・スカーレット』に呪いだけが切り分けられて
小さな戦いが『斬魔大戦』の影にて、行われる
『どうしようもない私』への『呪い』を重ねて
『紅夜のランサー』の『