俺と白露型の日常   作:夜仙

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彼女とデート、なんて事中々ないと僕は思います。


16 クリスマスは家族と過ごすのがオチ

「なぁ雷雨、どうしたら初霜と仲良くなれるだろうか」

 

 親友である雪原の突然のこの台詞。俺は度肝を抜かれた。

 

 まさか、こいつ……

 

「本格的にリア充の道を歩みだす気か、コンニャローーー!!」

 

「ちょっ、声がでかい!」

 

 慌てふためいている声音をして俺を止める雪原。顔は真っ赤になって目はぐるぐる模様になっている。

 

 ……本当に分かりやすいな、お前。

 

「大体お前って奴はねちっこいんだよ。変にさ」

 

「なんだよ、それ。そういうお前こそどうなんだよ」

 

「何が?まさか恋についてか?残念、俺にそういう浮ついた気持ちは一切生まれていない!」

 

 ギャハハハ!この俺様に恋という名の甘い甘い感情は未だ生まれていないんだ、雪原!

 

 ギャハハハ、泣きそう。

 

「で、なんだ。雪原君、どうせだから君と初霜のラブ、いや関係はどこまでいったんだ?」

 

「ラブってなんだよ!あと俺のこと急に君呼ばわりしたな雷雨!」

 

「どうどう、落ち着きたまえ雪原君」

 

 雪原を取り敢えず落ち着かせ、俺はドラマとかでよく見る紳士系のやつがする腕組みをやって神妙そうにしてみた。ほら、こういうのって一度は憧れない?

 

「なんかムカつくな、お前」

 

「ひどい!」

 

 雪原の罵倒は的確なところではあり、俺の心にそこそこのダメージを与えるに至った。

 

 だが、なんだかんだで、この日俺は雪原を散々弄りたおすことになった。

 

 え、雪原の質問?

 

 そういやぁ、そんなこともあったなぁ。

 

……

 

………

 

…………

 

 

 

 次の日

 

「雷雨さん、どうしたら雪原さんともっと仲良くなれるんでしょうか?」

 

 お前もかよーー!!

 

 なんだよ、これ!一体なんなんだよ、これ!

 

 なんか急に電話なってさ、相手が珍しく初霜ちゃんでさ、昨日俺が雪原を弄った喫茶店に来てって言われてさ、来てこれかよ!

 

 なに、お前らテレパシーとかで実は繋がりあってんの!?それとも、なにお互い何かチップか何か埋め込まれてんの!?

 

 というか、なんで人様の恋愛に俺は今週の休日全て消費してんだよ、どうしてくれんだよ!

 

「どうしました、具合でも悪いんですか?」

 

「……お気遣いなく」

 

 まぁ、いいや用件だけでも聞こう。だが、もしこれで同じ感じの内容の話だったら帰って寝よ。

 

「ところで今日って何日か知っていますか?」

 

「いきなりですね……確か十二月二十四日でしたね」

 

「そうです……あっ、有難うございます」

 

 話の最中、先程注文しておいた俺と初霜ちゃんのコーヒーが届いた。

 

 淹れたてのため、かなり湯気が出ている。火傷しないように気をつけなければ。

 

 ついでに俺のやつはブラック、初霜ちゃんのはミルク多めである。

 

 え、渋い?

 

 そう?俺はコーヒーには何も入れないスタンダード的な方が美味しいと思うんだけどなぁ。

 

 と、誰かとの会話を打ち切り、湯気がモクモクと出ている中を突き進んで飲もうとする時、今日が何の日か思い出した。

 

「そういえば、今日はクリスマス・イブでしたね」

 

「そうなんです」

 

 こくこく、と初霜ちゃんは首を縦に振る。

 

 俺はやっと彼女の言いたい事を何となく理解できた。

 

 つまり……

 

「初霜ちゃんは雪原とクリスマスデートをしたいわけですね」

 

「はい、そうです……じゃなくて〜〜!!」

 

 初霜ちゃんは思いっきし飲んでいたコーヒーを受け皿にたたきつける。ただ、それはかなり大きな音だったため、周囲の客達はこぞって俺達を見る。

 

 これにはっと気づいた初霜ちゃんは「すみません!」と言って頭を下げた。一方の俺は軽くペコリと頭を下げた。

 

「まぁ、冗談はこの位にしておいて……で、具体的にはどういうご用件なんですか?」

 

「それは……その……まだ決めていないというか……」

 

 なるほど、先ずそこから出来ていなかったのか。

 

「初霜ちゃん、ところでなんでそれを今日という日まで考えてなかったんですか!?これじゃあ、プレゼントを準備するにしろ、何にしろ遅すぎじゃありませんかね!?」

 

「しょ、しょうがなかったんですよ!だって、計画をたてる度に段々胸がドキドキしてしまって、考えられなくなってしまうんですよ!!」

 

 いや、それで前日になって『さぁ、今から一から計画練りますよ〜』なんざ、できるか!!プレゼント買うにしろ、何にしろ時間がかかるじゃないかよ!

 

「はぁ、とりあえず考えてみる事にしましょう」

 

「はい」

 

 俺と初霜ちゃんはまず最初の地点へと話を戻す。

 

「まずだけど、雪原は何か家で欲しいものを言っていたりしなかったか?」

 

「……いえ、特には。雪原さんは何しろ私の事をずっと気にかけてて、話題というのも特には」

 

 まぁ、あいつは基本無欲だからな。一応、想像どおりだ。

 

 ただ……

 

「あいつの事だから基本気持ちが込もっていたら、何もらっても嬉しがると思いますよ」

 

「そうなんですか!?」

 

「はい」

 

 ま、俺はあいつにまともなプレゼント送らねぇからな。

 

 確か、去年はカーネーションの花束、その前はチューリップ一本、さらにその前はじゃがいもだった気がする。

 

 え、なんで花ばっかなんだって?

 

 そりゃあ、いじるためですけど?

 

 ドヤッ!

 

「でもでも、もしそれが他人の意に反していらない物をあげたら、と思うと」

 

 なるほど……確かに本人がいらないものをあげても、貰った本人がそれに気を遣って「ありがとう、嬉しいよ!」と言われても、嬉しくないよなぁ。

 

 俺は雪原にだけはそんなのお構いなしだけど。

 

「料理とかってできる?編み物とかもいいけど」

 

「ちょっと、そういうのはあまり……そういう類の物は姉さんや雪原さんがやってくれていましたから」

 

 それはまずいな。

 

 男性に喜ばれるプレゼントランキングが確か一位ぐらいにあったのが『女性の手作りの物』だった気がする。理由としては彼女の成長が見える、とか言う感じのだった。と言うか、このランキングに入っている彼女達は彼氏達にいつも料理とか編み物させてたのかな?

 

「……やっぱり、もう少し早く考えていればこんな事には……」

 

「初霜ちゃん……」

 

 ん?待て、そう言えば……。

 

 俺は頭の中でふと、ある事を思い出した。

 

 そして、閃いた。

 

「初霜ちゃん」

 

「なんでしょうか?」

 

「一つ、提案があるんだけどさぁ……」  




珍しく続くスタイルです

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